近世上方狂歌叢書(作品抄)by吉岡生夫

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近世上方狂歌叢書(『狂歌人名辞書』により分類)
区分 狂  名 狂             歌
細川幽斎
 玄旨
下さるる小袖のたけの長ければかたしけなさに身にそあまれる(十四、『狂歌廿日月』)
花香ある人をはお茶によはるれとこちやまた跡にのこるつほそこ(二十、『狂歌大和拾遺』)
蝙蝠軒魚丸 ひえの山にかやる煙をたとへなば富士のけふりの二十分一程(二十六、『狂歌二翁集』)
何のその酒はうれひの玉箒のみ過してははくも又よし(二十八、『狂歌よつの友』)
印篭の蒔絵きらめく秋の野やのしめにすれる萩の御家中(二十九、『狂歌浦の見わたし』)
きのふまて抱て寝たのも秋風てけふはいとまをやる竹夫人(二十九、『狂歌得手かつて』)
順風軒沖丸 きぬこしと是もいふらん豆腐屋の娘はきめよう色白にして(二十九、『狂歌かたをなみ』)
大矢員久 咲みちて方角たにもしら雲をつかむかこときみよしのの花(十六、『狂歌手毎の花 初編』)
とふも又跡やつかんと下駄のはの二のあしをふむ雪の白妙(十六、『狂歌手毎の花 初編』)
降雪に犬はかりかはよし原をうかれてかける四つ足の駕(十六、『狂歌手毎の花 初編』)
英果亭桂雄
 別号百尺楼
仕事するそはには毒な火鉢そや得てはつゐ手のあたる物から(五、『狂歌栗葉集』)
雌雄軒蟹丸
 通称芦原為斎
鳴てわたる雲井の鳫のわりなきをなと隔つらん秋の夕きり(十六、『狂歌手毎の花 二編』)
花や散と見れは梢に打むれておとろかしたる蝶のふるまひ(二十八、『狂歌蘆の角』)
轡むし油断すな草とまきそへに野飼の駒の口にかからむ(二十八、『狂歌蘆の角』)
白妙の道にやまよふつむ雪のきゆるはつねとさとる和尚も(二十八、『狂歌蘆の角』)
暇乞死出の旅路のひとりよりふたり残りし親そさひしき(二十八、『狂歌蘆の角』)
ゐさいしやうち仕候みほとけのおしへたうとき五重相伝(二十八、『狂歌蘆の角』)
玉手箱の玉は名のみよ其箱のあけてくやしきしらか親父そ(二十八、『狂歌蘆の角』)
とんふりの文字かともみつ四つ橋の中に一点うつる月かけ(二十九、『狂歌かたをなみ』)
仙秀亭嘉蘭 はりつめし氷を棹てわり声のにつちもさつちもゆかぬ川船(五、『狂歌栗葉集』)
山々はかきくもりくる夕立や長刀鉾にさつとひとふり(五、『狂歌辰の市』)
仙果亭嘉栗 心にはまかせぬものよとにかくに人間万事さいの出たらめ(四、『狂歌ならひの岡』)
近うよつて御詠の短尺結はれませ恵心僧都の御さくらて御座る(五、『狂歌辰の市』)
よみ本もはや見えわかて外題のみなかめてけりな秋の夕暮(五、『狂歌辰の市』)
蔵六庵亀洞 方丈庫裏さては座禅のむしろ迄何十棒もたゝく煤掃(五、『狂歌栗葉集』)
塵外楼清澄 子等か手にのらぬ蛍も夏のよの月にひかりはおさへられたり(十七、『狂歌手毎の花 四編』)
蛸のあし八本はかり流す木をいかだと人のいふそおかしき(十七、『狂歌手毎の花 四編』)
三角のにきり飯ともみゆるかなおはち嶺ある富士の高根は(十七、『狂歌手毎の花 四編』)
生果亭桂芽 借り傘をかやせはまたも定めなきしくれの雨に身をすほめゆく(十七、『狂歌手毎の花 四編』)
至果亭桂普 をみなへしはきのあたりを吹まくる野分は風の性わるそかし(八、『狂歌後三栗集』)
仙郷亭棗風
 如棗亭栗洞の男
うらゝかにふく音もせてあれ花のちるのや風の行衛なるらん(五、『狂歌栗葉集』)
叢に螢は光りあらはしておのかゐるところ人にしらるる(六、『狂歌板橋集』)
ああふつたる雪かなとはかり酔つふれ先へ一あし跡へ一あし(六、『狂歌板橋集』)
※棗風 やはらかいのいやこわいのといちられてああままならぬままたきの身や(十二、『狂歌今はむかし』)
逢里亭紫園 昔おもふ木々の葉武者のひをとしも冬きて落る城跡の風(七、『狂歌軒の松』)
如雲舎紫笛
 初号山果亭
うき思ひくゆるきせるのすはすはと通りかねたるらをのよの中(一、『狂歌かゝみやま』)
元日もくるるとしとはしらすして師走はかりを皆おしむなり(二十三、『狂歌ことはの道』)
三千尺高い所をなかれてもおちねはならぬ瀧の水かな(二十三、『狂歌ことはの道』)
すくなきを露ほどといいふらせども大千世界夜ごとにぞおく(二十三、『狂歌無心抄』)
あしもとにありともしらず外さがし見つけぬ人のおほい茸狩(二十三、『狂歌無心抄』)
打たたきしてもくだけぬ厚氷こいつも意地をはりつめるかや(二十三、『狂歌無心抄』)
空はれてまことにめてたうさふらひのえほしに似たる帆かけ舟かな(二十四、『狂歌水の鏡』)
荘厳も今はあれにしふる寺にたぬきはかりそきんをのへぬる(二十四、『狂歌水の鏡』)
蟹はたた横に行なりなには江のよしといふてもあしといふても(二十四、『狂歌まことの道』)
目にあまり心にあまり山にあまりあまり見事にみよしのの花(二十四、『狂歌まことの道』)
天下はれぬ春の雨とやふるおともしめやかにしてさたなしさたなし(二十四、『狂歌まことの道』)
うは玉のくらやみならてふりしきり一寸さきもしら雪の空(二十四、『狂歌まことの道』)
山口志楽 松かえに脱かけ置し羽衣はあまつ乙女の真似やする蝉(十六、『狂歌手毎の花 三編』)
楠亭繁枝 音信るる人なき庵はさしあたり巨燵にのみそ相談をする(十七、『狂歌手毎の花 四編』)
※文屋茂喬 淀川の船遊ひとて車座にくるくるとこそめくるさかつき(十四、『狂歌芦の若葉』)
荘厳もなきあき寺の春雨に珱洛めかす軒の玉水(十七、『狂歌千種園 春』)
※茂喬 人も喰ふむくひかとらの身の果は地獄へ落て鬼のふんとし(十九、『狂歌千種園 雑』)
日の本につくれとも名のからかさはみな一やうにさすあめかした(十九、『狂歌千種園 雑』)
御佛のまへにともしし蝋燭は風にまかせてはすに流るる(十九、『狂歌千種園 雑』)
唐詩選素よみの声の聞ゆれと誰とも主人相知らぬ家(十九、『狂歌千種園 雑』)
玉縁斎寿好 雪けしきさてよし原の遊女町太夫のはたにもまけぬ白さよ(二十、『狂歌雪月花』)
竹葉軒杉丸 梅か香の通ふはかりそ柴の戸はあくるもさすも春の風の手(二十六、『嬾葉夷曲集』)
玉雲斎貞右
 初混沌軒國丸
 姓雄崎氏
飛ぶ雁のつはさに文のあるならはすかしてや見ん月のこよひは(二十六、『狂歌二翁集』)
誰にかもあくひうつさん友もなしわれのみ口をあきの夕暮(二十六、『狂歌拾葉集』)
淋しさに徳利取いててふつて見れはこいつも同しくあきの夕暮(二十六、『狂歌拾葉集』)
わたし舟早うさせてふきりきりすむかふも乗人まつ虫の声(二十六、『狂歌拾葉集』)
呑こみのよいに似合す鵜飼船最上の川てかふりふるとは(二十七、『狂歌選集楽』)
かたわきへきんたまによろり殿さまも腹をかかえの角力をかしき(二十七、『狂歌選集楽』)
緋おとしのよろひゆゆしくほうらいのやまの大将と見ゆる伊勢海老(二十九、『狂歌かたをなみ』)
松永貞徳 生るるも死るも人はおなしことはらより出て野はらへそいる(二十、『狂歌大和拾遺』)
無疑庵天地根
 別号橙果亭
こは何もかへり見もせて手まりのみつくにしきりと動くかんさし(七、『狂歌一橙集』)
人とはぬやとは月星日をわきてなかうおほゆるうくいすのこゑ(七、『狂歌一橙集』)
大ゆひをまたにはさまぬにきり手のなにをかしくてわらひといふらむ(七、『狂歌一橙集』)
春の日もはやけふきりか此ころのくらしわひたる欠(あくび)はつかし(七、『狂歌一橙集』)
さみたれはたたみに足のひつつきて友かりゆかむこともものうし(七、『狂歌一橙集』)
むらせみの声打けしてひとしきりぬけるはかりの夕立の雨(七、『狂歌一橙集』)
ひきつれし牛こそ見えね秋霧のもうもうとたつ中に声あり(七、『狂歌一橙集』)
