短歌作品
・鍋の壁に 赤味噌張って 上手く行かず 短気の妻は 「あんたやりなよ」
・ぐつぐつと 煮えはじめたり 石の鍋 囲みし客ら すでにべろべろ
・「SMAPの どこがいいの」と 聞く父に 「どこが悪いの」と 聞き返す子ら
・「なぜ辞めた」 「辞めたいから」と 応酬を 耳ふさぎ聞く 子ら哀れ
・この町に 住んでから知る 人の情 離れがたしを いかにすべきや
・われと妹(いも)と 交わせし契り 破りけり 忘れむとして 忘れがたきを
・湖の 畔に立てる 像二つ 身を寄せあいて 涙を落とす
・「母さんの お下がりでしか 装えぬ」 我が妻の愚痴 心に刺さる
・この枡は 父さんと来て 見た席と 母さんが言う 春相撲
・花道の 両側で待つ 女二人 心の底で 散る火花
・この土俵 なぜ丸いのと 幼児聞く 星の白黒 丸は月も野
・瓶付けの 油の香り 鼻にきて 「セクシーだね」と 囁く娘
・パンツも 下駄もサンダルも 特大で 店の売り子が 縮んで見える
・エリートは 必要ないと 言うつもり 辞めた人なら 買いたたけ
・能力と 才能だけは 負けずとも 押しの強さと 生きの良さで負け
・「必要な のは意欲です」 と採用者 学歴よりも やる気で判断
・ニコニコと 応募書類を 繰りながら 希望年収を チェックするペン
・履歴書の 立派なキャリアを 見てみれば わが社にとっては 過ぎた人材
・「なぜ辞めた」 と聞く面接の 人の声に はっきりと答え いえぬ悲しさ
・ 胸張って これが夫と 言えぬ妻 リストラの嵐 ただ立ちすくむ
・「辞めます」と 言ってはればれ 年の暮れ 目覚めの時の 爽やかなりしか
・「辞めます」と 言う勇気なく 筆を取り 書きつける辞表 千々に乱れし
・子供らに 渡すお年玉の 当てもなく 袋を買えず ただ下を向く
・日一日 一日ごとの 暖かさ 重ねて春に なりにけるかも
[1997年12月2日]
・「初恋は あなただった」と 今に言う 「だからなんだ」と 思いたけれど
・「やりたくて 付いてきたのに やらせぬとは」どういうことだと 問い返すやぼ ・「ねえ嘗めて」と せがむお前の あそこには 異臭が臭い 顔を背ける
・「それほどの ことではなかった」 と思うのに 「そんなに良かったか」とは聞けぬ
・「なぜ会って くれないのよ」と 詰る君 家庭破壊が 脳裏を過る
・忘れたくても 忘れられぬ あの一夜 もう一度と求めて 疼く胸
・「そんなにも 良かったのか」と 問い返す たった一度の 逢瀬なりしが
・「どうしても 会ってくれ」と叫ぶごと 夜半鳴るベル 心を震わす
・「このままじゃ いやだと」泣いて すがりつく 振りほどく手に 涙が濡れる
・「どうしても もう一度だけ」 とせがむ女 それほどならと 心の油断
[1997年]
6月1日(日)・幾日を 過ごすべきかは 分からぬままに 古里へ行く 切符手にする
2日(月) ・若き日に 植え込み付けし 庭の芝 刈りつつ思う 時の流れを
3日(火) ・来春の 花の姿を 空想し 刈り込みぬサツキ 地に落ちて積む
4日(水) ・雨を待つ 老松の枝 愉快なり 風に揺られて 空を爪弾く
5日(木) ・夏来ぬと 目にさやかなり 空の雲 刷毛で掃いたり 川の流れを
6日(金) ・シャツを買う 老母の瞳 わが子見て 子は見つめ入り その枯れた手を
7日(土) ・読み終えし 遊女の小説 哀しかり 解剖献体 一号は娼ぎ
8日(日) ・ソファーベ ッドに横たわり 聞くのはF Mのクラッシック
9日(月) ・松柏を 濡れそぼす雨 絶え間なく 春の心を 夏に誘う
10日(火) ・一日を 二時間で終わる 筆の足 残りの時は 読書三昧
