『草食獣・第八篇』(草稿)


草食獣・第八篇
目次 22年 23年 24年 25年 26年 27年 28年 29年 
番号 作品(平成22年)

 『草食獣 第七篇』以後(「短歌人」2010年7月号より)
還暦と人呼ぶゴールのみえてきて否応もなく年寄りとなる
定年後の遊び友達つくらんとわれにも声をかけてくれたり
右足を組むは易しも左足を組むは難しも左足組む
もらいたる菊の盆栽おのずから車中のわれを暖色にする
疑われるおぼえあらぬにまたしても万札もどすこの券売機
『歌よみに与ふる書』が二冊ある印をいれた一冊がない
駅頭にたちどまらせるちからある民族衣装のラテン音楽
ライブドア証券呑みしオリックス証券を一呑みにするマネックス
ビールあり日本酒もあり焼酎は芋を置かない蕎麦専門店
10 浴室の音声ナビの男声おもいていかぬいかぬセクハラ
11 IHクッキングヒーターの音声ガイドが料理してます
12 りんひょうとうしゃかいじんれつざいぜん猿飛佐助は印結びたり
13 金があるかないかの違い頭が良いか悪いかの違い鳩山と俺
14 晩年というも後付そのときはそのときどきのそのときの生
15 瀬田川のみずは宇治川桂川木津川さんずいの淀川となる
16 窓あけてみればあかあかあかあかと閉門蟄居のような夕雲
17 熱湯に焼き餅いれて引き上げてきな粉をかぶす簡単料理
18 大福は大腹の転そのころのつごう三百二十の記録
19 柏餅のもちはしん粉で張りのある白がショーウインドーにまぶしい
20 ゆびにもつ串がなければ完結をしない三色団子の味は
21 粒餡入り生八つ橋のアイデアのあとはどうでもいいがぞろぞろ
22 なつかしい水羊羹は新聞紙で包んでくれた駄菓子屋の味
23 徳島に外郎ありてもちもちともちもちとする外様外郎
24 ぼたもちの餡と米との相性は餅に劣るが結論である
25 といいかくいいお萩をけなしつつ一ついただく日本の味
26 桜餅の葉っぱも食べてよそいきのわれがおりたり茶の湯の席に
27 よきかなと書きて善哉よきかなとおもえどながく食べぬ善哉
28 歌にあるちまきたべたべそのあとの記憶たどれば指を折るほど
29 ちまき巻くいがらをほどき笹はずし対価すくなき団子とおもう
30 ちまき巻くいがらをほどき笹はずすそのプロセスを楽しめという
31 気が弱くなっているのだ手のひらに食後の薬をたしかめながら
32 うまれかわることなどはないあるならば沢の流れを横渡るカニ
33 ダイエットその前その後その前にもどる可能性のあるということ
34 箒の先でたたいてみてもこたえない毛虫は妻のつっかけが踏む
35 マンションの前の歩道はにんげんと違って進みにくそうだ 蛇
36 第三のビールとは何まあいいがもどきのふえた世の中である
37 発泡酒の泡吹くコップさかなにはカニのなかまのかにかまを切る
38 グアイとは川の意 決勝ラウンドの左右にウルグアイパラグアイ
39 神職の安藤さんの真似をして生田神社の茅の輪をくぐる
40 サーカスのライオンおもいわたくしも夏越しの祓 茅の輪をくぐる
41 8の字に茅の輪くぐりて神殿に二礼二拍手これもひとまね
42 冷蔵庫の氷でつくる焼酎のオンザロックは溶けやすくして
43 買ってきた氷でつくる焼酎のオンザロックは焼酎の味
44 溶けやすい氷に注ぐ炭酸の玉にきずあるこのハイボール
45 あけたての炭酸水のいきおいをたのしみながらのむハイボール
46 前をゆく小学生がふりかえりふりかえり見る付けてるように
47 寝る段になっておもえば七夕の笹の飾りを見なかったこと
48 たよりなくおもうシャワーですます身の恥ずかしながら水虫である
49 看護師さんにも個性があって今日の人は包帯を巻くゆびがきれいだ
50 三階の右側 今日もマネキンの少年少女ゆかたきて待つ
51 せりあがる男波のさいご のまれゆくエスカレーターの汀線またぐ
52 マネキンのくちびる読めば少年が妹を呼ぶニュウドウグモダ
53 廃校を照らすかいちゅうでんとうはうつしださないこわいものみたさ
54 顔なじみの職員もいておもいだす投票事務の日の長いこと
55 投票用紙わたす仕事は気になって何度も何度もチェックしていた
56 受け取っていないが定額小為替は署名押印が先の窓口
57 ハンカチでふく顔あらわれ全身があらわれ坂の多い町です
58 足が消えパラソルのこりパラソルも見えなくなったオランダ坂に
59 頭からあらわれる人はんたいに足から消えてゆく坂 神戸
60 ブレザーはクーラー対策その途次があつくてあつくてあつくて暑い
61 駅前のビルの皮膚科の先生は評判いいと妻が勧めた
62 母かいく整形外科の先生もあそこのビルはと推奨をした
63 聞くところによれば近所の小母さんは診てもらうのに半日待った
64 反対する理由もなくて徒歩五分③のボタンを押すエレベーター
65 それが四月十三日で水虫との戦いは秋の陣を迎えた
66 アレルギーの娘が通い先生は人の話を聞かないという
67 染み抜きに出かけた妻が子の説を諾い転医を勧め始めた
68 朝夕を木酢液に浸りつつ駅前ビルの皮膚科の患者
69 いんじゃんはじゃんけんのことかなしくも私に残る故郷である
70 田舎の洟垂れこぞうがあつまっていんじゃんほいをしていたきおく
71 バリカンでええかいいですおもてなしの心も安い大衆理容
72 受け取っていないが定額小為替は署名押印が先の窓口
73 遣唐使の昔ならいさ役立たずの小沢訪中団とは何だった
74 ふくあんがふくあんがないあの鳩は時計の中に収監をせよ
75 普天間の近くになぜか土地を持つあなたを政治家とは思わない
76 粛々をまたくり返す政治家が無能にみえるこのごろの空
番号 作品(平成23年)
77 親の愛は海より深い 生あればシングル・パラサイトの宿主たち
78 親の愛は山より高い 死後もなお年金パラサイトの宿主たち
79 妻にまた聞いているのだ吉岡が何になるのだ娘の苗字
80 あいさつに来る婿殿にネクタイは御免こうむる旨ことづけた
81 叔母さんのいいなりになる叔父さんが好きといわれてとほほな夕べ
82 娘より亭主関白呼ばわりをされて違うと息巻いていた
83 父親に対する態度がやわらかくなったと母がいい妻がいう
84 照れくさいことだ螺旋階段のバージンロードを子と歩むこと
85 追試験受けた高三追試験受けて大卒いまにおもえば
86 プルタブがステイオンタブ引き出しで行方不明となった缶切り
87 缶切りを借りてあけてるぎこぎこと長期保存のきく缶詰を
88 缶切りをまだ使ってたギザギザのギザギザハートの子守唄
89 自治会に出す空き缶を自治会の人より早く持っていく人
90 セーターの袖をはみだすカッターの身に添わぬこと手を洗うとき
91 ブレザーの袖より短いカッターを引っ張って引っ張っている人の中
92 ふりかえりふりかえり見る女の子おまけに見守り隊の立つとこ
93 廃墟ゆく懐中電灯がわたくしの影をみじかくするながくする
94 人生のあがりのような還暦のもとに十干と十二支がある
95 破れ目のどこもない網 十干と十二支という檻に飼われて
96 あちらいきこちらいきして草を食む兎だ月の光にぬれて
97 音ならばしんぼうと読むかのとうの一生涯のはやさみじかさ
98 還暦の類語に老いのあることのたしかにそうだ階段おりる
99 干支がない還暦もないヨーロッパはサンタクロースまた赤頭巾
100 絵に描いたような頭巾にちゃんちゃんこ赤座布団に扇子がわるい
