晩秋の北海道へ 〜4泊5日駆け足の旅〜

PART2 道東へ

本日の目的地は未定である。天気予報は晴れ、明日は雨、明後日から寒波が来るとのこと。
日高山脈より東側に行くと降雪時に戻れなくなる可能性があって恐かったが、天気予報を見て道東行きを決断した。

どこまで行けるかは走ってみないと判らないが、何となく15年前に滞在した屈斜路湖畔の和琴半島キャンプ場に泊るイメージはあった。若かりし頃への郷愁だろうか。でも稚内から屈斜路湖の距離は450キロ。日没が4時前という事を考えると、辿り着けないような気もする。

遠いけど、とにかく走ろう。

稚内にて

5時頃には目が覚めた。相部屋なので少し動くだけで物音が響く。他の人を起こしてしまうのも悪いかなと思って暫らくじっとしていたのだが、闇の中ただじっとしているのはつらい。それに今日も距離を稼ぎたいし。

暗い中、出来るだけ静かに荷造りをして、朝6時頃「みつばちの家」を出た。

3キロ程北上し、野寒布岬に行ってみた。時刻は6時30分。イルカのオブジェが可愛いが、特に何があるというわけでもなかった。

振り返ると、漁村の向こうの丘の上に自衛隊のレーダードームが並んでいた。それだけでなんとなく最北端を意識してしまうのは、冷戦の時代の名残りだろうか。

それより・・どうやら日の出のようだ。北の街は日没も早かったが日の出も早い。北方に開けたここ野寒布岬では日の出がよく見えないのだった。ちょっと場所の選択に失敗したかなと思いつつ、稚内の街へと引き返す。

少し戻ってセイコーマートに寄る。さすがセイコーマート、北海道どこにでも在るなー。ここはおそらく日本最北端のコンビニだと思う。海に囲まれた突端の先にあって、採算とれるんだろうか?

ここでPETのお茶とレーズンスティックパン8本入りを買う。朝食と昼食のつもりだったのだが。

 

 

セイコーマートは北海道ローカルながら店舗は意外なほど(失礼)洗練されていて、しかも商品が安い。特に安いのが飲料の類で、500mlPETのオリジナルのお茶が90円位で売られていたりする。店にもよるが、弁当も充実してるし、お米や野菜なども売っていて、商品構成も豊富で柔軟な感じ。夜間は閉まる店舗も多いようだが、北海道ローカルにあって本州系コンビニの必要性を感じさせないのは凄いことだと思う。

朝の稚内の街を走る。気温は1度。使い捨てカイロ6個をベストに貼り付けているので我慢できる程度だが、やはり寒い。
数キロ走ると、左手にはオホーツク海、右手には原野が広がる。国道238号線は、やはり海沿いを走る道だった。宗谷岬がおぼろげに見えている。朝の微妙な色合いが美しい。
宗谷丘陵
最北端に到達する前に宗谷丘陵へ行ってみることにした。ライハの沈没者の人が、美幌は人工的に作られたものだけど、ここは自然に出来たものだからとね、と薦めてくれたのだ。岬の少し手前で宗谷丘陵の標識に従って左折し、丘を登っていくと・・・うわー!


・・・・・。果てしなく続く丘陵地帯の出現に言葉を失う。

広大な高原という点では美ヶ原を思わせるが、ところどころがうねり、美しくも奇妙な模様を形作っている。とても面白い地形だ。

なだらかな丘と、そこに切れこむ鋭い谷。独特の地形は1万年前の地球最後の氷河期に形成されたという。丘陵地帯に形成された森林は明治期の山火事で笹原に変った。現在は広大な牧草地が広がっている。

その丘陵をアップダウンとカーブを繰り返しながら一本の道が走っている。
しばらく走ると、ワインディングは深い山の中へ入っていく。景色はあまりに雄大で、今まで走ったワインディングの中でも最上級と言えそうな気がする。20分程走ってその思いが確信に変る頃、道はダートになってしまった。
残念、まだこの道は工事中のようだ。Uターンして引き返す。完全開通したら最上級のワインディングになると思う。

宗谷岬
岬に近い一帯は広大な牧草地になっていて、早起きの牛達が草を食んでいた。
丘陵地帯を海の方向へ降りていく。灯台が見えてきた。
そして穏やかな海辺に出た。最北端というイメージとはかけ離れた、穏やかな海。

 



そこが「宗谷岬」だった。思わず一人で手をたたき、ガッツポーズ。
感動で胸が一杯なのは何故だろう。達成感かな。

国道238号線 ひたすら東へ
さあ、あとは戻るだけ。といっても来た道を引き返すのはつまらない。道東を目指そう。

海沿いの国道238号線をひたすら東へ向かう。今日はどこまで行けるだろう。

海沿いの牧草地では牛がのどかに草を食んでいた。
右手には広大な湿原が広がっていた。クッチャロ湖の方角から聞こえてきたのは白鳥の声だろうか。クッチャロ湖には秋〜春まで多い時で2万羽が集るという。先を急いでいたので通過してしまい、後で後悔した。残念見てみたかったなー。
広大な牧場が北海道らしい。
それにしても、北海道は広い。宗谷岬を出てから時速80キロをキープして、もう3時間あまりアクセルを開け続けているのに、同じような景色が続く。網走までは未だ50キロもある。

時刻は午後1時を回ったところ。太陽の高度がやけに低く、まるで夕方のようだ。緯度の高さと、明石からの経度の乖離を実感する。

サロマ湖だ。向こう岸は霞んでいて、見えているのか見えていないのか、よく判らない。その先はオホーツク海。
サロマ湖を過ぎると能取湖だ。あまり有名な湖ではないと思うが、それでも向こう岸ははるか彼方。北海道は大きいなと改めて思う。