11日(水) ・二時限の 授業はパスと 息子言う 受験を前に 余裕のぞかせ
12日(木) ・取り返す 意気込みは 通じても 疲れが残る 閉店間近に
13日(金) ・日本は 大変革の 時期迎え 上へ下への 大掃除なり
14日(土) ・娘の 運動会を 妻が見に行き 80メートル で一位と言う
15日(日) ・漢字検 定受けし娘 電話してき 「全部でできたよ」 声弾ませる
16日(月) ・あなたが起 きたからかずは 出ていった そういう妻の 顔色険し
17日(火) ・苦しみと 悲しみのみを 書きたしと H氏賞受賞の 詩人語れり
18日(水) ・梅雨入りを してからも晴れ 続くなか 台風来るとの 予報は虚し
19日(木) ・紫蘇の葉を 買いたきものと 母の言う 軽自動車に 山積みに買う
20日(金) ・枝が鳴き 屋根を打つ音 激しかり 大嵐来る 前日の朝
21日(土) ・最高気 温三十度 との予報 汗をかきつつ 氷かく腕
22日(日) ・嵐去り 梅雨の間の 中休み 生暖かき 南風吹く
23日(月) ・そんなことは ないよと娘 言うたびに 心千切れる 思いする夜
24日(火) ・月が照り 日が沈む日々 繰り返し 老いていくのも 人の生かな
25日(水) ・吾子と話す 招来のこと 夢溢れ 若き命の 光に眩む
26日(木) ・息子の目 父が借り受け 一編書く 夏の青春 物語終ゆ
27日(金) ・青春は 四十路を過ぎて 思うもの 遠くなりても 色鮮やかに
28日(土) ・二度の嵐 六月に来る 異変なり 香港の返る 二十世紀の末
29日(日) ・香港が 返ると騒ぐ マスコミの 空回りする 生中継
30日(月) ・一世紀 有余の統治 あっけなく 終わりを告げし 真夏日の夜
7月1日(火)・旧友の 資産公開 赤字あり 節税の故か バブルの付けか
2日(水) ・現象学 時間を語る その終わり 生の意味とは 根底への目か
3日(木) ・盆栽の 土替えにけり 猛暑の日 老父の命に 従いし我
4日(金) ・猛暑続き 庭に遣水 夕涼し 日陰に行けば 蛙が水浴び
5日(土) ・夏に書く 冬物語り 涼しけれ 恋の炎が 氷雪溶かし
6日(日) ・家に帰る 電車の中で 若者三人 吊り革を手に 筋力を競う
7日(月) ・模擬テスト 成績上位で 安心し 慢心するのが 一番怖い
8日(火) ・あせりなし 無職の夏の 日の光 明日を照らして 心励ます
9日(水) ・いつになる 関東地方の 梅雨入りは いつまで続く この暑さかな
10日(木) ・一年の 雨の半分 降り落とし 異常気象の 世紀末かな
11日(金) ・大雨の 被害が続く 梅雨日本 テレビの画面が 人ごとでなし
12日(土) ・心離れ 妻にも返す 言葉無く いばらの道を 歩む我かな
13日(日) ・何という 事かと見れば 蟻二匹 お碗に落ちて もがいている
14日(月) ・
15日(火) ・味噌汁を 出汁使わずに 作る妻 不味いと言えず 黙しつつ飲む
16日(水) ・職無きを 憂えるよりも 職無きを 好機と思え 希望への夏
17日(木) ・梅雨の空 やっと来たかと 蝉の子ら 土中でじっと 出番待ちする
18日(金) ・帰宅する 手に紙袋 かさばって 即席ラーメンの ラベルが見える
19日(土) ・兄テレビ 文学賞の 特集に 出て知る友の 情報網
20日(日) ・十四歳 思春期の ど真ん中で 飛ぶ魂と 沈む魂
21日(月) ・夏暑し 台風9号 発生す 梅雨の前後に 嵐が競う
22日(火) ・あと何月 就職迫る 支払い書 夏の暑さと 焦る気持ちと
23日(水) ・半月を 銀玉打って 過ごしても 満足出来ず 疲れだけ残る
