蟷螂之斧


 「蟷螂の斧」という故事は、現在、はかない抵抗とか、向こう見ずというあまりよくない意味で使う。
 故事では、斉の荘公が狩りに行く時に、車の前に立ちはだかる蟷螂を見て御者に尋ねる。御者は、自分の力も考えないで敵をあなどり、前進ばかりして後退することを知らない虫だと説明する。それを聞いた荘公は、それこそ勇者の条件であると絶賛する。その話を聞いた全国の勇者たちは、自分の力を認めてもらえると思い、荘公の為に命を投げ出す覚悟で集まった。つまり、この故事では、車に立ち向かう蟷螂を賞賛しているのである。


1.独力で読むことに挑戦させる。【5分】
2.指名して音読させる。
3.確認のため、教師が範読する。
4.全員で追読する。
5.本文を写させる。
6.書き下し文にさせる。
 ・再読文字=将(まさに〜す)
 ・ひらがなに直す漢字=也(や・なり)、為(たる・たらば・たらんと)、不(ず・ず  して)、
 ・置き字=而、矣
 
7.現代語訳する。
 ・主語、述語、目的語を明らかにする。
 ・主語の省略されているものは補う。
 ・再読文字と疑問の句法に注意する。
 ・指示語の指示内容を確認する。
1)斉荘公出猟。
 1)斉、荘公の説明をする。
  ・春秋戦国時代の東方の大国。
  ・桓公の時、名宰相管仲(かんちゅう)を得て覇を唱えた。
  ・各国は勇者を多く得ようとしていた。
  ・荘公は、春秋時代の王。臣下である崔杼(さいちょ)の妻と私通し殺された。
 2)訳す。
  ・斉の荘公は狩りに出かけた。
2)有一虫。挙足将搏其輪。
 1)「挙」の主語は。
  ・虫。
 2)再読文字「将」の意味。
  ・今にも〜しようとする。
 3)訳す。
  ・一匹の虫がいた。(虫は)足を上げて、今にもその車輪に撃ちかかろうとした。
 4)「其」の指示内容は。
  ・荘公の乗った車。
 5)虫の行為の意味を考える。
  ・自分の力を考えない無謀な行為。
3)問其御曰「此何虫也」
 1)「御」の意味は。
  ・御者。お供の者。
 2)「問」の主語は。
  ・荘公。
 3)「何〜也」の句法の意味は。
  ・疑問の句法。
  ・何の〜か。
 4)訳す。
  ・(荘公は)御者に問うて言った。「これは何という虫か」
 5)「此」の指示内容は。
  ・一虫。
  ・車に撃ちかかろうとする虫。
4)対曰「此所謂螳螂者也。
 1)「対」「所謂」の意味は。
  ・答える。目上の者の問いに対して答える。
  ・世間の人が言う。
 2)「対」の主語は。
  ・御者。
 3)「也(なり)」の働きは。
  ・断定。
 4)訳す。
  ・これは世間の人が言うカマキリという虫です。
 5)「此」の指示内容は。
  ・一虫。
5)其為虫也、知進而不知却。不量力而軽敵。
 1)「為虫」の意味は。
  ・「虫たる」と言う意味で、虫の本性。
 2)「也(や)」の働きは。
  ・強く提示する。
 3)置き字「而」の働きは。
  ・逆接、逆接。
 4)訳す。
  ・その虫の本性は、進むことは知っている、けれども、退くことは知らない。
   自分の力を考えないで、敵を軽んじる。
 5)御者は蟷螂をどのように評価しているか。
  ・自分の力も知らずに強者に挑戦する、猪突猛進の愚か者。
  ・ドンキホーテのよう。
6)荘公曰「此為人而必為天下勇武矣」廻車而避之。
 1)「勇武」の意味は。
  ・勇者
 2)「為人」の働きは。
  ・仮定。
  ・人ならば。
 3)「而」の働きは。
  ・要約。
 4)訳す。
  ・荘公は言った。「これは人であったならば、つまり天下の勇者である。」車を迂回   させてこれを避けて通った。
 5)「避之」の指示内容は。
  ・蟷螂。
 6)荘公は蟷螂をどのように評価しているか。
  ・勇敢な者であると賞賛している。
 7)荘公が蟷螂を賞賛した理由は。
  ・無謀でも勇気の有るものを讃えることによって、それを聞いた勇者が集まってくる   と思ったから。
 8)現在の意味は。
  ・弱小のものが、自分の力量もわきまえず、強敵に向かうことのたとえ。
  ・ごまめの歯ぎしり。
   ・御者の感想に近い。