今月の風景

2003年5月

大台ヶ原

〜衰退する森〜

牛石が原

白骨化した倒木が、広い平原のあちこちに転がっている。

豊かな日本の森を見慣れた目には、かなり衝撃的な光景である。
このページのサブタイトルは死んだ森にしようかと、真剣に考えてしまった。それでは、大台ヶ原の森を懸命に保護している多くの方に失礼だし、倒木に囲まれながらもすくっと立ち、春を迎えて元気好く芽吹こうとしている写真真ん中のブナの木にはもっと失礼なので思いとどまった。

本来、倒木は他の生物や次の世代が育つ基盤となるはずだが・・・。
白骨化しては植物、微生物、動物に至る食物連鎖が保てない。

と、少しセンセーショナルな書き方をしてしまったが、実は牛石が原は元々笹の平原地帯であり、数十年前の写真を見る限り木は少なかったようだ。ここ以外の大台ヶ原のほとんどのエリアは、今でも豊かで重層的な森に覆われている。ただ、全般に倒木、鹿害が目立ち元気が無いのは確か。将来的には笹の平原が、森を浸食していくような気がするのだ。

大台ヶ原の森が荒れてしまったのは、ドライブウェイ開通以降登山客・観光客が増えすぎたこと(いわゆるオーバーユース)、伊勢湾台風の被害、鹿害などが原因といわれている。ただ、大台ヶ原といえば日本で最も雨の多いエリア。湿潤で豊かな森のハズなのだが、雨量が災いして土壌を流してしまっている、というのが素人の私の見方なのだが、違っているかな?

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紀伊半島の中央部に位置し、原始の森の姿をとどめるという大台ヶ原。始めて訪れたのは2年前のGW。あのときは雨と霧で、それなりに雰囲気はあったけど景色がよく見えなかった。2003年のGW。天気予報は晴れ。再び大台ヶ原を目指した。

昼過ぎに出発し、東名高速をひたすら西へ走る。今回は訳在って風圧がきつく、疲労困憊。サービスエリアでたびたび休憩をとる。夕方、キャンプ地を見つけるタイミングを逃して日が暮れてしまう。そのまま名神高速に入り、滋賀県に入って下道に降りる。

琵琶湖付近のキャンプ場を訪れてみるが、真っ暗でテント建てるのは断念。平地でも気温は6度。とにかく寒い。寝るところも無い。早々にビジネスホテルに泊まれば良かったと深く後悔。寒くて山の方に近づく気はせず、奈良市内のR24号を走行中24時間営業のマンガ喫茶を発見。3時間ほどマンガ喫茶で仮眠する。数百キロ走った上に睡眠不足でどうしようかと思ったが、リクライニングシートが有って割と良く眠れてホッとする。朝6時頃出発。明日香村の石舞台古墳などを柵の外から見学した後、R169で紀伊半島の深部へ。

大台ヶ原ドライブウェイに向かう。標高800メートル〜1200メートルまでは鮮烈な新緑のトンネル。1200メートルから1500メートルまでは淡い春紅葉の色が楽しむことが出来た。

今回の旅の相棒はこれ!
この件については、また後ほど詳しく・・・。狭くてクネクネした道はこちらの方が楽です。テントを積んで、見知らぬ土地を、始めての道をトコトコ走るのは最高です!でも、寒さと雨には弱い・・・つらいです。

さて、身支度して遊歩道へコースイン。コケが日光を浴びて緑色に輝いていて、とても綺麗。もっともコケからすると強い光は迷惑なだけだろう。日本有数の多雨地帯を代表する風景、のハズだが、コケは少なくなってきているという。(側に立っていた案内板の受け売り)

森の中、高低差のほとんど無い快適な遊歩道を歩いていく。ウラジロモミやトウヒを主体として落葉樹も混じる森の中は、昨日春を迎えたばかりといった風情で、明るく、緑はまだ薄い。

森は次第に開け、折れた木の株が点在する笹の野原へとやって来た。
枯れたり風で倒れたのだろう。痛々しい。

でも、ピクニック気分で言えば、標高1600メートルに出現した雲上の、のどかな楽園のようにも見える。人にとって、森からひらけた平原というのは、ほっとする空間らしい。

のどかな楽園を思わせる平原風景と、白骨化した倒木のギャップに、とまどいつつ歩いていると、横倒しになった一本のブナの幹から空に向かって新たな枝が生え、新芽がびっしりついているのに気づいた。少し嬉しくなって大蛇ーへ向かう。

大台ヶ原を代表する風景。有名な大蛇ー、はこの地点では全貌が見えていない。2,3メートル降りるだけで崖下の様子が良く見えるようになってくるのだが、下を見た瞬間1000メートルに及ぶという崖に脚がすくんでしまい、写真も撮れずに必死の思いで逃げ帰ってきてしまいました。足ガクガク、恐い、恐すぎです!実際問題、足滑らせたら死んじゃうよ。

牛石が原まで帰ってくると、先程の倒れたブナの所で、あろうことか、バカップルが立入禁止のロープをくぐって、横倒しになった幹をベンチ代わりに楽しそうに腰掛けているのであった。今の人間社会を象徴する姿の様な気がして、注意することも出来ず、ため息をついて立ち去る俺であった。

よく見ると枝の先にびっしりと芽がついている。春を迎えようとするブナの森である。

野生の鹿です。近くまで寄ってきました。餌をあげた人がいるのだろうか。ゴメン。期待には添えないよ。

ゆっくり歩いて休憩たっぷりとって、3時間程の散策出会った。とてもお手軽な森の旅が出来ました。帰りはドライブウエイから春を迎えた山並みの素晴らしい姿を楽しみながら下山しました。

この後は、南下して道の駅上北山の日帰り温泉に入る。少しぬるっとした感じのあるとてもいい湯だった。駐車場が満車で四輪の人は通過していって閉まったが、こんな時二輪は良い。

宿泊は下北山スポーツ公園のキャンプ場を考えていたのだが、混んでいたのでツーリングマップルを片手にしばし悩む。結局少し離れたおくとろ公園キャンプ場(道の駅おくとろ)へ。ここも混んでたけどテントを張って一泊。道の駅には温泉も有り、単純泉の普通の日帰り温泉では有るが、ゆったり湯に浸かり、星を眺めながら眠りにつく。

翌日は紀伊半島の大動脈である国道42号線を経由して、国道260号線へ。ちょっと道程長いけど、海沿いを走る快適ワインディングを楽しむ。途中で鳥羽へ向かう県道に入り、鳥羽からは伊勢湾フェリーで伊良子へ向かう。快適な船旅。

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