ウサギ
 
南 佳士


教材観
 「ウサギは寂しいと死んじゃうってほんとかなぁ。」次男のつぶやきが全体のテーマになってくる。
 この小説の時間軸は、私が父親になっている現在、私が小学校四年生から六年生の頃、私が浪人生から大学生までの頃、そして再び現在に戻る。
第一段落
 現在の家族構成は、私(父)、妻、長男、次男、私の父。過去には、私の父、実母、継母、祖母、そして中川清子が登場する。過去の再婚して別居していた父が、現在の寝たきりの父である。
 現在、私の父は、寝たきりになっている。口も利けず、愛想笑いもせず、魚のような目を向け、痰が口からあふれ出している。妻は、その介護に疲れ切ってヒステリックになっている。長男は、高校二年で無口である。次男は、中学二年で極端なほど他人に気をつかう。食事内容の乏しさをカバーするために冒頭のような話題を提供したり、管理されるのを嫌ってバスケット部を辞めて父の介護を手伝ったり、それをさりげないユーモアで表現したりする。その話題に出たのが「ウサギ」である。ウサギは、白くて清潔で可憐なものの象徴で、清いものは弱い、感受性が鋭い動物は寂しさに耐えきれずに死んでしまう、寂しさが刃物になる。ウサギの話題や、次男の前向きな優しさに、私は余裕のない小学校時代を思い出す。
第二段落
 群馬の山村の谷間で私は小学校時代を送った。母は教師をしていて三歳の時に死んでいる。父は再婚して継母とバスで二時間かかる鉱山の社宅にいて週末しか帰らない。私は祖母と姉と三人で暮らしている。
 私は祖母の枯れた穏やかな母性で育ったせいか、わがままで小心な少年に育っている。死んだ母が小学校の教師をしていたので同情的であったのと、学業ができたので、大目に見てくれ、お山の大将になっていた。理科の時間に実習でもないのにトマトの世話を続けたり、一日中信号機の模型づくりに没頭したりした。
 そこに登場したのが、転校生の中川清子である。発電所の所長の娘で、都会の匂いのする言葉づかいをしていた。容貌は可愛らしく、学業成績もよく、しとやかで控えめで、運動も抜群であった。まるでウサギのような愛らしさと俊敏さを持っていた。すぐにクラスのアイドルになった。それが、次男のいう酒井法子と共通する。今となってはイメージダウンだが。
 彼女の登場で、私の立場は一転する。教師たちは明らかに高圧的になった。私は清子に対して、あこがれと嫉妬の入り交じった羨望を持つようになった。
第三段落
 いじめや暴力はクラス全体を敵に回すことになる。そこで、ランドセルにウサギを入れるというイタズラを思いつく。それでも、ウサギが死なないようにエサを入れたり、ノートや教科書が汚れないように出したりする配慮をした。そこに私の小心ぶりがある。
 イタズラをしてから後悔する。祖母に相談しなかったことは精神的な乳離れであった。しかし、イラズラは発覚しなかった。清子が黙っていてくれたのだと思うと、嫉妬が消え、その懐の深さに恋心に似た憧れを感じた。だが、面と向かうと何も話せなくなり、フォークダンスで手をつなぐと胸が苦しくなった。この辺りは時代を感じる。清子の家の近くまで行き清子を想像すると、渋皮の残る生栗でさえ口に含むとほのかに甘く感じられた。秋の夕暮れの空気を清子と共有していると思うと寂しくなかった。この甘酸っぱい疼きは、あきらかに初恋であった。
第四段落
 中学校に上がると清子が転校し、学校に興味がなくなった。東京に出ていた父に誘われ、見なければならない夢があると思い上京する。その夢は地方の青年が抱く漠然とした都会へのあこがれであった。しかし、父と継母の冷めた共同生活、乾ききった寂寥ばかりの生活の中で、夢は消え去っていき、小説と受験勉強に逃避する。サッカー部も、放課後まで教師に管理されるのが嫌で辞めてしまう。バスケット部を辞めた意固地な次男と重なる。意固地な性格も遺伝するのかと思うと恐ろしくなり、なんの説得もできなかった。ただ、息子は明るく振る舞うが、自分のその後の青春は内へと籠もっていく違いはある。受験勉強に逃避したお蔭で進学校と呼ばれる高校へ進み、小説を読みふける。大学は文学部へ行こうと思ったが、それでは食えないので実学の医学部を選択したが、浪人した。この辺り、
進路を考える生徒たちの姿と重なる部分である。
 お茶の水の予備校で、中川清子と再会する。劣等感にさいなまれながらも、あわよくば初恋の告白をしようと目論んでいた。しかし、清子は、目の縁が固くぎこちない冷えた笑顔で、群馬の山村での生活についてはそっけない話をした。そして、自分は一つのことを始めると他の事は目に入らなくなる、今は精神科医になりたいので受験勉強だけをすると言う。彼女の態度は、成績優秀な浪人生らしい正論であった。しかし、幅も奥行きもなく平板で機械的であった。少し早く大人になったのか、それだけではない気になる点もあった。別れ際の笑顔も寂しそうだった。この時の第一印象が、後の彼女の自殺の布石になっている。
 清子と別れてから、ウサギの話題を出していたら清子の苦笑でも誘い出せたのではないかと後悔した。
 それから約一年間、再会以来一度も会わなかった。なぜか清子は、永遠に口もきけない別世界の人のように思えた。
第五段落
 春が来て、清子は東京の難関大学、自分は東北の新設大学に合格したが、都落ちの幼稚なひねくれから抜け出せないで、悶々とした学生生活をしていた。第一志望を外した学生生活の様子を生徒にも想像させる材料になるか。長期休暇になると、東京の父の社宅でなく祖母のいる群馬の山村へ帰っていた。
 大学五年生の冬休みの帰省で、清子が神奈川の海で死んだと幸夫から聞いた。思わず興奮して幸夫の胸ぐらをつかみそうになりながら原因を聞いた。花輪も参列者も少ない寂しい葬式だったらしい。入水自殺かもしれない。
第六段落 
 また、時間は現在に戻る。そんな昔話を思い出しながら、健気に父親の世話をしてくれる次男に済まない気がしてくつろげない。
 次男は、父親はウサギとは反対に野生の動物のようによく食べる。寂しくても死なないと言う。妻は、ウサギは父親より清潔で可愛いと拒否反応を起こす。
 ランドセルに入れたウサギがどうなったか、清子に聞きたいと思う時があるが、彼女はもういない。今を支えている過去が虚しくなるくらいなら思い出さず、封印した方がいいと思い、封印していた追憶だったが、次男の話で思い出した。
 次男は、ウサギは感受性が鋭く寂しさに耐えきれず死ぬと、満足げに言う。外は冬の雨になっていた。

