世の中には、馬の善し悪しを見分ける伯楽がいて、はじめて一日に千里走る馬が存在する。でも、それは伯楽の方が少ないからではない。伯楽はいつの世の中にも存在するが、千里の馬はいつもいるとは限らない。たとえ千里の馬がいても、伯楽に見いだしてもらえずに粗末な扱いを受ければ、その才能を発揮できないまま死んでしまう。千里の馬は、高機能を発揮するには大量の食糧が必要である。いくら才能があっても、普通の馬並の食糧しか与えられなければ、普通の馬並にも力を発揮できず、駄馬として屈辱を受ける。いくら馬丁に訴えても伝わらない。それでいて、馬丁は自分の眼力を棚に上げて「世の中には千里の馬がいない」と嘆いている。それは千里の馬がいないのか、千里の馬を見分けることができないのか。答えは、当然後者である。
 伯楽と奴隷人、千里馬(名馬)と常馬が対照的に使われている。
 これは例え話で、伯楽=優れた人材を見抜いて登用する明君、奴隷人=身分が低く人材を見抜く力のない小役人、千里馬=優れた才能をもった人物、常馬=才能のない普通の人物、粟一石=高い地位や報酬を例えている。小役人が世の中は才能のある人物がいないと嘆くが、それは小役人に人物を見分ける目がないだけで、いてもそれにふさわしい仕事や報酬を与えないので、その才能が生きないだけである。名君とは、優れた人材を見抜く眼力を持ち、厚遇するのでその才能が開花するのである。


0.学習プリントを配布し、学習の準備として、本文写しと書き下し文を書かせる。

1.教師が音読しながら、漢字を確認する。

2.生徒と音読する。

3.学習の準備の3の1)〜9)の書き下し文を板書させて確認する。

4.世有伯楽、然後有千里馬。

 1)「伯楽」の意味を確認する。

 2)「千里馬」の意味を確認する。

 3)「然後」の意味と指示内容を考える。

 4)「有」の場合は主語と述語(有)が逆転することに注意する。

5.千里馬常有、而伯楽不常有。

 1)「而」の意味に注意する。

 2)部分否定の句法を説明する。(教科書付録三二〇頁を参照する)

 3)全部否定の句法も説明する。

 4)他の部分否定について説明する。

 5)千里の馬はいつもいるが、伯楽はいつもはいないことを確認する。

6.故雖有名馬、祗辱於奴隷人之手、駢死於槽櫪之間、不以千里称也。

 1)「故」の意味を確認する。

 2)「雖」の意味を確認する。

  3)「奴隷人」の意味を確認する。

 4)「於」の用法を説明する。

 5)「駢死」の意味を確認する。

 6)「槽櫪之間」の意味を確認する。

 7)「於」の用法を説明する。

 8)「称」の意味と送り仮名を注意する。

 9)「也」を説明する。

    〜トイウノハ

7.馬之千里者、一食或尽粟一石。

 1)「之」の用法を説明する。

 2)「一石」の量を確認する。

8.食馬者、不知其能千里而食也。

 1)「其」の指示内容を考える。

 2)「而」の意味に注意する。

9.是馬也、雖有千里之能、食不飽、力不足、才美不外見。

 1)「也」の用法を確認する。

    〜トイウノハ

10.且欲与常馬等、不可得。安求其能千里也。

 1)「且」の意味。

 2)常馬の意味を確認する。

 3)「不可〜」の意味を確認する。

 4)「安(いづ)クンゾ〜ン也」の句法を説明する。

 5)他の反語の句法を説明する。

11.策之不以其道。食之不能尽其材。鳴之而不能通其意。

 1)「策」の主語と指示内容を考える。

 2)「其道」の指示内容と意味を考える。

 3)「食」の主語と指示内容を考える。

 4)「其材」の指示内容を考える。

 5)「鳴」の主語と指示内容を考える。

 6)「意」の指示内容。

12.執策而臨之曰、「天下無良馬。」嗚呼、其真無良馬耶、其真不識馬耶。

 1)「執策」の主語を考える。

  2)「臨」の指示内容を考える。

 3)「而」の意味に注意する。

 4)「嗚呼」の句法を確認する。

 5)「其」の指示内容を考える。

 6)「〜耶、〜耶」の句法を説明する。

13.比喩について考える。



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雑説
  学習プリント

                                点検  月  日
学習の準備

1.白文に、句読点、送り仮名、返り点を付けなさい。
2.次の漢字の読み方を確認しなさい。
伯楽(     )  然(   )ル  雖(   )ドモ  祗(  )ダ  辱(    )メラレ  以(  )テ  称(    )セ  也(   ・  )  或(   )イハ  尽(   )ス  粟(   )  一石(     )  食(    )フ  其(  )ノ  能(  )ク  能(  )  能(  )ハ是(  )ノ  飽(  )カ  足(  )ラ  見(    )レ  且(  )ツ  与(  )  常馬(     ) 可(  )カラ  安(   )クンゾ  策(    )ツニ  之(   )ニ  執(  )リテ  臨(   )ミテ  曰(  )ハク  嗚呼(   )  耶(  )
3.特に、次の部分に注意して、白文の左に書き下し文を書きなさい。
1)千里馬常有、伯楽不常有。
2)故雖有名馬、祗辱於奴隷人之手、
3)駢死於槽櫪之間、不以千里称也。
4)食馬者、不知其能千里而食也。
5)是馬也、雖有千里之能、食不飽、力不足、才美不外見。
6)且欲与常馬等、不可得。
7)安求其能千里也。
8)策之不以其道、食之不能尽其材、鳴之而不能通其意。
9)嗚呼、其真無良馬耶、其真不識馬耶。


学習のポイント
1.部分否定・反語・疑問の句法に注意して訳す。
2.接続関係に注意して訳す。
3.「其・之」の指示内容を理解する。
4.「伯楽・千里馬・奴隷人・駢死於槽櫪之間・粟一石・常馬」が比喩している内容を理解する。
5.当時の官僚社会の状況を理解し、現代社会にあてはめて考える。