和歌集


万葉集

あかねさす 紫野 行き 標野 行き 野守 は 見 ず や 君 が 袖 振る

1.音読
2.語釈
 ・あかねさす=「紫」の枕詞。黄色がかった赤。色がにているので枕詞に。【ネット】
 ・紫野=紫草が栽培されている野原。紫草は染料や薬草として大切にされた。紫は恋焦がれる思いを表す。
 ・標野=立入禁止の野原。
 ・野守=野の番人。
3.文法。
 ・ず=打消の助動詞の終止形。
 ・や=係助詞。反語。〜だろうか、いや〜でない。
 ・係り結び=文中に係助詞が使われた時、それが文末の陳述に影響を及ぼす呼応関係。

疑問
反語



連体形
か 
ぞ 

強意
なむ
こそ 已然形
 ・振る=ラ四段体
4.現代語訳
 ・天智天皇が、蒲生野で薬狩りをなさった時に、額田王が作った歌。
 ・紫草を栽培する立入禁止の野原を行き、番人が見ないでしょうか、いや見るでしょう。あなたが袖を振るのを。
5.解釈。
 ・紫草を栽培している立入禁止の天智天皇の土地に、番人が見ているのにもかかわらず、あなたが侵入して私に手を振っている。そんな私が恋しいのかしら、困った人ね。
6.「袖振る」について
 1)どんな意味を持つ行為か。
  ・愛情表現。
 2)誰が誰に手を振っているのか。
  ・君が作者に。
 3)君、作者は誰か。
  ・作者は、額田王、女性。
  ・君は、大海人皇子。
7.返歌について
 1)紫草のにほへる妹を憎くあらば人妻ゆゑにわれ恋ひめやも
 2)現代語訳
  ・紫草のように美しいあなたを憎く思っているならば、人妻だからといって、どうして私は恋などしようか、いやしない。
 3)大海人皇子が天智天皇の妻である額田王に愛情表現をしている。
8.「紫の唱和」について
 1)人物関係を整理する。
  ・野守=天智天皇。
   君=大海人皇子。
   妹=人妻=額田王。
 2)系図を見る。
 3)背景を考える。
  ・大海人皇子と額田王は元夫婦。
  ・天智天皇が自分の娘たちを大海人皇子に嫁がせ額田王を取り上げたという説もある。
  ・天智天皇が開いた宴の席で、元夫の大海人皇子が、元妻の額田王に、元の鞘に戻る 歌を読み合ったのか。
  ・後年、壬申の乱で、大海人皇子が、天智天皇の子の大友皇子と皇位争いをして勝ち、
   天武天皇になった。とすれば、この歌がその遠因になっていることになる。
 4)この歌の部立、三人の年齢などから、本当の背景を考える。
  ・「相聞」(恋愛の歌)でなく、「雑歌」(宴の歌)になっている。
  ・天智天皇は45歳前後、大海人皇子は38歳、額田王は40歳過ぎである。
  ・したがって、この歌は宴の席での余興である。
  ・「君が袖振る」は大海人皇子の舞振りを、「紫草のにほへる妹」は額田王をからかっている。額田王は大海人皇子が元服した時の添臥と言われている。
  ・万葉の時代の人の開放的な明るさを感じとる。
8)その後の人物関係
 ・有間皇子は中大兄皇子(後の天智天皇)らに謀殺されたが、その天智天皇が愛した孫の大津皇子も同じように皇位継承争いで謀殺されるという因果を考える。
 ・有間皇子は、皇極天皇と中大兄皇子の母子によって、十九才で謀殺された。
 ・大津皇子は天武天皇と太田皇女の間に生まれ、人望が厚く次期天皇の第一候補であり、祖父にあたる天智天皇(中大兄皇子)も可愛がっていた。しかし、幼くして母を亡くし天武天皇も崩御した後、
  う野皇女に自分の子の草壁皇子を擁立するために 謀殺された。
 ・天智天皇は自分が有間皇子にしたことを愛する孫にされたことになる。


