| 目次 | 22年 | 23年 | 24年 | 25年 | 26年 | 27年 | 28年 |
| 番号 | 作品(平成22年) |
| ※ | 『草食獣 第七篇』以後(「短歌人」2010年7月号より) |
| 1 | 還暦と人呼ぶゴールのみえてきて否応もなく年寄りとなる |
| 2 | 定年後の遊び友達つくらんとわれにも声をかけてくれたり |
| 3 | 右足を組むは易しも左足を組むは難しも左足組む |
| 4 | もらいたる菊の盆栽おのずから車中のわれを暖色にする |
| 5 | 疑われるおぼえあらぬにまたしても万札もどすこの券売機 |
| 6 | 『歌よみに与ふる書』が二冊ある印をいれた一冊がない |
| 7 | 駅頭にたちどまらせるちからある民族衣装のラテン音楽 |
| 8 | ライブドア証券呑みしオリックス証券を一呑みにするマネックス |
| 9 | ビールあり日本酒もあり焼酎は芋を置かない蕎麦専門店 |
| 10 | 浴室の音声ナビの男声おもいていかぬいかぬセクハラ |
| 11 | IHクッキングヒーターの音声ガイドが料理してます |
| 12 | りんひょうとうしゃかいじんれつざいぜん猿飛佐助は印結びたり |
| 13 | 金があるかないかの違い頭が良いか悪いかの違い鳩山と俺 |
| 14 | 晩年というも後付そのときはそのときどきのそのときの生 |
| 15 | 瀬田川のみずは宇治川桂川木津川さんずいの淀川となる |
| 16 | 窓あけてみればあかあかあかあかと閉門蟄居のような夕雲 |
| 17 | 熱湯に焼き餅いれて引き上げてきな粉をかぶす簡単料理 |
| 18 | 大福は大腹の転そのころのつごう三百二十の記録 |
| 19 | 柏餅のもちはしん粉で張りのある白がショーウインドーにまぶしい |
| 20 | ゆびにもつ串がなければ完結をしない三色団子の味は |
| 21 | 粒餡入り生八つ橋のアイデアのあとはどうでもいいがぞろぞろ |
| 22 | なつかしい水羊羹は新聞紙で包んでくれた駄菓子屋の味 |
| 23 | 徳島に外郎ありてもちもちともちもちとする外様外郎 |
| 24 | ぼたもちの餡と米との相性は餅に劣るが結論である |
| 25 | といいかくいいお萩をけなしつつ一ついただく日本の味 |
| 26 | 桜餅の葉っぱも食べてよそいきのわれがおりたり茶の湯の席に |
| 27 | よきかなと書きて善哉よきかなとおもえどながく食べぬ善哉 |
| 28 | 歌にあるちまきたべたべそのあとの記憶たどれば指を折るほど |
| 29 | ちまき巻くいがらをほどき笹はずし対価すくなき団子とおもう |
| 30 | ちまき巻くいがらをほどき笹はずすそのプロセスを楽しめという |
| 31 | 気が弱くなっているのだ手のひらに食後の薬をたしかめながら |
| 32 | うまれかわることなどはないあるならば沢の流れを横渡るカニ |
| 33 | ダイエットその前その後その前にもどる可能性のあるということ |
| 34 | 箒の先でたたいてみてもこたえない毛虫は妻の足に踏ましむ |
| 35 | マンションの前の歩道はにんげんと違って進みにくそうだ 蛇 |
| 36 | 第三のビールとは何まあいいがもどきのふえた世の中である |
| 37 | 発泡酒の泡吹くコップさかなにはカニのなかまのかにかまを切る |
| 38 | グアイとは川の意 決勝ラウンドの左右にウルグアイパラグアイ |
| 39 | 神職の安藤さんの真似をして生田神社の茅の輪をくぐる |
| 40 | サーカスのライオンおもいわたくしも夏越しの祓 茅の輪をくぐる |
| 41 | 8の字に茅の輪くぐりて神殿に二礼二拍手これもひとまね |
| 42 | 冷蔵庫の氷でつくる焼酎のオンザロックは溶けやすくして |
| 43 | 買ってきた氷でつくる焼酎のオンザロックは焼酎の味 |
| 44 | 溶けやすい氷に注ぐ炭酸の玉にきずあるこのハイボール |
| 45 | あけたての炭酸水のいきおいをたのしみながらのむハイボール |
| 46 | 前をゆく小学生がふりかえりふりかえり見る付けてるように |
| 47 | 寝る段になっておもえば七夕の笹の飾りを見なかったこと |