24日(木) ・今月も もうすぐ終わり 夏本番 土用のうしも 鰻食わずに
25日(金) ・それほどに 心冷えない ホラーなり 手法の未熟か 暑さのゆえか
26日(土) ・少年ら シャブをやったり 体売る 末世に狂う 理解越す子ら
27日(日) ・9号は 日本海へと 抜けて去り 本格的な 夏へ直進
28日(月) ・白球を 追いたる球児に 泥はなく 人工芝の 球場なれば
29日(火) ・ホラーとは 書くものでなく 読むものと 思い至れり 苦闘の末に
30日(水) ・熱低が 居座りおりし 夏の日に 長き逃亡 終えし女あり
31日(木) ・七月も 今日で終わりで 焦りあり 無収入の 身にしあれば
8月1日(金)・十五年 時効寸前 捕わりぬ 逃げし女の 整形の顔
2日(土) ・山中に 捨てられし娘は 白骨に 霞んでみえし 青白画面
3日(日) ・寝てばかり いる娘には 夜が昼 たった独りで 宿題をする
4日(月) ・ポルノ見ては 暑気払いは 出来ぬこと 汗と吐息で 熱気むんむん
5日(火) ・パチンコは 店の意向も ままならず 会員席で 大損かける
6日(水) ・「多分映画」 娘の行く方 妻に問うと 気のない答え 鋭く返る
7日(木) ・焦りなし 真夏に向かう 月初め 自分のぺーすで 暮らす毎日
8日(金) ・一日中 銀玉打って 疲れ果て 抽選にならぶ 人々の列
9日(土) ・講習に まる一日を 使い切り 疲れて眠る 息子の寝姿
10日(日) ・思春期の 娘の口は とがり口 減らず口にも 口角に泡
11日(月) ・出始めて 続き狙うも 続きなし 徒労に終わる 猛暑の日
12日(火) ・通り魔の 捕まりおるを 見る画面 やさ男ゆえ 信じがたきに
13日(水) ・旧盆と いえども知らず 我が家には 帰る実家の 近きゆえにて
14日(木) ・マイナーに 落ち上がって 奮投す 傲慢投手の がむしゃら投球
15日(金) ・涼来たる 球児の夏の 終えしとき その白球の 姿かなしも
16日(土) ・一日中 無為に過ごすのも 辛いもの 腹の底から 湧きだす苦汁
17日(日) ・単語打つ 午後には腰も 痛くなり 節々の筋 苦しめる夏
18日(月) ・夏休みも もうすぐ終わり 盆の暮れ 暑気和らぎて 秋の風する
19日(火) ・失業の 手当ての支給 あと半分 多いとみるか 少ないとみるか
20日(水) ・懐かしき 古里の友の電話あり 再会の日の 会場を言う
21日(木) ・幸運か 不運かは今 知れないが 世に出ることの 救い難きは
22日(金) ・無為に過ごす 日々貴重なり 壮年に 人生の休み の時のある
23日(土) ・創作は 静かな作業と 思いたり 時報の音にも 驚かれぬる
24日(日) ・蝉時雨の かしましきこと 耳に残る 夏の終わりの 最後の日曜
25日(月) ・妻の言う あんたは死人 能なしと それならあんたは 死人の妻か
26日(火) ・妹が聞く ニューヨークは どんなとこ 東京と 同じと答う
27日(水) ・家に帰る 道すがら寄る 泡姫に 心開いて 知る哀愁
28日(木) ・電器屋に 進学を聞く 妻の声 テレビ買え との意向逸らせよ
29日(金) ・小説を 書くのは楽 賞忘れ 生きる命の 糧とはならむ
30日(土) ・夏終わる 最後の土曜 暑さ残り 秋の備え まだ整わず
31日(日) ・やはりあれ、この道決めて 行くだけだ 初心忘れず 突っ走れよ
9月1日(月)
・ダイアナ妃 死すとの報に 驚きぬ パパラッチとは ハエの群れとか2日(火) ・ダイアナ・ダイド という新聞は ダイアナ・キルド と正すべきや 3日(水) ・酒のみが 事故原因と 判明し 静まり返る パパラッチ非難
