他者の声 実在の声

 
野矢茂樹


 かつて「他我問題(外界問題)」という問題が「あった」。そして、無理を承知で今は「ない」。「あった」のは過去形であり、「ない」のは現在形である。かつては存在したが、今は存在しないでほしいと願っている。それだけ、この問題は厄介である。
 私が自分の「自我」を持っているように、他人も自分の自我を持っている。それを他人の自我、「他我」と呼ぶ。「外界」とは「外の世界」である。反対は「内の世界」、つまり「内界」になる。しかし、自分と他人は見分けが付くが、内と外というのは何の内と外なのか、と考えると訳がわからなくなる。
 机の上に置いてあるコーヒーカップは、「コーヒーカップがある」と言える。これは私の外にあるから「外界」である。それなら、カップの中のコーヒーを私が飲めば、胃の中のコーヒーは「内界」かと言えばそうではない。それは私の皮膚の内ではあるが、まだ「外界」である。それなら、「内界」はどこにあるのか。コーヒーを味わった苦味、これは「内界」である。なぜなら、「心の内」だから。なぜ、心の内側といえるのか。それは、「他人のまなざし」があるかないかである。コーヒーカップや胃の中のコーヒーは(無理をすれば)他人のまなざし、意識が届く、つまり他人にも見える。しかし、苦味は他人には見えない。だから「内界」なのだ。つまり、「内界」とは私だけが感じ取れる「意識の内」である。
 それなら「内界はどこ?」の逆に、「外界はどこ?」、「意識の外」はどこにあるのかと言う問題が出てくる。外界にあった「コーヒーカップがある」というのも、言い換えれば「私がコーヒーカップを見ている、意識している」ということになる。つまり、意識の内になり「内界」になる。とすると、すべての「ある」ものは、私が意識しているもの、「意識の内」ということになる。逆に、意識していないもの、「意識の外」、「外界」は「ない」、存在しないということになる。
 したがって、世界は「私の内なる意識」にあるものだけになり、「私は意識の内に閉じ込められる」状態になる。さらに考えると、他人の意識が届かないものが私の「内界」だとすれば、私の意識も、他人の「内界」、「他人の内なる意識」、「他我」には届かない。つまり、それらは存在しないことになる。
 しかし、「外界」と「他我」が存在しないと簡単に割り切れないと思うのが健全な考え方だが、同時に、私の意識が届いているから存在する、届かないものは認めることができないという矛盾が、「他我問題」「外界問題」である。この時点では、「まだある」。
 こうして哲学の出口のない洞窟に入る。この洞窟は、見通し悪く曲がり、幾つもの枝道を持ち、抜けられそうに期待させる。つまり、解決の見通しが立ちにくいが、幾つかの解決の可能性を示し、解決しそうに期待させが、解決策はない。自分が意識できるものだけが存在すると言いながら、自分が意識できない外界と他我を復活させることは不可能である。出口はないのだから、入ってきた入口から出て行くしかない。そこは、明るく開けた、元いた場所である。「内界」も「外界」もあり、意識を持った私がいて、意識を持った他人がいて、すべては意識の内で、意識の外のものは存在しないとまでは言わない段階で、もう一度「意識」についてとらえ直すのである。