指導観
 小説の読み方として、時間枠の設定、人間関係について把握する。また、性格把握も指導のポイントである。この場合、性格と行動や言動を結びつけるように指導する。それが、入試問題等の小説読解力につながる。
導入(〇.五時間)
○学習プリントで、漢字と難解語句のチェックをし、小段落と大段落に分ける。
第一段落(一.五時間)
1)家族構成を確認する。家族の立場と、特に次男の性格とその根拠になる言動を理解する。
2)次男の話題から、ウサギのイメージ、ウサギから少年時代への回想と展開を理解する。
第二段落(一時間)
3)私の少年時代の家庭環境と、その中で形成された性格を理解する。
4)清子の容貌と学業を整理し、私の彼女への気持ちを理解する。
第三段落(一時間)
5)イタズラ、その後の後悔、清子の対応、初恋に至るまでの私の心情の変化を理解する。
第四段落(二時間)
6)上京の理由と、東京での生活、大学選択の理由を理解する。
7)再会した清子の変わり果てた様子を、二人の会話としぐさを通して理解する。
第五段落(〇.五時間)
8)清子の死の原因について推測する。
第六段落(一時間)
9)感受性が鋭く死んでしまったウサギのような清子と、ただ寝ているだけなのに食欲だけ は旺盛な野生動物のような父との対比をする。
10)冒頭の「ウサギは寂しいと死ぬ」という台詞をもとに、登場人物の寂しさを理解する。