4日(木) ・来年に なったら私は どうしよう 生きていく術 どこにあるやら
5日(金) ・宮殿の 外に続く 弔問客 失いしもの いかに大きか
6日(土) ・暇がまず 一番大事 友が言う 生きていければ 悩むことなし
7日(日) ・父と共に 畑作りに 汗流す 九月の空の さわやかのもと
8日(月) ・ダイアナは 殺されたとの 説もあり 生中継の 画面に見入る
9日(火) ・子らが待つ 家帰るべし 父思う その思うほど 子らは待たず
10日(水) ・腹にある 時々の痛み ガンなのか それとも単に 潰瘍なるか
11日(木) ・あせりあり 働きにいく 意思あれど 高年齢では 支障だらけ
12日(金) ・軽い食 採ってから知る 胃の重さ 時折痛み 病かと思う
13日(土) ・結局は 優勝は無理 横浜軍 勝ったりしたら あとが大変
14日(日) ・三連休 中日とて 人の波 ターミナルには あふれている
15日(月) ・すでにもう 六十五歳 以上が 過半数との 高齢化なり
16日(火) ・明日はまた 実家へ帰るか 思い悩む 不甲斐ないのか 時代の故か
17日(水) ・あと少し 四十代 最後の年 人生はもう 半分を過ぎ
18日(木) ・肌寒し 日は移り行く 確実に 冬は嫌いな 季節ながらも
19日(金) ・何という 反撃かとぞ 思うべし 有罪議員の 入閣には
20日(土) ・学園祭 兄の学校 妹行く その帰りの あまりの遅き
21日(日) ・秋本番 山の紅葉 近くして 今年は何処で 紅葉を見る
22日(月) ・この日から 一週間は バースデー 特典ありと パチンコ店は
23日(火) ・もうやめか それともやめずに 続けるか 迷いに迷う 秋の夕暮れ
[1998年]
1月24日(土) ・残り雪 積み重なりて 黒ずみて 都会の汚れ 映し出してる
25日(日) ・青白き 頬してありぬ 月の影 あのあばたにも 人は降りしか
26日(月) ・フィーバーは 新台殊に 難しく パチプロさえも 生きがたき世よ
27日(火) ・耳済まし 目を瞬いて 待つ報せ 吉報なれと 祈る心よ
28日(水) ・月も末 また月も末 変わらずに 過ぐる毎日 静かに行きぬ
29日(木) ・一月が あっという間に 過ぎていくと 語る古老の 瞳柔らか
30日(金) ・映画では 大客船も すぐ沈む うつつでもまた 沈むのはすぐ
31日(土) ・大雪は 大都会では 大災害 薄氷踏む 人々の足
2月1日(日)・人情が 溢れて見える 大寒の日 薄着の君に 我がコート着せ
2日(月) ・貰い物の チョコレートなのと 言いながら こっそり渡す 店の裏
3日(火) ・恋文は 七五調が いいのねと 頷く君は アムロ風
4日(水) ・何でまた あなたまでがと 聞かれても 世間の風が そう吹いただけ
5日(木)・賄賂だと 知っていたなら 言わないよ ノーパンシャブ シャブ行きたいと
6日(金) ・この雪で 二人の距離が 縮まった 一つの傘に 肩寄せながら
7日(土) ・五輪には 五つの色が あるけれど 金や銀はない のかと聞く子ら
8日(日) ・華やかに 開けし五輪 雪国に 若人集り 人の輪を描く
9日(月) ・あの町に 行ってみたいな 雪国の 露天風呂には 温もりがある
10日(火) ・冬長し 気圧配置が 安定し 西高東低 長く居すわる
11日(水) ・東京は 晴の日長く 雪国は 雪降り続く 日本の冬
12日(木) ・ああどうも 昨日は塵を 出しました だから今朝は 掃除だけです
13日(金) ・陽気受け 昼寝の妻に ハエたかり 両足を擦る 許せと如く