千代能かむかしおもへは桶のそこかためて月のかけをやとさむ(七、『狂歌一橙集』)
秋やまに此ころむれてつとひ来る人も紅葉のそめきならまし(七、『狂歌一橙集』)
よくもいへるあしくもいへるのひちちみ自由な舌にゆたんをなせそ(七、『狂歌一橙集』)
今よりは目かねたのまんいきほひを鼻にかけたる事もありしに(七、『狂歌一橙集』)
婚礼の夜のむつことにとこやらかさそかいそへはさそかいそえは(七、『狂歌一橙集』)
月かけの有明行燈消そとしてふつと一こゑ聞ほとときす(八、『狂歌後三栗集』)
露の玉穂さきに見えてきらつくはこれや孔雀の尾花なるらし(九、『狂歌拾遺三栗集』)
桃縁斎貞佐
 別号一十軒

 初名丸山河吉
 後芥川
山寺の枝にとりつく立すかた蛙は井出の下帯もせず(三、『狂歌千代のかけはし』)
つまみ喰ふ芋の味はひ今そしる月をかくせしうき雲の間に(三、『狂歌千代のかけはし』)
時そとて梅のはなとやなかめけん軒端の雪に猫のあし跡(二十六、『狂歌二翁集』)
永田貞也
一号四穂園
来いと待蛍は来いて呼はぬ蚊のむしくる夜さや橋詰に出て(十四、『和哥夷』)
由縁斎貞柳 足曳の山鳥の尾の長談義なかなかしきにしひりきらした(二、『狂歌手なれの鏡』)
二つよい事こそなけれ思ひいる山の奥には花のおそさよ(二十、『狂歌三津浦』)
村雨の露もまたひぬまきざつはふすほりたつる秋の夕飯(二十、『狂歌三津浦』)
千代徳若
 別号六桃園
秋の田のいなはの波のうなしほにあらへる月のしろうさきかも(十七、『狂歌手毎の花 四編』)
慶雲軒豊丸 打敷の錦と見えし秋の野のそのうらならん今朝のしら雪(二十九、『狂歌浦の見わたし』)
九如館鈍永 名月や扨見事也名月や秘蔵の植木か邪魔に成けり(十三、『興歌河内羽二重』)
名月や扨名月や名月や秘蔵の植木か邪魔に成けり(十三、『狂歌野夫鶯』)
真丸ののの字のなりに似たるのはけふのこよひの空のののさま(十三、『狂歌野夫鶯』)
手をとつて思ひ机により添ひつおしへてやらうか恋のいろはを(十三、『狂歌野夫鶯』)
馬はあれとかちおもしろき山城のこはたの里の雪の道行(二十三、『興歌牧の笛』)
自然軒鈍全 雪の日はひへるひへると申せともこちやあたたかな酒のかんかな(十五、『夷曲哥ねふつ』)
原素館初丸 爰はかり雪も積らすふすほつてひときは黒き炭焼か顔(二十六、『嬾葉夷曲集』)
北風彦丸 團屋もふけて涼しき夜店にはうりのころうと心ひやひや(十六、『狂歌手毎の花 二編』)
桂花園秀群 小原女のしはしも雲のはれやらてかしらおもけな春雨のそら(十七、『狂歌手毎の花 四編』)
※桂花園秀郡 軒の下かりにし礼をいふ口のかはかぬうちにまたもしくるる(十七、『狂歌手毎の花 四編』)
鯛亭鰭雄
 生鯛
 通称帯屋利蔵
いかつちのこともおもはす加茂川に臍まて出してすゝむ夏の夜(十六、『狂歌手毎の花 初篇』)
棗由亭負米
 若拙堂
 栗生坊
御社につはくらは巣をかけまくもかたしけなしやちりをましへて(五、『狂歌栗葉集』)
すなとりのわさはしらねと今もなをあみにかかりてうるかつをふし(五、『狂歌夜光玉』)
御馴染のはしとなりぬる商内や御やうしあらはたのみ上ます(五、『狂歌夜光玉』)
きのふ迄汗はいつみとわきの下こそくるやうな秋の初風(六、『狂歌板橋集』)
おそうくれはやうしらみて冬の日を長う覚ゆる雪のふる郷(六、『狂歌板橋集』)
栗柯亭木端
龍宮から奪ひにこねと涼しさに玉の汗をはうしなひしふね(一、『狂歌かゝみやま』)
すちかひに赤うみゆるは川のせにやいとやすゆる花火せんかう(一、『狂歌かゝみやま』)
煙てふ草のはしめは其むかしたれそ思ひのたねやまきけん(一、『狂歌かゝみやま』)
むすひぬる露ならなくにはなの上にかゝりて見ゆるめかねの白玉(一、『狂歌かゝみやま』)
万民の機嫌のよいはめくみある君かなさけをのみ込みしから(一、『狂歌かゝみやま』)
客好むはたこやなれと是斗りとまりにくるをいとふかやりひ(一、『狂歌かゝみやま』)
いかのほりしあけてみれは吹風に細工はりうりうりうりうとなる(二、『狂歌手なれの鏡』)
漬物の桶のおもしのそれならてくもちの上にすはる石いか(二、『狂歌手なれの鏡』)
さむき夜に独は寝すに居られしと炉の火もせゝりおこし社すれ(二、『狂歌手なれの鏡』)
世中はなんのへちまとおもへともふらりとなつてくらされもせす(四、『狂歌ならひの岡』)
汲み流しまたくみながし水車のつるべにうつる月ぞつきせし(十九、『興歌百人一首嵯峨辺』)
二松庵万英 川中に雲の衣や剥ぬ覧丸裸なるあま寺のつき(十、『狂歌月の影』)
洲嵜葭根 揚弓のいてそよ秋のはや立て目のあたりにそ落る桐の葉(十六、『狂歌手毎の花 三編』)
如棗亭栗洞 すつほんよおもひしるらん汁となりて今吸るるは吸ついた科(五、『狂歌夜光玉』)
若水を心おかしく祝けれ我もむかしははるの華むこ(六、『狂歌板橋集』)
影清きこよひは月の王様しやあれまろまろとおつしやるやうな(六、『狂歌板橋集』)
おとすへき鳥はのこらす宿とりてかかしはかりの秋のゆふくれ(二十五、『狂歌西都紀行』)
條果亭栗標 若やくと祝ふてむかふ面影のうつらねはこそよいかかみ餅(五、『狂歌栗葉集』)
琵琶の海はちかあたろとすむ月のうへをは船てなかめあかさん(七、『狂歌三栗集』)
   上記以外、『狂歌人名辞書』の附録「関西狂歌師人名録」「関西狂歌師」の掲載順です。
附録 雪縁斎一好 ひとり行道とはいへと来迎の菩薩をいれて二十六人(二十、『興歌帆かけ船』)
そののちはついにたよりもしら雪の白雪のとてつもる年月(二十、『興歌帆かけ船』)
肩と背にかけまくもさてかたしけな命の親とおもふ酒たる(二十、『狂歌浪花丸』)
湖月堂可吟 ぬれに行夜半の遊はうき雲の君にはあはて雨にあひます(二十三、『酔中雅興集』)
園果亭義栗 屠蘇にけさ酔つゝ同し事いふは蓬莱の山のこたまなるかや(二、『狂歌友かゝみ』)
切炭のいけ田かい道まつ黒てはつとほたるのとひ火見せけり(二、『狂歌友かゝみ』)
蟻の寄る死骸は蠅の葬礼かつついて野辺の穴へ持こむ(七、『狂歌軒の松』)
うしやかく逆さまことになろはしかとんほ返りか好てあつたは(七、『狂歌軒の松』)
大原栗翠 思ふまい思ふまいそとおもふほといとゝおもひに思ひかさなる(四、『狂歌ならひの岡』)
発果亭庭栗 老ぬれはしたいにこしのかゝみもちすはることさへ太儀なりけり(四、『狂歌ならひの岡』)
樵果亭栗圃 わかこゝろなくさめあかすなには橋きのふの花火けふの月かけ(九、『狂歌拾遺わすれ貝』)
岫雲亭華産 六十の手ならひなれと美しい君かいろはにほの字とそなる(一、『狂歌かゝみやま』)
ちよの春けふよりかそへはしめつるそのおや指やさそ嬉しかろ(一、『狂歌かゝみやま』)
おもふことおもふかまゝにしほひかたはまくりはよしくりはまはいや(三、『狂歌栗下草』)
まけうかとあたるこたつのやくらにはこちの足もと見られ社すれ(三、『狂歌栗下草』)
ねふたさにちよつと隣へ来て見れはいつくもおなし夏の昼過(三、『狂歌栗下草』)
風の手にふともゝまてもふきまくられおめこ十夜のあれいやいなあ(三、『狂歌栗下草』)
たはれ女のはたへちらちらふれる雪見るに目のとくとは思へとも(三、『狂歌栗下草』)
今さらにおもひきるにもきられうやゆひをとまてにいひもかはして(三、『狂歌栗下草』)
含果亭栗梢 心中をたてて小指を切るもありあかれてとんと手を切るもあり(四、『狂歌ならひの岡』)
夢の世のゆめの夢をも見つくして目をふさくのか寝覚なるらん(四、『狂歌ならひの岡』)
揚果亭栗毬
 瓢箪坊
南無阿弥陀いまそうき世のつるきれてみのなるはてはころりへうたむ(4、『狂歌藻塩草』)