導入
 
1.【指】学習プリントを配布して宿題にする。
2.【確】学習プリントの漢字の読みを確認する。
 14 小骨 納豆 愚痴 15 痰 腐臭 愛想笑い 下顎 可憐 16 諭して 17 容貌 18 羨望 膨らんで 19 仮病 猫背 墓穴 20 懐 甘酸っぱい 疼き 継母 寂寥 21 意固地 22 緩めて 過ち 軌跡 滑らか 性急 23 取り繕う 24 拳
  微苦笑 和らげ 悶々 25 詰問 26 連綿 奈落
3.【確】学習プリントの語句の意味を確認する。
 ヒステリック
 悪態=憎まれ口をきくこと。悪口。
 羨望=うらやましく思うこと。
 後ろめたい=自分に悪い点があって、気がとがめる。やましい。
 墓穴を掘る=身を滅ぼす原因を自分から作る
 寂寥=心が満ち足りず、もの寂しいこと。
 意固地=かたくなに意地を張ること。
 性急=気が短くせっかちなこと。
 正論=道理にかなった正しい意見や議論。
 微苦笑=微笑とも苦笑ともつかない笑い。
 都落ち都にいられなくなって、地方へ逃げ出すこと。
 悶々=悩み苦しむさま。
 詰問=問い詰めること。
 連綿=長く続いて絶えないさま。
 奈落=物事の最後の所。どん底。特に、これ以上はない、ひどい境遇。
4.【指】形式段落に1〜31の番号を付ける。6つの大段落に分ける。

5.【W】動物心理テストをする。
 1)3種類の動物を思い浮かべてください。それぞれについて、3つずつその特徴を挙げ  てみてください。
 2)1番目は、自分がこうなりたいと思う人物像。
 3)2番目が、人からどう見られているか。
 4)3番目が、本当の自分。

第一段落(はじめ〜恐れ入るばかりである。)
 
1.【指】ペアリーディングさせる。
2.登場人物について
 1)【L1】家族構成は。
  ・私。
  ・私の父。
  ・妻=父の介護をしている。
  ・長男=高校二年。
  ・次男=中学二年。
 2)【L1】私の父の状態は。
  ・寝たきり。
  ・愛想笑いも挨拶もできない。
  ・自分で自分の命を管理できない。
 3)【L1】父を介護している妻の気持ちは。
  ・神経が逆立っている。
  ・ヒステリックになっている。
 4)【L1】長男の性格は。
  ・無口。
  ・ぼそぼそと不満を言う。
  ・母親に気をつかっている。
 5)【L1】次男の性格は。
  ・極端すぎるほど他人に気をつかう。
  ・前向きな優しさ。
 6)【L2】それは何からわかるか。
  ・ドラマの話題を提供して食事の内容の乏しさをカバーする。
  ・自主的に父の夕食のは当番を受け持つ。
  ・クラブを辞めたことを「ボランティア部に入った」と言う。
 7)【L1】なぜクラブを辞めたのか。
  ・学校に管理されるのが嫌だから。
  ・父の世話をしなければならないと思っていた。
  【注】後で、私も少年時代にクラブを辞めていることがわかる。

3.ウサギについて
 1)【説】最初の次男の言葉を確認する。
  ・「ウサギは寂しいと死んでしまう」
 2)【L1】ウサギのイメージは。
  ・白くて、清潔で、可憐なものの象徴。
  ・清い心は弱い。
 3)【説】次男と自分の少年時代の比較から、回想に入る。
 4)【L1】私の少年時代の性格は。
  ・余裕がない。


第二段落(群馬の山村〜羨望の対象になった。)
 
1.【指】「群馬の山村〜羨望の対象になった。」をペアリーディングさせる。
2.小学校四年の私の境遇について
 1)【L1】家庭環境は。
      (実母)
      │┌─姉
      ├─┤   
      │ └─私
   祖母──父
      │
      │
       継母
  ・父 =再婚。
      鉱山に勤める。
      単身赴任→週末しか帰ってこない。
      わずかな仕送り→貧しい。
      【注】今の寝たきりの父である。
  ・実母=三歳の時に死んだ。
      小学校の教師をしていた。
  ・姉 =?
  ・祖母=枯れた穏やかな母性。
 2)【L2】「枯れた穏やかな母性」とは。
  ・過干渉でもなく、放任でもなく、静かに見守る。
 3)【L1】私の様子は。
  ・わがままで小心。
   問題児。
   学業は誰にも負けない。
 4)【L4】原因は。
  ・愛情に飢えている。
  ・さびしがり。
  【注】ウサギに通じる。
 5)【L2】そうした性格を助長したものは。
  ・死んだ母親がこの小学校の教師をしていて、古い先生が同情してくれた。
 6)【L1】そうした性格が現れた行動は。
  ・実習時間以外にもトマトの世話をする。
  ・一日中信号機の模型をいじりまわしていた。
 7)【L4】なぜ担任は静かに涙を流したのか。
  ・同情しているのに、それを理解して行動を改めてくれない悲しさ。
  ・わがままな私を指導できない無力感。
  【注】いろいろ解釈できる。答えは一つに決まらない。