101 二巡目を生きるかのとうてのひらの卒塔婆にみえる十本の指
102 十本の指のたにまに月みえてもちつくうさぎきねもつうさぎ
103 死において人は平等 不平等な生とあわせて辻褄があう
104 若い日の教育ママの手をはなれ愚息、ドラムを叩く三十
105 呪縛から解き放たれるときがきた文語体オフ口語体オン
106 明日からは神原麻乃 マンションの扉を閉める音が響いた
107 今日からは帰ってこない今日からはここが娘の家になります
108 YouTubeで「娘よ」の唄を流してる五十九歳の今日のこの日は
109 子の窓に明かりがついていないこと思えば明日も明後日もそう
110 いい天気になってよかった二人して婚姻届を出しに行く朝
111 クリスマスツリーの電飾さながらの下ってやがて上る高速
112 カーテンをめくって星に見とれてる大磯プリンスホテルの空だ
113 切り傷のひとつふたつは覚悟して髭を剃ります ホテルの鏡
114 今年また舞台を降りていった人 喪中ハガキを手にとりながら
115 テレビ見て足がすくんだ注連縄の張り替え作業は那智の滝口
116 命綱もつけずに注連縄張り替える白装束は神職の人
117 じいといいばあとよばれて孫をだく竹馬の友だ タイム・フライズ
118 グッジョブと人は親指 還暦のうさぎは月に耳を立ててる
119 還暦の今年おもえば二人子の年を足すとき六十になる
120 二人子の年たす年となりあとは置いてけぼりの人生である
121 顔がいい名前またいい往年の大鵬幸喜が塩まくところ
122 ニッポンは恐竜時代だワープしてコキントウサウルスメドベージェフサウルス
123 歯を強くみがく性格、水道のカランもかたくかたく締めます
124 人恋しくなってくるのだ柚子の実の熟して灯るバス停にいて
125 オール三まではいかない四もあるこれが私の歯の通信簿
126 著者の顔知らないことが救いかと燃えるごみ出す紐でくくって
127 だだっぴろくて暗いロビーだ昼ならば患者でうまる長椅子の脚
128 特例の退職共済年金の請求、いよいよ還暦である
129 ふうたろうの父は色紙にして贈るあーちゃんが私になるころの歌
130 蕎麦でなくそば粉もらってきたといいソバ打つ役を仰せつかった
131 定年後の趣味で人気があると聞くソバ打っている打たされている
132 箸よりもペンよりも重いソバこねてまるめて打った手首が痛い
133 ハンガーに揺れるカッター ハンガーで巣作りをするハシブトガラス
134 積雪に立ち小便のおじさんが身をふるわせてチャックを上げる
135 小便器に横一列だターゲット案内マークをはずすなよゆめ
136 飛び散った床の小便ふいている獅子身中に飼う老いの虫
137 男なら立って小便いさましくいっておられるそのうちが花
138 身をまもるロープいらない男たちが雪下ろしする雪国の屋根
139 死刑囚が死刑にならずに亡くなった雪降るあさま山荘事件
140 お先にと譲ってみたがぼくよりもたくさんコピーする人である
141 朝刊と牛乳とっておもうことサラリーマンのいない家族だ
142 日清の焼きそば箸でつまみつつ缶ビール飲む昼の悦楽
143 朝の番組昼の番組露出してますます軽くみえる政治家
144 ベランダにひいふうみいよいつむうと七草の鉢が一つ足りない
145 楽しまない一日である親指の付け根が赤くはれて痛風
146 五人の子五人の夢にあらわれる伯母の写真に合掌をした
147 元同期元同僚の賀状にはあと一年で定年とある
148 早期退職して八年目七年で思わぬ幸運を掴んだ
149 回想としてならいえる人前で靴の踵の落ちたことなど
150 万引きを見る目であった買いたいが少し高いと眺めていたら
151 五尺余のギル氏の世界 背伸びして見えない三尺と少しの世界
152 ヨーヨーのようにもどってくることもない流れ星 神戸の空だ
153 未来には不安があった青年期このごろ不安が薄らいできた
154 お取引き番号がお引き取り番号に見えるATMだ
155 国難の源にして前首相鳩山某がマイクをにぎる
156 国難の源にしてテレビ好きの原口某がマイクをにぎる
157 小沢んちの吹くシャボン玉廃屋の♪屋根まで飛んでこわれて消えた
158 マキコんちの吹くシャボン玉案の定♪産まれてすぐにこわれて消えた
159 ドロップアウト以後は敷居の高かった職場たずねて名刺交換
160 ラストランの同級生に来年のことをたのんでいる部長室
161 だれだれもリタイアしたという話そのだれだれの一人だ私
162 巨人軍滅びるとても永久に不滅の玉子がちかづいてくる
163 しゃりは舎利からきたということ軍艦は数えきれないイクラを運ぶ
164 銀しゃりをおおい隠して黄金のたまごに海苔の帯がきまった
165 魚偏の魚は多いがなまざかなパスしてパスして湯飲みのさかな
166 回転の寿司の皿とる蒲焼きのたれがかかったあまいうなぎの
167 鯖寿司は食べたくないが空弁の福井の焼き鯖寿司は食べたい
168 ボイルしたタコのにぎりよ生タコでにぎられたなら絶品であろ
169 江戸前のにぎりというもさりながら大阪寿司の穴子がうまい
170 盛り合わせの定番だったその桶に伊達巻寿司をこのごろ見ない
171 乗り遅れることができないハート・インで助六寿司を迷わずに買う
172 職人の親指握りだ手返しだ威嚇をされているような店
173 個ではなく貫だおてしょだがれーじだ江戸前握りの店は居辛い
174 ロボットの握ったしゃりにのるネタの回転寿司はなにもいわない
175 まずもってます寿司、酢飯と自己主張しない鱒との相性がよい
176 JRの待合室で納豆の手巻きがうまく巻けないのです
177 売店のかきのはずしをよこに見て通った大和西大寺駅
178 甲殻類にアレルギーもつ同僚もカニすき囲む歓送迎会
179 樽酒とあるも壜詰とくとくとつげば木の香がしてのみにくい
180 養殖のウニを人より先に手をかけるラッコにこそ痛風を
181 涙もろくなってしまっためがしらを押さえて今日は花嫁の父
182 ふうたろうの父が遺してやれるもの色紙に娘の歌かいている
183 「父」の下に落款の朱、十枚の色紙が子への結婚祝い
184 ドロップアウトリタイアいろいろありまして頭を下げる花嫁の父
185 かけこもうとしたら女性の専用でもひとつ走ってかけこむ車輌
186 眉黒に白い歯並び「虫めづる姫君」のようだイモトアヤコは
187 ビー玉が床をころがる半世紀前は田んぼであった証拠に
188 夕焼け 小焼けで 日が暮れて 無頼のカラスの声が大きい
189 人偏にムと書き仏 ノ木偏にムと書く私 稲舂き子麿
190 続飯(そくいい)をつくる弁慶 積ん読に挑む私の重さのようだ
191 たかが続飯(そくい)されど続飯の義経がヘラもてつくる手際の早さ
192 金棒を回し疲れた弁慶が続飯の淵でする立ち往生
193 弁慶と義経が競う糊作りその出典が気になってきた
194 お星さまのきらきらきらへ飛んでいくユーマラデラ・キタモリオイの夏
195 茂吉よりすごいぞすごい西表島のマンボウビロウドコガネ
196 後翅みせ夜にまぎれるカナブンはおそらくたぶんどくとるの末
197 寿司店の湯飲みをパレードする魚の観閲式だ上がり一丁
198 てのひらに余る湯飲みを回すとき魚説法が聞こえてきます
199 鰆(さわら)きて鰍(かじか)がはねて鮗(このしろ)もいたがとうとうまほろしの夏