潮干かたはまくりにしるもゝの日はをなこわさなる貝あはせかな(四、『狂歌藻塩草』)
かゝもたぬひとり巨燵の気さんしはやくらの足のさはるはかりそ(四、『狂歌藻塩草』)
ことしから貧乏神をすゝはきに払ふてとこもふくや雑巾(四、『狂歌藻塩草』)
親の顔見るやふいりの嬉しさは孝行ものと人やまうさう(四、『狂歌藻塩草』)
世中はくのたえまこそなかりけれらくにもくの字ついてはなれず(四、『狂歌藻塩草』)
世中をわすれてすます世にすめはすむかひもあり墨染の袖(四、『狂歌藻塩草』)
韓果亭栗嶝 色つやもなき老僧か煎したる茶なれは本にかひくさくあろ(六、『狂歌肘枕』)
桂果亭幽山
 一名諦栗
梅香をいつこてかこの鶯はおのかねにこそ春をしるらめ(七、『狂歌三栗集』)
早稲晩稲みなあからんて田の水のおつるや秋のゆくへなるらん(七、『狂歌三栗集』)
岸果亭東栗 空に月水の底にも月と雲そのまん中に船をうかへた(五、『狂歌栗葉集』)
峯果亭栗桴 まん丸な物しやとおもふ目にかとをたつるは玉に疵と申さん(五、『狂歌栗葉集』)
豊果亭漁産 潮干潟うら吹かへす春の風おまへのさきに貝や見ゆらん(四、『狂歌ならひの岡』)
乗鞍も今はころりと落ふれてこしかたいたくしのふ浪人(五、『狂歌栗葉集』)
宣果亭朝省 山寺の春の夕くれ見渡せは只しら雲の中てかねつく(四、『狂歌ならひの岡』)
物先亭梅烏 本山の和尚をこかす勝角力いつも末寺はした手にゐるから(五、『狂歌辰の市』)
坤井堂宵眠 引よせてみゐの古寺鐘はあれと遠めかねにて声はきこえす(一、『狂歌かかみやま』)
柏木遊泉 水かゝみうつせははもし筒井つゝいつまのにやら老にけらしな(一、『狂歌かゝみやま』)
即吟舎放過 朝な夕なとかくのみたいくひたいのおもひのけふりたゆるまそなき(二十三、『狂歌ことはの道』)
   以下は『狂歌人名辞書』に未収録及び未掲載、便宜的に分類しました。
なし 前田朝雲 関と関くみ出すはかり汗かくになと行事のみ團つかへる(九、『狂歌拾遺三栗集』)
餐霞亭雨風 長閑なる空行鳥はきれ鳳巾か跡にあらあらみゆる糸遊(十六、『狂歌手毎の花 二編』)
鮎丸 かをかをといふも商ひするさまか明かたのいちにたつ村烏(二十六、『狂歌二翁集』)
有郷 鍬の刃のさへかへりつつ春の田を返す手もとにあわ雪の降(二十九、『狂歌浦の見わたし』)
和斗有丸 難波江に数々遊ふ水鳥のみしかきあしも波にひたして(十七、『狂歌手毎の花 四編』)
泡丸 鴬か枝をこそくる長閑さにうめもにこにこ笑ひ掛つた(二十九、『狂歌浦の見わたし』)
幾丸 しつほりと旦那をとめたうおもひもの雨よふ蛙の声に猶さら(二十六、『狂歌玉雲集』)
瓢箪園一寸法師 あふ夜半の枕にかしし我腕は妹かはたへの雪の下をれ(十七、『狂歌手毎の花 四編』)
一扇 千代能の桶と違ふて河童のいたたく皿にやとる月影(十四、『和哥夷』)
不言亭一等 獏はさそうゑもやすらん人も夢を腹に入るほと見せぬ短夜(六、『狂歌板橋集』)
千柳亭糸唐麿 鬼はとくおひやりぬれとまたさむし軒につららのつのは残りて(十六、『狂歌手毎の花 三編』)
鶴啼軒犬丸 雑煮より大福よりもめてたはこちよつと祝はんとしの口あけ(二十七、『除元狂歌小集(天明四年)』)
居由 井の中へ打込やうに飛ふ蛙とんふりとよむ文字の点かも(二十六、『狂歌玉雲集』)
烏江 ちんほほとな松茸たんと生出るあちらむいてもこちらむいても(十二、『狂歌水の面』)
ちんほほとな松茸たんと生出るあちらむいてもこちらむいても(十三、『狂歌除元集』)
玉川堂渦丸 へらす口あくしやなけれとふる雨に洗ふてかへす蛇の目の傘(二十六、『嬾葉夷曲集』)
二階歌織 ゆひ折れは朔日二日三日よつかいつかはれなん五月雨の空(十六、『狂歌手毎の花 二編』)
雨亭 妻こひの猫さへ寝たか声もせぬ夜半にさかつてする色話(十八、『狂歌俤百人一首』)
馬老人君 片蚊名ノノノ字ノ形リノ浮くモノノ古野ノ小野ノ水ノ孑孑(十五、『狂歌君か側』)
薫香堂梅丸 君見なはあひそやつきん待侘て口を大きにあくひはつかし(十六、『狂歌手毎の花 二編』)
懐古亭英風 裾まくるかいとり妻に悪されも言はて口をはとつるはまくり(八、『狂歌後三栗集』)
降つみて跡さきしれぬ雪よりも道にまとはぬほとそたのしき(八、『狂歌新三栗集』)
いかはかり口上手ても一まいの舌を二まいにつかはぬかよし(八、『狂歌新三栗集』)
喜多英風 いかはかり口きく人も山蕃椒の味にはしはし舌をまくへし(九、『狂歌拾遺三栗集』)
米のわら咽をとほしておのつからはらの大きうなれる塩たら(九、『狂歌拾遺三栗集』)
岡橋枝丸 嬉しさと世話しさ餅につきませる春を隣のきねのおと月(二十七、『除元狂歌集(天明五年)』)
鳥巣軒枝丸 川水に夏はさなから流るらし風鈴の音のちんのすすしさ(二十六、『嬾葉夷曲集』)
朶丸 井出といふ名はとふ迄もなくかはつこの玉水のついそこにふれ(十四、『狂歌芦の若葉』)
来ては飲酒屋の庭のきくの名も猩々とかや申候(十八、『狂歌千種園 秋』)
高舟亭園草 風の手かいたくうたれは船の帆もふくれかへつて見ゆる海つら(七、『狂歌軒の松』)
前川淵龍 長閑さに硯の海へのり出しておもひおもひに筆をとり梶(五、『狂歌花の友』)
真実をあかして来たを心なくたゝいて見るはこちのふすいくは(五、『狂歌花の友』)
すめはふくにこれはふぐと聞ゆれはどくするもあり徳するもあり(五、『狂歌花の友』)
音近 夢をたにむすふ間もなき短夜にとけかうとなく暁の鶏(十八、『狂歌俤百人一首』)
音丸 奥山の紅葉ならねとさらさらとふみかきちらす鹿の巻筆(二十九、『狂歌浦の見わたし』)
眠龍館斧丸 ぬけからのそれかあらぬか夏なからあきや涼しき蝉のもろ声(二十六、『嬾葉夷曲集』)
たたきなかし小石ははらり出にけり星や落たとゆふ立の跡(二十六、『嬾葉夷曲集』)
圓谷花岳 なれもまた願ひありてやみやしろにいくたひはいの手はもみぬる(六、『狂歌萩の折はし』)
仙遊亭嘉橘 うふるにも跡へ跡へとしうとめに随ふよめを何とそしろ田(五、『狂歌辰の市』)
二階にてさすや象棊の争ひもおろしてくれのおろすまいのと(五、『狂歌辰の市』)
好文堂嘉光 佐保姫の今朝口紅粉をさすゆひの先かとも見ん赤玉椿は(二十七、『除元狂歌小集(天明三年)』)
鶯縁斎可考 高くらの山もかすかにきへのこる白かへかとも見へまかふ雪(二十、『狂歌雪月花』)
丹朝庵寉の頂 あしの穂の綿のやうなる白餅をつみて備ん十五夜の月(十七、『狂歌手毎の花 四編』)
笠丸 海となる俄夕立にはしる也みち行人も尻に帆かけて(二十八、『狂歌よつの友』)
野分して店のとからし散ると見ん伏見の里に飛ふ赤とんほ(二十九、『狂歌浦の見わたし』)
華遊 魚虎のそれよりもなをきらきらとおしろの月の本丸にして(三、『狂歌栗下草』)
嘉秋 影法師まて手伝ふて早苗とる日ははや西に紅井の村(十二、『狂歌水の面』)
鵝習 主の子のもて出る紙鳶の尾についた丁稚も心空にのほしつ(十七、『狂歌千種園 春』)
清水可翠 一とせは夢とくらせとかけ乞に寝言のやうなむちやもいはれす(五、『狂歌栗葉集』)
佳静 またぬれしこともあらぬを壁にかく名にかさかけて広かるそうき(十八、『狂歌俤百人一首』)
瓦全 塵ほとのくもなくてよにすむ月は丸々として夏痩もせす(十八、『狂歌俤百人一首』)
芦刈軒鎌丸 駄賃馬も神楽のさまやしやんこしやんこ尻て鈴ふり太鼓うつ也(二十九、『狂歌浦の見わたし』)
亀浦方 此花を折へからすの立札も横にねさして春そゆくなる(十六、狂歌手毎の花 三編)
鍵丸 きぬきぬに人はむすへととき捨た帯のかたちに見ゆる横雲(二十六、『狂歌二翁集』)
胡枡亭霞丸呑 しら雪の残れる山のふところは早わらひも手を出さぬ寒けさ(十六、『狂歌手毎の花 初編』)
竹内桂雄
 英果亭?