3.中川清子について
 1)【L2】彼女の魅力は。
  ・裕福(発電所の所長の娘)
  ・可愛らしい(目、鼻筋、肌、えくぼ)
  ・頭も良い(学業成績、作文、習字)
  ・運動もできる。(五十メートル走)
  ・性格も良い(しとやかで控えめ)
   【注】性格は浪人時代と違う。
  ・都会の匂い
    ↓
  ・クラスのアイドル。
 2)【L1】動物に例えると。
  ・ウサギ。
 3)【L1】私への影響は。
  ・教師が明らかに高圧的になった
 4)【L2】その理由は。
  ・今までは、わがままだったが、成績がよかったので大目に見ていた。
  ・しかし、清子の出現で成績が一番でなくなったから。
 5)【L1】私の清子に対する気持ちは。
  ・あこがれと嫉妬の入り交じった羨望
 6)【L1】「あこがれ」「嫉妬」がどんな行動に現れているか。
  ・あこがれ=頬を赤くして伏し目になる
  ・嫉妬=悪態をつく

第三段落(成績で見返してやろう〜これが初恋だった。)
 
1.【指】ペアリーディングさせる。
2.私のいたずらについて
 1)【L1】いたずらの内容は。
  ・清子のランドセルの中にウサギを入れる。
  【説】タイトルの「ウサギ」がイメージではなく実際に登場する。
     計画的ではなく、ふとひらめいたもの。
 2)【L2】私の小心さの表れた行動は。
  ・一番小さなウサギを入れた。
  ・ウサギが死んでは困るので、エサの白菜を入れた。
  ・ノートや教科書を汚さないように抜き出した。
 3)【L2】なぜ一番小さなウサギなのか。
  ・ランドセルに入る大きさ。
  ・第一段落の「可憐な」「清い」のイメージと重なる。
 4)【L1】なぜイタズラをしたのか。
  ・成績で見返したいが、急に授業態度を改められない。
  ・イジメの口実を見つけたいが、女の子に人気があった。
  ・暴力を振るえば、クラス全体を敵に回すことになる。
 5)【L3】「雪は横殴りになっていた」という風景描写の意味は。
  ・今後の不吉な展開を暗示する。
 6)【L1】なぜ後悔したのか。
  ・大きな騒ぎになると思ったから。
  ・死んだウサギ→泣く清子→怒る両親→全校集会→犯人追及。
  【説】清子ではなく、自分に責任がかかることを恐れた。
 7)【L1】なぜ祖母に相談しなかったのか。
  ・心配させたくなかった。
  ・精神的な乳離れの時期にさしかかっていたから。
  ・自分一人で解決したかった。
  【説】精神的な成長を表している。
 8)【L3】なぜ翌日学校へ行ったのか。
  ・行かなければこのまま一生立ち直れなくなると思ったから。
  ・卑怯なことを重ねるとますます卑怯になる。
  ・自分のしたことを受け止めようとする気持ち。
  【説】精神的な成長を表している。
  【説】「猫背」に不安な気持ちが表れている。
 9)【L3】ばれないで「ほっとしたような後ろめたいような割り切れない気持ち」とは。
  ・ほっとした=ウサギのことがばれなくて安心した。
  ・後ろめたい=いつばれるかと思うと不安になる。
 10)【L3】なぜばれなかったのか。
  ・清子が黙っていた。
  ・ウサギは生きていたので、大事にならなかった。
  ・入れたはずのウサギが自力で逃げ出した。
  【注】私は清子が黙っていてくれたと思っているが、ここは自由な発想があってよい。
 11)【L3】清子が黙っていたとしたら、なぜ黙っていたのか。
  ・私への好意。
  ・幼い私を見下す。
  ・私をジワジワ苦しめる。
  【注】正解は最後までわからない。