東 の 野 に かぎろひ の 立つ 見え て かへり 見すれ ば 月 傾き ぬ

1.音読
2.語釈
 ・東=「ひむかし」は「日向かし」で日の出に向かう方角。
 ・かぎろひ=あけぼのの光。
3.文法。
 ・ぬ=完了ぬ止。
 ・ば=未然形に接続→仮定。〜ならば。
    已然形に接続→1)理由。〜ので。
           2)偶然。たまたま〜すると。
           3)恒常.〜するといつも。
4.現代語訳
 ・軽皇子が安騎の野で宿泊なさった時に、柿本人麻呂が作った歌。
 ・東の野にあけぼのの光が輝くのが見えて、振り返ってみると月が沈みかけていた。
5.解釈
 ・情景を絵にする。
 ・夜明けの東の空に昇る太陽、西の空に沈む月が見えている雄大な景色。
6.単に風景を詠んだ歌か。「かぎろひ」「月」とは誰をたとえているか。
 1)柿本人麻呂は、宮廷歌人。軽皇子と草壁皇子(日並皇子)に仕えた。
 2)軽皇子は、後の文武天皇。草壁皇子(日並皇子)の子。
 3)草壁皇子は、天武天皇と持統天皇(女帝)の子。期待されたが死ぬ。
 4)「かぎろひ」と「月」は誰を例えているか。
  ・かぎろひ=軽皇子。
  ・月=草壁皇子。
  ・柿本人麻呂は親子二代に仕え、その忠誠心が表れている。
7.裏の解釈
 1)万葉仮名で表記する。
  ・東野炎立所見而反見為者月西渡
 2)「西渡」の読み方。
  ・月が西に沈むので「傾く」。
 3)戯訓。
  ・丸雪(あられ)、重石(いかり)、夏樫(なつかし)・三五月(もちづき)、十六(しし)、二八十一(にくく)、山上復有山(出づ)
 4)「炎」を朝鮮語で解釈する。
  1)「炎」→「炎」→「火・火」→「火」=「日」→「日・日」→「日が並ぶ」。
  2)草壁皇子は日並皇子とも呼ばれていた。
  3)かぎろひ=草壁皇子
  4)「炎」は、朝鮮語では「勢いが衰える」意味になる。
 5)「東」の音を朝鮮語で解釈する。
  1)音読すれば「トン」で、朝鮮語では「終末」の意味になる。
  2)「東は、夜と昼、死と生の境目になる。
 6)「反見」は、朝鮮語では「懐かしがる」の意味になる。
 7)これらを総合して考える。
  ・生と死の境界の東の空に、草壁皇子の亡霊が立ち現れ、人麻呂は懐かしがっている。

岩代 の 浜松 が 枝 を 引き結び ま幸く あら ば また かへり 見 む

1.音読
2.語釈
 ・まさきく(無事に)
3.文法。
 ・ば=未然形に接続→仮定。〜ならば。
 ・む=意志む止
4.現代語訳
 ・有馬皇子が自ら悲しみ嘆いて、松の枝を結んだときの歌。
 ・岩代の浜松の枝を引き結んで、もしも無事であればまた帰って来て見よう。
5.解釈
 ・再会を誓う歌。
6.松の枝を結ぶ行為の意味は。
 1)結ぶことは、そこに魂を結び留めることであり、再びこの地に帰って来れるようにした呪いの意がある。
 2)挽歌に分類されている意味を考える。
  ・旅の歌でなく挽歌であることは、誰かの死に関する歌である。
 3)処刑される者が再び帰れるはずがないからこそ、松の枝に自分の魂を固く結びつけようとする悲痛な気持ち。
7.有間皇子の境遇について
 1)系図を見る。
 2)皇位継承問題で、皇極天皇が践祚するために,息子の中大兄皇子と共謀して、十九才の有馬皇子を謀殺した。悲劇の主人公。

田子 の 浦 ゆ うち出 て 見れ ば ま白に ぞ 富士 の 高嶺 に 雪 は ふり ける

1.音読
2.語釈
 ・ゆ=通って
3.文法
 ・ぞ→ける(詠嘆体)
4.現代誤訳
 ・長歌の意味
  ・神代の時代から神々しい富士山を見ようとしたが、富士山のために太陽も隠れ、月の光も見えず、白雲に覆われ、雪が積もっていてよく見えない。
  ・田子の浦を通って、出て見ると、真っ白に富士の高嶺に雪が降り積もっているなぁ。
5.百人一首との比較。
 1)百人一首では
  ・田子の浦にうち出てみれば白妙の富士の高嶺に雪は降りつつ
 2)表記の違いは。
  ・ゆ、ま白にぞ ふりける
 3)内容や感じの違いは。
  ・田子ノ浦で富士を見たのではなく、富士を見る場所を探している。
  ・白さが強調されている。
  ・状況ではなく、作者の感動が伝わる。