| 48 | たよりなくおもうシャワーですます身の恥ずかしながら水虫である |
| 49 | 看護師さんにも個性があって今日の人は包帯を巻くゆびがきれいだ |
| 50 | 三階の右側 今日もマネキンの少年少女ゆかたきて待つ |
| 51 | せりあがる男波のさいご のまれゆくエスカレーターの汀線またぐ |
| 52 | マネキンのくちびる読めば少年が妹を呼ぶニュウドウグモダ |
| 53 | 廃校を照らすかいちゅうでんとうはうつしださないこわいものみたさ |
| 54 | 顔なじみの職員もいておもいだす投票事務の日の長いこと |
| 55 | 投票用紙わたす仕事は気になって何度も何度もチェックしていた |
| 56 | 受け取っていないが定額小為替は署名押印が先の窓口 |
| 57 | ハンカチでふく顔あらわれ全身があらわれ坂の多い町です |
| 58 | 足が消えパラソルのこりパラソルも見えなくなったオランダ坂に |
| 59 | 頭からあらわれる人はんたいに足から消えてゆく坂 神戸 |
| 60 | ブレザーはクーラー対策その途次があつくてあつくてあつくて暑い |
| 61 | 駅前のビルの皮膚科の先生は評判いいと妻が勧めた |
| 62 | 母かいく整形外科の先生もあそこのビルはと推奨をした |
| 63 | 聞くところによれば近所の小母さんは診てもらうのに半日待った |
| 64 | 反対する理由もなくて徒歩五分③のボタンを押すエレベーター |
| 65 | それが四月十三日で水虫との戦いは秋の陣を迎えた |
| 66 | アレルギーの娘が通い先生は人の話を聞かないという |
| 67 | 染み抜きに出かけた妻が子の説を諾い転医を勧め始めた |
| 68 | 朝夕を木酢液に浸りつつ駅前ビルの皮膚科の患者 |
| 69 | いんじゃんはじゃんけんのことかなしくも私に残る故郷である |
| 70 | 田舎の洟垂れこぞうがあつまっていんじゃんほいをしていたきおく |
| 71 | バリカンでええかいいですおもてなしの心も安い大衆理容 |
| 72 | 受け取っていないが定額小為替は署名押印が先の窓口 |
| 73 | 遣唐使の昔ならいさ役立たずの小沢訪中団とは何だった |
| 74 | ふくあんがふくあんがないあの鳩は時計の中に収監をせよ |
| 75 | 普天間の近くになぜか土地を持つあなたを政治家とは思わない |
| 76 | 粛々をまたくり返す政治家が無能にみえるこのごろの空 |
| 番号 | 作品(平成23年) |
| 77 | 親の愛は海より深い 生あればシングル・パラサイトの宿主たち |
| 78 | 親の愛は山より高い 死後もなお年金パラサイトの宿主たち |
| 79 | 妻にまた聞いているのだ吉岡が何になるのだ娘の苗字 |
| 80 | あいさつに来る婿殿にネクタイは御免こうむる旨ことづけた |
| 81 | 叔母さんのいいなりになる叔父さんが好きといわれてとほほな夕べ |
| 82 | 娘より亭主関白呼ばわりをされて違うと息巻いていた |
| 83 | 父親に対する態度がやわらかくなったと母がいい妻がいう |
| 84 | 照れくさいことだ螺旋階段のバージンロードを子と歩むこと |
| 85 | 追試験受けた高三追試験受けて大卒いまにおもえば |
| 86 | プルタブがステイオンタブ引き出しで行方不明となった缶切り |
| 87 | 缶切りを借りてあけてるぎこぎこと長期保存のきく缶詰を |
| 88 | 缶切りをまだ使ってたギザギザのギザギザハートの子守唄 |
| 89 | 自治会に出す空き缶を自治会の人より早く持っていく人 |
| 90 | セーターの袖をはみだすカッターの身に添わぬこと手を洗うとき |
| 91 | ブレザーの袖より短いカッターを引っ張って引っ張っている人の中 |
| 92 | ふりかえりふりかえり見る女の子おまけに見守り隊の立つとこ |
| 93 | 廃墟ゆく懐中電灯はもちぬしの影をみじかくしたながくした |
| 94 | 人生のあがりのような還暦のもとに十干と十二支がある |
| 95 | 破れ目のどこもない網 十干と十二支という檻に飼われて |
| 96 | あちらいきこちらいきして草を食む兎だ月の光にぬれて |
| 97 | 音ならばしんぼうと読むかのとうの一生涯のはやさみじかさ |
