0.万葉集の説明をする。
 1)教科書の説明を音読させる。
 2)重要事項をまとめて板書する。
  1)成立 奈良時代末期
  2)編者 大伴家持
       ★エピソードについて触れる。
  3)巻数 二〇巻
  4)歌数 約四五〇〇首
  5)歌体 短歌(五七五七七)
       長歌(五七五七……五七七)
       旋頭歌(五七七五七七)
       仏足石歌(五七五七七七)
  6)表記 万葉仮名
       ★具体的には人麻呂の歌で触れる。
  7)部立 相聞(恋愛の歌)
       挽歌(死を悼む歌)
       雑歌(御幸や宴会の歌)
  8)歌風 実感、率直、力強さ
  9)特徴 現存最古の歌集
       東歌や防人歌など庶民の歌が入っている。
  10)時代区分
   第一期 天智天皇・天武天皇・有間皇子・額田王
   第二期 柿本人麻呂・高市黒人・大津皇子
   第三期 山部赤人・大伴旅人・山上憶良
   第四期 大伴家持・坂上郎女


あかねさす 紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖振る
紫草の にほへる妹を 憎くあらば 人妻ゆゑに われ恋ひめやも


★一旦恋愛の歌の贈答であると思わせておいて、宴の席での座興であったことに気づかせる。
1.文法的説明をする。
2.語釈をする。
  ・あかねさす=「紫」の枕詞。
  ・紫野=紫草が栽培されている野原。紫は恋焦がれる思いを表す。
  ・標野=立入禁止の野原。
  ・野守=野の番人。
  ・袖振る=愛情を伝える動作。
  ・にほふ=色が美しい。
  ・妹=あなた。男子が姉妹や妻や愛人など親しい女子を呼ぶ言葉。
3.現代語訳をさせる。
  ・紫草を栽培する立入禁止の野原を行き、番人が見ていないのですか、あなたが袖を振るのを。
  ・紫草のように美しいあなたを憎く思っているならば、人妻だからといって、どうして私は恋などしようか、いやしない。
     ↓
   あなたを憎く思っていないから、人妻でも恋をしている。
4.これは「紫の唱和」と呼ばれていることを説明する。
  ・この二首は恋愛の歌である。
5.系図を見ながら「野守」「君」「妹」とは誰を指すか、この歌の背景を考える。
  ・野守=天智天皇。
  ・君=大海人皇子。
  ・妹=額田王。
  ・天智天皇が開いた宴の席で、妻である額田王と前夫である大海人皇子が、不倫の愛の歌を詠みあっていることになる。
  ・元々、天智天皇が自分の娘たちを大海人皇子に嫁がせ額田王を取り上げたという説もある。
  ・後年、壬申の乱で大海人皇子が天智天皇の子の大友皇子との皇位争いに勝ち天武天皇になった。とすれば、この歌がその遠因になっていることになる。
6.この歌の部立、三人の年齢などから、本当の背景を考える。
  ・「相聞」(恋愛の歌)でなく、「雑歌」(宴の歌)になっている。
  ・この時、天智天皇は四五才前後、大海人皇子は三七、八才、額田王は四〇才過ぎである。
  ・したがって、この歌は宴の席での余興である。
  ・「君が袖振る」は大海人皇子の舞振りを、「紫草のにほへる妹」は額田王をからかっている。額田王は大海人皇子が元服した時の添臥と言われている。
  ・万葉の時代の人の開放的な明るさを感じとる。
7.「マンガ万葉集 額田王」を配布する。