うらうらに 照れ る 春日 に ひばり 上がり 心 悲し も ひとり し 思へ ば

1.音読
2.語釈
 ・ひばり=雲雀。すずめより少し大きい。
      さえずりながら垂直に上昇し、上空で停止し、鳴き止んで急降下する。
 ・上がり=一気に高くなる。
  のぼる=徐々に高くなる。
3.文法
 ・る=存続体
 ・も=終助詞、詠嘆。〜ことよ。
 ・ば=接続助詞、原因。〜ので。
4.現代語訳
 ・うらうらと照っている春の日に雲雀が舞い上がり、心悲しいことよ、一人で思えば。5.作者の心情について
 1)「うらうらと」の語感は。
  ・のんびりしている。のどかな感じ。
 2)作者の心情は。
  ・悲し。
 3)なぜ悲しいのか。
  ・一人で孤独だから。
 4)悲しい理由。
  ・政治の権力は、大伴氏から藤原氏へ移り、不遇な境遇にあった。
 5)万葉末期になると、ストレートな心情ではなく、屈折した複雑な心情が詠まれる。

古今和歌集

袖 ひち て むすび し 水 の 凍れ る を 春 立つ 今日 の 風 や とく らむ

1.音読する。
2.語句の意味。
 ・ひつ=ぐっしょり濡れる。
 ・むすぶ=手ですくう。
 ・春立つ=立春。二月四日ごろ。
 ・とく=溶かす。
3.文法事項
 ・し(過去き体)過ぎ去った夏
 ・る(完了り体)つい先程終わった冬
 ・や(係助詞、疑問)→らむ(現在推量らむ体)
 ・らむ(現在推量)今到来した春
  けむ(過去推量)
  む(未来推量)
  べし(強い未来推量)
4.現代語訳。
 ・(夏に)袖がぐっしょり濡れて手ですくった水が、(冬に)凍っているのを、立春の今日の風が溶かしているのだろうか。
5.季節について
 1)季節の変化は。
  ・袖ひちてむすびし=夏。
  ・水のこほれる=冬。
  ・風やとくらむ=春。
  ・あき(秋)ない和歌。
 2)詠んでいるのはいつか。
  ・春。
  ・「春立ちける日よめる」とある。
  ・現在推量の「らむ」を使っている。
 3)立春とは今の暦でいつか。
  ・二月四日。節分の翌日。

世 の 中 に たえ て 桜 の なかり せ ば 春 の 心 は のどけから まし

1.音読する。
2.単語に分けさせる。
3.語句の意味。
 ・たえて=まったく。
4.文法事項。
 ・せ(過去き未)
 ・ば(接続助詞、仮定)
 ・まし(反実仮想まし止)
5.現代語訳
 ・世の中に全く桜というものがなかったとしたら、春の心はのどかだろうに。
6.心情について
 1)反実仮想について
  ・事実に反することを仮定して、その結果を想像する。
 2)事実に反することは。
  ・世の中に全く桜がないこと。
 3)どんな結果を想像しているか。
  ・春の心はのどかだろう。
 4)現実はどうか。
  ・桜があるので、春の心はのどかでない。
 5)なぜ、桜があるとのどかでないのか。
  ・いつ散るかと思うと、落ち着かないから。
 6)作者の桜への思いは。
  ・桜を愛し、散るのを惜しむ。屈折した表現。
 7)百人一首の紀友則の歌との比較
  ・ひさかたのひかりのどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ


秋 来 ぬ と 目 に は さやかに 見え ね ども 風 の 音 に ぞ おどろか れ ぬる

1.音読する。
2.単語に分けさせる。
3.語句の意味。
 ・さやかに=はっきりと。
 ・おどろく=はっと気づく。
4.文法事項
 ・ぬ(完了ぬ終止)
 ・ね(打消ず已)
 ・ども(接続助詞、逆接)
 ・ぞ(係助詞、強意)
 ・れ(自発る用)
 ・ぬる(完了ぬ体)
5.現代語訳。
 ・秋が来たと、目にははっきり見えないけれども、風の音に自然とはっと気づかされる。
6.歌意について
 1)秋の到来を何によって感じているか。
  ・風の音。
  ・景色の変化(視覚)ではなく、風の音の変化(聴覚)によって感じている。
  ・秋の風の音と夏の風の音は違うか。
 2)視覚的な秋の景色の変化は。
  ・紅葉する。
 3)聴覚と視覚とどちらが変化を感じやすいか。
  ・視覚。
  ・作者の聴覚の敏感さ。