ならうなら実さへ花さへその香さへ霜おけるまてとつとこよもの(八、『狂歌後三栗集』)
夕風に吹たてられてちるほたるひるのあつさのゆくへなるらし(八、『狂歌後三栗集』)
舟の名の枯野の霜はふりしよに朽木てやきし塩かあらぬか(八、『狂歌後三栗集』)
魚といふ魚の中にも魚へんに尊き所へ上ますの魚(八、『狂歌新三栗集』)
寺西かね子 夢にさへ見てもよいとの初茄子めもさめさうなあさつけのいろ(六、『狂歌萩の折はし』)
横江嘉桃 牛若のうすきぬかともゆふ霞五条の橋にたちしけしきは(五、『狂歌辰の市』)
暁霜庵鐘也 月夜よし何よしかよし春のよの闇にもにほふ宿の梅かえ(十六、『狂歌手毎の花 初編』)
手に取て見ては音もなき鈴虫のはなせはりんと振声そする(十六、『狂歌手毎の花 初編』)
兼丸 くひ付たあふれ蚊ひつしやり叩いてもあはれのまさる秋の夕暮(二十九、『狂歌浦の見わたし』)
蒲山 なかうなりみしかうなると人はいへといつても丸うてらす日のかけ(二十三、『狂歌ことはの道』)
北川華阜 諺に内裏上臈のとはいへとたてひなさまはたつてくはすに(三、『狂歌栗下草』)
暁雲亭華峯 今朝秋のきよ水寺の舞台からとんた一葉にひいやりとした(五、『狂歌栗葉集』)
華友 ゑふて目もちらつく雪に面白い咄しのつもる酒の友とち(十四、『狂歌芦の若葉』)
桃華園雅楽志 西東市は都の花すまふまけるほり出すなけ売もあり(十六、『狂歌手毎の花 三編』)
河丸 秋風かそよ通ひ来て心よやすすしの蚊帳か顔へへつたり(二十九、『狂歌浦の見わたし』)
はこくんて貰ふたたけは返すなり子か又親をもりの烏は(二十九、『狂歌浦の見わたし』)
菊二 御狩する狩場の空は鳥の毛をむしつたやうに雪そふりける(十五、『興歌野中の水』)
重陽園菊丸 妹かもつ鋏に付し鈴たにもしのふ中には夜半のなる神(十七、『狂歌手毎の花 五編』)
其酔 ひいやりとする水茶やの夕すすみ床机のあしも川にひたして(十六、『狂歌手毎の花 初編』)
増田己正 故郷へみやけにせんと見ありくは錦かさりし祇園会の鉾(九、『狂歌拾遺三栗集』)
流霞堂絹丸 油煙にて丸行燈の月かけも霞むは春の雨もよひかな(十七、『狂歌手毎の花 五編』)
渋皮のとれし娘はいつしかに粉ふき柿ほと白粉をしつ(十七、『狂歌手毎の花 五編』)
騎丸 手跡をは指南をすれと積雪にあし跡迚は附ぬ寺子屋(二十九、『狂歌浦の見わたし』)
山田其風 金銀の身につく徳はうをさへもはらふくらしてあそふ泉水(八、『狂歌後三栗集』)
其遊 魚篇に夏とかくのは冬くふてあたらぬ文字の理かや河豚汁(十四、『狂歌芦の若葉』)
大西戯雄
 西隣亭?
山も笑ふ春の光にかはら家の鬼もよたりをなかす雪解(八、『狂歌新三栗集』)
庭の面にねのみたかくて月影の邪魔にはならぬ松虫そよき(八、『狂歌新三栗集』)
諸ともに野宿かと見て国ところとへとこたへぬ石の御地蔵(九、『狂歌新後三栗集』)
裾からけわたれは人のひさ過てぬるるふくりの玉川の水(九、『狂歌拾遺三栗集』)
蟻楽 旦那さんのおそはによるの雷に落てこはこはついなりし首尾(十四、『狂歌芦の若葉』)
冗斎其律 驚ほと音する風はふかねとも蚊帳のうこくに秋そしらるる(二十四、『狂歌気のくすり』)
奥田貴立 鎗もちのふりゆくとしのわひしさはたちゐ不自由にやつこらせい(六、『狂歌萩の折はし』)
倚柳 柳腰に色添ふ床の内よりも風かまくつたふとももの花(十四、『狂歌廿日月』)
随石斎巾雅 野や山に飛脚の如く足をのみはこひて花よ日を送り状(十六、『狂歌手毎の花 二編』)
正親町公通 とんほうや花田色なる狩衣の露をたつねてかするくひかみ(二十、『狂歌大和拾遺』)
艸丸 かは太郎もあたまの水かこほるるとはさらに思はて月に見とれん(二十六、『狂歌拾葉集』)
知足斎愚楽 あきからの戸棚をすくに仮御殿ひんほかくしとなる雛まつり(十六、『狂歌手毎の花 二編』)
鞍人 世のなかの世話やいた身もやかぬ身も共に野原の灰と社なれ(二十五、『狂歌言玉集』)
栗丸 祇園会のはやしの鉦のうら打て寺町通りの秋の夕くれ(二十九、『狂歌浦の見わたし』)
周果亭桂右 七日七日たてしそとはのうへこして次第に高うしける夏草(八、『狂歌後三栗集』)
清果亭桂右 つくはひてはや飛つかん関取の腹もかはつにおとらさりけり(八、『狂歌後三栗集』)
三品渓雲
 麦浪亭?
鎧かふとかさり立たる初のほり其ちのみ子かけふの大将(八、『狂歌後三栗集』)
親達の目をしのひつつあみのめに魚はかかれとあそふわらんへ(八、『狂歌新三栗集』)
口はしの針ては物をぬはぬ蚊のかやの破れをなとさかすらん(八、『狂歌新三栗集』)
夜まはりの拍子木の音打絶て雀ちよんちよんなける暁(八、『狂歌新三栗集』)
なき君をしのへは野への早蕨も数珠くる手かとあやまたれけり(九、『狂歌新後三栗集』)
神無月こたつあくれは床のしたに足ちゝかめてゐるきりきりす(九、『狂歌拾遺三栗集』)
岩井桂影 崩れ簗もれて日に日におち鮎のさひしなからになかれ行秋(八、『狂歌後三栗集』)
つくはひてはや飛つかん関取の腹もかはつにおとらさりけり(八、『狂歌後三栗集』)
毛衣のたもとゆたかに舞ふ鶴は天津少女もおよはさらまし(八、『狂歌後三栗集』)
参詣も今をさかりと梅咲て天神さまの紋日にきはし(八、『狂歌新三栗集』)
ひこひかと見れはもみちの散たるを其ままこほる庭の池水(八、『狂歌新三栗集』)
早き瀬を丸太にのりてあちへとひこちへとひもてくたす杣人(八、『狂歌新三栗集』)
圭可 松の戸を音つる風もかしましと又火達にそすつこんて居る(十二、『狂歌水の面』)
津田桂芽 かり傘をかへせは又もしくれきて我と我身をすほめてそ行(九、『狂歌拾遺三栗集』)
童亭源土器 暮さふてくれぬといひし春の日に庭から燈す梅のはつ花(十七、『狂歌手毎の花 四編』)
紅円 引よせたからはにかさぬ網の魚なんほぴちぴちはねなされても(十二、『狂歌三年物』)
命かぎりほれたとあるは不足なり未来もやはりそふて給はれ(十九、『興歌百人一首嵯峨辺』)
紅圓 子宝といふは誠に貴様そやとれも揃ふた七ちんほにて(二十五、『狂歌ふくろ』)
命限りほれたとあれと不足也未来もやはりそふて給はれ(二十五、『狂歌ふくろ』)
巫山亭行雲 えようなと人なとかめそかしは餅皮をむかてはくはれさりけり(八、『狂歌新三栗集』)
工人 はちけてはわれとかたちをあらはすや忍術尽し栗のい賀流(十八、『狂歌千種園 秋』)
龍寿亭公羽 夏の野にあふ神鳴の恐ろしさ蚊帳つり草もせめて頼まん(十六、『狂歌手毎の花 初編』)
※公羽 京女郎ゐなか女郎もすすはらふ顔はひとつにまつ黒な色(十八、『狂歌千種園 冬』)
東翠舎孤月 長崎のよねか名うての衣装にもかひたんの来る五月雨の頃(十六、『狂歌手毎の花 二編』)
親ゆひをまたにはさんたさまなるか山のかひより出る豆の月(十六、『狂歌手毎の花 二編』)
無心庵杭子 ちよとしめしまいらせ候の水くきになとむねの火をたき添にけん(五、『狂歌栗葉集』)
越丸 簾もれて恐れ多くもうへ様のはなこそくりにきたる梅か香(二十九、『狂歌浦の見わたし』)
瑚中 天狗凧はつ瀬の川て糸きれてとまる所はふたもとの杉(二十九、『狂歌浦の見わたし』)
言之 何処て花さかすことやら音つれも絶ての後はゆくへしら雲(十九、『狂歌千種園 恋』)
五風 老か身のねられぬままに埋火をせせりをこして霜の夜の伽(二十三、『狂歌ことはの道』)
岡田彩雲
 光華亭?
