「夏の嵐」梗概
私は幼い頃、湘南の海で過ごした幼いころを、思い返していた。手元の古いアルバムを見ていると、その夏の記憶が蘇ってくる。小学校六年生の私は姪二人と、伯父の大磯の別荘で、その夏を過ごした。
二日目に、僕たちは、沖の磯で遊ぼうと、ボ−トで海に出た。すると、後ろから、イルカのような素晴らしい泳ぎで、僕を追い越していくものがあった。そのものは、僕らと同じ磯に上がり、待ってい。小麦色に日焼けした同じ年頃の少女だった。
少女は、沖に出て巣潜りで、サザエやアワビを採っていて、僕たちにくれた。僕たちは、おいしく味わった。僕は、その子と一緒に海に潜り、収穫を競いあったが、僕は、とてもかなわなかった。
僕は、潜りにすっかり夢中になり、毎日、その磯に行った。そして、その少女と従姉妹らとも、一緒に、磯で遊び、潜っていた。沖では、浜の漁船が集まって、漁をしていた。ラジオが、「台風が近ついている」と伝えていた。
四日目、僕は海から帰ると、あの子の家に行って見たくなった。その家は、砂浜の中の一軒家だった。夜の薄明かりの中で、家の中を見ていると、あの子が寝たきりの父親の面倒を見ているのが見えた、そして、何か異常な行為をしているのを、僕は見た。それは男女の営みのようにも思われた。
台風が接近した嵐の日に、僕らは別荘で休んでいたが、沖では漁船が事故を起こしていた。スクリュ−に何かが絡まり、操縦不能になって、漂流したのだ。その日、あの子も海に出ていた。翌朝、僕は不安になって、あの子の家に向かった。あの子はいなかった。代わりに父親が、庭で倒れていた。僕は別荘の管理人に連絡して、救急車を呼び、病院に運んだ。
あの子の姿が消えていた。港に向かった僕は、漁船のスクリュ−に巻き込まれた死体があるのを知った。果して、その遺体はあの子だった。その身元が判明した頃、緊急入院していた父親も死んだ。僕たちは、浜の家で営まれた二人の葬儀に出た。そして、磯で仲良くなった頃、あの子が僕に贈ってくれた手作りの貝殻の首飾りを掛けてあげた。
−−眠りから覚めると、白い壁に囲まれた病院の窓から、遠くにその首飾りが見える。それが嬉しくて、さらに目を凝らすとあの子の顔が見えてくるーー。