200 「遠慮無ければ近憂あり」か電線の鳩が落としている糞のこと
201 くさめとはクシャミの意味とおもいつつ必ず復唱する「屁ではない」
番号 作品(平成24年)
202 子機もって妻が便座のあるときは湯にいる私の手に渡すのだ
203 足あげて犬はオシッコをするのです雌だが電柱に足をあげてる
204 電柱は犬のためあるマーキング行為にもってこいの連中
205 壁あれば壁にオシッコする犬の足あげている定型として
206 あとさきの囃子詞は知らないが「鬼さんこちら手の鳴る方へ」
207 紀伊國屋文左衛門が「鬼や鬼や」つかまえた手のやわらかいこと
208 前のめりの『現代語短歌ガイダンス』むかい風だが今にみていろ
209 『現代語短歌ガイダンス』は折衷派を「みにくいアヒルの子」と定義する
210 おみあしのアスパラガスのとびはねていたいたしいぞ山本リンダ
211 ひとのこといえた義理ではないけれど六頭身の天童よしみ
212 マイクもつ秋本順子の不美人のみりょく たでくう虫がここにも
213 電線の端から端まで占めながらにんげんならばそらおそろしい
214 そば屋見てカレー屋すぎてベーカリーを覗いてやっぱりそば屋に入る
215 客室の聖書の謎が解けました日本国際ギデオン協会
216 変換の今日の傑作 アッカンベーあっ神戸ーのポートタワーだ
217 鍋かこむ人も周知の沿線の二階だひさしぶりの熱燗
218 節電の夏はすけすけスケアード・ストレートに見ても触れてはならぬ
219 仲のよい家族というには淋しいが五人が五人せきをしている
220 体温計で計ってほどなくまた計る熱はそんなに下がりはしない
221 見てはいけないものではないがペンネーム奈木朝子さんの本名がある
222 前のめりの『現代語短歌ガイダンス』むかい風だが今にみていろ
223 『現代語短歌ガイダンス』はつぎはぎを「みにくいアヒルの子」と定義する
224 おこそとのえけせてねへめうくすつぬ快刀乱麻を断つ現代語
225 指折れば歌となる怪 指折れば歌となる快 指折っている
226 咳ひとつふたつみつよつ冬の夜のホットレモネードを手に包み
227 かぜの音(と)のとおい忍びの術の名のような風鈴梅擬さく
228 蝶はチョウ蝶々はチョウチョときにしてウのある蝶々も飛んで春です
229 還暦を祝われているいわわれていわれて心の「わ」が乱れます
230 漫才のミヤコ蝶々京唄子かたやくんどくかたやおんどく
231 苺よりつぶつぶつぶとしてめだつこのランジェリーいやラズベリー
232 らぬき不可たぬきはぬき可てぬき不可しぬき頑張れ オーエス!
233 この世では星になれないぼくたちに光をかえす冬の夜空だ
234 生きるとか死ぬとかどうとか物騒な話きこえる囲碁の番組
235 生まれ生まれ生のはじめのあかるくてその勢いは炭酸の泡
236 紙が薄いおまえの髪がうすいのだ神の声かと聞く空の耳
237 だんじりについてはぐれて泣いていたとおいむかしだ 夕焼けの橋
238 夕焼けのこの一帯を占拠して無頼のカラスの声が大きい
239 アーアーとあちらで啼けばこちらでも啼き ため息でないのが烏
240 ふるゆきの白紙にたびたすきして大筆ふるう書道パフォーマンス
241 批評にも雨がザーザー雪しんしん犬ワンワンのものいいがある
242 蕎麦でなくそば粉もらってきたといいソバ打つ役を仰せつかった
243 定年後の趣味で人気があると聞くソバ打っている打たされている
244 箸よりもペンよりも重いソバこねてまるめて打った手首が痛い
245 ハンガーに揺れるカッター ハンガーで巣作りをするハシブトガラス
246 積雪に立ち小便のおじさんが身をふるわせてチャックを上げる
247 小便器に横一列だターゲット案内マークをはずすなよゆめ
248 飛び散った床の小便ふいている獅子身中に飼う老いの虫
249 男なら立って小便いさましくいっておられるそのうちが花
250 血管がほそいみえないわたくしの腕と格闘中の看護師
251 また刺して血は出てこないまた抜いていつもの人に助けもとめた
252 薬剤師のはたらくところいま押したストップウォッチで計られている
253 それはまあ時間もかかるスーパーのレジ袋のような薬持つ人
254 忘れ物はないか不安がまたよぎり実施要領をたしかめている
255 女って、とはいわないがうしろではなく横にきて待っている人
256 あゆもどきかまきりもどきうめもどきもどきと呼ばれる側の迷惑
257 雁も鳩も食わねば知れぬ雁も鳩も食われたのだろう その頃の日本
258 パブロフの犬か 金魚の絵をみれば涼しくなった真夏日の今日
259 後ろ見ぬ横見ぬしんろへんこうは困ったものだ歩行者ながら
260 女の子おばちゃんチャリンコ横切って私は透明人間らしい
261 口ずさむ青い山脈 おじさんもおばさんも漕ぐ電動自転車
262 七歳の正月だった胸やけは初めて買ったチョコレート食べ
263 七十路の前後もまじる理髪師に刈られてへいわな大衆理容
264 おおかたが還暦以後の職員で今日も元気だ勤労会館
265 よくやったものだ 学生とはいえど下駄で通った阪急京阪
266 キッチンもバスも機械が喋りますそれでも雨漏りはやまない
267 こういえばよかったああいえばよかった窓口に腹たててきて
268 悪貨ハ良貨ヲ駆逐スルトイウ例エバムスコ妻ニソックリ
269 シナという言葉が今も生きている東シナ海 渡辺はま子の夜だ
270 地球儀を回しておればナイジェリア止まった所がはいアルジェリア
271 拗ねているきみのようだよ扇風機あっちを向いたまま止まってる
272 青春の太田雄貴だマスクしてスイッチ・オンを待つ扇風機
273 右足を抜いて左の足抜いてあしはぬけたが靴が残った
274 「旧」とあり反古かと思い思いして分かった歴史的仮名遣い
275 ゆるキャラのくまモンバリィさんにしこくん夏は熱中症にご用心
276 濁点と半濁点が見づらくて「ペニスに死す」否「ベニスに死す」だ
277 あの人は今 の感じで見とれてるテレビショッピングのスターたち
278 またも咬む意味を含めて「誇らざるべからざるものに非ず」云々
279 ハーメルンの笛吹男についていくおざわちるどれんそもひげおとこ
280 国民といわれたくない国民と呼ばれたくない 鳩山や小沢に
281 ストレスのたまっていく日々 鳩山や小沢の顔がまたあらわれて
282 亡霊のたなかまきこがあらわれてぺちゃくちゃぺちゃくちゃよく喋ります
283 新聞の広告 電車の中吊りの週刊文春またヒットした
284 街宣をいろどる秋は「生活」がゆき「幸福実現党」がゆき
285 幸福の科学の若い人がゆく墓参に帰った吉野川市だ
286 国民の生活もいいが国後は択捉は竹島は尖閣諸島、どうする
287 割腹もしないバッジも外さないなどゆきしもと、はとやまゆきお
288 東大を出ていてもアホ 東大を出ていてもバカ 鳩時計です
289 放射能がこわくて国さもどらないへたれが汚していく反原発を
290 口あけて笑っていても笑わない顔に見えます小沢一郎
291 うんざりとする政局と政局のはざまにしのびよるクーデター
292 右の手の甲に大きな老人性色素斑ある 老人なのだ
293 蒙古斑母斑雀斑老人斑あとは見ることのできない屍斑
294 頭から入っていくのか足からか遺体となったあとは知らない
295 順当にいけば関西あたまから入れてもらってゆく火葬場