徒然にもますあんまの咄まて陪てこしかたおもふ五月雨(八、『狂歌後三栗集』)
かしましきうちのきぬたに目はさめてをちの碪にあはれをそしる(八、『狂歌後三栗集』)
二三丁かへしにもとる傘の辻のあなたは又しくれけり(八、『狂歌後三栗集』)

幾度かふつてくるわに時雨つつかりかししけき下駄や傘(八、『狂歌新三栗集』)
青々舎酒丸 取もうしとらぬもつらしよい中に柿の出来たる隣同士は(二十六、『嬾葉夷曲集』)
砂香 伊達衣裳色よく染てきむすめか御忌のお庭に花をこそやれ(十七、『狂歌千種園 春』)
桜雫 豊としの貢の雪や米屋町にはかりしられすふりつもる雪(二十、『狂歌雪月花』)
笹丸 盆前は相休候とはや秋のさひしきけしき見す芝居側(二十六、『狂歌玉雲集』)
栗本軒貞国 庭の面はきのふの夏の打水にましてひいやりふく秋のかせ(九、『狂歌家の風』)
引上てさこの子もゐぬ網の目に風のみとまる秋の夕くれ(九、『狂歌家の風』)
手水鉢氷ついたる柄杓にて夜半のさむさは汲すしてしる(九、『狂歌家の風』)
砂長 稽古する手も氷るかや長刀の水くるまさへまはりかぬるは(十四、『狂歌芦の若葉』)
鯖丸 てりつめてたまらぬ暑さ川童のあたまの皿の水をなつの日(二十九、『狂歌浦の見わたし』)
前田沢風 いく度もせせるにつけて埋火のあかくなるのをおこるといふらむ(九、『狂歌拾遺三栗集』)
山丘 寒こりや水をあひるもあたまからつめたい事はかつてんて候(二十三、『狂歌ことはの道』)
とこといふ口はなけれと虚空からふき出すふき出す風かふき出す(二十三、『狂歌ことはの道』)
更見舎山月 五右衛門か七条ならぬかはらけの油の中に果る夏むし(十六、『狂歌手毎の花 三編』)
鹿丸 供に連た丁稚よろこふ時雨空ちよつちよつと旦那にもたす傘(二十九、『狂歌浦の見わたし』)
士規 こと国のおもひやいかにむしの音のあはれをこゝにきゝし耳塚(四、『狂歌芦分船』)
止月 来年もなを豊年て御座候と屋毎屋毎にふれるしら雪(十三、『興太郎』)
竹内重矩 山のはをいつると見れはみきはまて月になり行広沢の池(九、『狂歌新後三栗集』)
風月庵子琴 棹姫のかすみの衣ほころへはあらひなをしてまたも春雨(二十、『狂歌大和拾遺』)
得閑斎繁雅 河堤めくるしくれもゆく人のさきへ成たり跡なつたり(十四、『興歌かひこの鳥』)
安土てふ寺へよる間にくれかかる日の短かさは論のない秋(十四、『興歌かひこの鳥』)
諸ともに千世もと祝ふいなか歌のなまりも同し言の葉の道(十四、『興歌かひこの鳥』)
ぬきんてし子は一ほんか二ほん也おなし位の竹のそのふに(十四、『狂歌芦の若葉』)
くひ入てさむる枕に飛蚤もとらへところはなつの夜の夢(十四、『狂歌芦の若葉』)
※繁雅 何こともあとの祭りはわるけれとそれとちがふて宵祭哉(十九、『興歌百人一首嵯峨辺』)
大小をえらはて魚といふ魚をのむ鵜はのとのあなふときやつ(十九、『狂歌千種園 雑』)
世を夢と見捨し身にもあはれさにまたおそはるる秋のゆふくれ(十九、『狂歌千種園 雑』)
陰なからとふ人あらは老の身はよろつ不沙汰をわふとこたへよ(十九、『狂歌千種園 雑』)
年よりて枕をやすう寝る気ならよるをも昼になしてはたらけ(二十三、『狂歌ことはの道』)
之[口+秀] ゆらゆらと酔心地する葛橋もみち散しくうへをわたれは(二十六、『狂歌二翁集』)
暁雲亭柴山 あつきよをしのひ兼つつ立いてて團片手にあをき見る月(二十三、『狂歌ことはの道』)
灰汁亭蛇目 ちりあくたすつへからすのみそまても埋む落葉はとかめてもなし(七、『狂歌越天楽』)
青梧亭舎鳳 宵のまの露のつとめに夏は蚊のとまりたかるをいとふつし君(八、『狂歌新三栗集』)
寿々 九重の民の竈の賑ヒに繁盛しるき餅つきの音(三、『狂歌千代のかけはし』)
宗朋 ほつくりと死なは脇より火をかけて跡はいかいになして玉はれ(十四、『狂歌廿日月』)
籃果亭拾栗 ゆふ立の雨にうかふやちり塚の西瓜のかわの捨小ふねさへ(二十一、『狂歌古万沙良邊』)
なつの日もあせともろとも流れ行て秋のあたまに飛うつる蠅(二十一、『狂歌古万沙良邊』)
春光 髭なかく腰もかかめと海老は又とんたりはねたり達者也けり(二十三、『狂歌ことはの道』)
花友亭春眠 門閉て目もかたくこそ守る夜は用水桶もこほりはり番(十六、『狂歌手毎の花 二編』)
仙芳亭春甲 花みちの桜の風はさむからて空にしられぬ切紙のゆき(五、『狂歌栗葉集』)
けふ秋の色つくからにそろそろと軒の風鈴も声替りした(五、『狂歌辰の市』)
我とわか顔にあき風むらすすきほんにおふくもなひかさりけり(五、『狂歌辰の市』)
文樹正眼 風の手に破れやすきを山蜂の針もて縫ふよ花の白綾(十七、『狂歌手毎の花 四編』)
一杯亭少々成増 長閑さはうろくす遊ふ川岸に釣の糸ほとたるる青柳(十六、『狂歌手毎の花 初編』)
常楽居士 中のよひ座敷の友とおもふにそなかめあかしてちりりちんちん(十二、狂歌今はむかし)
三休斎白掬 太平の代にも弓矢をはなさぬは山田に立る何かしかかし(二十四、『狂歌気のくすり』)
船秤亭象丸 秋もはや近きとてかは露に似て草葉の蛍きえつ光りつ(二十六、『嬾葉夷曲集』)
すき人は両手に茶碗もち月の傾くまても見て誉る也(二十六、『嬾葉夷曲集』)
真叟 夏の夜にかほとなんきなものはなし蚊もなんきなとおもふ蚊遣火(二十三、『狂歌ことはの道』)
萬世末長 伸をするけしきの森の初蕨にきりこふしの長し短し(十六、『狂歌手毎の花 二編』)
輔丸 水なれ棹さしかねにけり山桜のかけをきよろりと見ていかたのり(二十六、『狂歌玉雲集』)
西田青虹 嫁入の下地かへとておたふくかむしやうにぬつてまつもすさまし(五、『狂歌辰の市』)
原清風 枚方のくらはんかさへ夕立にほけたをさけてにけもこそすれ(八、『狂歌後三栗集』)
山中千丈 愚かなる言葉を世々に残し置て必似なと思ふ形見そ(十一、『狂歌鵜の真似』)
花も人も乱れあひたる糸桜くたをはまくの内の酒もり(十一、『狂歌鵜の真似』)
夜番とて下戸も徳利をふる雪のしら酒てちと寒をしのいた(十一、『狂歌鵜の真似』)
三浦蝉鳴 くゝり戸にさし入月は盗人の昼しやないかとおもふ斗そ(五、『狂歌栗葉集』)
楚猿 打かすむ目鏡の玉のはるへとてとこても鼻にかかる梅かか(二十三、『狂歌春の光』)
随雲舎麁幸 水論の喧嘩の中を夕立にたたかれて夜も寝よい百姓(十六、『狂歌手毎の花 三編』)
心やすい人て上手て尻かるてしきりにはやる穏婆との(十六、『狂歌手毎の花 三編』)
楚雀 植付たことくつらりと早乙女も尻もつたてりの村の田毎に(十二、『狂歌水の面』)