3.清子への初恋について
 1)【L1】なぜ清子への気持ちが変化したのか。
  ・ウサギのことを黙っていてくれたと思ったから。
 2)【L1】私の気持ちの変化は。
  ・嫉妬が消える。
  ・愛らしさ。
  ・懐の深さに対するあこがれの念が増大する。
 4)【L2】私の気持ちが表れた行動は。
  ・面と向かうと何も話せない。
  ・フォークダンスで手をつなぐと胸が苦しくなる。
  【説】フォークダンスを説明する。
 5)【L2】小学校四年から六年までの私の気持ちは。
  ・片思い。
 6)【L1】六年のときの私の行動や気持ちは。
  ・一時間あまり歩いて清子の家を見に行く。
  ・渋皮の残る生栗でさえ口に含むとほのかに甘く感じられる。
  ・秋の夕暮れの空気を清子と共有していると思うと甘酸っぱい疼きを覚える。
  【説】ストーカー的な行動である。
 7)【L1】これを一言で言うと。
  ・初恋。
 8)【L4】生徒の初恋体験や初恋の味を聞く。

第四段落(中学に上がる春〜隣の老人に向けられていた。)
 
1.【指】「中学に上がる春〜浪人した。」をペアリーディングさせる。
2.私の上京について
 1)【L1】なぜ東京へ行ったのか。
  ・清子が転校して学校に興味がなくなったから。
  ・見なければならない夢がたくさん用意されていると思ったから。
 2)【L4】「見なければならない夢」とは。
  ・都会の魅力。
  ・あらゆる可能性にあふれている所。
  ・清子のイメージ。
 3)【L4】生徒の東京願望は。
 4)【L1】東京での生活は。
  ・父と継母との冷めた共同生活。
  ・乾き切った寂寥
  ・小説や受験勉強に逃避した。
 5)【L3】「家族生活」ではなく「共同生活」とは。
  ・温かいつながりはなく、ただ一緒に生活しているだけ。
 6)【L3】なぜ小説や受験勉強に逃避したのか。
  ・都会の寂寥とした現実から逃れるため。
 7)【L1】なぜサッカー部をやめたのか。
  ・教師に管理されるのが嫌になった。
  ・意固地な性格。
  【説】次男がバスケット部を辞めたのと重なる。
 8)【L1】進路選択とその理由は。
  ・文学部ではなく、医学部を選んだ。
  ・小説が好きだが、文学でめしが食えるほど世の中は甘くない。
  ・食うために選択した実学。
 9)【説】僕の進路選択について話す。