磐白の 浜松が枝を 引き結び まさきくあらば またかへり見む
百伝ふ 磐余の池に 鳴く鴨を 今日のみ 見てや 雲隠りなむ

★挽歌であることに気づかせ、有間皇子や大津皇子の境遇と謀殺される心情について考える。
★有間皇子は中大兄皇子(後の天智天皇)らに謀殺されたが、その天智天皇が愛した孫の大津皇子も同じように皇位継承争いで謀殺されるという因果を考える。
1.文法的説明をする。
2.語釈をする。
  ・まさきく=無事に。
  ・松の枝を結ぶ=結ぶことは、そこに魂を結び留めることであり、再びこの地に帰っ   てこれるようにした呪いの意がある。
  ・百伝ふ=「磐余」の「イ」の音にかかる枕詞。
  ・雲隠る=皇族が死ぬこと。
3.現代語訳をさせる。
  ・磐白の浜松の枝を引き結んで、無事であればまた帰ってきて見よう。
  ・磐余の池で鳴く鴨を今日だけ見て、死んでいくのだろうか。
4.挽歌に分類されている意味を考える。
  ・旅の歌でなく挽歌であることは、誰かの死に関する歌である。
5.「松の枝を結ぶ」の意味を考える。
  ・処刑される者が再び帰れるはずがないからこそ、松の枝に自分の魂を固く結びつけ   ようとする悲痛な気持ち。
6.「今日のみ見て」「や」「なむ」に注意して、処刑される大津皇子の心情を考える。
  ・この世への未練、最後まで信じたくない気持ちと確認する気持ちが複雑に絡まって   いる。
7.有間皇子の境遇について、系図を見ながら説明する。
  ・皇位継承問題で、皇極天皇と中大兄皇子の母子によって、十九才で謀殺された悲劇   の主人公。
8.大津皇子の境遇について説明する。
  ・大津皇子は天武天皇と太田皇女の間に生まれ、人望が厚く次期天皇の第一候補であり、祖父にあたる天智天皇(中大兄皇子)も可愛がっていた。しかし、幼くして母 を亡くし天武天皇も崩御した後、う野皇女に自分の子の草壁皇子を擁立するために謀殺された。
  ・二十四才の若さであった妻の山辺皇女が髪を振り乱して駆けつけて殉死した。
  ・天智天皇は自分が有間皇子にしたことを愛する孫にされたことになる。
9.大津皇子と石川郎女の相聞歌について説明する。
  ・あしひきの山の雫に妹待つと吾立ち濡れぬ山の雫に(あなたを立って待っていると、私は山の雫に濡れてしまった)
    ・夜に男が女の家を訪れる。一晩中入れてもらえないので、翌朝歌で恨み言をいう。
  ・吾を待つと君が濡れけむ足引の山の雫にならましものを(私を待ってあなたが濡れたという山の雫になりたいものです)
    ・四句目までは5)の歌をなぞり、五句目だけを変えている。
    ・石川郎女は大津皇子の求愛を受け入れているかに見えて、最後はぐらかし、からかっている。
  ・石川郎女は政治的ライバルの草壁皇子が好きであったが、大津皇子はそれを承知で求愛した。相聞の歌の背景には皇位継承争いも絡んでいた。
  ・また、石川郎女は多くの男性と恋愛関係をもっているが、村の若者に婚(とつ)ぎの道(=性教育)を教える役割の女性であったという説もある。
10.「マンガ万葉集 有間皇子」を配布する。