| 98 | 還暦の類語に老いのあることのたしかにそうだ階段おりる |
| 99 | 干支がない還暦もないヨーロッパはサンタクロースまた赤頭巾 |
| 100 | 絵に描いたような頭巾にちゃんちゃんこ赤座布団に扇子がわるい |
| 101 | 二巡目を生きるかのとうてのひらの卒塔婆にみえる十本の指 |
| 102 | 十本の指のたにまに月みえてもちつくうさぎきねもつうさぎ |
| 103 | 死において人は平等 不平等な生とあわせて辻褄があう |
| 104 | 若い日の教育ママの手をはなれ愚息、ドラムを叩く三十 |
| 105 | 呪縛から解き放たれるときがきた文語体オフ口語体オン |
| 106 | 明日からは神原麻乃 マンションの扉を閉める音が響いた |
| 107 | 今日からは帰ってこない今日からはここが娘の家になります |
| 108 | YouTubeで「娘よ」の唄を流してる五十九歳の今日のこの日は |
| 109 | 子の窓に明かりがついていないこと思えば明日も明後日もそう |
| 110 | いい天気になってよかった二人して婚姻届を出しに行く朝 |
| 111 | クリスマスツリーの電飾さながらの下ってやがて上る高速 |
| 112 | カーテンをめくって星に見とれてる大磯プリンスホテルの空だ |
| 113 | 切り傷のひとつふたつは覚悟して髭を剃ります ホテルの鏡 |
| 114 | 今年また舞台を降りていった人 喪中ハガキを手にとりながら |
| 115 | テレビ見て足がすくんだ注連縄の張り替え作業は那智の滝口 |
| 116 | 命綱もつけずに注連縄張り替える白装束は神職の人 |
| 117 | じいといいばあとよばれて孫をだく竹馬の友だ タイム・フライズ |
| 118 | グッジョブと人は親指 還暦のうさぎは月に耳を立ててる |
| 119 | 還暦の今年おもえば二人子の年を足すとき六十になる |
| 120 | 二人子の年たす年となりあとは置いてけぼりの人生である |
| 121 | 顔がいい名前またいい往年の大鵬幸喜が塩まくところ |
| 122 | ニッポンは恐竜時代だワープしてコキントウサウルスメドベージェフサウルス |
| 123 | 歯を強くみがく性格、水道のカランもかたくかたく締めます |
| 124 | 人恋しくなってくるのだ柚子の実の熟して灯るバス停にいて |
| 125 | オール三まではいかない四もあるこれが私の歯の通信簿 |
| 126 | 著者の顔知らないことが救いかと燃えるごみ出す紐でくくって |
| 127 | だだっぴろくて暗いロビーだ昼ならば患者でうまる長椅子の脚 |
| 128 | 特例の退職共済年金の請求、いよいよ還暦である |
| 129 | ふうたろうの父は色紙にして贈るあーちゃんが私になるころの歌 |
| 130 | 蕎麦でなくそば粉もらってきたといいソバ打つ役を仰せつかった |
| 131 | 定年後の趣味で人気があると聞くソバ打っている打たされている |
| 132 | 箸よりもペンよりも重いソバこねてまるめて打った手首が痛い |
| 133 | ハンガーに揺れるカッター ハンガーで巣作りをするハシブトガラス |
| 134 | 積雪に立ち小便のおじさんが身をふるわせてチャックを上げる |
| 135 | 小便器に横一列だターゲット案内マークをはずすなよゆめ |
| 136 | 飛び散った床の小便ふいている獅子身中に飼う老いの虫 |
| 137 | 男なら立って小便いさましくいっておられるそのうちが花 |
| 138 | 身をまもるロープいらない男たちが雪下ろしする雪国の屋根 |
| 139 | 死刑囚が死刑にならずに亡くなった雪降るあさま山荘事件 |
| 140 | お先にと譲ってみたがぼくよりもたくさんコピーする人である |
| 141 | 朝刊と牛乳とっておもうことサラリーマンのいない家族だ |
| 142 | 日清の焼きそば箸でつまみつつ缶ビール飲む昼の悦楽 |
| 143 | 朝の番組昼の番組露出してますます軽くみえる政治家 |
| 144 | ベランダにひいふうみいよいつむうと七草の鉢が一つ足りない |
| 145 | 楽しまない一日である親指の付け根が赤くはれて痛風 |