のどかな湿原は冬枯れていたが、9月にはサンゴ草の花で真っ赤に染まるらしい。

 

 

11月の美幌峠をバイクで走れるとは思っていなかったが、この陽気なら雪も融けてるに違いない。網走湖の辺りで海岸線を外れ、南下して美幌峠を目指すことにした。
美幌の街を外れて峠道に差し掛かる直前、ふとバックミラーを見ると、遥か彼方から車が凄い速度で近づいてくる。最初は点だったのだが、すぐに形がわかるようになった。こちらも80キロ位で走っていることを考えると、200キロ位は出ているだろうか。いくら広くて見通しの良い道とはいえ、周囲には人家もあり、子供が飛び出してこないとも限らない(ちょうど下校時間である)。安全に走行できるのはせいぜい90キロまでだろう。あまりに危険な速度だ。まず考えたのは、どうやって安全にやりすごすかということだった。

と、脇から車が出てきた。速度差があまりに大きすぎて、目測を誤ったらしい。2台がぶつかって車体がバラバラになるイメージが頭にうかんだ次の瞬間、その車は速度を緩めずグイッと反対車線にはみ出して出てきた車を追い越した。暴走車だ。恐ろしくなった私は一車線分程もある広い路肩の一番端にバイクをよせて停止した。こっちに突っ込んで来たらバイクを降りて逃げ出そうかと思ったほど、暴走車はスピードを出していた。こんな経験は初めてだ。

暴走車は凄い勢いで追い抜いたと思うと、急ブレーキをかけて前方で徐行し始めた。何だろ、変な車に絡まれちゃったカナ、近づいてきたら110番したほうがいいかな、と携帯の入っているポケットに手を伸ばしつつ、よく見るとルームミラーがダブルでついている。赤色灯は見えないが、どうやら覆面パトカーらしい。あっけにとられる私。そ、そんな危険な運転で私を捕まえようとしていたのか。ノルマ達成が苦しかったのかもしれないが無茶苦茶である。俺が君を捕まえたいよ・・・。

しかしスピード出しすぎてターゲットを追い抜いてしまうとは珍しい。最後まで赤色灯を出さなかったのは、向こうも無かったことにしたかったのだろう。まあ、でっちあげで捕まらなかっただけ良かった。
(もし北海道で暴走車が近づいて来たら、安全そうな所に停まってやり過ごすのがいいと思います)

美幌峠へ
気を取り直して峠を登っていく。道自体は緩やかで、峠道という感じはしない。心配された雪も無く、ほどなく笹原が一面に広がった。
美幌峠だ。峠の周囲は駐車場になっていて、レストハウスや遊歩道が設置されている。駐車場にバイクを停め、展望台へと向かう。
峠を越えたとたん、景色は劇的に変る。息をのむ大パノラマ。15年ぶりに見る美幌峠からの景色は、過去の記憶をはるかに上回るものだった。

写真では伝えにくいけど、高所から見渡す開放感と、山々と湖が織り成す奥行きのある風景は、とてもとても雄大です。言葉でも伝えきれないや。
遠くに見えるのは斜里岳だろうか、北海道の自然の迫力を改めて感じさせる風景である。
再びバイクに跨り、屈斜路湖めがけて降りていく。素晴らしい景色。
日陰はもう薄暗かった。時刻は午後2時50分なのだが。さて、今日はどこに泊ろう。体も冷えてきて、このままだと風邪を引きそうな気がする。
和琴半島
次に訪れたのは和琴半島である。和琴半島は屈斜路湖に突き出た小さな半島で、湖岸にいくつもの温泉が湧き出る自然豊かなところだ。地熱で暖かいため、ミンミンゼミが生息する北限の地となっている。ここに来たのは、自分の中に和琴って暖かいというイメージがあったからなのかもしれない。

 

半島の付け根に位置するのが和琴キャンプ場である。実は15年前にもここに来て、居心地のよさに数日滞在したことがある。懐かしい。

訪れた時は、残念ながら冬季閉鎖中となっていた。周囲にひと気は無く、湖畔の売店も閉まっていた。誰もいないし、人知れず、ちょっとだけお借り出来ないだろうか。

徒歩3分程の、和琴半島露天風呂を訪ねてみた。誰も居ずちょっと寂しい。枯れ葉もたくさん浮いている。手を入れると少々ぬるいが、でも体を温めることは出来そうだ。

気温は5度位まで下がり、体は冷え切っている。ここなら温泉で体を温められるし、そのままシュラフに包まれば暖かに夜を過ごせそうだ。

 

日も暮れかけていて、実際のところ、それ以外に選択肢は無かった。それは朝からぼんやりと望んでいたことでもあったのだが。

結局、キャンプ場の片隅にテントを張った。

テントを張った後、再び温泉に出かけた。日が沈んで薄暗かったが、地元の方が3名ほど来ていて、意外にも賑やかな入浴となった。熊が出ないか心配で地元の方に聞いてみたのだが、出ないということだった。むしろ人の方が恐いよとのこと。テント張るなら駐車場の近くの方がいいよと言われた。

(ちなみに屈斜路湖周辺は温泉の宝庫です。自然に湧き出ている無料の温泉はこの他にも沢山ありますし、有料の普通の温泉ならキャンプ場近くの三香温泉やコタン共同浴場などで日帰り入浴可能です)

十分暖まったところでテントに戻り、シュラフに潜り込む。

蓼科を出発する時は、和琴半島まで辿り着けるとは思っていなかった。雪が降った後だし、美幌峠を越えられるとは思ってなかったから。

夕飯は稚内のセイコーマートで買ったパンだけ。少々空腹で、一人っきりのキャンプも少々恐かったが、僕はとても幸せだった。

PART3へ続く

 

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