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アヴィニョンからオートリーヴヘの旅

シュヴァルの理想宮を見に行くために、ノートに書き留めておいた情報はあまりにも少なすぎだった・・・
Avignonから電車とバスを使いHauterivesに向かったもののラッキーなことは、出かけたのがたまたま金曜日だったと言うことだけだったのでした。
Romansのバス停のお兄ちゃんが「16時のバスで向こうに行っても帰りのバスは学校が休みなので、来週までないよ!」と言ったのですが、Hauterives-St Vallier間はあるだろう<ガイドブックにこちらの方が本数が多いと書かれていたもので>とこれまた勝手にそう信じていた私。お兄ちゃんにそのことを訪ねると、Hauterives-St Vallier間は分からないとの返事が帰ってきた。
仕方がないので、次の出発時刻までRomansの街を隅々まで歩きまわることにする。

16:00 ようやく待ちに待ったHauterives行きのバスへと乗り込む。お天気は最高に良い一日でバスからの眺めは素晴らしいもの。夕暮れ時の太陽の光線がよりいっそう山を引立たせてくれた。バスのラジオからマドンナのMusicの曲が流れてきた。運転手さんもお好きなようで突然ボリュームを上げ、その大きな身体は左右に揺れだした。次々に訪れる夕焼けに染まる小さな村々を通りすぎながら・・・

そして、その曲が終わるとボリュームを下げ何事もなかったかのように、また黙々と運転をはじめるのだった。そうこうしているうちにあっという間の40分間のドライブは最後まで貸し切り状態のまま終わってしまった。

降りてすぐ目の前にシュヴァルの理想宮の一部が見えていた。思わず近づいて見ようとしたが塀がじゃまをして全体がよく見えない。運転手さんが言っていたとおりの道を歩いて行くとそこに入り口はあった。〈バスを降りて建物の反対側に位置する。〉日が沈みかけていたので、建物は明日ゆっくりと見るつもりにしていたのですが、その横のインフォメーションもすでに閉まっていた。本には5時までと書いてあったので何とかギリギリ間に合うと思っていたのでショック!仕方がないのでとにかく暗くなる前に今日の宿を探しに歩き出す。

地図がなくても30分も歩けば街中のようすはだいたい把握できた。ホテルが数軒あること、それら全てが閉まっていることを・・・
この日一番のショックで愕然とする。

おまけにここは山間に位置するのでかなりの寒さ、ニースの教会で寝泊まりしていたおじさんを思い出し、『最悪だが今夜はここで私も。』と教会の横のベンチに座り一服しようものが、あまりの寒さに耐えきれなくなってしまった・・・今夜の寝るところも確保できないまま、とにかく今のこの寒さを凌ぐために数少ない開いている店に入ることにする。微かな希望を持ち店のおじさんにこの辺に開いているホテルはないか聞いてみるが、教えてくれたのは先ほど見てきた明かりの消えていたホテルの名前だった。そしてこの店は1時間もすれば閉店となってしまうのでした・・・
外は先ほど以上の寒さ。持参してきたホカロンを開けたかったが、夜中のためにもうしばらく我慢することにする。そしてシュヴァルの理想宮の手前の角に1件バーのあったので次はそこヘと移動する。

こちらのバーは、先ほどと違って次から次とお客が出入りしていた。8時くらいから3家族のディナーパーティーも奥であるようで一安心はしたものの、飲みながら『 閉店後はどう過ごそうか・・・、この寒さで一夜過ごしたらマジで心臓が止まってしまうんだろうなぁ。』と考えるだけで為すすべはない。『このまま時間だけが過ぎてくれたらなぁ』と真面目に思っていた。

2杯目のビールをおかわりをしたときに客の一人がどこから来たのかと声をかけてきた。アヴィニョンと答えると、目がテンになったので日本と答え直した。これがきっかけで彼らと話をするようになったのだが、この日は12月29日。すでに学校は休みに入り来週まで全てのバスは出ないと言う事実を聞かされた!しかし、この時の私には明日のことよりも今夜のことの方が重要だった・・・

フランス語が、全くちんぷんかんぷんな私と、少し英語を話す彼との間で、お互いワケが分からなくなったときには、完璧な英語を話す青年が通訳に入ってくれる。そんなやりとりで話をしているうちにその人が今夜はうちに泊まればいいよと言ってくれたのでしたが、周りの友達が投げてくるわコンドーさん、ダッちゃん人形と楽しげに踊っている彼の写真 etc...

ありがたいことだったが丁寧にお断りをする。しかし、今度は周りの友達が、「こんな寒いのに外で寝る気かい?彼はいい人だから泊めてもらえばいい」と言ってくるのでした。確かに気のよさそうな人だったが、あの写真はなぁ〜そのことを伝えると、「これはフランスジョークだよ!」との答えが返ってきた。次にその彼が、「それじゃ近くに明け方まで開いているクラブがあるのでそこへ踊りに行こう!」と言い出した。ホテルも全て閉まっているような村にそんな店があるとは思えないし、まして昼間の歩きすぎで踊りに行く元気もないので即座に断る。店内は地元の人ばかりでワイワイと話は続いた。そしてこの時間は私にとって後に待っている寒い夜のことを少しの間だけでも忘れさせてくれる楽しい時間となっていた。