山里 は 冬 ぞ さびしさ まさり ける 人め も 草 も かれ ぬ と 思へ ば

1.音読する。
2.単語に分けさせる。
3.語句の意味。
 ・人目=訪れてくる人。
4.文法事項
 ・ぞ(係助詞、強意)→ける(詠嘆けり体)
 ・ぬ(完了ぬ止)
 ・ば(接続助詞、理由)
5.技巧について
 ・掛詞
  ・かれ=(草が)枯れる+(人が)離れる
6.現代語訳。
 ・山里は、冬が寂しさが勝っているなぁ。訪れてくる人も離れ、草も枯れてしまうと思  うので。
7.鑑賞する。
 1)どんな感情を詠んだ和歌か。
  ・冬の寂しさ
 2)句切れは?
  ・三句切れ。
  ・区切れとは、訳した時に途中で句点が打てる所。
 3)他の修辞法は?
  ・倒置法。
 4)貴族の世界ではなく、隠遁者や修行僧などの生活する山里が舞台になっている。


思ひ つつ 寝れ ば や 人 の 見え つ らむ 夢 と 知り せ ば 覚め ざら まし を

1.音読する。
2.単語に分けさせる。
3.語句の意味。
 ・人=恋人。
4.文法事項
 ・ば(接続助詞、原因)已然形に接続している。
 ・や(係助詞、疑問)
 ・つ(強意つ止)。
 ・らむ(現在原因推量らむ体)
 ・せ(過去き未)
 ・ば(接続助詞、仮定)未然形に接続している。
 ・ざら(打消ず未)
 ・まし(反実仮想まし止)
5.現代語訳
 ・(恋人を)思いながら寝たので、きっと恋人が夢に見えたのだろうか。もし夢だと知っていたならば、目を覚まさなかっただろうに。
7.歌意について
 1)句切れは。
  ・三句切れ。
 2)なぜ、恋人の夢を見たのか。
  ・恋人のことを思いながら寝たから。
 3)反実仮想であるが、事実に反することは。
  ・夢だと知らなかったこと。
 4)どんな結果を想像しているか。
  ・目を覚まさなかった。
 5)現実はどうか。
  ・夢だと知らなかったので、目を覚ましてしまった。
 6)作者の心情は。
  ・ずっと恋人の夢を見ていたかった。
 7)夢に好きな人が出てきた体験はないか。
新古今和歌集


見渡せ ば 花 も 紅葉 も なかり けり 浦 の 苫屋 の 秋 の 夕暮れ

1.音読する。
2.単語に分けさせる。
3.語句の意味。
 ・花=桜の花。
 ・浦の苫屋=浜辺の苫ぶきの粗末な小屋。
4.文法事項
 ・ば(接続助詞偶然)
 ・けり(詠嘆けり止)
5.現代語】訳させる。
 ・たまたま見渡すと、桜の花も紅葉もないなぁ。浜辺の粗末な小屋だけがある秋の夕暮れよ。
6.歌意について
 1)句切れは。
  ・三句切れ。
 2)他の修辞法は。
  ・体言止め。
 3)花や紅葉の季節は。
  ・花は春、紅葉は秋。
 4)秋の夕暮れの寂しさを何で感じているか?
  ・浦の苫屋だが、浦の苫屋は秋だけではない。
  ・何もないことで秋を感じる。
 5)三夕(さんせき)の歌。
  ・さびしさはその色としもなかりけりまき立つ山の秋の夕暮れ (寂蓮)
   ・寂しさは、その色というのでもないのだなぁ。まきが生い茂っている山の秋の夕暮れは。
   ・三句切れ。体言止め。
   ・色。紅葉や夕焼けの赤い色ではない。杉や檜のような緑でも寂しい。
   ・つまり、秋の夕暮れは理由もなく寂しいものである。
  ・心なき身にもあはれは知られけり鴫立つ沢の秋の夕暮れ (西行法師)
   ・ものの情緒のわからない身にも、ものの情緒は自然とわかるものだなぁ。鴫が飛    び立つ沢の秋の夕暮れは。
   ・三句切れ。体言止め。
   ・鴫が飛び立つ羽根音。鴫が飛び立つ視覚的なものでなく、羽根音の聴覚である。


