「鴛鴦の契り」概要
東北地方Y県Y市郊外の農家の椎茸栽培用ビニ−ル・ハウスで主婦が死んでいる、という連絡を受けたY警察署の丸藤警部補は現場での捜査で死体の状況や検死報告から、暖房用の器具の不完全燃焼による一酸化炭素中毒死と判断し、事故死で処理した。三ヶ月後、丸藤を郵政監察官の女性、田島が訪れ「あの主婦には、死亡直前に多額の保険金が掛けられていた」と知らせた。警察は再捜査を決め、秋葉家の資産状況を洗った。農協に多額のロ−ンがあり、事件後相当額が返済され、その額は保険金額とほぼ同額、と分かった。
「保険金殺人」の容疑を深めた丸藤は、夫の亮一から聴取したが、否認したため、秋葉家を家宅捜索、物置から多量の化学薬品を押収した。一酸化炭素を発生する薬品や反応式を書いたノ−トもあり、それで一酸化炭素ガスを作れるのを確認した丸藤は、亮一を殺人と保険金詐欺容疑で逮捕、送検した。
この事件の特殊性と容疑者の自白がないのに注目した敏腕女性弁護士、有田が亮一の弁護を買って出た。有田は被害者に似ていた姉の喫茶店を訪問、店員から「ママは、最近様子が変わった」との証言を得た。翌日、亮一に接見すると亮一は「田島が私が殺した、と言ってきた」と打ち明けた。翌日、有田は姉と会うため、丸藤と店に向かったが、そこで、ガス事故が発生。店内の二人は病院に運ばれた。病院で「死んだのは米子ではない」と推測していた有田から姉を身代わりにしたことを指摘された秋葉米子は、に自供を始めた。
「夫が事業を拡大しようと大きな借金をしたが、収入は増えなかった。また姉が、たびたび借金に来た。内緒で貸したが、返してくれなかった。夫の夢の実現にはさらに資金が必要になったが、お金はなく、自分の命を引換えにするしかないと考え、田島さんに相談した」と自供した。二人は、姉を車に誘いだして、睡眠薬入りのコーヒーを飲ませて、眠らせた上、排気ガスを引き込んで殺害し、ビニール・ハウスに放置したのだった。
釈放後、留置所に妻を訪ねた亮一は、妻への手紙を見せた。それには「共に墓に入るまで、鴛鴦の契りを忘れない」とあった。