SHARP VE-LC1

■概要

これといった特徴も無いが、デジカメの基本はいちおうおさえたという、オーソドックスな製品。レンズ部が回転して、自分も撮れるというのは、もともとSHARPの8mmビデオカメラ「ビューカム」のアイディアだから、カシオのQV-10も、SONYのCyberShotはその真似で、この製品はオリジナルということができるかもしれない。これらの2機種より優れた点は、レンズを前方向に回しきると、対物レンズがそっくり本体内に格納されてしまうということで、持ち運びに際に安心できる設計だ。
画質関連スペックはほとんど標準的。フラッシュは内蔵でもないし、外付けもできない。

■大きさ・重さ・外装

本体サイズは、幅123.3×高さ80.7×奥行き40.2mmで、決して小さい方ではない。ただし電池を抜いた状態の重量は210g、アルカリ電池を4本入れた状態で302gなので、大きさの割には軽い感じがする。
本体は、全体が銀色のプラスチック製で、メタリックというよりはいかにもプラスチックっぽい質感を出している。
外装デザインは、各所が微妙な曲線を描いているが、これは単にデザイン上のアクセントというわけではなく、いずれも意味を持ったものである。例えば、シャッターボタンの周囲のくぼみは、人差し指を自然にシャッターボタンに導くと同時に、シャッターボタンを本体から突起させずに、メカニカルなストロークを確保するためのしくみである。また前面のくぼみには、撮影姿勢で構えた状態でちょうど中指がかかり、本体をしっかりと保持することができる。同様に、裏面の液晶パネル右側の盛り上がりは、親指のグリップ位置を確実なものにするのと同時に、不用意に液晶パネルに指がかかることを防止する機能を持っている。

■メモリ

本体内に4MBのフラッシュメモリを内蔵し、撮影可能な枚数は、ファインモードで30枚、標準で60枚、エコノミーで120枚である。3種類のモードというのは、多すぎる気もするが、それぞれ倍ずつ撮影枚数が違うのでまだ許せるといったところ。
フラッシュメモリは固定式なので、交換したり、増設したりすることはできない。撮影した画像データをパソコンに転送するためには、IrDA方式の赤外線通信機能を利用するか、別売りのシリアルケーブルでパソコンと接続する。

■画質

35万画素のプログレッシブスキャン方式のCCDを採用し、ごく標準的な画質。ただし、エコノミーモードでは、走査線を間引いて半分にして記録し、再生時に補完しているので、結果はボケボケとなるのはやむを得ない。
ファインモードと標準モードの画質差は、記録枚数が倍違うほどにはない。通常は標準モードで十分。
VE-LC1は、フラッシュをつかうことはできないが、レンズホルダ部に絞りの手動切り替えスイッチを持っている。屋外用の設定でF値が8、屋内用では2.8である。特に明るいレンズというわけではないが、通常の照明があれば、夜間の屋内でも十分実用になる。
シャッター速度は、被写体の明るさに応じて自動的に設定される。変化の範囲は1/7.5秒から1/2000秒である。焦点距離は6mmに固定のパンフォーカス方式で、マクロ撮影機能を持っている。35mmのフィルムカメラに換算した場合の焦点距離の記述がマニュアルに無いが、画角を概測した範囲では、30mm前後の広角レンズに相当するようだ。マクロポジションでは、絞りを屋内側に設定して開いた場合、10cmから12cmの範囲でピントが合う。絞りを屋外用にして絞った場合には、8cmから17cmの範囲が使える。10cmまで寄ると、ほぼ名刺サイズのものが画面いっぱいに撮れるようになる。

■インタフェース

何気ないデザインだが、上で書いたように、細部の造作が気が利いているため、使いやすい。
私が触った中で、IrDAに対応しているのは、CyberShotと、このVE-LC1だけ。パソコン用の画像転送ソフトは、私自身触らなかったのでノーコメント。

■動作速度・消費電力

動作速度は遅い。再生時のコマの表示の切り替えに約3秒もかかる。さらに、撮影時にシャッターを押してから圧縮した画像をメモリに書き込み終わるまでには、標準モードで4〜5秒、ファインモードで9〜10秒を要する。いずれもいらいらするほどの遅さだ。
撮影時のディスプレイのアップデートは頻繁なので、画面はカメラの動きにほぼリアルタイムで追従するものの、画像はかなりぶれてしまう。これは、すなわち撮影時に手ぶれを起こしやすいことを意味している。
VE-LC1は、2.5インチ、6.1万画素という、このクラスのデジカメとしては大きめのディスプレイを装備しながら、かなり消費電力を抑えた設計となっている。単3アルカリ電池4本での連続使用時間は、再生で約90分、撮影で約55分とかなり長めだ。ちなみに、オプションの大容量(1000mAh)ニッカド電池でも連続使用時間は変わらない。

■その他特徴

「マルチモード」というデジカメとしてはユニークな機能を持っている。これは、すでに撮影してある画像を撰び、それを縦横1/4に縮小して、4×4の16枚が並んだものを1枚の画像として新たに作成する。その際に16通りから選択可能な飾り枠を画像に付加することができる。つまりプリクラモードなのだ。これをそのままビデオプリンタに出力すれば、プリクラシールを簡単に作ることができる。NECのPiconaのHTMLファイル作成機能もそうだが、カメラにこういう機能が入っていても、嬉しくないのは私だけか。

■結論

全体的にこれといった欠点もなく、バランスのよい製品だろう。液晶ディスプレイ内蔵型としては、電池寿命が長いのは魅力的かもしれない。もう少し本体サイズが小さいだけで、きっとずっと良い製品に見えるだろうと思うのだが。

[Homeへ戻る]