296 ゆく首もくる首もまた節電のクールバンダナネッククーラー
297 女性用下着売り場に用のない私はエスカレーターに立つ人
298 ショッピングモールの「思い出横丁」の駄菓子屋さんをのぞく楽しみ
299 この店と駅をはさんだショッピングセンターにもある駄菓子屋さん
300 大阪城ホールが遠い 延々と昔はかっこよかった兄さん
301 ライブ「君と歩いた青春」埋め尽くす昔はかっこよかった姉さん
302 九〇〇〇の客席 一万八〇〇〇の拍手の底の南こうせつ
303 大正の御代の東京駅が建ちレトロの波に沈むニッポン
304 偽キティ偽ガンダム偽ドラえもんいきつくはては尖閣諸島
305 讃岐うどんクレヨンしんちゃん指折れば指折るほどに尖閣諸島
306 文字化けのメールのようで分からない愛国無罪釣魚諸島
307 恫喝の国連演説 品下るしなくだる中華人民共和国
番号 作品(平成25年)
308 近代に生まれた詩歌語「おおちち」をたどれば見えてくる時代相
309 近代が作った詩歌語「おおはは」に託したおそらく富国強兵
310 おおちちと呼べば威厳が増すようにおおじがはねるカイゼルの髭
311 おおははとなれば威厳を保たねばならぬ正座の足がしびれる
312 「文法上許容すべき事項」はおおちちの御代の文語のほころびの嵩
313 文語派の鳧のつかない「楽しかり」「騒がしかり」も哀しかりけり
314 古代語と今のことばの優劣を俎上にのせているナンセンス!
315 聴診器あてられながら満足の血圧血糖値にくちもとゆるむ
316 カタコトの古代語を金科玉条に今を漂流する歌人たち
317 ガムや噛み煙草をかんで唾をはくMLBのベンチが映る
318 落合はひとつところで出合うことサハリン州ならドリンスク
319 ホームにも車内を見ても傘をもつひとひとりない 傘もっている
320 鮨ネタのさかなが苦手とりわけて脂がのっているハマチなど
321 マグロたべサーモン避けてコーナーを回ってやってくる海老を待つ
322 食肉目は肉を餌とするまた人に獲られて肉を食べられる謂い
323 何不自由ない人たちが選りに選って文語文法で詩を作る意味
324 かたちばかりの墓掃除して墓拝み母より先に家へと帰る
325 缶ビールその空き缶で埋まってた話は仙波龍英の死後
326 ヨイトマケの唄がよかった階下へと下りていったら紅白の話
327 うつくしかった丸山明宏おもうとき世の理不尽は神が創った
328 テレビよりきこえる鐘に近隣の鐘もなりだし二百十六
329 初日の出を拝む登山家などおもいパソコン打っている同時刻
330 元日のB1Fのゆたかさもひとりとなればきっとさみしい
331 たこあげをしない百人一首しない餅をチンする六十二歳翁
332 わたくしが滅べばいないわたくしのそのわたくしをおもう夜の空
333 転生のもしあるとして草ならば牛に食べられ馬に食べられ
334 いつだって弱肉強食その弱のわたしは椅子取りゲームに弱い
335 バーバーに洗髪されるこの中にわたしを支配する脳がある
336 脳という宇宙を保存するという東京大学、とある硝子壜
337 歴代の首相の頭ふさふさとした髪の毛にまもられている
338 転生のもしあるとしてサバンナの肉食獣ならば因果な
339 転生のひとつみずとりみずうみに映ったワニの口が大きい
340 朝ごはん昼ごはんまた夜ごはんむかしは晩ごはんと言った
341 こちらからわたし的にはあちらからもわたし的では話にならない
342 文頭の「なので」が又も又も出るなのでテレビのチャンネル変えた
343 晩酌のたびのうたたねせきこみてあわや江利チエミとかさなるところ
344 へんとうせんへんとうできへんめいっぱい扁桃腺を診られています
345 姫昔蓬の異名は御一新草いわれをながく聞く線路沿い
346 廃線のその後おもえばおもいだす帰化植物の黄のアワダチソウ
347 呪文にはいぬいねうしとらまたしても鎖つけない犬の飼い主
348 こんなときはイフタフ・ヤー・シムシムといわずに軽く指を触れます
349 印結び休息万命急急如律令(くそくまんみようきゆうきゆうによりつりよう) やがて鎮まるクシャミとおもえ
350 鼬鳴くときは火の難あるといういたちみめよしいたちみめよし
351 幣を振りじゃじゃぼじゃぼじゃを繰り返すうちに普通でなくなってきた
352 呪いがきいたしるしに泣きやんだちちんぷいぷいごよのおたから
353 渚にて。福島原発四号機の建屋のうえのまっさおな空
354 渚にて。美浜にもんじゅふげんその向こうが敦賀、半島の春
355 渚にて。直線距離なら八〇キロのわが家と大飯原発の春
356 渚にて。チェルノブイリを日本では起こらない事故と見ていた記憶
357 渚にて。チェリャビンスクの隕石はたまたまロシアの空を破った
358 渚にて。ホモサピエンス以前ならユカタン半島に墜ちた隕石
359 渚にて。北朝鮮が三度目の核…テロップが流れています
360 通りゃんせここは踏み絵を踏むようで左に立ちますエスカレーター
361 死後というまっくらがりのその先の光が生者の国なら怖い
362 一票の格差 とうぜんのような気になるこの行列はトイレのための
363 いま何かあればエスカレーターに人群れ圧死する地下の街
364 仏さんの知らないことだ霊柩車に運ぶ柩にマニュアルがある
365 犬の糞もお持ち帰りで飼い主が立ちしょんべんをする余地はない
366 粛々と粛々としてしまいにはどこもかしこもじゅくじゅくである
367 のぞみより下りればエスカレーターに立つ当然のように右側
368 YouTube 森田童子が唄うその一人称の「ぼく」が好きです
369 YouTube 克美しげるが刑に服す以前の音源「さすらい」を聞く
370 YouTube あがた森魚の年を経ておっさんがおの赤色エレジー
371 YouTube 三善英史が十代の声は奇跡のように「雨」です
372 どこかで見た悪役の顔その顔が尾藤イサオと気づく終盤
373 引退は十九歳 「女学生」の安達明をいまごろ知った
374 かっこいい尾崎豊は聴くこともなかった オッサンまで生きよ
375 そういえば田代まさしは? リビングに流れる鈴木雅之の曲
376 自分かてわろてたやんかおとぎ話によくみる隣の爺のようだと
377 サングラスに帽子、立体マスクして自分が自分にもどるプロセス
378 自分より自分の方がよくしゃべりよく飲む三十年をへだてて
379 自分でも自分のことが分からない還暦すぎた年の取り方
380 威勢のいい言葉いきかう歌会の隅にしらけていた頃のこと
381 歌会という病、このフレーズの続きは鏡と相談をして
382 たなばたのように出かける歌会の披講が綾小路流です
383 兵庫県歌人クラブの会員の平均年齢七十五歳
384 フェスティバルホールも近い梅蘭で叱られながら呑む紹興酒
385 赤い顔してても平気フェスティバルホールの二階にあるビアホール
386 フェスティバルホールに揺れるペンライトのうしろで平原綾香を聞いた
387 トイレへと中座するならすみません手でチョンチョンは中程の席
388 連れ合いが用意してきたペンライト手にしてみたが波にのれない
389 働けというアドバイス、ぶきっちょは本書くだけがライフステージ
390 「虎は死して」笑えば真顔「無一文の親をよろこぶ子がどこにおる」
391 ボックスの売り場に並び宝くじ十枚を買う美田に変われ