麁馬 けふそ茶をたて役者とや炉の口をひらく帛紗もよいそはき方(十八、『狂歌千種園 冬』)
一了軒夫丸 是は是はお互お互丸はたかみるにえんりょもなつのよの月(十六、『狂歌手毎の花 三編』)
もちぬしは誰とゆふへのすすみ床忘た扇ひらいてもなし(十六、『狂歌手毎の花 三編』)
起るまてこらへて居たる小便もしはし忘るる朝かほの花(十六、『狂歌手毎の花 三編』)
桃原亭園丸 日のもとの花の鏡のよしの山さきみつるをや曇といふらむ(十六、『狂歌手毎の花 二編』)
※園丸 淋しさよ深草の里の人形屋に人形もてあそふ秋の夕暮(二十九、『狂歌かたをなみ』)
鷹羽 さしかかり降雨やとる寺の軒楽書に見る傘はあれとも(十四、『和哥夷』)
蛸丸 あなたへさらりこなたへさらりさらりさらりさらさらさつと時雨のあし刈(二十六、『狂歌二翁集』)
雑亭駄鹿 必の文字のひつかけはつす戸にうらみもはれし心とそなる(十六、『狂歌手毎の花 初編』)
龍丸 拍子とるつゐてに蚊まてころしをる汗しつほりと語る浄るり(二十六、『狂歌玉雲集』)
非神軒辰丸 笑ふたらいくつ叩くか喰つくかにらみこするあの龍と虎(二十九、『狂歌浦の見わたし』)
三蔵楼田鶴丸 かきつけて梅尋れは香を送る風こそ鼻のあないなりけれ(十六、『狂歌手毎の花 二編』)
夏痩も忘れて涼し帷子のたもとより入る風にふくれて(十六、『狂歌手毎の花 二編』)
谷丸 古郷のいもおもひつつ旅枕いねもやられす月の今宵は(二十九、『狂歌浦の見わたし』)
玉丸 ふつと目をあくひまきらす咳はらひねふらぬ顔して見世の番頭(二十六、『狂歌玉雲集』)
東原亭為彦 風さわく音と聞しは菓子壺をいつか枕に春雨の宿(十七、『狂歌手毎の花 四編』)
庭にかく雪に落せは眼かねさへ心なき身をにらむやうなり(十七、『狂歌手毎の花 四編』)
垂枝 秋といへとあかす子供かたく花火こんやて廿日ねすみ線香(二十六、『狂歌玉雲集』)
猪葉 はや馬のあしよりはやき秋の日に鞭うちたてるやうな日くらし(二十四、『狂歌気のくすり』)
辻丸 定めなきあまの橋立しくるれと日かけさす也雲のきれとは(二十六、『狂歌二翁集』)
常煮菽成 めつらしくおもほゆるとも犬の子よ足跡なつけそ庭の初雪(十六、『狂歌手毎の花 三編』)
潤樹亭庭雨 物毎に足ることをしれまんまるてなくてもすめる後の月影(十六、『狂歌手毎の花 二編』)
紅縁斎貞佐 春風やふきのしうとめ小じうとめ嫁菜もまじるけふの野遊(十、『狂歌栗のおち穂』)
貞旨 釣人のかけはうつらて川水の底から淋し秋の夕暮(十八、『狂歌俤百人一首』)
宮々に組なす垣の糸萩のむすひとめとやとまるとんはう(十八、『狂歌千種園 秋』)
橙芽亭天与之 よし花はちらうとままよ落梅の曲をもふけよ鶯の笛(八、『狂歌後三栗集』)
いそかるる道さまたけの大踊まぬけ拍子にぬけられもせす(八、『狂歌後三栗集』)
竹葉舎杜雀 あめつちをひとの前にて動かする大からくりは酒にこそあれ(十六、『狂歌手毎の花 初編』)
翫月庵登南 咲をまち散ををしみて春ことに花かいくたひものを思はす(十七、『狂歌手毎の花 四編』)
よく実のる秋のさなたを守るのは案山子か水に移るかけ武者(十七、『狂歌手毎の花 四編』)
藤巴 絵にかけるねすの嫁入の姫君も供の奴も同し口ひけ(三、『狂歌千代のかけはし』)
洞狸 藤さくや枝を這ふたりつたふたりゑんこうの手の長うみしかう(二十三、『狂歌春の光』)
独歩 留守をしてゐながらもよき今宵かなましてや月の名所名所は(十九、『興歌百人一首嵯峨辺』)
南光斎鳶丸 行先の目あては知らす大空へのほりし龍は雲を掴んて(二十九、『狂歌浦の見わたし』)
友風 駒下駄のはに喰たらぬ庭の雪最ちとふらねは腹はふくれす(十八、『狂歌千種園 冬』)
筬田友丸 煤とともに貧乏神を払ひ出し是から家内ふく斗なり(二十七、『除元狂歌小集(天明三年)』)
童楽斎鳥兆 老ぬれは立居に腰もかかみ餅目には霞のかかるはつ春(二十四、『狂歌気のくすり』)
守田鳥夏 一札の今としも早書きつかつかとよつて件の如く世話しい(二十七、『除元狂歌小集(天明三年)』)
鈍阿法師 ふるさとの山も我あとしたふめりみな白雲の旅衣着て(二十五、『狂歌言玉集』)
長丸 ゆふへたいた風呂の湯もまた其ままに残るあつさの汗を流さん(二十六、『狂歌玉雲集』)
布留仲道 お月さま苗代水をせきくたせさなくは田毎の宿はかされし(十六、『狂歌手毎の花 二編』)
鍋丸 つほの内にねはる菜種の油こそそのいにしへは花も咲せた(二十九、『狂歌浦の見わたし』)
生幸 夏深き池のほとりに立よれはそつとする程涼しかりけり(二十五、『狂歌言玉集』)
中丸 ゆききさへとたへの橋に水音の高くて淋しあきのゆふ暮(二十九、『狂歌かたをなみ』)
中まろ 行水のたらひの中に影落て洗ふたやうな夏の夜の月(二十五、『狂言言玉集』)
梨丸 かき餅やあられはきのふ尽はててけふはあくひのつきぬ春雨(二十八、『狂歌よつの友』)
鳳足亭撫石 針医者か酔つつくたをまき舌てつよいしやくしやのおさへますのと(十六、『狂歌手毎の花 初編』)
何麿 夜もすから鳴声聞けはあの鹿に角かあろとは思はさりけり(十五、『夷曲哥ねふつ』)
名丸 諺によるか老てはこからしの風にしたかふ庭の木々の葉(十八、『狂歌千種園 冬』)
波丸 十二支のしんかりをするゐのししや進む時には向ふみすても(十九、『狂歌千種園 雑』)
枚方のくらはんか船もさみたれはちとあかれかしとやさしういふ也(二十九、『狂歌かたをなみ』)
東鶏館鳰 きのふ迄いとひし声もぬけからの蝉吹おとす初秋の風(十六、『狂歌手毎の花』)
月やとる露かとみれは朝顔のつるはひのほるあきのほたる火(十六、『狂歌手毎の花 三編』)
虹丸 ここまてはよもやと思ふ山奥の花の外にも笑ふ人声(二十六、『狂歌玉雲集』)
如館 蚊やのうち出るといるとのひとへなり蚊に喰れふとも喰れまいとも(二十三、『狂歌ことはの道』)
すなほなる竹も万代ふるうちは雨にあふたり風にあふたり(二十三、『狂歌ことはの道』)
如光 せきいれんとてあらそひし田の水も落あふ秋は音なしの川(十八、『狂歌俤百人一首』)
D果亭如石
 一名有栗
たれひとりとひくる人のなき宿も庭はくやうに見ゆる青柳(七、『狂歌三栗集』)
つのとつの争ふときくてて虫もうるほひのあるうちて社あれ(七、『狂歌三栗集』)
珠数きつたやうにとひちる玉あられ寒念仏もやめてはしりぬ(七、『狂歌三栗集』)
よきにつけあしきにつけてとはるれはこれさい翁か馬のあふ友(七、『狂歌三栗集』)
残りなくははおつれともわさはひのねふかき舌はぬけぬなりけり(七、『狂歌三栗集』)
