「裏の女」あらすじ
ビール会社の人事部に勤める中年で独身の真面目サラリーマン、小泉は大学の後輩で医学書出版社に勤めるキャリア・ウーマン、朝子と、十八年ぶりに再会。時々会って酒を飲んだりする仲になった。
いつもは、会社が終わった後、シティーホテルなどで逢う瀬を楽しんでいたが、肉体関係はなかった。春先の日曜日、電話があって、私鉄駅前の喫茶店で待ち合わせた。雨が降る中を遅れてきた朝子は、小泉を強引にモーテルに誘った。それまでの朝子とは、うって変わった奔放さと淫乱ぶりに、小泉は最高のセックスを味わった。果てた後、小泉は、朝子の左胸の上に右耳を付け、心地良い心臓の鼓動を聞いた。
夏になって、久し振りに、ホテルで飲んだ際、その話をしたが、朝子は知らない素振り。怪訝に思う小泉を、朝子はラブホテルに連れていき、「同じ事をしてくれ」と言う。同じようにしたが、全く反応が違い、味けなさだけが残った。終わった後、小泉は朝子の右胸に顔を埋めたが、今度は左耳で鼓動を聞いた。 愕然とした小泉は、その場で昏倒。程なくして、会社を訪れた朝子の体を調べて「疑惑」を確かめると、その朝子は「私は夕子。朝子のカガミよ」と煙に巻く。小泉は、二人が双子で、朝子は内臓反転者との確信を抱く。
その後、二人の行方が解らないまま、冬を迎えたある日、ストリップ小屋に入ると、レズショーを上演していた踊り子が、朝子と夕子にそっくり。小泉は、驚嘆しながらも、その過激な演技に見入った。小屋を出ると、「人生、表もあれば裏もある」とふうてんの寅さんの口上が聞こえてきた。
それから、十八年。人事部長になった小泉の会社は、新製品のキャンペーン・ガールを募集した。応募の中に朝子そっくりの写真を見付け、面接に進ませた小泉は、この娘にホテルに誘われる。「バージンよ」という娘の口から、予想もしない意外な事実が語られた。