392 カメラマンのきっと好みだニュースには職場へ朝を早歩く人
393 田に水をいれたばかりの夜にしておかえり蛙たちの合唱
394 丸にはと切っても切れぬ思い出はアンダースローの秋山登
395 みたかった見てみたかった左足あげて魔球はピンクのサウスポー
396 遠足のわいわいがやがやに乗り合わせてしまったJR宝塚線
397 おおくにぬしのみことのような学生のスポーツバッグが通路を占める
398 外からは赤いポストも内にいりゃよしだしょういんはしもとさない
399 かごにのるたいろうのいいはさておきて護衛の武士やその家族たち
400 綱渡りのような人生そろそろとそろそろときてここまでは無事
401 うまれるをうまれおちるということのニュースに今日はシリア国民
402 遺体遺棄行方不明と未解決事件の累積していく日本
403 フクシマの事故がたとえば引き金となって滅んでゆくかも知れぬ
404 こんなものでない松坂大輔が見たくてMLBの中継をみる
405 くりかえし見られるだろう「マー君」の投げて投げて投げての姿
406 父もその親も若死にわたくしの老後を計るものがたりない
407 いま母が読んでいるのは二冊目の矢作直樹著『人は死なない』
408 髭を剃ったらいかかでしょうかセクハラを見て見ぬふりのコメンテーター
409 視聴率のためなら局も女子アナのお尻をみのに提供します
410 女の子のお尻が好きでなでながらもっともらしいことをいいます
411 吊革を両手でかたくにぎりしめ自己防衛をするお父さん
412 問題は次男ではないセクハラのみのに触れないテレビ媒体
413 長いものに巻かれて沈んでいきなさいへたれの太田光らん男
414 見たままを見たままいえる芸人の岡村隆史は男でござる
415 とかなんとかぼやいていたら初孫が生まれてお爺ちゃんになった
番号 作品(平成26年)
416 鼻毛用鋏ではなの毛を切れば秋の大気にくしゃみ先生
417 漱石で読んだ記憶のこだわりのあたってほしい床屋の親仁
418 道草は食ったことないバーバーにおもえば人生こそがみちくさ
419 喉元を人に任せて目をつむる人のよい人人を信じて
420 その気にさえなれば血を噴くバーバーの頸動脈が並ぶ日曜
421 さいわいに聞いたことない理容師が客ののどくび掻っ切ったこと
422 お疲れ様でしたとお疲れでないのに刷毛で払われて立つ
423 二千円出してお釣りは四百円仕方もないかこのそり残
424 渡辺のつながるジャパンナレッジはなくてならない片腕の辞書
425 さびしくてまたわびしくて人生は菱をたっぷりばらまいたよう
426 三水のあるが港で三水のないのが巷 よくまちがえる
427 勾配のきつい劇場、三階は安全ベルトをとりつけてくれ
428 新世界の二度漬け禁止の串カツはうまいだろうと見ているテレビ
429 右の手に後遺症のこりそれからは生原稿というものがない
430 マンションの耐震強度で揺れたあの擬装が遠い昔のようだ
431 修正後の写真を飾る妻にしてこれも擬装と呼ぶことにする
432 太閤にゆかりの有馬の金の湯に首がいくつか収まっている
433 しんぞうのことなどけいかかんさつのかんばらゆづきがすまほにわらう
434 ソファで寝ることは非常のときとして布団にもぐるとりのなくころ
435 六十二歳以後は書斎で寝起きする自称「作家」の爺さんである
436 賞味期限切れ直前の商品をどさっとくれる どさっともらう
437 うるち米やもちごめもある草餅を選べば上新粉がお気に入り
438 七十年前後を時の人だった徳田虎雄のいきつくところ
439 金がからめば汚くみえる金があればなおさらの大病院うつる
440 パソコンを切って眼鏡の蔓に手をのばせば蔓がない裸眼です
441 メガネ外してメガネの残る感覚が私を眼鏡猿にするのだ
442 一太郎の仕事は早いあさめしのまえに十人をはりつけにした
443 水流すトイレの音が落ちてくる一階で用をたしているとき
444 いっぽんのゆびが家出をしたようにからです 五本指の靴下
445 親指のとなりはとなりさりながら人を指してはならぬ第二趾
446 第三趾などといわれて人でないような私だしっぽがうつる
447 第四趾などといわれて犬になる熊になるドラゴンならもっといい
448 第五趾よ犬の太郎がくんくんと鼻を鳴らせて嗅ぐ化けの皮
449 きゅうくつなにほんのいっぽん定位置にもどして五本指のソックス
450 幸せは爺さんいない婆さんもいない「おはなしゆびさん」の唄
451 布団への未練があればパジャマきてキーをうちこむ 冬の未明を
452 中国産の葱を九条葱にして食べさす嘘は天下一品
453 フライパンの中華思想のようなものふくらんでくるこげついてくる
454 遅れてきた帝国主義の結末はだれもしらない占ってくれ
455  「芸人」は略語のような響きもつ調べてみてもやっぱり芸人
456  ピン芸人は業界用語の響きもつ境目のない非業界との 
457  ガターへは落ちずに残った一本のピンを狙ってころがるボウル 
458  話題にもならないしない芸域も「お笑い芸人」というボーダレス
459  芸人もピンもお笑い芸人もどこかかろからしめるニュアンス  
460  八木節や津軽じょんがら節を生む新保広大寺は寺でない 
461  浪曲師広沢虎三 本名にもどれば山田信一という
462  卓袱台にテレビ 家族というときの原風景としての昭和だ  
463  父親の卓袱台返し拾うのは茶碗にご飯その他少々
464  サイレンを鳴らして橋の下こえる救急車 時を追いかけている 
465  マスクして息がくるしいその上に口のニオイのこもる春先
466  大きくて厚めのマスクが目立ちます口裂け女ではなかろうが  
467  花粉症の眼鏡をすれば服を着て水の中いくような感覚 
468  桜咲く土手のゆききのあらかたはマスクしている犬を除いて
469  ぴかぴかの一年生が校門をくぐる頃ですタイガーマスク 
470  風さそう桜田門の外に散る井伊大老享年四十四歳
471  直弼の死と前後して老中の久世(くぜ)広周(ひろちか)享年四十五歳
472  濁音か半濁音かパソコンのカタカナに目を近づけている  
473  ビニールの封筒部分と糊づけの宛名部分を切り分けている
474  差出人も宛名も個人情報とおもえば切っている ごみのため  
475  分別のどれに該当するのだか分からずふえてゆくごみの山
476  風ふけばマリリン・モンローまだガキでまだこれからの昭和であった 
477  鍔広の帽子に白いワンピースふりむかないでなよたけの人 
478  目のやり場に困ることない車内には吊り広告の週刊誌ある
479  スタンダード・ツールはいかが日常語みそじひともじのみの自分史  
480  どうみてもカメラ目線だ柚月ちゃんの動画を囲む爺婆(じじばば)曾祖母(ひばば) 
481  三人はガラケーながら待ち受けの画面にきゃぴかの神原柚月 
482  同宿の義父が小便したあとのトイレでまずは床を拭いてた
483  便座より頭を下げて自らの小便拭いているこのごろは 
484  学生の頃のあなたが夢にきてなかよさそうにわらって 覚めた
485  シャケ弁がマス弁になったってその逆でないことが大切  
486  ふなっしーのようにぴょこぴょこ忙しい孫の両脇ささえてみれば