しかし、閉店の12時はやって来た・・・
このまま明け方まで開いていそうな不陰気のお店だったが、カウンターにいた5人以外はバタバタとみんな帰ってしまった。マスターは次々にシャッターを閉めている。この時間が来ることは分かっていたが・・・とその時、彼が再び踊りに行こうと言ってきた。どこに連れて行かれるのか不安ながらもこのまま何もせず道ばたで凍死するよりは朝まで踊り続けていた方がいいかと、その彼に着いて行くことに決める。

Hauterivesから車で15分ほど走ると真っ暗な山の上にポツリと光り輝く建物が見えてきた!ホントにこんな所が存在したんだ。彼を疑ったことに罪悪を感じる・・・脇道にそれ車はどんどん山道を上がって行った。店の前はビックリするくらいの車の数だ。それだけで、中がいっぱいなのは想像できた。中に入る前に持っていた私の荷物を車のトランクに入れたらと言ってくれたが、もしこのまま置き去りにされたら・・・と最悪の事態を考え持参すると答えた。入り口には、大きい体をしたお兄さんが2人立っていて入場チェックをしていた。中ではトンでもないことが行われいそうな不陰気だ。連れてきてくれた彼は、その怖そうなお兄さんと親しげに話をしている。そして不安とそれ以上の興味を持ちドキドキしながら連れられるまま中に入る。

外からは分からなかったが中はとても広く、そこで見た久しぶりの人混み。オランダのあの怪しげさはなく、奥ではみんな健全に踊っていた。年齢層はバラバラ、若者の方が多いが年配の人も少なくない。それにしても会う人、会う人が彼に挨拶をしている。田舎だからみんなが知り合いなのかなと思っていたがそうでもなさそうだ。そして彼の友達を紹介されたがその人達との話で『彼はホントにいい人なんだ』と確信した。今度は自ら荷物を車に置かせてほしいと頼み、身も心も軽くなってみんなで時間の経つのも忘れて踊っていた。しかしフランスの曲が流れ出しみんな大声で大合唱しながら踊っているのにはさすがについていけなかった!

16歳になる彼の娘もここに来ていていっしょに飲んでいた。この後、娘が先に帰ったこともあり安心して彼の家に泊めてもらおうと思うことが出来たのだった。それにしても、ここはホントに朝まで開いているんだろう。こちらは帰って行く方向だったがその時間でさえ、クラブに向かう車数台と入れ違いになったのだった。

Hauterivesに戻る途中、少しながらパラパラと雪が舞っていた。雪を見ながら想っていた。『踊って身体がポカポカしている今の状況で見るこの雪をとてもきれいに感じている。もしあのバーに行かなかったら今頃この雪を憎み震えあがっていたことだろう、すべて今横で車を運転している彼のおかげなんだ』と。
「明日はきっと雪が積もっているよ」と言う彼に笑いながら「今夜がクリスマスイブだとよかったのにね」と答える私。街に入った頃、ちょっと友達に用があるのでと車を止めいきなりドアをノックしはじめた。朝の4時を過ぎた時間にだ!『いくら友達でもちょっと非常識では・・・』と思う間に彼は中に入ってしまった。そしてすぐに出てきて私も中に入るよう進めた。ドアの向こうは家ではなくパンを作る彼の長年の友達の仕事場だった。毎日2時には仕事につきパンやお菓子を作っていると言う。方や4時過ぎまで踊り、飲み明かしているとにね!と皮肉る私。そしておじさんがお土産にとお菓子をくれた。

彼の家は先ほどのバーで友達が言うてたようにホント広い家だった。それにしても先に帰ったはずの娘は何故かいない。ベッドに寝るように進めてくれたが、ソファーがあったのでそこで寝させてもらう。5分もしないうちに奥の部屋から怪獣の鳴き声が聞こえてきた・・・

・・・・・・部屋の中だというのに寒くて寝れない。もう一枚毛布が欲しいくらいだったが起こすのは気の毒だし先ほどのホカロンを取り出し背中に張り付けた。 

《暖か〜い》

朝方、話声で目を覚ます。息子が帰って来ていたようだ。ふと外を見て自分の目を疑ってしまう。辺り一面が雪で真っ白っ!昨夜の彼の言葉はジョーダンなんかではなかったようだ。しばらくボーっと外を見ていると彼が部屋に来てコーヒーを勧め入れてくれた。暖かいコーヒーを飲みながら自分が今こうしていることをがとても不思議で仕方がなかった・・・この後、はじめの約束通り<昨夜のバーで泊めてくれると言った時に今夜は自分で何とかするのでもし良いのであれば明日、St Vallierまで送って欲しいと言ったこと>シュヴァルの理想宮を見学した後、彼は駅まで車で送ってくれるのだった。また後でねと言って別れた娘とは最後まで会わずじまいだった。

駅までの道中、昨夜のバーで彼が話しかけてきたときからずっとすべてを信じることができなかったこと、その後の嫌悪感、今朝目覚めて真っ白な雪景色を見たときに、今自分がここにいることの不思議さを語った。10分の1も伝わってはいないのだろうがとにかく話しておきたかった。涙腺の弱い私は駅に着いたと同時に涙が止まらなくなった。その後はもう『ありがとう!』としか言えなかった・・・

駅で電車を待つ間にふとカバンの中のもらったお菓子が目に入った。美味しいよと豪語していたので食べてみる。見た目では全く想像のつかないその一口はあのHauterivesの街すべてを表しているかのようだった。普段たまにしか口にしないチョコだがおいしさのあまり2個目、3個目と昨夜からの出来事を思い出しながら食べていた。4個目を口にする頃電車が到着する。電車に揺られながら自分が今ここにいることを確信しすべてのものに感謝した・・・

 

 

 

 

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