東の 野にかぎろひの 立つ見えて かへりみすれば 月西渡きぬ

★大津皇子のライバルであった草壁皇子に仕えていた柿本人麻呂の歌を取り上げ、『人麻呂の暗号』をもとにして朝鮮語で解釈してみる。
1.「西渡」の読み方について、万葉仮名(義訓、借訓、戯訓)をクイズ風に質問する。
   ・丸雪(あられ)、重石(いかり)、夏樫(なつかし)・三五月(もちづき)、十    六(しし)、二八十一(にくく)、山上復有山(出づ)
2.文法的説明をする。
3.語釈をする。
  ・かぎろひ=太陽。夜明けの光。
4.素直に表の訳をさせる。
  ・東の野に太陽が出るのが見えて、振り返って見ると、月が傾いていた。
5.東から昇る「かぎろひ(太陽)」と西に沈む「月」は何をたとえているか。
  ・月=亡き草壁皇子、太陽=その子軽皇子。
  ・柿本人麻呂は親子二代に仕え、その忠誠心が表れている。
6.万葉仮名で表記し、特徴を考える。
  ・東野炎立所見而反見為者月西渡
   ・「而」を中心に、見と見、月と炎、東と西が対照になっている。
   ・東西対照の内容を表記でも表現している。
7.朝鮮語を使って第二の訳を考える。
  1)「炎」の字について考える。
   ・炎=日とすれば、「日」が並ぶとも解釈できる。
   ・草壁皇子は日並皇子とも呼ばれていた。
   ・「炎」=(軽皇子でなく)草壁皇子になる。
  2)「東」の音について考える。
   ・音読すれば「トン」で、朝鮮語では終末の意味になる。
   ・太陽の出る所は、夜と昼、死と生の境目になる。
  3)「炎」の音について考える。
   ・訓読すれば「カギロヒ→カクロヒ」になり、朝鮮語では勢いが衰える意味になる。
  4)「反見」の音について考える。
   ・朝鮮語で発音すれば「パン+キョン→パンギョ」となり、朝鮮語では懐かしがるの意味になる。
  5)これらを総合して考える。
   ・生と死の境界の東の空に、草壁皇子の亡霊が立ち現れ、人麻呂は懐かしがっている。
 8)「マンガ万葉集 柿本人麻呂」を配布する。


春過ぎて 夏来るらし 白妙の 衣ほしたり 天の香具山
春過ぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山

★草壁皇子を擁立しようとしたう野皇后(後の持統天皇)の歌を取り上げ、百人一首との違いについて考える。
1.文法的説明をする。
2.)語釈をする。
  ・香具山(耳成山、畝傍山と共に大和三山の一つ)
3.現代語訳をさせる。
  ・春が過ぎて夏が来るらしい。白い着物が干してある天の香具山よ。
  ・春が過ぎて夏が来てしまったらしい。白い着物が干してあるという天の香具山よ。
4.万葉集と百人一首の歌風の違いを考える。
  1)時制の違いについて。
   ・「来るらし」と現在の推定で、春から夏への変わり目で詠んだ。
   ・「来にけらし」と過去に完了したことの推定で、夏が来てしまってから詠んだ。
  2)場所の違いについて。
   ・「衣ほしたり」と存続している状態で、香具山が見える所で詠んでいる。
   ・「衣ほすてふ」と伝聞で、香具山が見えない所で詠んでいる。
  3)歌風の違いについて。
   ・率直で実感的な美。
   ・想像で構成的な美。


防人歌

★様々な立場から、東国から九州警備に派遣された防人の悲しみを鑑賞する。

韓衣 裾にとりつき 泣く子らを 置きてぞ 来ぬや 母なしにして
1.文法的説明をする。
2. 語釈をする。
  ・)韓衣(「裾」の枕詞)
3.現代語訳をさせ、読み手の気持ちの違いを考える。
  ・裾にとりついて泣く子どもたちを置いて来てしまった。母もいないのに。
  ・「裾にとりつき泣く」という所に、母もいない子ども達を残して防人として連れ てこられた兵士の子どもを思う気持ちが表現されている。
  ★防人に取られた父→故郷に残してきた子。

父母は 頭かき撫で 幸くあれて いひし言葉ぜ 忘れかねつる
1.方言について説明する。
 ・あれて→あれと 言葉(けとば→ことば) ぜ→ぞ 
2.文法的説明をする。
3. 語釈をする。
 ・幸く(無事で)
4.現代語訳をさせ、読み手の気持ちの違いを考える。
 ・父母は頭を撫ぜて無事であれと、言った言葉が忘れられない。
 ・「かき撫で」という所に、父母に無事に帰るようにと防人に送り出された幼い兵士の親を思う気持ちが表現されている。
 ★防人に取られた子→故郷の父母。

わが妻は いたく恋ひらし 飲む水に 影さへ見えて 世に忘られず
1.方言について説明する。
 ・恋ひ→恋ふ 影(かご→かげ)
2.文法的説明をする。
3.語釈をする。
 ・世に〜ず(決して〜ない)
4.現代語訳をさせ、読み手の気持ちの違いを考える。
 ・私の妻はたいへん恋しているらしい。飲む水に姿さえ見えて決して忘れられない。
 ・妻が恋しているらしいと推定する根拠として、飲む水に影さへ見えることを挙げている。妻を残して防人にとられた若い兵士の気持ちが表現されている。
 ★防人に取られた夫→故郷の妻