487  人相の悪い息子に抱かれても泣かない 孫は爺さんに泣く 
488  あおむけからうつぶせになりその逆を見たのは幸運の一ついや二度 
489  一八〇度旋回をした後ろへと移動はじめた 前進がない 
490  腰上げて腕立ての姿勢 母さんの実家で見せる成果だこれは 
491  三階へも聞こえてきます柚ちゃんがまえあし立てて咆える 喃語が 
492  機嫌とるてくだあしくだ爺さんの高い高いでごまかしている
493  発表会の楽屋に八十六歳がおんぶひもしてみる柚月ちゃん  
494  さみしさはマウスうごかす手の甲の老人斑に目がとまるとき 
495  山田美妙の写真をみればいかにもと頷いている名は武太郎 
496  白髯の翁おもわす号にして美妙斎の死は四十三歳 
497  『みだれ髪』は鳳晶子あらためておもえばすごいうたを並べた 
498  ネットでの「晶子とバナナ」伝説に欠けているのは出典である 
499  「思草序」にある依田百川は依田学海、辞書で知る名だ 
500  「おもひ艸の序」の源高湛は辞書に載らない鴎外である 
501  「佐佐木君歌集題詞」の寧斎は殺人事件の被害者、だった 
502  けものへんの獏ではなくてさんずいの鈴木漠氏のシールを正す
503  のおんびり行こ、おうよお♪ガス欠の車を押してゆくふたりづれ
504  ダンダンディラシュビラリン♪青春の遠い花火をおもうこの頃
505  年がいけば年がいったでファーブルのように虫眼鏡もて本を読む
506  都議会の録画みているセクハラの野次のセクハラ親父みるため  
507  ヤジが議会の華ならみせてほしいものけんかとかじに江戸の野次馬 
508  小学校や中学校にはなくて高校にある「等」の一文字
509  翻刻本までが出ている『貞柳伝』ならば書きたい全釈のこと  
510  人生も回顧録です フィットネスクラブで泳いでいた健康体
511  これもまた熱中症とおもいつつウェットティッシュで拭く窓の枠
512  下からは見えないけれど真っ黒なウェットティッシュはよろこびである  
513  若くない体に汗はふきだしてころばぬ先に脚立を下りる 
514  ウェットティッシュにはまっていますちょいと拭き白いままでは捨てられない 
515  「麦畑でねじ伏せた女」そこだけが記憶にふとる『鳴門秘帖』は
516  熱帯夜ゆめのなかより抜けてきてひといきついた雑兵である
517  ペンネームは個別変換が基本です奈良の奈に木で「奈木」さんと入力 
518  天草に帰った元同僚と加茂氏と野々村氏と川西市 
519  元総務部長は関大卒にして加茂氏も野々村氏も同窓生 
520  むかしむかし加茂氏の家に遊んだ日 県会議員の父親もいた 
521  雉のいる畑がみえる 長男の責任とった天草だより 
522  眉はこく目元ぱっちり鼻筋の通ったからづか「おお宝塚」
523  狭うても家は十分 広ければ雨漏り受けるものがたりない 
524  折りたたみ傘の面倒くさいこと袋とかさの柄があわない  
525  読みにくかった記憶しかないサイン会に長蛇の列の村上春樹 
526  広告の伏せ字は「誤報」に「売国」と知る 朝日新聞もオワタ
527  ちちのみのちちの代よりとっていた朝日新聞 うらみは深い  
528  ちちのみのちちの代より飲んでいたキリンビール いま発泡酒 
529  慎重に生きてきました石橋をたたいてたたいて割ってしもうた
530  せめてもの救いといえばすでに本は処分してない 吉田清治の  
531  『お家さん』の本社焼き討ち あれもまた大阪朝日の捏造により
532  朝日新聞あらため夕日新聞のテレビ番組欄をひろげて  
533  爪を切りながら思うに生活と切っても切れないテレビ番組 
番号   作品(平成27年)
534  サントリーが咲かせたというあさがおの黄の花 きのはな 江戸の朝顔 
535  一八一七年に出版の『阿さ家宝叢』に残る黄の花 
536  ネット公開されて見ている 印刷可 江戸の『朝顔三十六花撰』 
537  幕末の『三都一朝』 心配もせずにめくれるデジタルコレクション 
538  古文書の文字はあらかた読めないが図譜に読み解く 江戸の熱気を 
539  歳時記は秋 旧暦は江戸の世をつたはいのぼる紺の朝顔 
540  新暦の夏の絵日記 蝉の声 ラジオ体操 紺の朝顔 
541  朝顔に黄の花は咲くみんぞくもくにもかみさえあらそいの地球(テラ) 
542  百獣の王のたてがみ 番外のホモ・サピエンス 王子動物園 
543  生きている夫れさえ第一画にノの字を置けば生を失う
544  週刊誌はネガティブにして日本の不幸を望むように甘美だ  
545  足が地につかない不安 海ならば魔物に足をつかまれそうな
546  足を引っ張る妖怪ならば中吊りの広告よろこぶわたくしが飼う  
547  感慨を深からしめてひはかいけんさかぶしきがいしゃのドミノ 
548  されば神戸国際会館三階の手すりの下に打ち寄せる波 
549  三階の下からおいでおいでするさそいにのらず席をはなれた 
550  パソコンのキーを押し押し原稿はプリントアウトして書き上げた
551  メイドインチャイナの万年筆がまた安くて書きやすかったあの頃 
552  筆不精とはいいながらその筆を使ったことがない不精者 
553  執筆の筆はもちろん鉛筆も使わぬ自称「執筆業です」  
554  ことのははちるちるみちるみなさんの筆記用具というときの「筆」
555  黒板がホワイトボードになるように簡単でない筆記具の「筆」
556  筆名はペンネーム、言い換えの筆草に土筆の筆が残った   
557  言い換えは困難にして筆跡も末筆ながら書き添えておく 
558  阪神淡路大震災は聞くだけで知らない 脳内出血のため
559  新聞の大きな文字が見えながら読めない 四十三歳だった  
560  震災は三日後であるわたくしをのせて大阪へ走るサイレン 
561  ところてんのおしだされゆくその先のこの世は自爆テロのテロップ
562  ところてんのおしだされゆくその先のあの世は銀河鉄道の夜  
563  天明の狂歌というはかなかなとかなかなかなとひぐらしの森 
564  節松嫁々は亭主の不始末の尻ぬぐいする嬶と思った
565  節松嫁々は亭主の帰る夜を臥し待つ 古い妻女であった  
566  天明の狂歌人の名はおのずから歌の世界を書き割りにした 
567  コストコをスットコといえばどっこいと返されている春の一日
568  黒々と毛のあるあたまかきむしり雲脂をとばした詰襟のころ  
569  五本指の靴下ながらレディスゆえネールアートのようなおもむき 
570  じょんじょろりじょんじょろじょろの快感はおねしょではない暁の夢 
571  ブルガリアのむよーぐるとはバリウムに似て四八〇グラム
572  裁判員裁判があけた風穴をはってふさいで修理する国 
573  判例を盾にとるなら裁判員裁判という市民の迷惑 
574  能動と受動の二種が自殺にはあって殺人犯なら後のくみ  
575  永山基準に関心はない殺された四人おもえば四度の死刑
576  宅間守に関心はない未来への道とざされた八人の生  
577  殺人は鏡のなかの人権をたたきわることすなわち自殺 
578  初めてのパワーポイント初めての高校生だワークショップも
579  グラウンドをラガーは走る遠景に海が見えます神戸高校  