きりぎりす 鳴く や 霜夜 の さむしろ に 衣 片敷き ひとり か も 寝 む

1.音読する。
2.単語に分けさせる。
3.語句の意味。
 ・きりぎりす=ころおぎ。『羅生門』でも問題になった。
 ・さむしろ=幅の狭い筵。寝具にする粗末な敷物。
 ・片敷き=自分の衣だけを敷いて
4.文法事項
 ・か(係助詞・疑問)
 ・む(推量む体)
5.現代語】訳させる。
 ・こおろぎが鳴いている霜の降りる夜に、粗末な敷物に自分の衣だけを敷いて、私は寝るのだろうか。
6.歌意について
 1)季節は。
  ・秋。こおろぎ。
 2)片敷きについて
  ・共寝する男女は互いの衣の袖を敷き交わして寝ていた。片敷くとは、独り寝。
 3)共寝すべき相手は誰か。
  ・良経は直前に妻を亡くしている。
7.技巧について
 1)本歌取りとは
  ・古歌の用語を取り入れて詠み、本歌のイメージに重ねて複雑な情感を生み出す。
  ・カバーバージョン。
 2)本歌は。
  ・さむしろに衣片敷き今宵もや我を待つらむ宇治の橋姫(古今集・詠み人知らず)
  ・我が恋ふる妹は逢はさず玉の浦に衣片敷きひとりかも寝む(万葉集・柿本人麻呂)


玉 の 緒 よ 絶え な ば 絶え ね ながらへ ば 忍ぶる こと の よわり も ぞ する

1.音読する。
2.単語に分けさせる。
3.語句の意味。
 ・玉の緒=宝石をつなぐ糸。「玉」=「魂」で魂をつなぎ止めておくもの。命。
 ・忍ぶ=自分の恋心を隠す。
 ・もぞ=〜したら困る。
4.文法事項。
 ・な(完了ぬ未然)
 ・ば(接続助詞・仮定)
 ・ね(完了ぬ命令)
 ・ながらへ(ハ下二未然)
 ・ば(接続助詞・仮定)
 ・も・ぞ(係助詞・強意)
5.現代語訳
 ・我が命よ。もし絶えてしまうならば絶えてしまえ。もし生き長らえるならば、自分の恋心を隠すことが弱くなってしまうと困るから。
6.歌意について
 1)句切れは。
  ・初句切れ、三句切れ。
 2)「忍ぶること」とは。
  ・恋心。
  ・人目を忍ぶ、相手にも思いを告げられない、耐え忍ぶ恋である。
 3)感情は。
  ・自分の激しい恋心を抑えなければならない苦しさ。
  ・二句までの激しさと、三句以降の不安が対照的。
7.技巧について
 1)縁語。
  ・「絶え」「ながらへ」「弱り」は「緒」の縁語。

 


   万葉集         古今集         新古今集       
成立 奈良時代後期      九〇五年
一二〇五年
勅命 なし          醍醐天皇
後鳥羽上皇
編者     (大伴家持)
                      
紀貫之・紀友則・凡河内躬恒・壬生忠岑                藤原定家・源通具・藤原有家・藤原家隆・藤原雅経          
巻数 二〇巻         二〇巻
二〇巻
歌数 四五〇〇首
一一〇〇首
一九八〇首
部立 雑歌・相聞・挽歌
四季・恋・雑
なし
歌風   清新・素朴・
ますらおぶり     
優雅・理知的
たおやめぶり     
幽玄・有心
           
技巧 枕詞・序詞       掛詞・縁語       本歌取り・体言止め
歌人     額田王・柿本人麻呂
山上憶良・山部赤人
有間皇子・大津皇子
僧正遍照・在原業平
小野小町・喜撰法師
紀友則、壬生忠岑   
西行・藤原俊成
藤原定家・式子内親王 寂蓮、後鳥羽上皇  
特徴 現存する最古の歌集。  最初の勅撰和歌集
第八番目の勅撰和歌集