俳句作品
・うり二つ 赤子が二人 瓜二つ
・雲一つ 流れた先に 枯れススキ
・夢一つ 二つ目を見て 起きにけり
・渓流に 足を浸せば 鰯雲
・牡蠣鍋を 囲んで許す 子の非行
・暗闇の 自販機のうら 影二つ
・電線に 鳥二ついて 身を縮め
・通り雨 避けようとして つまづきぬ
・体操を している人は 輝いて
・納涼の 舟に木枯らし 夏終わる
・行く夏を 惜しむがごとく 鳥一羽
・今年は プレゼントなしかと わが子聞く
・雑踏を 探されていく ベルの音
・電光板の 文字かすれつつ 年送る
・名月を 手につかむごと 大団子
・染み一つ ない真っ白に 筋二つ
・山頂の 霧を破って 朝日立つ
・亀の背を 撫でて分かった 亀の功
・まく塩の 量の多さに 喝采し
・桟敷席 四角い中で 丸くなり
・お相撲の 焼き鳥の味 どうちがう
・落ちてきた 力士の腹に アザ二つ
・絞め込みを 湯船に流し 勝ち祝う
・「辞めます」と ファックスに書く 小心者
・「辞めます」と 言ってさばさば 年の暮れ
・「辞めます」と 言ってはみたが あてはなく
・「辞めます」と 言う決心を した夜半
・「辞めます」と 言う勇気なく ずるずると
・いつまでも 契約社員じゃ 浮かばれぬ
・繁栄と いうには足りぬ 暮れの金
・この子らに お年玉さえ やれぬ身に
・餅代も ありませんよと 妻が言い
・故郷へ 帰るのもいや クビの暮れ
・行く春を 送る父母 白髪増し
・迎春と 書いて気が付く 六十路
・夏まではと 誓う新年 習い事
・いつからか もう分からない 年の暮れ
[1996年12月2日]
・列島を 白一色に 染め抜いて
・鏡面 のように湖 凍結す
・「忙しい」 という暇もなく 師走明け
・正月は 長休みだけが 嬉しいね
・門松に サンタが吊るす プレゼント
・ツリ−切り 竹添え飾る 大晦日
・「サンタさん 会ってみたい」と 目を擦り
・赤白の 二色の服が 笑み運ぶ
・夢よりも 現実を知る 年の暮れ
・減収分を 取り戻せぬままに 年送る
[1997年]
6月1日(日)・夢のせて 移り行くはず 初夏の街
2日(月) ・日一日 芝刈り暮れし 腕痛む
3日(火) ・咲き終えし ドウダンツツジ 角に刈る
4日(水) ・芽摘み終え 軽やかなりし 老いの松
5日(木) ・下草を 刈る手に三筋 血が走る
6日(金) ・通り雨 朝のうちなら 涼み雨
7日(土) ・朝起きは 三文の徳 と夢が告げ
8日(日) ・崩れた石 壁直す老 若の腕
9日(月) ・梅雨入りも 間近と思う こぬか雨
10日(火) ・雨続く 眠りも湿る 肌に黴
11日(水) ・バルサンを 焚いては覗く 窓の外
12日(木) ・「玄さん」は 一万までに 止めておけ
13日(金) ・また勝った 「玄さん」すっかり 調子付き
14日(土) ・一人寝は 寂しからずと 風の鳴る
15日(日) ・梅雨の中休みの日 父の日と知る
16日(月) ・朝の靄 初夏の陽光 朧気にす
17日(火) ・一日寝て 窓のそよ風 命を減らす
18日(水) ・台風が 来るとの予報 光の中で
19日(木) ・梅採りて 梅酒作りに 汗流す
20日(金) ・梅雨時に 大台風とは 異変なり
21日(土) ・台風七 号来たりて 夏間近に
22日(日) ・法事行く 早起きの朝 梅落ちる
23日(月) ・座頭市 死す梅雨の晴れ 梅落ちる
24日(火) ・職安に 並ぶ人数 日々多し
25日(水) ・初夏の風 小さな網戸 吹き抜けて
26日(木) ・短編を 書きおえて良し アイスシュー
27日(金) ・書きおえて 印刷始む 夏のこと
28日(土) ・雨強く 台風近く 夏止まる
