進路に関する学習の起点になる「自分を知るワーク」
    


担任がする「総合的な学習の時間」

 「総合的な学習の時間」は、教科の枠を越えた横断的・総合的な学習を通して、生徒には主体性や創造性を身につけさせること、教師には体験的・問題解決的な生徒参加型の授業を求めている。
 また、学習活動の例として、特に高等学校では、自己の在り方生き方や進路について考察する学習活動も示されている。進路に関する学習は、従来ホームルーム活動の中で実施されていた。だから、「総合的な学習の時間」として実施する場合は、担任が担当する可能性が高くなる。一方、従来の進路学習と同じでは「総合的な学習の時間」の趣旨が十分に活かせない恐れも考えられる。
 私は、国語を教えるかたわら、長年、学校教育相談を勉強してきた。それを「総合的な学習の時間」に活かそうと、昨年度3年生の「国語表現」の時間を利用して「こころのグループワーク」を試行をした。「出会いのワーク」「私を知るワーク」「やりとりを理解するワーク」「アサーショントレーニング」「カウンセリング実習」「MY LIFE〜自分史を書く〜」の6つのワークからなっている。注意したことは、教育相談を長年勉強してきた私でしかできないものでなく、ワークシートと手引きを作成し、多くの先生ができるようにしたことである。担任が担当するとすれば、こうした配慮は必須である。
 その中の「私を知るワーク」と「MY LIFE〜自分史を書く〜」は、在り方生き方や進路に関する学習に活かすことができる。自分の生き方在り方や進路を考えるには、まず自分自身を知ることから始めなければならない。また、過去から現在、そして未来の自分まで見据えて書いてみることは、目先にとらわれない進路を考える上で役立つ。ここでは、「私を知るワーク」の一部を紹介する。全体については私のホームページ「教育の職人」(http://www.pat.hi-ho.ne.jp/nobu-nisi/)で公開している。

私の中の5つの私
 自分について理解するのに役立つのが交流分析という心理学の理論である。交流分析では、これが私であるという状態(自我状態)を、[CP][NP][A][FC][AC]の5つに分ける。[CP]は、父親的な厳しい状態で、社会的習慣や文化や伝統を保持し伝えたり良心の役割を果たしたりする。[NP]は母親的な優しい状態で、人を愛し思いやりを持って世話をしたり激励したりする。[A]は、大人になるにつれて身についてくる状態で、冷静に現実を見つめ意志決定をする。[FC]は自由で腕白な子どもの状態で、エネルギーにあふれ本能のおもむくままに行動する。[AC]は従順な優等生の状態で、素直な態度や行動をとるが、内心で反抗したり引きこもってしまったりして敵意や反抗心を外に爆発させることもある。
 これらのバランスを測定するのがエゴグラムという質問用紙(資料1)である。。生徒に質問用紙をさせ、エゴグラムを書かせた後、「エゴグラムの見方」(資料2)を使って「5つの私」の特徴について説明する。点数の高い自我状態と低い自我状態に注目させ、得点が高い場合低い場合の、プラス面とマイナス面の中で、自分に当てはまるものを○で囲ませ、短い文章でまとめさせる。その後、4〜5人組を作って、自分のエゴグラムについて1人1分間ずつ話し、メンバーは感想を述べさせる。

5つの私をイメージする
 ここではイメージとして自分を味わう。黒板の真ん中に[A」、左上に[CP]、右上に[NP]、左下に[FC]、右下に[AC]と書く。生徒を立たせて目を閉じさせる。そして、左右前後の位置に移動するように指示をして、その自我状態を味あわせる。例えば、「一歩左前に踏み出してください。その位置が、あなたのCPです。目の前に、悪い子どもがいます。叱ってみてください。できれば身振りもして、今の感じを味わってください」「一歩左後ろに下がってください。その位置が、あなたのFCの状態です。飛んだり跳ねたり自由に体を動かしているイメージを想像してください。できれば実際に動いてみてください。今の感じを味わってください」。すべての自我状態を味わったら、一番気持ちのよい位置、一番居心地の悪い位置に立たせて、その気持ちをゆっくり確かめさせる。深い呼吸をして、静かに目を開けさせ、4〜5人組になって体験したことを交流させる。

生徒の感想
 ▼自分のいろいろな姿を見て、知らなかった自分を発見したような気がしました。▼FCの左後ろに下がる時が一番行きやすかった。子どもの頃の楽しかった頃の場面を思い出してきて、何となく心が落ち着きやすかった。一方ACの右後ろに下がる時が一番行きづらく、子どもの頃のよく叱られたり、殴られたりした頃の嫌な思い出が頭に浮かんできて、何か落ち着いていられなかった。



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