3.【指】「お茶の水の予備校〜隣の老人に顔を向けられた」をペアリーディングさせる。
4.【指】会話部分だけ抜き出して、会話させる。
5.清子との再会場面の会話の気持ちについて
 1)私「よお」
  1)【L2】どんな口調で言ったのか。
   ×明るく軽い調子ではない。
   【注】直ぐには答えが出ない。後のことを考えてから再度質問する。
  2)【L1】行動は。
   ・前に回って手を挙げた。
  3)【L1】そんな行動をした理由は。
   ・なんと呼びかければいいのかわからなかった。
    →困惑
  4)【L2】その理由は。
   ・中川清子だと直感した。
   ・五階まで走って上がった。
    →衝動的。
  5)【L2】まとめると。
   ・衝動的に行動したが、清子を目の前にして困惑している。
 2)清子「あら」
  1)【L1】行動と気持ちは。
   ・口に手を当てて目を丸く開いた。
    →驚き
 3)私「どこかで話さないかい」
  1)【L2】どんな口調で言ったのか。
   ×ナンパをするような軽薄な調子ではない。
  2)【L1】行動は。
   ・直立したまま辛うじて言葉を組み立てる。
  3)【L2】そんな行動をした理由は。
   ・腰を下ろすのはためらわれた。
    →劣等感
  4)【L1】劣等感が起こった理由は。
   ・清子=美しすぎる才女。
   ・私 =劣等生。
 4)清子「いいわよ。三時に玄関で待ち合わせましょう」
  1)【L2】どんな口調で言ったのか。
   ×久し振りの再会を喜んでいるのではない。
  2)【L2】様子は。
   ・ぎこちない笑顔。
   ・冷たい笑顔。
  3)【L2】ぎこちなさとは。
   ・口もと=緩める
    →愛想
   ・目の縁=固い
    →迷惑
  4)【L2】まとめると。
   ・私の突然の出現に戸惑い、迷惑に感じているが、素っ気なくできずに気をつかっている。
 5)私「成績表の名前〜浦和から通ってるの、今」
  1)【L2】言葉遣いで気がつくことは。
   ・「さぁ」
   ・群馬の山奥の田舎者が都会言葉を使ってカッコつけている。
  2)【L2】「医学部なんか受けて」と言った理由は。
   ・清子に対抗して、虚勢を張っている。
  3)【L1】行動と気持ちは。
   ・一方的に喋り続けた。
   ・肩に力が入った。
    →緊張
  4)【L2】理由は。
   ・声をかけたのがとんでもない過ち。
    →後悔
   ・清子の大人っぽいしぐさ。
    →気後れ
  5)【L2】私の気持ちをまとめると。
   ・声をかけたことに後悔し、ますます大人っぽくなっている清子に気後れしているが、都会っぽく振る舞って虚勢を張ろうとしている。
 5)清子「ええ」「そうね」
  1)【L2】どんな口調で言ったのか。
   ・気のない様子。
   ・適当に答えている。
  2)【L1】行動と気持ちは。
   ・テーブルの上に視線を動かしていた。
    →無関心
 6)清子「だから、とても懐かしいんだけれど、こうして会うのは今日だけにしましょう
  1)【L1】口調や表情は。
   ・淡々と。
   ・表情は固く冷たい。
    →冷淡
  2)【L2】どんな気持ちがわかるか。
   ・感情がない。
  3)【L1】回答の内容は。
   ・転校を繰り返す。
   ・群馬の山村のことは覚えていない。
   ・医学部受験る失敗する。
   ・受験に専念したい。
   ・精神科医になりたい。
  6)【L3】精神科医に成りたい理由は。
   ・自分自身深い悩みを抱えている。
 7)私「そうだよな。受験生だものな」
  1)【L2】どんな口調で言ったのか。
   ・いたたまれなさを取り繕うために、きまり悪そうに。
  2)【L1】表情は。
   ・まじめくさった顔をこしらえた。
  3)【L1】内心は。
   ・清子に初恋の告白でもしようかともくろんでいた。
    →下心
  4)【L2】私の気持ちをまとめると。
   ・初恋の告白をしようという下心を見透かされ、何とか取り繕おうとあわてている。
 8)清子「私ねえ、一つのこと〜いくしかないと思っているの」
  1)【L2】正論のポイントは。
   ・一つのことを考えると他のことが目に入らない。
    →余裕がない
   ・今はとにかく医学部に入る。
    →目先のことだけ
   ・精神科医になる。
   ・受験勉強するしかない。
    →追い詰める
  3)【L1】様子は。
   ・幅も奥行きもない。
    →余裕がない
   ・平板で機械的。
    →人間性がない
  4)【L1】私が受けた印象は。
   ・少し早く大人になった。
   ・それとも。
  5)【L3】「それとも……」の後に続く言葉は。
   ・深い悩みを抱えている。
   ・病んでいる。
   ・死に向かっている。
 9)清子一度だけ手を振る。
  1)【L1】表情は。
   ・とってつけた笑顔。
    →寂しい
   【説】「寂しい」でウサギにつながる。

6.別れた後について
 1)【L1】思わず拳でジーパンの膝をたたいた理由は。
  ・大事な質問をするのを忘れていたのに気づいたから。
 2)【L2】大事な質問とは。
  ・ウサギの話。
 3)【L3】なぜ清子の微苦笑を誘い出せると思ったのか。
  ・清子がウサギ事件のことを覚えている。
  ・小学校四年の清子に戻る。