紗綾綸子それよりたたの木綿にてとかくやすいをいはふ腹帯(七、『狂歌三栗集』)
山本如泉 くれて行としの姿は見へねとも足音か耳へいり相の鐘(二十七、『除元狂歌小集(天明三年)』)
如風 三味線の調子に乗て咲梅のちりてんさきにうたふうくひす(四、『狂歌藻塩草』)
如木 夜光とも又一日のへんくはともいふは是にやん猫の目の玉(二十六、『狂歌二翁集』)
抜成 せかまれた子を出しにして親達ものほした紙鳶に気もうちやうてん(二十八、『狂歌よつの友』)
文巣居鼠雄 白露は伏見難波の舟ならて登る夕くれくたる明かた(十六、『狂歌手毎の花 初編』)
いといとといはれし昔なつかしやお袋さまと人によはれて(十六、『狂歌手毎の花 初編』)
如鏡亭野水 船のあしおもいかるいのとはいへと千里はしるも風の手次第(六、『狂歌萩の折はし』)
眺見亭野岳 ねんねこの子のねたるまま小夜更て打やきぬたのころりんのおと(六、『狂歌萩の折はし』)
長宣館延年 真暗によりあつまつて口々に声もからすの森のいさかひ(七、『狂歌軒の松』)
槇上則次 照月にささ波よせて浮御堂流れゆくかとみつうみの面(十六、『狂歌手毎の花 三編』)
乗康 風船の舌の音にて秋はいつたちつてととそ驚かれぬる(十八、『狂歌俤百人一首』)
梅花 銭金かたまれは人は着かさるに延るほと皮ぬくは竹の子(十七、『狂歌千種園 夏』)
白縁斎梅好 淀川の水にながるるねこ柳しばしとてこそ立とまる犬(二十一、『狂謌いそちとり』)
丸すぎてもすまぬうき世や住よしの四角四面なとりゐ見るにも(二十一、『浪花のながめ』)
ちらちらとちるもみち葉をこふくやの目には錦の小きれとやみん(二十一、『浪花のむめ』)
名の月にことしもめくり大川のはしはしまてもてりわたるかけ(二十一、『浪花のむめ』)
寺井梅風 いんきんに袴着て出るつくつくしたれしも腰をかかめてそとる(八、『狂歌後三栗集』)
ゆふ立の跡のすすしき風よりもきもをひやせるかみなりの音(八、『狂歌新三栗集』)
梅里 今そなき親の諫めし夜遊ひのかへらぬむかし思ひ出さるる(十九、『狂歌千種園 雑』)
安睦斎羽刀 春たつといふたに最早歳末になる鉄炮のやうな光陰(二十五、『狂歌ふくろ』)
萩丸 玄関になく子もみえす小児医者さひしき台もあきの夕暮(二十九、『狂歌かたをなみ』)
羽曲 業平に似たる鼠の豆男築地の穴から夜ことかよへり(十九、『狂歌千種園 雑』)
初三 君を置て先たたんかと案すれはなほる病も跡もとりしつ(十八、『狂歌俤百人一首』)
雲多楼花足 完爾と笑ふゑくほの穴よりそあな美しと思ひそめつる(十六、『狂歌手毎の花 二編』)
花彳 早わらひの握りこふしも大ゆひをはさんて出たかわらふ山媛(二十三、『狂歌春の光』)
花夕 身のもゆるあつさを消せと心太水鉄炮のやうにつき出す(十七、『狂歌千種園 夏』)
菊月亭波紋 つくつくと思へはあふ夜熊太鼓てれつく天下はれてそひたい(十六、『狂歌手毎の花 二編』)
破扇 跡見よといふて茶店をたつ客も暑さ忘れていぬる川床(十四、『和哥夷』)
夜寒さにいそくきぬたやさしかかる月は裸てすんてゆけとも(十四、『和哥夷』)
酔花亭春雲 そこぬけにふるゆふたちの雲はれてたまり水にもやとる月かけ(八、『狂歌後三栗集』)
真かねふく吉備の中山ふりうつむ雪を銀花といふへかりけり(八、『狂歌新三栗集』)
紀春友 糸つむく片手に下女か長はなしときれもせすによう廻る口(六、『狂歌板橋集』)
半月 解馴し帯の昼夜に片時も君をおもひのゆるむ間そなき(十八、『狂歌俤百人一首』)
さくら花かさしてけふもくらしつと咄しの枝は先をらてきく(十八、『狂歌俤百人一首』)
さやかには目に見えすしてきた秋か野山に錦かさるいにしな(十八、『十八、『狂歌千種園 秋』』)
薫枝楼伴只丸 安うめせとて売あるくをはらめもつちのね高く衣うつ也(十六、『狂歌手毎の花 初編』)
秀里 ひとへ帯といてもあつきこのころにむすひて涼し岩間の清水は(二十六、『狂歌玉雲集』)
一声 児さくらうつる川水あふないと跡にひかへて姥もさきけり(二十、『狂歌雪月花』)
繞樹亭百丈 手をつくしもみつひねりつとる角力みてゐる人の肩のこるまて(八、『狂歌新三栗集』)
宮田百川 からき世やこちからやつた塩鯛か廻つて余所からくれの祝儀に(二十七、『除元狂歌小集(天明三年)』)
曲肱亭百年 手折手を見とかめられて我かほもともにしくれのもみち葉の色(八、『狂歌新三栗集』)
つもりては草木はかりかからた迄こたつにうつみ見る庭の雪(八、『狂歌新三栗集』)
紺足袋もいつしか白うなりにけり下駄迄うつむ雪の深道(八、『狂歌新三栗集』)
つもりたる雪の中行鹿の背をいつよりひくう見るならの町(八、『狂歌新三栗集』)
竹内百年 かはらしとこなたにいへはあなたにもおなしこたへや恋の山彦(九、『狂歌拾遺三栗集』)
手習はうはの空なる顔つきにやんまつる手やよくあかるらむ(九、『狂歌拾遺三栗集』)
百丸 昇殿をゆるすゆるすとゆふ間くれ蛍をまねく笏や桧あふき(二十六、『狂歌拾葉集』)
春浪亭氷花 負ふた子を下におろしてうは迄かはらをかかへて笑ふ万才(六、『狂歌板橋集』)
春朝亭氷花 あつさには川の水さへ夏やせかちよろりちよろりとほそう流るる(十、『狂歌つのくみ草』)
抄果亭標山 人ことにまたおわかいといはるるはとしのよりたるしるしなりけり(八、『狂歌後三栗集』)
紅廼屋房丸 大堰川くたす筏は影うつる花の梢のかすみなりけり(十七、『狂歌手毎の花 五編』)
太丸 ああ雪かふつてくるわの賑はひやつもるをかまはす客は居つつけ(二十、『狂歌雪月花』)
豊梅園船主 言よらははちかれんかとそろ盤のけたかき人を思ふくるしさ(十六、『狂歌手毎の花 二編』)
交水館鮒丸 とふしても首のまはらぬゐのししは草の枕に寝違ひやせし(二十九、『狂歌浦の見わたし』)
文彦 飼犬もなつきし日影暑けれは昼けの頃に出しそむる舌(十七、『狂歌千種園 夏』)
東海堂文守 あつき日は箱に入おく殿中の女扇も帯やとくらむ(十七 『狂歌手毎の花 五篇』)
文之 松かえにかかるもあれはささかにのくもゐに糸を出すもある凧(十七、『狂歌千種園 春』)
鰤丸 両国の橋にかかりし秋最中またとちらへもかたふかぬ月(二十九、『狂歌浦の見わたし』)
漁師ても手にはまはらぬ手長蛸逃あし早きしら波の底(二十九、『狂歌浦の見わたし』)
傍花 元朝の雑煮の餅はいくつても嬉しきものよ下戸も上戸も(二十四、『狂歌気のくすり』)
春楽亭峯雪 黄檗は龍宮城とみゆる也寺内は海となつた夕たち(十六、『狂歌手毎の花 二編』)
粒果亭方雅
 姓津田?