580  一人称の「われ」の短歌も二人称「われ」の方言も絶滅危惧種 
581  板書する短歌の二行目、四句からまたしても数段落とす悪癖 
582  旧制のかつ名門のおもかげは正面玄関を含む保存棟 
583  高校のトイレに立てばとなりより勢いのある小便の音 
584  タクシーの往路 復路は徒歩ながら海が見えます 桜ちらほら 
585  孫でない子供でもない年頃にまじりて神戸高校の坂 
586  知りたければネットいちばん新聞が旧聞となって配られる頃 
587  チェックアウトするときにして靴べらがみえたが遅い 指を使った 
588  オノマトペと似る効果音「ザザーンザ」と波音つくる砂を使って 
589  時代遅れの匂いをさせるアル中の高田渡はフォークシンガー 
590  ぼくよりも若い 五十六の高田渡のさいごのライブ 
591  夜発って朝に着きます爺さんの知らないサービスエリア 煌々 
592  四世代を乗せて走れば三列目の爺さん婆さんまた大婆さん 
593  時速百二十キロちょいのワンボックスカーに揺られる右へ左へ 
594  ロヒンギャを初めて知ったはこぶねとならない漂流難民の舟
595  スクランブル交差点ゆくひとの手のスマホ手の手の ドローンが撮す 
596  「咎なくて死す」被害者を大写すニュースは精神鑑定をいう  
597  加害者の人権よりもまずもって結果責任、現場が映る 
598  被害者のおなかにいた児 殺人の対象外にしてはならない 
599  墓じまいする墓であるあたらしく建つ墓である寺もこもごも 
600  「この界に二度と用なし秋の風」たのむとすればあの世 無外坊
601  囲炉裏火はゆるりびのことゆるりゆるり日本昔話はじまる  
602  貞柳の父が名のった山城は生地ではない山城の大掾
603  隠岐の国を知らない隠岐守がいて隠岐は天領なみのせきもり  
604  ただたんに日向守ではわからない佐藤さん鈴木さんほどではないが 
605  都道府県の五倍にのぼる藩主いてときに引っ越しを余儀なくされた 
606  松平直矩五度の大移動♪こんにちはこんにちはさくらの国で
607  かんにんぶくろの口をあけたとて赤穂のとのさま鳥羽のとのさま  
608  偉くなったら偉くなったでときとして殉死で終える人生もある 
609  つなよしのくろまくせつも 大老の堀田正俊江戸城中横死 
610  ゴミ屋敷のニュースを見つつ妻おもい息子をおもい ひとごとでない 
611  ゴミ屋敷住人として玄関を出てくる あれはぼくの奥さん 
612  ゴミ屋敷住人として玄関を出てくる だれに似たどら息子
613  会いたくはなかった そんな顔をして娘立ってる横断歩道
614  三階の廊下かたづけベランダに晴れがましくも布団を干した   
615  ゴミ屋敷認定証を貼っている物干し竿のわきの家財に 
616  どら息子が部屋をあければ貼ってある「断捨離」これが目に入らぬか
617  「断捨離」と壁に貼ったが今日もまだはがされてない 妻の寝室  
618  中国やロシアに負けたわけでないせみしぐれふる八月十五日 
619  一葉亭 佐倉杏子のたせつこんにとしがいもなくみとれています 
620  YouTubeの録音さなかけたたましくサイレン走る真夜の県道 
621  やりなおしすれば蛙の合唱をとらえてYouTubeにぎやか 
622  音声の創作ツール「ONE(オネ)」をして歌わせてみた遠い日のこと 
623  拡張子WABへとたどりつくまでの経緯さておき耳をすました 
624  さとうささらすずきつづみとタカハシにONEで朗読会はじめます 
625  ボイスロイド以前にボーカロイドたち、もしも作曲さえできたなら 
626  起きている私を夢の世界から呼び出すところケータイを手に 
627  とてつもなく大きなホチキスくちをあけ私をカシャンカシャン 夢地獄 
628  辻褄の合わない夢だその夢を見ているほかにないかなしばり 
番号  作品(平成28年) 
629  180度くちをひらいたひとくいの鮫がちかづきフェードアウト ゆめ 
630  しあわせの二者択一を迫るなら妻より先に死ぬということ 
631  無縁墓も思い出すのだんせんこうのけむりのしたに手を合わす人 
632  おふくろの声がきこえてノックする音がきこえて夢はきれぎれ 
633  出てこないあれやこれやのうせものが出てくる出てくるその夜の夢に
634  川に鰐 丘にライオン それよりも危険な人として歯をみがく  
635  むかしながらのポストひらいて郵便をあつめるところ 晩秋の候
636  信号が変わればスイッチバックする一七六号線 青い空  
637  マッチ擦ればたちまち消えてマッチ擦ればたちまち消えて風の霊園 
638  火の玉がひをかしましょかれいえんに一つとびかい二つとびかい 
639  火の玉はみせものになる捕虫網で追って 追って底なしの沼 
640  みじかびのきゃぷりきとれば愛用の万年筆は「英雄」だった
641  みじかびの影ながくしてこのごろの中国きらいはっぱふみふみ 
642  此の世とは病の草紙餓鬼草紙化け物草紙地獄草紙だ  
643  宝くじにあたったことはないけれどあたったような今までの無事 
644  ネクタイを締めた化け物握手するニュースに見入る化け物家族 
645  キクラゲの食感が好き木の耳のようだというがならば断片 
646  木の耳のようになってるキクラゲの森をおもえばムンクだ わたし
647  キクラゲよかんねんをして耳にしたひめごとはかりごとを教えよ  
648  キクラゲよ海をただよいきにのぼりみたかえいえんのような星宿
649  キクラゲの歯ごたえだけはわからない海のものとも山のものとも 
650  静粛にかよう星宿 きく耳はあってもキクラゲはきくらげ  
651  傘もある柄もあるエリンギ 傘のみの椎茸 木耳は知らない 
652  ナメコまた箸を逃れて汁の中とてちてけんじゃとてちてけんじゃ 
653  プルタブを引いてまた飲む昼酒の昼寝てついのブルドッグがお
654  お構いなく主人引っ張ってゆくときのブルドッグその四肢を含めて 
655  おもしろくなってきたとき終わってたメリー喜多川解任署名 
656  キムタクが裏切ったという話ならのみこみやすい Kimono is new  
657  副社長とマッチのにくたいかんけいの噂を信じちゃ 紅白のトリ
658  降ろしたい石坂浩二の発言をカットやて あの石坂浩二の  
659  石坂にカツラのうわさそのカツラテレビで落とした小倉智昭 
660  山のつく横綱かつて十四人柏戸大鵬以後、佐田の山 
661  こんにちは! あかるくメールアドレスの確認メールが舞い込んでくる 
662  蓬莱居鶴亀長年享年は三十、辞典の中で生きてる 
663  とおりすぎるあたりでいつも吼えだせば鎖の音が意識を占める 
664  おむつまだしているゆっちゃん膝にきて至福のときをすごしています 
665  お姉ちゃんになったゆっちゃんみていたら体押しつけ赤ちゃん泣かす 
666  風をよむ風がよめないきりがくれさいぞうがのる花筏くる 
667  きさらぎの土手にさく木をみあげても梅だか桜だかわからない 
668  市民課で証明もらう妻の名の「恵子」を「惠子」に訂正された 
669  老齢厚生年金裁定請求書ポストに落とす拝礼をして
