「土俵の下」梗概
 
 アメリカから、日本研究に留学したユダヤ人研究者、キャサリン・シュルツは、空港からのエアポート・バスの中で、相撲ファンの男性と知り合い、両国の相撲部屋、八潮部屋を訪ねて、朝稽古を見学した。初場所が始まって、国技館に毎日、相撲を見に出かけたキャサリンは、呼出しの三吉と知り合いになった。三吉は、顔のガンの手術をしたばかりで、顔が歪んでいたのが、印象に残ったが、その数日後、両国橋から墨田川に落ちて、死んでいるのが発見された。
 キャサリンは、三吉が八潮部屋所属だったため、この事件に興味を持ち、取材を始めた。この部屋では、部屋の跡目を巡って、部屋頭の大関・潮の海と若い伸び盛りの西尾の間に角逐があり、始めは潮の海に決めていた親方が、部屋付き娘の美佐子の移行を聞いて、西尾に傾いたという問題を抱えていた。
 キャサリンは、国技館で知り合ったスポーツハ新聞の記者から、西尾が相撲賭博と八百長の元締をしていたという噂話を聞かされる。
三吉は水死ではなく殺害事件だと判明し、両国署に捜査本部が置かれ、そこに髭の松田刑事も配属された。捜査本部は、西尾と三吉が両国橋の袂に駐車していた外車のなかで争っていたという聞込みを得て、西尾を重要参考人としたが、場所不調の西尾は十四日目から休場し、行く方不明になった。
 西尾のアリバイを示す三吉殺害の夜のチャンコ会の記念写真の時間記録のトリックを見破ったキャサリンは、西尾の捜索に取り掛かった松田刑事に協力する。すると、失踪した夜に、近くの寺の境内で、二人の力士が激しい稽古をしていたとの証言が出て来た。それは、潮の海と西尾とにらんだ二人は、潮の海に事情を聞いた。潮の海が語ったのは、その夜の異様な光景だった。そして、証言から西尾の遺体は、意外な場所から発見された。