飛めくる烏もち論もろ鳥のねくらさわつくけふの月かけ(八、『狂歌後三栗集』)
銀杏の葉はらつきかける冬のきていつちいにけん虫の声声(八、『狂歌後三栗集』)
雪になろか風になろかととちらへもころひやすけに霰たはしる(八、『狂歌新三栗集』)
あし跡もなき朝戸出の雪けしき夜番そしりし手前はつか(八、『狂歌新三栗集』)
はたらきてやすめはたてるはねつるへ人なら横になるへきものを(九、『狂歌新後三栗集』)
うへうへの夜着や小袖となる物をなとてひんすりやとんすとはいふ(九、『狂歌拾遺三栗集』)
芳水 誰ひとりせわやかねとも春雨のふる度ことにもえ出る草(十七、『狂歌千種園 春』)
ほから 立かみのみたれぬ御世の馬は唯奉納にのみかけるめてたさ(二十五、『狂歌言玉集』)
陶々斎干有 かしらにはとくふりにけるおやちさへめつらしと見る今朝の初雪(二十四、『狂歌気のくすり』)
星丸 まくれかかりひらひらうこくかしや札に秋やきぬると目にも見せけん(二十六、『狂歌玉雲集』)
細道 粟のめしたく間とろとろ見る栄花下女のお玉のこしに乗る夢(十一、『狂歌あさみとり』)
本末 千人か千人なからあかなくもめつるは月の光明皇后(十八、『狂歌俤百人一首』)
菊亭本丸 持あそふ達磨人形か短夜はこけるとすくに起るせはしさ(十六、『狂歌手毎の花 初編』)
花咲し梢も秋はさひしくて人もをらさるみよしのの山(十六、『狂歌手毎の花 初編』)
義貞か海へなけこむ太刀は見ねと質の流れに出た腰の物(二十九、『狂歌浦の見わたし』)
牧笛 睾丸にちよとおくの手か兵法の師匠はふろに這入身かまへ(十四、『和歌夷』)
颯々亭真沙雄 水無月の末野のほたる夏やせてひかりもいつかほそくなりゆく(十六、『狂歌手毎の花 初編』)
まさ雄 あら磯に草臥もせぬ月の脚浪にもまるる影のすすしさ(二十五、『狂歌言玉集』)
的丸 白波はないと汐干に油断して蛤は唯の人にとられた(二十九、『狂歌浦の見わたし』)
まふな さらはよと別れきつれと床しさに迹を見かへる二度三度笠(二十五、『狂歌言玉集』)
豆丸 来年とおもへはをしやひいてゆく月鉾ははや西の洞院(二十六、『狂歌玉雲集』)
箕山 嫌はれておもひいやます我か身は尾を喰て廻る煩悩の犬(十二、『狂歌三年物』)
刀自道芝 いそかしく襷を虹のかけまくもやしろ清めて行しくれかな(十六、『狂歌手毎の花 三編』)
道丸 大仏のはしらにあけたあな淋しほこりのつもる穐の夕くれ(二十九、『狂歌かたをなみ』)
老松亭三鶴 倹岨なるひよとり越と聞しかとやさしや春の鶯のこゑ(十六、『狂歌手毎の花 二編』)
のみまてか客にならふていちるかと女郎の口の歯にかかるなり(十六、『狂歌手毎の花 二編』)
源登平 桜はな手ことに折てかへるをは春の行とや人は見るらむ(十六、『狂歌手毎の花 二編』)
峯女 たれもみなうつくしよしとほめてたもけふきそめたる蝉の羽衣(五、『狂歌辰の市』)
これは又秋の鍔そといものしはいるかたまての月を惜めり(五、『狂歌辰の市』)
峰丸 抜なよといふた親父も抜参りむすこに逢ふてめんほく内宮(二十九、『狂歌浦の見わたし』)
簑丸 花の香の春はものかはすれちかふ袂にかをる秋の茸狩(二十八、『狂歌よつの友』)
深雪 烏羽玉の黒髪山のいたたきにくしの形してさしいつる月(十六、『狂歌手毎の花 三編』)
無為楽 春の日は龍宮界にさも似たりいかやたこらが空をおよげば(二十四、『狂歌落穂集』)
無口 君にこそ思ひ重なる段はしこあけていひたき胸の引出し(四、『狂歌芦分船』)
栗本睦丸 煤払ふほこりの雲に声するは天乙女てはいや内儀なり(二十七、『除元狂歌集(天明五年)』)
鼠虫軒睦丸 辨當のむすひをほれはなつく犬の手をくれるまて遊ふ春の野(二十六、『嬾葉夷曲集』)
青巾舎群丸 昼の辻しはしゆききの音絶て暑さそ物にまきれさりける(二十六、『嬾葉夷曲集』)
訪ふよりはとはぬ人こそ誠なれ足跡もなき庭のしら雪(二十六、『嬾葉夷曲集』)
無等 さはさはとさはかしけれと秋風の吹くる時はすすしかり鳧(二十三、『狂歌ことはの道』)
宗正 知れや君にけまはりたる鮎さへもおちて手に入る時し有とは(十二、『狂歌三年物』)
※吉丸宗正 物いははかしましからむよしの山口からさきへ咲そめし花(十六、『狂歌手毎の花 初編』)
中島猛風 名に今はしやくのつきしと聞よりそ汲出すやうに泪なかるゝ(九、『狂歌新後三栗集』)
兎玉斎元成 草の葉に鳴くつわ虫ゆたんすな野飼の馬の口にかかるそ(十一、『狂歌あさみとり』)
元丸 籠のうちをほんよさらはとぬけて出て子供をなかすあれきりきりす(二十八、『狂歌よつの友』)
小泉元弓 世話しうて候へく候にかいやれとめてたくかしくて年も筆留(二十七、『除元狂歌集(天明五年)』)
白桜舎桃下 さゝの葉も身もちになりてはら帯をむすふ粽やいつゝきのけふ(五、『狂歌栗葉集』)
たけのこのかあいらしくも生ひ出ぬうしろ紐なる垣の結ひめ(五、『狂歌辰の市』)
桃三 仲居衆かささを手向る七夕にひとつほしませふたつほしさま(二十八、『狂歌よつの友』)
雪頂斎桃苗 下からはくもるさえぬとそしれともまことの所はすんてある月(十六、『狂歌手毎の花 二編』)
もり近 老か身もつゑつく世話のいらすして昔にかへる夢の通ひ路(二十五、『狂歌言玉集』)
加前師道 色ふかく名にもたつ田の川の面にうつる紅葉や水も染らむ(七、『狂歌軒の松』)
山之 沖ならて海てふ名ある硯石のぬれてかはかぬ恋もする哉(二十三、興歌牧の笛)
勇光 堪かたき昼の日光街道も涼しき月によるは結講(二十九、『狂歌浦の見わたし』)
信夫雄州 月にうつ夜さむの衣音さえて我影法師はわれと相槌(八、『狂歌後三栗集』)
散糧亭雄飛 鯛に名をかした桜をあらしもてうろこのやうにふきおろす也(九、『狂歌拾遺三栗集』)
隠鳥舎雪山 春雨に蛙もをのが歌袋くちをほときにゐての玉川(五、『狂歌栗葉集』)
夢見 盗人も見むかぬ程のあはら屋を夜な夜な月ののそき社すれ(二十五、『狂歌言玉集』)
仙駕亭由鯉 咲揃ふ桜かもとの市女笠きて見る花の雲の上ひと(五、『狂歌辰の市』)
仙霞亭由紫 息杖そ命なりけるかこかきのかたのさすのも月のさすのも(五、『狂歌辰の市』)
芦子 煎餅の如くに薄い木々の葉の色ほんのりとこかす秋の日(十二、『狂歌水の面』)
芦舟 花見幕ちりてんとなる三味線の糸さへいとと永き春の日(二十四、『狂歌気のくすり』)
友野由躬 南無三宝片耳たらて時鳥いま一こゑを聞はつしたり(十六、『狂歌手毎の花 初編』)
悲しいめしらぬ泪を退屈なあくひにこほす御代のおたやか(十六、『狂歌手毎の花 初編』)
吉丸 物いははかしましからむ芳野山口から先へ咲そめし花(十七、『狂歌千種園 春』)
医も捨し恋病の体見せたしと思ふは余人にあらすかの人(十八、『狂歌俤百人一首』)
秋田斎米子 なまかはてならぬは恋よあまのかわうき瀬沈むせあふせわたる瀬(二十四、『狂歌気のくすり』)
ひらくかとおもへは握る朝顔のしはさに花の盛ひさしき(二十四、『狂歌気のくすり』)
八朔庵米囚 川の瀬と人の心と夏の日はかはりやすひとゆふたちの空(二十四、『狂歌気のくすり』)
秋園斎米都 田子荷ふ人に尋ねて富士見原たはこのけむりそへてなかめん(二十四、『狂歌気のくすり』)
西園斎米都 今宵喰ふ芋も団子もおしなへてみな名月のおかけ成けり(二十五、『狂歌ふくろ』)
米徳丸 気にいらぬ風もいとはて奴いか尻かろかろと立のほりけり(二十五、『狂歌言玉集』)
寺島世楽 ききたさは山ほとときす山彦のそひてうれしき跡の一声(九、『狂歌拾遺三栗集』)
狸鏡 おゆるしの御庭踊に姫君と振あふ袖も縁のはしため(十四、『和哥夷』)
量太 人の気もゆつたりたるむ春の日をのほせし紙鳶の糸にこそしれ(十五、『興歌野中の水』)
青漆庵緑竹満 独居はなんの遠慮もなつの月さしむかひたる丸裸とち(十六、『狂歌手毎の花 初編』)
柳坡 誓ひてし火の中水の底迄もかわるまいそとささやきとうふ(十二、『狂歌柿の核』)
万樹亭連雲 不性ものとは思はねと田をすけは尻おもけにも見ゆる牛哉(八、『狂歌新三栗集』)
いつよりかつまを婆々とは呼なれし我おいにきとおもはさりしに(八、『狂歌新三栗集』)
小西蘆鑵 日のあしのさても短やあらせはし朝てもくれといふ年のくれ(二十七、『除元狂歌小集(天明四年)』)
佐藤羅文 かい行をたもつ法師も蚊の喰へはやふるるはかりかきこそはせめ(八、『狂歌新三栗集』)
六雅 足はやう出て来し雲にくも助か裸てくらす夏も近つく(十七、『狂歌千種園 春』)
柳煙斎鷺洲 さひしさはあくひをうつす友もなしふる春雨の音はかりして(二十四、『狂歌気のくすり』)
養老館路芳 さかりをははかりかねつる芳野やまうらやましい水茶屋の婆々(十一、『狂歌我身の土産』)
利は得たりまけてみするもあきなひのはかりことなる甲人形(十一、『狂歌我身の土産』)
をさな子のちんほうかとそ身ふるひし下を見やれはししか谷むら(十一、『狂歌我身の土産』)
和水 竹生島にわたる間や御詠歌の船に宝をつむゆめも見て(十四、『和哥夷』)
なとてかくむかふ鏡のふた目とは見ともなき身の影うつすらむ(十九、『狂歌千種園 雑』)
輪田丸 寒念仏胴のすわつた男てもふるひ声にてまはる七墓(十八、『狂歌千種園 冬』)
ふせたのもちやんと替りし品玉はああと見物の口あいた間そ(十九、『狂歌千種園 雑』)
和夕 山深みあたら桜に人こぬは里の遠きか咎にそ有ける(十八、『狂歌俤百人一首』)
肌さむくなるから足はちちめてもちちめやうなき秋の夜長さ(十八、『狂歌千種園 秋』)
画水 童のはさみ将棋に金銀を翫ふのも猫に小判よ(十九、『狂歌千種園 雑』)
(読人知らず) 町人の芸は下手こそ上手なれ上手になるほど家が下手ばる(十、『狂歌粟のおち穂』)