「凧」梗概
 孝子は、その正月に、墨田川で落ちて行く凧を見ながら、「これで、吹っ切れるわ」と思った。
思えば、この一年は、孝子の二十五年の人世で、一番の激動の年だった。学生時代から付き合っていた勲が、「アメリカへ行く」と言って、去って行った。勲と孝子はいつも、孝子が主導権を取る関係だったが、孝子は、その前の年のクリスマスに、勲とスキーに行き、始めてからだを許した。勲はそれから、すっかり態度が変わり、急によそよそしくなった。
孝子は突然、「結婚する」と言って来た親友の恵子と待ち合わせして、帰る時に、勲が女と歩いているのをみかけた。恵子の結婚式でも、その女性の姿をみかけた。
 勲が、アメリカに旅立つ日、孝子も見送りにいった。一人で行くのだろうと、考えていた孝子は、勲が、その女性を連れて、旅立つのを見て、すべてを理解した。