防人に 行くは誰が夫と 問ふ人を 見るが羨しさ 物思ひせず
1.文法的説明をする。
2.現代語訳をさせ、読み手の気持ちの違いを考える。
 ・防人に行くのは誰の夫かと問う人を見るのが羨ましい、心配もなくて。
 ・夫を防人にとられた妻の悲しさを、「見るが羨しさ」と間接的に表現している。
 ★夫を防人にとられた妻
3.「マンガ万葉集 防人」を配布する。



0.古今和歌集の説明をする。
 1)教科書の説明を音読させる。
 2)重要事項をまとめて板書する。
  1)成立 平安時代前期(九〇五年)
  2)勅命 醍醐天皇
   編者 紀友則・紀貫之・凡河内躬恒・壬生忠岑
  3)巻数 二〇巻
  4)歌数 約一一〇〇首
  5)部立 春・夏・秋・冬・恋・雑
       挽歌(死を悼む歌)
       雑歌(御幸や宴会の歌)
  6)歌風 優美・流麗・理知的
  7)特徴 最初の勅撰和歌集
       「仮名序」紀貫之(仮名文による最初の歌論)
  8)主な歌人
       六歌仙 僧正遍照・在原業平・文屋康秀・喜撰法師・小野小町・大伴黒主


ひさかたの光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ (紀友則)
 
1.音読する。
2.助動詞を中心に文法事項を質問する。
3.語句の説明をする。
 ・ひさかたの=天、日、月、雨、雲、光などにかかる枕詞。
 ・しづ心=落ち着いた心。
 ・花=桜の花。
4.訳す。
 ・光がのどかな春の日に、なぜ落ち着く心がなく桜の花が散るのだろうか。
5.鑑賞する。
 1)春の心を詠んだ歌である。
 2)多く使われている音と、その効果は?
  ・「の」の音を4つ使っている。
  ・のどかさを表現している。
 3)「しづ心なく散る」のは何か? その修辞法は?
  ・桜の花。
  ・擬人法。
 4)何と何が対比されているか?
  ・のどかな光と落ちつきなく散る桜の花。
 5)実際に落ち着かないのは何か? その理由は。
  ・自分の心を投影している。
  ・桜はすぐに散るので、早くみたいと心が落ち着かない。
6.設問。
 1)枕詞とかかっていく語を指摘せよ。
 2)「花の散るらむ」を訳せ。
 3)繰り返されている音について指摘し、その効果を説明せよ。


秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる (藤原敏行)
 
1.音読する。
2.助動詞を中心に文法事項を質問する。
3.語句の説明をする。
 ・さやかに=はっきりと。
 ・おどろく=はっと気づく。
4.訳す。
 ・秋が来たと、目にははっきり見えないけれども、風の音に自然とはっと気づかされる。
5.鑑賞する。
 1)秋の到来を詠んだ歌である。
 2)秋の到来を何によって感じているか。
  ・景色の変化(視覚)ではなく、微妙な風の音の変化(聴覚)によって感じている。
 3)視覚的な景色の変化にはどのようなことがあるか。
  ・紅葉する。
 4)みんなは秋の到来を何によって感じるか。
6.設問
 1)「秋来ぬ」を文法的に説明せよ。
 2)「見えねども」を文法的に説明せよ。
 3)「音にぞおどろかれぬる」の「れ」と係り結びについて文法的に説明せよ。
 4)「おどろく」の意味を答えよ。
 5)この歌の秋の感じ方について説明せよ。


山里は冬ぞ寂しさまさりける人目も草もかれぬと思へば (源宗于)
 