29日(日) ・風去りぬ また一陣の 起こるべし
30日(月) ・香港の 故郷へ帰る 梅雨の中
7月1日(火)・二千万 超える借金 バブルの付け
2日(水) ・現象学 世紀初頭の 色帯びて
3日(木) ・鹿沼土 大中小と 分けて汗
4日(金) ・また真夏日 梅雨前線は 雲隠れ
5日(土) ・うだるよう もうひと夏を 越せるかや
6日(日) ・酒鬼薔薇 の写真を見たと 娼の言う
7日(月) ・七夕と 言うには都会は 暑すぎる
8日(火) ・一ヵ月 髭ぼうぼうは 暑さゆえ
9日(水) ・東北は 雨続きでも この暑さ
10日(木) ・土石流 家押し流し 死者残す
11日(金) ・発登板 発勝利とは 偉ぶるな
12日(土) ・無為に過ぐ 日々の辛さよ 梅雨続く
13日(日) ・日去りぬ 徒労のうちに 終わる今日
14日(月) ・
15日(火) ・蚊の影を 電波でなくす 新兵器
16日(水) ・病院へ 送る朝に 影一つ
17日(木) ・雨もよい 部屋掃除する 排気音
18日(金) ・梅雨明ける 朝の光の まぶしきか
19日(土) ・通信簿 数学7に 娘寝る
20日(日) ・クイズほど お寒い問は 夏に合う
21日(月) ・三連休 無職の身には ピンと来ず
22日(火) ・手当て受け 三割過ぎて 職はなし
23日(水) ・蟻が出て 蟻殺し焚き 消防車
24日(木) ・ホラー書く タイプの音も 踊りつつ
25日(金) ・日一日 ホラー小説 書き涼む
26日(土) ・大嵐 西日本までで 一安心
27日(日) ・唾吐いて 嫌われし男 また負ける
28日(月) ・蕎麦ばかり 食っては寝てる 猛暑の日
29日(火) ・暑中 寒気至りて しのぎよく
30日(水) ・七月も 早くも終わり 時々刻々
31日(木) ・新しく 新書原稿 書きはじめ
8月1日(金)・暑さ来た やっと真夏に なりにけり
2日(土) ・四人もの 死刑執行 蝉の殻
3日(日) ・過去問解く 息子は裸 夏最中
4日(月) ・会員の 優先席とは 名前だけ
5日(火) ・生ぬるい 夕方の風 汗ばみぬ
6日(水) ・娘日傘 何処へ行くとも 言わぬまま
7日(木) ・大韓機 グアムに落ちて 生存者
8日(金) ・会員席 ならやっぱり フィーバーす
9日(土) ・物語 打ち込むパソコン 文字霞む
10日(日) ・満願の 執筆進む 暑中かな
11日(月) ・鳥人 翔ぶアテネにて 深更に
12日(火) ・厚すぎて 氷ばかりを 食べている
13日(水) ・娘行く 妻の実家へ 独り旅
14日(木) ・涼気来る 猛暑の中の 一休み
15日(金) ・我が国の 未来が見える 水中花
16日(土) ・遠景の 花火を愛でる 夏の窓
17日(日) ・娘帰り 部屋が明るく なりにしか
18日(月) ・大嵐 西の海へと 抜けにけり
19日(火) ・半分に 来たと知らせる 支給票
20日(水) ・暑再来 氷柱の丈 急減す
21日(木) ・評論を 書きおえてすぐ 蝉時雨
22日(金) ・クラシックが 心を癒す 一日に
23日(土) ・残暑とは 暑さ残りと 思い知り
24日(日) ・秋風も 吹き混じるころ 暑残る
25日(月) ・家帰る わが人生に 二児ありて
26日(火) ・ストレスが 溜まっていくよ 夏の終わり
27日(水) ・通り雨 過ぎてから知る 雨蛙
28日(木) ・週末は 一人寝をする 夏の宵
29日(金) ・八月も 終わりとなりて 風起きぬ
30日(土) ・やはり来ぬ 連続勝利は 夢の中
31日(日) ・あせりあり 一体どう すればいい
9月1日(月)・英国は 妃の死に 暗く沈む