14日(土) ・これがまあ おれの女房か おおいびき 昼日中から 部屋を揺るがす
15日(日) ・これが最後 有り金はたき 食う定食 一口ごとに 味わいながら
16日(月) ・もう金は なくなってしまい 肌寒し 次はこの服 質に入れるか
17日(火) ・一家四人 生きていくのは 難しい 我に心中 する勇気なく
18日(水) ・雪中に 黒点一つ 人の陰 こちらを向いて 急ぎ手を振る
19日(木) ・良くしゃべる 女経済 評論家 言うのは安く するは難し
20日(金) ・梅の木に 木の葉が三枚 鎮座して そよ風受けて 時折揺れる
21日(土) ・何時までも 寝ていることは ないだろう 児呻き泣き 夫伏す日に
22日(日) ・コーヒーは 濃いめでという 君はなく ただ一人居て 啜る窓際
23日(月) ・中華より 和食がいいと いつも言う 君の思い出 陰膳を置く
24日(火) ・鳥立ちて 後に一瞬 静寂 覆いかかりて 胸締めつける
25日(水) ・沖に船 小舟一隻 陽炎に 浮かんでは消え 消えては浮かぶ
26日(木) ・胴体の 下に点滅 浮かばせて 巨体を落とし 飛行機降りる
27日(金) ・白煙を 巻き上げながら 滑走す 音と姿が 部屋に溢れて
28日(土) ・雪不足 嘘のように 五輪会場 降雪に泣く
3月1日(日) ・「能無し」と 嘲る妻の 声掠れ 尻の痛みに 突き刺さる朝
2日(月) ・「臭い」とか 「汚い」とかの 嘲りは そのまま返すよ 大熨斗付けて
3日(火) ・風邪引きを 夫の罪に なする妻 息子可愛さに 「出ていけ」とまで
4日(水) ・晴れ上がり 空中姿勢も くっきりと 鳥の姿で 人が飛ぶ空
5日(木) ・そよ風を 受けて人が 空を飛ぶ そのそよ風の 気まぐれに乗せ
6日(金) ・朝風が 生暖かく なりし頃 背に寒々と 悪寒が走る
7日(土) ・笑い顔 素晴らしいねと 友が言う 作り笑いさと はにかんだ人
8日(日) ・白い肌 白い制服 白い靴 白いゲレンデ 白の一日
9日(月) ・髪の毛を 五色に染めて 滑り降り 笑顔がはじけた 十八の冬
10日(火) ・風が来た 風に乗れよと 巻き起こる 歓声に押され 飛んだ最長
11日(水) ・風流は 風の流れと 書くのだと 教えてくれた 山の神様
12日(木) ・泣いたのは 人のためでは ないのです 支えてくれた 母ら家族に
13日(金) ・怠らず 鍛えていたから 出来たこと それを世間は 驚きという
14日(土) ・悪いのは 自分でしたと 言えるだけ 爽やかさ残る 敗者の言葉
15日(日) ・死んだのは 御免と言えぬ 方だから 頭下げれれば 生きてはいける
16日(月) ・侍だ 自尊心だと 言ってても 死んでしまえば なにもないのに
17日(火) ・爆弾が 降るより先に 雪が降る 凍てついた道 メソポタミア
18日(水) ・愛しても 本命だけは 明かさない チョコをやるのは カムフラージュ
19日(木) ・春めいて 眠りを残す 早起きに 朝のついばみ 鳥の声聞く
20日(金) ・儲からぬ 景気が悪いと 言いながら カルビとロース ばかり食う人
21日(土) ・入試の 日は何時も降る と嘆いた 息子の心は 案外、「いいぞ」
22日(日) ・春めいて 四方春めいて 酒盛りに 桜花散る 杯の端
23日(月) ・世は情け 人は人情 哀れなり いさかいの果て 涙の抱擁
24日(火) ・桜散る お堀のほとり 人込みに 紛れて友は 命果てしか
25日(水) ・桜葉を 眺めて遠き 日を思う あれは青春 旅立ちの時
26日(木) ・悴との 絆を深めふ 春の夜に 時間割り書く 講義の選択