1.音読する。
2.助動詞を中心に文法事項を質問する。
3.語句を説明する。
 ・人目=訪れてくる人。
 ・かる=訪れる人が「離る」と草が「枯る」の掛詞。
4.訳す。
 ・山里は、冬が寂しさが勝っているなぁ。訪れてくる人も離れ、草も枯れてしまうと思  うので。
5.鑑賞する。
 1)冬の寂しさを詠んだ歌である。
 2)句切れは?
  ・三句切れ。
 3)他の修辞法は?
  ・倒置法。
 4)貴族の世界ではなく、隠遁者や修行僧などの生活する山里が舞台になっている。
 5)冬の寂しさを何によって感じているか?
  ・訪れる人もなく、草も枯れたことによって感じている。
6.設問。
 1)「かれぬ」を文法的に説明せよ。
 2)係り結びの部分について文法的に説明せよ。
 3)掛詞について指摘し、説明せよ。
 4)掛詞に注意して訳せ。
 5)区切れを答えよ。
 6)山里の冬の寂しさの原因を説明せよ。


思ひつつ寝ればや人の見えつらむ夢と知りせば覚めざらましを (小野小町)
 
1.音読する。
2.助動詞を中心に文法事項を質問する。
 1)下二已 2)接続助詞(原因) 3)係助詞(疑問) 4)下二用 5)強意止
 6)現在推量体(結び) 7)四用 8)過去未 9)接続助詞(順接仮定) 10)下二未
 11)打消未 12)反実仮想止
3.語句の説明をする。
 ・人=恋人。
4.訳す。
 ・思いながら寝たので、きっと恋人が夢に見えたのだろうか。もし夢だと知っていたな  らば、目を覚まさなかっただろうに。
5.鑑賞する。
 1)作者の小野小町は醍醐の小野に縁がある。
 2)句切れは?
  ・三句切れ。
 3)反実仮想を使っているが、実際は?
  ・夢の中の出来事を現実だと思っていたので、夢から覚めてしまった。
 4)夢の意味は?
  ・夢の中で恋人に会うのは、自分が相手を思って寝たから。
  ・または、相手が自分を思って寝たから。
 5)夢に好きな人が出てきた体験はないか。



0.新古今集の説明をする。
 1)教科書の説明を音読させる。
 2)重要事項をまとめて板書する。
  1)成立 鎌倉時代初期(一二〇一年)
  2)勅命 後鳥羽上皇
   編者 源通具・藤原有家・藤原定家・藤原家隆・藤原雅経・寂蓮
  3)巻数 二〇巻
  4)歌数 約一九八〇首
  5)歌風 唯美的・幻想的・象徴的
      体言止め・本歌取り・縁語
  6)特徴 八番目の勅撰和歌集
  7)主な歌人 西行・藤原俊成


春の夜の夢の浮き橋とだえして峰にわかるる横雲の空 (藤原定家)
 
1.音読する。
2.語句の説明をする。
 ・春の夜=短くはかないもの。
 ・夢の浮き橋=はかない夢。「夢」も「浮き橋」もはかなく、不安定で、たよりないイメージ。
           『源氏物語』の最後の巻名。
           「とだえ」は縁語。
 ・横雲=横に細くたなびいている雲。
3.訳す。
 ・短くはかない春の夜の、はかない夢が途絶えて、峰で別れている横雲がたなびく空。
4.鑑賞する。
 1)修辞法とその効果は?
  ・体言止め。
  ・余韻を残す。
  ・絵画的である。
 2)峰で別れる雲は何を暗示しているか?
  ・別れていく恋人。
 3)春の夜の夢や浮き橋は何を表現しているか?
  ・はかなさ。
  ・『源氏物語』の薫と浮舟のはかない恋を連想させる。
5.設問。
 1)「峰にわかるる横雲」は何をたとえているか、説明せよ。
 2)この歌の修辞について説明せよ。


寂しさはその色としもなかりけりまき立つ山の秋の夕暮れ (寂蓮)