第五段落(それから約一年〜濃い水割りをあおった」
 
1.【指】ペアリーディングさせる。
2.その後の進路について
 1)【L1】二人の進路は。
  ・清子は、難関大学の医学部。
  ・私は、東北の新設医学部。
  【説】地方であり、新設なので、医学部でも偏差値は低い。
 2)【L1】私の気持ちは。
  ・都落ち。
  ・幼稚っぽいひねくれ。
  ・悶々とした学生生活。
 3)【L2】群馬には帰省したが、東京には帰省しなかった理由は。
  ・東京には良い思い出がなかった。
  ・父や継母と関係がよくなかった。

3.清子の死について
 1)【L1】清子の死の情報は。
  ・神奈川の海で死んだ
  ・花輪も参列者もわずかな寂しい葬式
 2)【L2】死因は。
  ・自殺の可能性が高い。
 3)【L2】私が幸夫の胸ぐらをつかみそうになりながら詰問した理由は。
  ・清子のことが忘れられなかったから、必死になった。
 4)【説】幸夫の話の「バカでも生きているのが一番だよなぁ」は、第六段落の父親とか  ぶってくる。
 5)【L2】清子の死を予感させる記述は。
  ・なぜかもう永遠に口もきけない別世界の人のように思えていた。

第六段落(次男の奥の部屋〜おわり)
 
1.【指】ペアリーディングさせる。
2.父とウサギを比較について
 1)【L2】私が次男の仕事が終わるまでくつろげない理由は。
  ・父の世話をしてくれる次男へのうしろめたさ。
 2)【L2】私と父の関係は。
  ・回想してきたように、私と父の関係はよくなかった。
  ・私は幼稚なひねくれで父に反抗し続けてきた。
 3)【L2】私が、ウサギは寂しいと死ぬという話を認めた理由は。
  ・清子との思い出を回想したから。
  ・ウサギを清子のランドセルに入れた動物だが、清子の寂しさがウサギと重なった。
 4)【L1】私が清子の話を封印していた理由は。
  ・今の自分を支えてくれている過去の話だから。
  ・思い出すと奈落に吸収されてしまうむなしさを意識させられるから。
  ・「美しい話」として残しておきたい。
 5)【L4】生徒にもそういう話はあるか。
 6)【L1】清子が自殺した理由は。
  ・感受性が強く、寂しさに耐えきれなくなって死ぬ。
 7)【L3】清子は何が寂しかったのか。
  ・受験勉強に追われて、それ以外のことが考えられなかった。
  ・父の転勤について転校を繰り返したので、友だちがいない。
  ・すべてに優れているので、近寄り難い存在だった。
 8)【L1】ウサギはどんな動物か。
  ・清潔でかわいい
  ・寂しいと死んでしまう
  ・感受性が鋭い
 9)【L1】それに対して父の様子は。
  ・寂しくても死なない。
  ・野生動物のような食欲。
  ・生命力のたくましさ。
  ・汚くて憎たらしい
 10)【L2】ウサギについての私や次男と妻の受け取り方の違いは。
  ・妻は、厳しい現実の世界を生きている。
  ・私と次男は、美しい夢の世界を生きている。



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                  組  番 氏名
学習の準備
1.読み方を書きなさい。
 14 小骨 納豆 愚痴 15 痰 腐臭 愛想笑い 下顎 可憐 16 諭して 17 容貌 18 羨望 膨らんで 19 仮病 猫背 墓穴 20 懐 甘酸っぱい 疼き 継母 寂寥 21 意固地 22 緩めて 過ち 軌跡 滑らか 性急 23 取り繕う 24 拳
  微苦笑 和らげ 悶々 25 詰問 26 連綿 奈落

2.語句の意味を調べなさい。
ヒステリック
悪態
羨望    
後ろめたい
墓穴を掘る
寂寥
意固地
性急
正論
微苦笑   
都落ち
悶々
詰問
連綿
奈落

学習のポイント
1.夕食の場の登場人物と特徴を理解する。
2.ウサギのイメージを理解する。
3.私の少年時代の様子を理解する。
4.中川清子の特徴を理解する。
5.清子が来てからの私への対応の変化と、私の気持ちを理解する。
6.ウサギ事件後の、私の清子に対する気持ちの変化を理解する。
7.上京直後の私の様子を理解する。
8.予備校で私と清子の出会いの場面を理解する。
9.清子の変化を理解する。
10.清子と別れた後の私の気持ちを理解する。
11.清子の死について理解する。
12.清子とおじいさんの比較を理解する。