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樋口陽一『人権原論―国法学』

「人権原論―国法学」を読んでの所感。

憲法学のありようについて福島は、「何と広大な領域を擁することになったものか、全く隔世の感です」「広域の実際問題を視野に入れながら、全般的な基準を呈示しなければならない憲法学は、自ら、理念自体の創出あるいは修正にも携わなければならないかも知れず、恐ろしく大変に想えます」と驚きを示す。同時に、「極悪非道の人間の人権こそ守られなければならない」との先輩の書面の記述に対する、駆け出し時代から抱き続けてきた違和感に、「いまようやく…示唆を与えられ自分なりに整理ができたように思います」と素直に喜んだ。

弁護士界にある単純な人権主張の傾向と、力を失いつつあるポスト・モダーンの「普遍主義」、この両極の偏向の狭間で、今後どう「人権の普遍性」を見いだしていくのか。樋口氏の今後に活躍に多大な期待を表明している。

(2004年3月)

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大橋 力『音と文明』に寄せて

 音楽やバラ栽培などの多才な趣味と、話好きの性格、そして論理的思考など、寮生時代の大橋氏の素顔に触れながら、著作で展開された壮大な文明論に対する感想をつづった。

「相撲取のように寿命が短い」学者が多い風土にあって、「一つの高峯を極めながら」「なお彫琢を重ね強靭となり雄飛する大橋氏の姿勢に」、心から敬意を表している。

『犬になれなかった裁判官』

 安倍晴彦氏の著作を読んでの所感。

 「裁判所が、体制批判者とみなす裁判官を差別し続けてきたことは、外部からもおよそ窺えたことでしたが、今般生々しい内部事情に触れ、その仕打ちの陰湿、執拗さにあきれるとともに、安倍さんが最後まで踏みとどまったことはとても大変だったことが分かりました。」との一文で始まる所感は、「『ふつうの市民』の感覚をもっている…どんな不遇にも揺るがない人間味が読みとれる」(朝日新聞・書評)にとどまらない氏の素顔を解説しながら、例えば、以下のような引用文を散りばめて、福島自身の歴史観を披瀝している。

 「精神の見地からは、『勝利』と『敗北』という言葉は一般におこなわれているのとはまったくちがった意味をもってくる。……人類のほんとうの英雄というのは、そのうつろいやすい帝国を建設した連中のことではなくて、身をまもるすべのないままに権力にうち敗かされたひとびとのことであり、精神の自由のたたかい、この地上における人間的な思想の最後の勝利をめざすたたかいのなかで、うちまかされたひとびとのことである。」(ツヴァイク、権力とたたかう良心)


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