27日(金) ・遅れても 季節は巡る 正確に この列島の 果ての町でも
28日(土) ・この日々を いとおしと思う 中年の 肩に一ひら 春の知らせが
29日(日) ・満開の 花はらはらと 風に舞う 筵の上の 中年の髪
30日(月) ・「こんなので いいでしょうか」と 妻の言う 竹の子飯の 香り立てつつ
31日(火) ・一日中 町を歩いて 帰宅して 「ああ疲れた」が 楽しみの妻
4月1日(水) ・物事が 始まるときに 不始末を 仕出かす彼ら エリートの顔
2日(木) ・春眠を 貪るばかり なにもせず 何時まで続く 極楽生活く
3日(金) ・進学と 進級となる 兄妹が 顔寄せ語る お祝いの額
4日(土) ・「勧誘が 激しくいやに なっちゃうよ」 体格だけが 判断基準
5日(日) ・深夜にも 模索は続く ガイド見て どんな科目が 未来を開く
6日(月) ・白球が 伸びて気温も 上昇し 穏やかな光 グラウンドに差す
7日(火) ・春眠を 破る娘の 掃除音 母の叱声 まともに受けて
8日(水) ・春風は 雷と共に 撫でていく 一年振りに 雛外気浴び
9日(木) ・人生の 節目はいつも 春なのね しみじみ語る 失恋の後
10日(金) ・「諦めが 肝心なのよ」 と諭しても 心は他に
11日(土) ・感動は 電波などでは 伝わらぬ 「いかなくちゃ」 で来たスタジアム
12日(日) ・空の青 切り裂きながら 落ちていく 黒い物体 途中で止まる
13日(月) ・桜より 桃が好きです 梅よりもなお と花の下
14日(火) ・さあどうだ 投げた相手が 目を剥いた 素人相撲の 横綱勝負
15日(水) ・初めての 家具が到着 はしゃぐ子ら その新鮮さ いつまで続く
16日(木) ・春雷は 霹靂という 神の技 地上の人は 逃げまどうだけ
17日(金) ・蜘蛛の糸 一本空に 漂って 夕影迫る 故郷の春
18日(土) ・里はもう 根雪も溶けて 春めいて 暖かさ増し しのぎ良きかな
19日(月) ・桜散る この風景に 覚えあり 友が旅立ち 妻が来た時
20日(火) ・こんなにも 美しいのは なぜですか 片言国語で 黒人が問う
21日(水) ・模様替え 終えて一服 その廊下 薫風到り 汗を飛ばしぬ
22日(木) ・個室出来 嬉しがるかと おもいきや 早速寝入る 娘の特技
23日(金) ・数学は 日々の努力が 大切と 説く兄に言う 「私には無理」
24日(土) ・株も円も 皆値下がりし 笑う人 外人投資家 とはどんな人
25日(日) ・級友の 訃報に接し 鏡見る 皺の深さを 改めて知る
26日(月) ・人生は 終わりよければ 統べてよし と語りし人が 先に行く春
27日(火) ・猥褻な ビデオの裏に 潜むのは 現代の陰 人の情念
28日(水) ・アベックの 交通死告げる アナウンサー ただ棒読みで 心はこもらず
29日(木) ・エリートの 犯罪という 識者たち 自分自身を 含まないのか
30日(金) ・ナイフさえ 使えぬ子らの ナイフ持つ 訳を探れど 訳は分からず
5月1日(土) ・「大人より 子供のほうが 大人です」 言い放つ子の 髭の青さよ
2日(日)
3日(月)
4日(火)
5日(水)
6日(木)
7日(金)
8日(土)
9日(日)
10日(月)
11日(火)
12日(水)
13日(木)
14日(金)
15日(土)
16日(月)
17日(火)
18日(水)
19日(木)
20日(金)
21日(土)
22日(日)
23日(月)
24日(火)
25日(水)
26日(木)
27日(金)
28日(土)
29日(日)
30日(月)
31日(火)
6月1日(水)