670  向こうから挨拶しない年寄りにあいさつをする年上だから  
671  年下に違いはないが母親に親切だからあたまをさげる 
672  いかさましさぎしぺてんし狂歌師の朱楽菅江はハッタリの人 
673  いかさましさぎしぺてんし狂歌師の大田南畝に三枚の舌 
674  やからとか痴れ者呼ばわりされている貞柳はそも狂歌師でない 
675  いちじんのわたしは春の風だった環状線の森ノ宮駅 
676  換気扇の下で煙草をすっていた蛍族出現以前のわたし 
677  高齢者肺炎球菌ワクチンの予約してきた このわたくしも
678  ポストにはとみに気になる「高齢者」「老齢」春から六十五歳 
679  くずし字のこうなりああなるつづまりは蚯蚓の這ったような古文書  
680  めがいたいあたまがいたい『一本亭追福狂歌集』の翻刻 
681  完走をしてこそいえる翻刻だ『くずし字用例辞典』をひらく 
682  ページから出ているところ短くてストレスたまる栞紐です 
683  禿頭に吹き出す汗をぬぐいつつバス待つ河童の末裔として
684  ぶらさがることはできても懸垂はできない朝の公園にきて 
685  ウォーキングシューズをはいた人たちは挨拶かわす川沿いの道  
686  けなげにも砂かくところ舗装路にウンチをたれたそのあとの犬
687  選ばれた存在として「雨」をうたう三善英史の十代の声 
688  カウントダウン始まっている人生の整理整頓 ゴミカレンダー  
689  飼い主にウンチの処理を任せてる犬のすがたがひとにかさなる 
690  後ろ足を台車に乗せて飼い主のあとゆく犬の散歩風景
691  犬好きはおそらくたぶん人好きで介護も苦には とはいかないか  
692  あちらですこしこちらですこし片足をあげてはシッコをする犬がくる
693  雨降って濁る川です紫陽花は日ごとに憂いのいろを深めて 
694  駅に人待ちつつおもう加齢とはからだのせんのくずれゆくこと  
695  力道山はた豊登なつかしの父の必殺ちゃぶ台返し 
696  生意気にクソのつく子がおとなしく「はい」とこたえて階段おりる
697  スタメンを外され今日も一打席代打に立った 遠い三〇〇〇 
698  「帰ってきたヨッパライ」深夜に聴きながら重荷であった十六歳は  
699  帰ってきたウルトラマンも古希となり流星キックをなつかしむ頃
700  名詮自性はともあれあったものでない謀反に走る明智光秀  
701  東海道五十三次ゆめのよをひかりが走るこだまが走る 
702  よく知ったカメラも上に銀塩の名を得てしぶい中年のさま 
703  子が孫にお婆ちゃんちというときのおばあちゃんちにいるお爺ちゃん
704  だれかさんが忘れた帽子だれかさんが添え木に掛けたままにゆく夏  
705  ぼくですか沼狸(せんそうに勝利する)今は外来種のヌートリア 
706  ぬーとりあ顔だすたびにシャッターを押したり、土手の変なおじさん 
707  刈り取られた土手の下からのびてきて足首つかみにくるみどりの手
708  箱づめのまっかなリンゴよひとりごと聞かせておくれ遠いあの日の  
709  手すり持って階段おりる手すり持って階段のぼるいつよりのこと 
710  食べものと思ってなかった敷きづまの千切り大根、菊またバラン 
711  計算もできないわけでないだろう贈収賄の定年まぎわ 
712  よそならば夢でなかった二百勝 百八十四敗の三浦大輔 
713  ふりむけば夕陽がきれいだマウンドの十八番を松坂大輔
714  吉本の宮川大輔 師匠はといえば宮川大助花子  
715  九連続空振り三振あの夏の江夏豊は永遠である 
716  月見草をみつつ育った イチローの時代を生きて大谷を見た 
番号  作品(平成29年) 
717  口口(くちぐち)に人はものいう口口(くちくち)は接吻のことものもいえない
718  米をつく装置や水車などとある左近太郎が生きていた頃  
719  盗人が遺した?『隠語輯覧』の書誌に京都府警察部云々
720  両の手につかまえ仰ぐ雲梯の四角い空だ したにまちかわ  
721  ひとにうんていさかなに魚梯うでのないうおは泳いで河川をのぼる
722  ここからは陸ではないと舷梯のかすかに揺れているたよりなさ
723  ここからは海ではないと知っている足が急いでわたるタラップ   
724  しもつきの朝ゆくこころ自販機は防犯灯よりも明るい 
725  コンプレッションウエアの中に贅肉を押し込んでゆく霜月夜明け
726  ウエアの腕には勲章ではないがLEDのバンドがともる  
727  公園で体操すればからからと枯葉ころがる 月も見えない 
728  ライト手にする人たちもまばらにてしかしまだいる川沿いの道 
729  冬至までの日数おもえば石段をのぼるおもいよウオーキングシューズ
730  八九八―〇〇四八 火之神にもっとも深い縁を持つ町  
731  雲梯のパイプとパイプにおさまっているなんて 冬の北斗七星 
732  懸垂を一度でいいからしてみたい六十五歳また年をとる 
733  ヒヨドリは卑しめられた鳥と書くそのひよどりを枝にみている 
734  右えんえんとヘッドライトだえんえんと左はテールランプ 渋滞 
735  あさあけの早くなる頃あたたかくなる頃 土手にシューズ鳴る頃
736  それでもまだ歩く人いるあさあけに遠い時間の川沿いの道  
737  ぶらさがりあおぐほしぞらあのひからすこし動いて 北斗七星 
738  年寄りの冷や水ならぬ湯より出てミイラのように貼る湿布薬 
739  祖父谷(じじだに)と祖母谷(ばばだに)のであうところには湯が湧く 祖母谷温泉と呼ぶ 
740  自転車のペダルが重い子が乗ったあとのギヤーを低へとおとす
741  古典的名曲「霧のカレリア」を聴くときおもう白海のこと  
742  アルミ箔をめくればにおう味噌漬けの鰆をあてに今日の晩酌
743  下仁田葱をしもねたねぎと聞く耳を笑ってしもねたねぎを食ってる
744  天ぷらを食べたいこごみふきのとうたらのめ春の音がききたい   
745  プレミアムフライデーとは縁のない私もまぎれこむフライデー 
746  爆発の心配はないプルタブを引いてザ・プレミアム・モルツごくごく 
747  破産して男上げぇな敬礼が目につく差別主義者の閣下 
748  昔見た「雲に向かって起つ」逆転し今は黒幕の中心にいる 
749  たとえばよあの世のお花畑までとんで不時着せよ 綿毛ふく 
750  右足をのせて左の足のせて答はヘルスメーターの窓 
751  めを逸らすことなく日々の体重を知ってソフトランディング周辺 
752  毛刈りした羊のようだロンパースベビー服ぬがせてやれば たっくん 
753  よだれかけとは思えないたっくんのお洒落なそれはバンダナスタイ 
754  このあたりかも知れないと周辺を歩いてみるが思い出せない 
755  がまがえるかと思いきやくらがりに鴨浮いている鴨の鳴く声 
756  鶯のホーホケキョほか二、三きこえる 鳥の名は知らないが 
757  餌をやる人いて土手の斜面には黒猫 道をよこぎる茶トラ 
758  瞬膜に覆われている人たちをかき分けかき分けていた 夢の中 
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