1.音読する。
2.助動詞を中心に文法事項を質問する。
3.語句を説明する。
 ・真木=杉や檜。常緑樹。
4.訳す。
 ・寂しさは、その色というのでもなかったなぁ。杉や檜が生い茂っている山の秋の夕暮  れ。
5.鑑賞する。
 1)句切れは?
  ・三句切れ。
 2)修辞法は?
  ・体言止め。
 3)秋の夕暮れの寂しさを何で感じているか?
  ・紅葉や夕焼けの赤い色のせいではない。
  ・杉や檜のような常緑の木が生い茂っていても寂しいものである。
  ・つまり、秋の夕暮れは理由もなく寂しいものである。
 4)「三夕の歌」を紹介する。
 ・心なき身にもあはれは知られけり鴫立つ沢の秋の夕暮れ(西行)
 ・見渡せば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮れ(藤原定家)
6.設問。
 1)「なかりけり」を文法的に説明せよ。
 2)「その色」とは何の色か、説明せよ。
 3)区切れを答えよ。
 4)作者は「秋の夕暮れ」の「寂しさ」を何に感じているか、説明せよ。
 5)この歌の修辞について説明せよ。


志賀の浦や遠ざかりゆく波間より凍りていづる有明の月 (藤原家隆)
 
1.音読する。
2.助動詞を中心に文法事項を質問する。
 1)間投助詞
3.語句の意味を説明する。
 ・遠ざかりゆく=水が岸辺から凍っていき、波打ち際が遠ざかっていく。
 ・凍りていづる=凍ったように冷たく冴えて出る。
 ・有明の月=夜が明けても空に残っている、陰暦十六日以降の月。
4.訳す。
 ・志賀の浦よ。岸辺から凍っていき波打ち際が遠ざかっていく波の間から、凍ったよう  に冷たく冴えて出る有明の月。
5.鑑賞する。
 1)句切れは?
  ・初句切れ。
 2)修辞法は?
  ・体言止め。
  ・体言止め。
  ・本歌取り。
 3)本歌取りを説明する。
  ・本歌は「さ夜ふくるままに汀や凍るらむ遠ざかりゆく志賀の浦波」
   訳は「夜がふけるにつれて湖が凍っているようである。波打ち際が遠ざかっていく志賀の浦よ。」
  ・冬の志賀の浦を題材にしている点は共通している。
  ・地名を先に出すことで、読者に場所を想像させる。
  ・「有明の月」を加えることで、夜更けの寒々とした感じを深めている。
6.設問。
 1)区切れを答えよ。
 2)「波間」が「遠ざかりゆく」理由を説明せよ。
 3)誇張表現になっている部分を指摘せよ。
 4)「さ夜ふくるままに汀や凍るらむ遠ざかりゆく志賀の浦波」と比較して、この歌の本歌取りになっている部分を指摘せよ。
 5)本歌と共通している感じを説明せよ。
 6)この歌で新たに付け加えられたものと、その効果を説明せよ。


玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることのよわりもぞする (式子内親王)

1.音読する。
2.助動詞を中心に文法事項を質問する。
3.語句の説明をする。
 ・玉の緒=命。
        「絶え」「ながらへ」「弱り」は「緒」の縁語。
 ・忍ぶ=自分の恋心を隠す。
 ・もぞ=〜したら困る。
4.訳す。
 ・我が命よ。もし絶えてしまうならば絶えてしまえ。もし生き長らえるならば、自分の  恋心を隠すことが弱くなってしまうと困るから。
5.鑑賞する。
 1)句切れは?
  ・初句切れ、二句切れ。
 2)「忍ぶること」とは何か?
  ・恋心。
  ・人目を忍ぶ、相手にも思いを告げられない、耐え忍ぶ恋である。
 3)詠まれている感情は?
  ・自分の激しい恋心を抑えなければならない苦しさ。
  ・二句までの激しさと、三句以降の不安が対照的。
6.設問。
 1)「絶えなば」を文法的に説明せよ。
 2)「絶えね」を文法的に説明せよ。
 3)「ながらへ」を文法的に説明せよ。
 4)「忍ぶる」を文法的に説明せよ。
 5)係り結びの部分について文法的に説明せよ。
 6)「玉の緒」の意味を答えよ。
 7)「もぞ」の意味を答えよ。
 8)区切れを答えよ。
 9)「忍ぶること」とは何か、説明せよ。



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