春の九州縦断の旅

PART4 3日目 えびの高原

九州縦断

さて、次の目的地は霧島である。

真っ直ぐ南下するルートとしては、五家荘を通るR445か、椎葉村を通るR265になる。地図を見る限り、両方とも行程の半分位は改良済みのようだが、残り半分は狭路の様である。ツーリングマップルには「時間がかかる」とか「地元の人は林道を国道の代わりに使う」といった内容の恐ろしげなコメントが載っている。

日本有数の秘境は訪れてみたい気もするが、まだこの先「霧島」「桜島」という、まあ、それだけのためにGWを費やしてもいいようなメインイベントが控えている。日程が限られているので、九州山地の最深部は迂回して、山と市街地の際を走ろう。

国道218号線と霊台橋
R218。九州を横断する準幹線国道は交通量もほどほど。新緑に包まれた穏やかな山並みを縫って、気分良く走る。

カーブを繋ぐ写真中央の緑色した鉄橋。その隣りに巨大な石橋があった。

霊台橋である。石橋としては日本第三位の大きさ。日本一は昭和七年に作られた大分県の轟橋がなのだそうだが、この霊台橋は江戸時代のもの。近代の技術で作られた物とは訳が違う。

このように九州各地には古い石橋が随所に残る。技術的な凄さもさることながら、おそらく当時の人にとって石橋が出来たというニュースは、一大イベントだったのではないか。華やかな開通式がひらかれ、見物人が大勢集まったり。

土曜日の昼にも関わらず、観光客は1人2人しかいない。ひと気の無い巨大な石橋を眺めながら、古の姿に想いを馳せた。

国道443号線〜県道25号線(大通峠)〜五木村
R443を経由して熊本県道25号宮川五木線に入った。これが当たりだった。

九州山地の最深部は避けたつもりだったが、周囲に展開する風景は全然そんな事はなくて、すごい山の中である。走れど走れど山の中。

しかし、道の方は良く整備されていて、もちろん曲がりくねっていて距離はやたらとあるのだが、高速での巡航が可能だった。交通量も僅か。

山深いけど高速移動が可能というのは、長旅において理想的な展開である。

さすがに峠付近の道は狭くなるが、車同士の離合は可能で、それ程走りにくくはない。山間を結ぶ大規模な橋梁工事も進行中で、2,3年後に完成すれば一段と走りやすい道になると思われる(物流のトラックが増えてしまうだろうけど)。
峠は平成11年完成のトンネルで越えてしまうのだが、山並みの見事さに惹かれて旧道を走ってみた。

峠付近は大通峠公園として整備され、有明海まで望めるという。歩いて展望台に登ることはしなかったが、見渡す限り山また山の風景に、九州の山深さを実感することが出来た。

峠を越えると2車線の良道のまま五木村へと下っていく。五木村の五木とは「五木の子守歌」のそれである。
道端には、こんな渓流がさりげなく有る。川面を見下ろしていると、子供に返って川遊びでもしたくなってくる。九州の山奥を走っていると、何度もそんな気分になってしまった。

五木村中心部が近づくと、道は次第に川から離れ、崖の中腹を走るようになる。凄い渓谷だ。見下ろすと寸断された旧道と思しき道が見える。

 

事業存続を巡って揺れているダム計画の一つに熊本県の川辺ダムがある。今走っている崖の中腹の道は、川辺側ダム計画により付け替えられた道なのだった。ダムの建設は始まっていないので、川の水面は遥か下。

役場や郵便局や道の駅など、五木村中心部は山の中腹に移転し、まるで空中都市のような様相を呈していた。規模が大きすぎて写真に写しようがなかったほど、という訳で写真は無いのだが、高所恐怖症の人には住めない?五木村は村ごと移転したが、一方でダム主目的の潅漑耕地面積は、今や700ヘクタールに過ぎないという。はたしてダムはどうなるのだろう。

人吉ループ橋とえびのループ橋
R445を南下し、人吉市に入る。久しぶりの市街地だ。そこからR221で更に南下する。R221で堀切峠を越えれば、鹿児島はすぐそこのはず。

巨大な橋が見えてきた。人吉ループ橋である。バイクで橋の上を通っていると、足下がスースーする。高所感で恐い。風に煽られてふらっとすると涙チョチョ切れ。下を見ないように走る。

橋を通過してホッと一息つき、展望台から振り返る。なぜこんな立派な橋が有るかというと、ここ堀切峠が鹿児島へのメインルートだったからである。今は平行して走る九州自動車道にその座を譲ったものの、乗用車からトラックまで交通量は多い。

 

堀切峠をトンネルで越えると、えびのループ橋だ。こちらはトンネルと橋を使って山をグルグル降りていく道で、えびの市の街と巨大な霧島山が美しかった。お勧め。この風景を見ると九州人は鹿児島に来たなあーと思うらしい。もっとも、えびの市は宮崎県なのだが。残念ながら交通量が多く写真撮影は断念。
霧島山系 えびの高原
宮崎県道30号線でえびの市から霧島山を目指す。霧島の山容は、えびのループ橋やえびの市からの方が良く見えるようだ。近づくにつれて山は見えなくなってしまった。しまった、もっと遠くから写真を撮っておくべきだった。
と考えているうちにワインディングに突入。一部狭いところもあるが、ほぼ快適なライディングを楽しむ。
登るにつれて季節は逆戻りし、緑が淡くなった頃えびの高原に到着。