2日(火) ・妃死し 報道の過誤 焦点に
3日(水) ・ダイアナは 世界の妃 人々の女神
4日(木) ・日の経つのは 光より速しを 実感し
5日(金) ・明日は行く 古里の友に 会うために
6日(土) ・仕事なし 銭無しただ 暇はあり
7日(日) ・花を植える 腐食土に ミミズいて
8日(月) ・ダイアナは 殺されたとの 説もあり
9日(火) ・家へ帰る 家に帰るべし 子らが待つ
10日(水) ・雨降りに おっぽふりふり ぶちの犬
11日(木) ・無収入 あと数カ月後に 迫りたり
12日(金) ・秋色 濃くなり 柿に蝉殻
13日(土) ・あと一つ 出ないで終わる 横浜軍
14日(日) ・傘マーク 並んで秋も 深まりし
15日(月) ・本を書く 蟻の歩みも 一歩ずつ
16日(火) ・もう半分 無職の時間が 身に刺さる
17日(水) ・他になにか する事がないか 探る
18日(木) ・このままに 死んでしまうか 秋の宵
19日(金) ・次々と 台風襲う 秋の入り
20日(土) ・学園祭 来てとも言わ 息子なり
21日(日) ・お彼岸を 寝て過ごす 四十の末
22日(月) ・この日から 一週間は バイスデー
23日(火) ・どこかに 行ってみたいな 秋晴れに
[1998年]
1月24日(土)・南海に 低気圧いて 寒厳し
25日(日) ・テレビには いいことばかり 玄関に
26日(月) ・「花みずき」 花の名でなし 銀玉を食う
27日(火) ・礼状に 認める文字 乱れけり
28日(水) ・大寒は 家にいるのが 一番だ
29日(木) ・月終わる この月の月 輝やけり
30日(金) ・今年こそ そう今年こそで 過ぎていく
31日(土) ・なんという ことか娘が 寝乱れる
2月1日(日)・楽しさは いや増せるのか 一人なら
2日(月) ・月遅れの 年賀状を 出している
3日(火) ・虎年に トラぬ狸の 革算用
4日(水) ・書いても 書いてもだめとは いえまた書きぬ
5日(木) ・竹馬の 子らの歓声 つたわりぬ
6日(金) ・日一日 日一日の 寒さかな
7日(土) ・底冷えの 朝に一滴 花の露
8日(日) ・悲しいと 泣いて見るのは メロドラマ
9日(月) ・老夫婦 互いの年を 忘れてる
10日(火) ・敷きはなしの 万年床に 日の光
11日(水) ・ワープロは 老後の惚けを 避けていく
12日(木) ・この齢で マウス操る 指の皺
13日(金) ・青白き 画面に一枝 桜咲く
14日(土) ・リンゴの樹 蜜柑の枝と 杏の実
15日(日) ・通信で 二十年越し 恋実る
16日(月) ・春霞 除いてみれば 塵の山
17日(火) ・さあどうぞ 言われて座る 花見の座
18日(水) ・滑降は 人間技とは 思われず
19日(木) ・ジャンプには 囚人苛めの 根が残り
20日(金) ・役人の ノーパン好きは 昔から
21日(土) ・役人と 先生がたは 良くしゃべる
22日(日) ・上空に 百舌一羽鳴く 大寒に
23日(月) ・白氷を 切って白刃 駆け抜ける
24日(火) ・パンチ食い 倒れた後に 阿修羅の目
25日(水) ・朝曇り 出たい気持ちも 失せていく
26日(木) ・生活は 苦しいときが 楽しかり
27日(金) ・「能無し」と 嘲る妻の 声苦し
28日(土) ・「可愛い」と 相手は息子 危ういね
3月1日(日) ・無職では 反論するのも 気力抜け
2日(月) ・当面は こういう暮らしが 似合ってる
3日(火) ・卒前と 席を立ってく 恋敵
4日(水) ・快晴に 飛躍の痕も くっきりと
5日(木) ・春間近 日一日の 日の長さ
6日(金) ・そよ風を 感じて朝の 寝坊かな
