シンプルで3度おいしい「好きなものウェブ」


 年度当初、初めて顔を合わす生徒を理解するための、シンプルで三度おいしいワークシート、「好きなものウェブ」の紹介です。
 
「ウェブ(web)」とはクモの巣という意味で、蜘蛛が巣を作るように、一つのことがらから次々に思いつくことをつなげていく方法です。
 
ワークシートの真ん中の「好きなもの」と書いて、その周りに好きなジャンルを書いて○で囲み、「好きなもの」と線で結びます。例えば、「好きなもの」から「音楽」「テレビ番組」「スポーツ」「食べ物」など、ジャンルを書きます。さらに、「音楽」から「好きな歌手」→「好きな曲」→「エピソード」と書いて、○で囲み、線でつなげていきます。
 はじめは自分の好きなものなどそんなたくさんはないと思っていても、実際に書いていくと連想が広がって行きます。ワークシートが埋まっていくのも楽しみの一つです。出来上がったワークシート一杯に張りめぐらされたウェブを眺めると、私ってこんなに好きなものがあったのだと、自分の好奇心に驚かされます。その中でも、数多く枝分かれしているものや、より具体的に詳しく枝が伸びているものほど、自分が特に好きなもの、こだわっているものを表しています。

「先生に対する一問一答」
 生徒にいきなりウェブを書きなさいと言っても思いつかない人も多いでしょう。そこで、黒板に先生の例を書きながら、やり方を説明します。これは書き方の見本を示すと同時に、先生の自己紹介にもなります。そして、先生の「好きなものウェブ」を見せながら、生徒に順番に質問させます。これは、後で生徒同士でするインタビューの布石になります。
 質問させる前に、よい質問の仕方、インタビューのツボを説明します。はじめは「○○は何ですか」のように、事実を単語で答えられるような簡単な質問から始まり、次第に「○○はなぜですか」のように、ある程度の長さの文で答えなければならない、少し立ち入った質問へと展開していきます。
 前の人の質問や先生の答えをよく聞いて、できるだけ関連のある質問をすると、よりまとまったより深い情報を得ることができます。質問するだけでなく、人の話を傾聴することの大切さ、質問にもチームワークが必要なことを教えます。
 質問には誠意を持って答えます。ただし、プライベートなことや答えたくないことは答えなくてもかまいません。このことによって、生徒は教師に対して興味と親近感を抱いてくれます。
 出てきた質問は時系列で板書していきます。最後に板書した質問をふりかえりながら、質問の順番や質について考える教材にします。

「自己紹介」
 生徒に「好きなものウェブ」を書かせ、それをもとに自己紹介のメモを作らせます
。「好きなものウェブ」の中から、自分をアピールできると思うものを十八項目選び、箇条書きにさせます。名前、出身中学や前のクラスも一項目に含めます。例えば、「名前」「音楽」「好きな歌手」「好きな曲」「エピソード」なら五項目になります。より具体的なものが多く入っているほど、その人の個性に満ちた印象に残る自己紹介になります。
 そして、完成したメモをもとにして自己紹介をさせます。十八項目で約一分間の自己紹介になります。

「他者紹介」
 三つ目は、「好きなものウェブ」を使って他者紹介をさせます。二人組になって、「好きなものウェブ」を交換します。それを見ながら、互いにインタビューします。イ
ンタビューする項目としては、自己紹介に使ったもの、枝分かれが多いもの、より具体的なことまで伸びているもの、ユニークだと思うもの、自分の好みと重なるものに注目します。
 
インタビュアーは、相手に興味を持ち、その人の好みを引き出します。「どこが好きなの?」など具体的に質問から始め、次第に立ち入った詳しい内容を問う質問へと展開します。返ってきた答えについて、さらに深く具体的に質問してもかまいません。プライバシーに触れることや、相手が嫌がる質問はしないように注意してください。
 答える方は、自分に興味を持って質問されると良い気持ちになります。ただし、答えたくない質問に対しては、丁寧にその意志を伝え、答えなくてもかまいません。
 インタビューで得た情報をもとにして、他者紹介のメモを
作ります。柱になる大きな項目は三〜五個、そこに三〜五個の具体的な内容を加えて、全部で十五項目程度を箇条書きにし、最後に自分の印象や感想を付け加えます。
 発表は、ペアで壇上に立たせ、メモをもとにして互いに他者紹介させます。自分でも気づかなかった一面が見えることでしょう。

「二者面談」
 最後の使い方は、「好きなものウェブ」を回収して、生徒と二者面談をする時の資料にします。生徒同士でインタビューしたのとはまた違う角度で、生徒に迫っていくことができます。

 このように活用方法の多いワークシートですが、さらに、真ん中に書く「お題」を、長所・趣味・友だち・進路などに変えると、さまざまワークシートに変身します。



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