えびの高原は、霧島山系の主峰「韓国岳」山頂直下に開けた高原だ。九州南部だから暖かいだろうと思っていたので、まだ春先の風景に少し戸惑う。

今夜の宿泊を考えていた「えびの高原キャンプ場」に下見に行く。営業はしているものの、ちょっと寒い。標高は1100メートル程と昨晩のキャンプ場より高く、風も強い。夜の寒さは平地の真冬並になりそうな気がする。一晩過す自信が無い。どうしようか。

韓国岳
高原から霧島山系の主峰「韓国岳」を望む。山の名前の由来は、韓の国まで見えるほど展望の良いことだそうだ。
確かに、この山には独特の高所感が有る。それは「えびのスカイライン」を走るだけでも感じられる。天上界に来たような、すごく高い所にいるような気がするのだ。
不動池の側の駐車場は無料だった。バイクを停め、韓国岳登山道を登ってみる。山頂までは1時間程で、百名山のなかでも手軽に登れる山らしい。残念ながら夕方も近かったので、10分ほど登ったところで引き返した。が、韓国岳の雄姿を存分に味わうことが出来た。
雲の上の台地に立っているような高所感が、そして遙か彼方まで見通せるような展望が、おわかりいただけるだろうか。写真でどう表現したらいいか、判らなかったのだが・・・。
甑岳。山頂はフラット。
韓国岳の爆裂火口壁。天空の台地を寸断している。

霧島山系の特徴は火口湖が点在していること。池巡りのハイキングコースが設定されている。時間が無くて寄れなかったが。
えびのスカイライン(県道1号)〜県道104号〜高千穂高原〜県道480号線
えびのスカイラインを下っていく。季節が一気に加速していく。
霧島温泉郷の手前で左折し、県道104号で高千穂高原へ向かう。高千穂河原には大駐車場や鹿島神宮古宮跡があり、高千穂峰が良く見えるようだが、駐車場が有料だったのでパス。県道480号線で霧島神宮方面へと降りていく。周囲は照葉樹生い茂る森。緑はだんだん深くなってきて・・・。
森の中を通る道は真っ暗である。あまりの暗さに何度シャッターを切ってもフラッシュが焚けてしまう。これだけ密度の濃い自然林の中を通る道は初めてだ。さすが九州南部。お勧め!

 

時間も遅くなってきたので、霧島神宮は素通りしてしまった。そろそろキャンプ地を探さなければ。温泉にも入りたいし。

R223に入り、道の駅霧島(神話の里公園)で一休み。天気が良ければ桜島の眺めが良いらしいが、残念ながら見えなかった。

霧島高原国民休養地
霧島高原国民休養地にやって来た。敷地は元競馬場?を利用した広大な芝生。広すぎてどこにテントを張るか迷う。料金体系ははっきり覚えていないが、乗用車だと1020円+大人一人200円の様だ。ちょっと高め。キャンプ場内に温泉もある。

テントを張り終えても、まだ空は明るかった。そして、まだえびのスカイラインの北側は走っていない。もう一度あの山まで行ってみようか。

再び、えびのスカイライン
霧島温泉郷を抜けて県道1号線を登っていく。道端からは硫黄の蒸気が噴出していて、火山と温泉の郷であることが実感できる。森の中は暗くフラッシュが発光してしまう。闇が近い。少々焦る。
山の上はまだ明るかった。むしろ、さっきより晴れている。
せっかくなので、えびのスカイライン北側も走ってみた。標高1000メートル辺りまで下ったところで日没。引き返す
えびの市営露天風呂〜最高の温泉〜
韓国岳の山頂から少し下ったところ、えびのスカイライン最高地点の少し北側に、えびの市営露天風呂はある。標高1200メートル。こんな標高の高い山奥に温泉!?と少し驚く。

ツーリングマップルでチェックはしていたのだが、ふらっと寄ったら、なんだか良さそうだ。素朴だし市営の日帰り湯だから入りやすい。

駐車場は十数台分あり、建物は素朴な山小屋。木造の素朴な離れもあり宿泊も可能だ。入浴料金は大人200円。営業時間は9:00〜19:00。詳細はえびの市のHP参照。

森の中に硫黄の香りが漂う。受付から歩いて少し登ると、真っ白な露天が見えてきた。露天風呂から白濁したお湯が溢れ出し、下界へと流れていく。浸かってみると、湯はまろやかで、身体に染みいるような心地良さ。

相客はなく私一人だけ。

 

風呂からの展望も高所感たっぷり。写真ではとんでしまっているが、霞みの向こうに九州山地の山並みを見下ろす。この泉質の気持ちよさ、この展望の気持ちよさ、「えびの市営露天風呂」は日本一の温泉だと思った。

土曜の夕方だというのに、客は私一人。遠く九州まで旅してふらっと入った温泉が今までで最高の温泉だった。最高の温泉なのに入浴料は200円。不思議だ。

そういえば、先日読んだばかりの素樹文生氏著「旅旅オートバイ」に出てくる宿もここのような気がする。不思議な巡り合わせ。

湯から出ると、えびの高原は夕闇に包まれつつあった。スカイラインを下ってキャンプ場へと急ぐ。

 

次は九州最終日。桜島を目指します。PART6を、どうぞ!

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