7日(土) ・春霞が 掛かって 朝の早かりし
8日(日) ・朝寝する 息子の寝顔 安らかに
9日(月) ・死んだら なにもないという 懇願の声
10日(火) ・爆撃は 二度と嫌という 砂漠の民
11日(水) ・感動は 白い背景に 赤い丸
12日(木) ・茶髪 だって頑張る 自分のため
13日(金) ・銀パイを 受けても知らず その意味を
14日(土) ・白ずくめ 白い制服 白い肌
15日(日) ・今月は これっきりよと 頬赤め
16日(月) ・腰巻きを 知らぬ茶髪は 前に締め
17日(火) ・大往生 百まで生きた 洗面器
18日(水) ・花霞 流れて朝は 光のみ
19日(木) ・特急は 止まらぬ駅に 花名所
20日(金) ・急いでも 桜前線 捕まらず
21日(土) ・花見ごろ 花冷えもして 身を竦め
22日(日) ・一輪で そっくり春に なった部屋
23日(月) ・花粉症 美女にはつらい マスク要り
24日(火) ・携帯で 花便りする 安室顔
25日(水) ・医者要らずと 青汁飲ます 母の愛
26日(木) ・接吻は 恋人のもの とは言わぬ妻
27日(金) ・我があ子は 分身ですと 母悩む
28日(土) ・誕生は 神の采配 春の夢
29日(日) ・猫でさえ 思春期になる 日が伸びて
30日(月) ・桜葉の 下で髭撫で 猫の朝31日(火) ・春風が さっと吹き抜け 町一新
4月1日(水) ・これからが 大変ですよ 船出の日
2日(木) ・季節ほど 凌ぎやすさは ない景気
3日(金) ・大学は 入ってみてから 悩むもの
4日(土) ・新生活 買いたいものは 多いけど
5日(日) ・カタログを 見ては溜め息 進入学
6日(月) ・お祝いを 集めに孫が 姿見せ
7日(火) ・子の机 親より良くて 気を損ね
8日(水) ・狭い家 四人暮らしには 捨てなくちゃ
9日(木) ・配置換え 思い思いに プラン練る
10日(金) ・無収入 極楽暮らし 何時までか
11日(土) ・春雷に 競って子馬 逃げにけり
12日(日) ・三層に 雲の連なり 日を乗せて
13日(月) ・母親に 差し出され食う 葛の餅
14日(火) ・春眠を 破る娘の 掃除音
15日(水) ・窓際に ハエ二匹いて 頬寄する
16日(木) ・アブもハチも 取らずに帰る 散歩道
17日(金) ・白球の 音爽やかに 春目覚む
18日(土) ・おばたちの 声甲高く 祝いの日
19日(月) ・割烹着 皆同じ色 老姉妹
20日(火) ・三猿は こうでしたっけ と三姉妹
21日(水) ・年齢は 体より心 生き証明
22日(木) ・入学に 着る物ないと 妻嘆く
23日(金) ・やせなくちゃ 夫の意見 妻聞かず
24日(土) ・春に三日 晴れ無しという このしゅう雨
25日(日) ・花と雨 交互に落ちる 春の雪
26日(月) ・無為徒食 ここまで来れば 芸のうち
27日(火) ・花冷えに 仕舞ったコート 探し出し
28日(水) ・これがああ 俺の娘か 高鼾
29日(木) ・これがまあ 俺の息子か 出来すぎだ
30日(金) ・これがさて 俺の女房か 肉布団
5月1日(土) ・
2日(日)
3日(月)
4日(火)
5日(水)
6日(木)
7日(金)
8日(土)
9日(日)
10日(月)
11日(火)
12日(水)
13日(木)
14日(金)
15日(土)
16日(月)
17日(火)
18日(水)
19日(木)
20日(金)
21日(土)
22日(日)
23日(月)
24日(火)
25日(水)
26日(木)
27日(金)
28日(土)
29日(日)
30日(月)
31日(火)
6月1日(水)