 こうして一旦清算したと思っていたところに、全く別の形で新しい、「他者性の問題」「実在性の問題」が現れた。
 今度は、「意識の内と外」でなく、「言語の内と外」である。我々は言語を用いて語るので、「言語の外」とは「語り得ぬ」ものである。語り得ぬものなど存在しない、すべては語り得る。つまり、「言語の外」を拒否することである。しかし、これではあまりに単純すぎるので、語り得るもの、語り得ぬものが両方とも存在すると考える。しかし、これも単純である。
 日常のコミュニケーションは、一つの共有された言語のもとで行われているように見える。しかし、一つの共有されたというのは幻想である。実際は、言語の内と外を行き来しているのである。人間には人間の数だけ言語がある。すべての人が違う言語を用いてコミュニケーションをとっている。だから、私は私の言語の外に向けて話しかけ、私の言語の外からの声を聞いているのである。
 私の話している日本語は、周囲の大人から学んだものであり、周囲の大人たちと一致することを目指された基本的には公共的な、外部に開かれた言語である。ところが、その人の用いる言語の意味は、その人の経験に影響される。言語の共有と人生経験の個人ごとの多様化は両立しない。人生の分だけ言語がある。言語は公共のものとして生まれ、個人のものとして発散していく。例えば、「愛」という言葉の意味は、経験してきた愛の形の数だけある。「コーヒーカップ」においても同じである。
 とすれば、私の言葉と他者の言葉はズレている。他者はコミュニケーションにおいて私と異なる意味の発信源になる。それが「意味の他者性」である。他者は、「意識」における「他我」ではなく、「意味の他者性」である。私の言語でないから理解しきれない、しかし、公共性の名残があるので、理解を拒むわけにはいかない。理解してごらんと誘惑してくる。それが「意味の他者」である。私ではないが全くの他人でもない。
 同じ誘惑の声を実在にも聴く。自分の感覚を言葉で表現し尽くすことはできない。しかし、それらは語り得ぬものではなく、語り出すことを誘惑する。語り得ることによって「実在」する。
 今は理解できない、語り出せないものを、理解し、語り出すために、自分自身の経験に基づく手持ちの言葉を変え、私自身を変えていく。つまり、他者の経験していることを自分も経験し、共有していくことによって、それらに出会うことができる。それが、人それぞれではあるが、少なくとも私にとっての「他者性の問題」「実在性の問題」である。


【指】指示。【説】説明。【注】注釈。【交】交流。【確】確認。【W】グループワークや心理テストなど。
【L1】抜き出す。【L2】縮めたり組み合わせたり言い換えたりする。【L3】解釈や想像。【L4】体験や知識。


導入

1.【指】学習プリントを配布し、漢字と語句の意味を宿題にする。
2.【L1】学習プリントの漢字の読みを確認する。
 30 他我 外界 対 収まる 31 苦味 32 洞窟 33 堅気 36 鎮座 声高 
3.【説】語句の意味を確認する。
 他我問題=表面的には体験できない他の自我を、いかに認識できるかという哲学上の問題。
 外界問題=意識の外の世界は、我々のいしきと独立して存在しているか否か、という哲学的問題。
 みょうちきりん=普通と違って変であること。奇妙。
 自閉=現実または外界から遠ざかり、対人交渉を極力避け、願望や苦悩を抱いたまま、自己の内界に閉じ込もる状態。
 袋小路=物事が行きづまって先に進めない状態。
 堅気=物事が行きづまって先に進めない状態。
 清算=相互の貸し借りを計算して、きまりをつけること。
 鎮座=人や物がどっしりと場所を占めていることを、多少揶揄(やゆ)の気持ちを込めていう語。

4.【指】小段落に1〜16の番号を付ける。

前半

1.【指】1をペアリーディングさせる。
2.「他我問題」「外界問題」の存在について
 1)【説】「かつて『他我問題』という問題があった」「『外界問題』という問題があった」「今はない」と板書する
 2)【L1】これらの文を見て気づくことは。
  ・過去形と現在形。
 3)【説】ただし、筆者が「あえて」「無理を承知で」と書き加えている。
 4)【L2】このことから、何が考えられるか。
  ・本当は過去形や現在形で語りきれない。
  ・「他我問題」や「外界問題」はまだあるかもしれない。
 5)【説】辞書的な意味を確認する。
  ・他我問題=表面的には体験できない他の自我を、いかに認識できるかという哲学上の問題。
  ・外界問題=意識の外の世界は、我々の意識と独立して存在しているか否か、という哲学的問題。

3.「他我」について
 1)【L1】「他我」の反対語は。
  ・「自我」
 2)【説】自我の意味。
  ・意識や行動の主体。
  ・自分らしさ
 3)【L1】他我とは。
  ・他人なりの自我
  ・他人の自我
  ・その人らしさ
 4)【L1】「それを私の視点から」の指示内容は。
  ・他人なりの自我。
 5)【L2】「それが問題になる」の指示内容は。
  ・私の視点から「他我」と呼ぶこと。
 6)【L3】なぜ、私の視点が入れば哲学問題になるのかを考える。
  ・これを考えていくのがこの評論の2つ目の目的になる。

4.「外界」について
 1)【説】「外界」はもっと「みょうちきりんな言葉」である。
  【注】「みょうちきりんな」「なんだそれ」という砕けた言い方に注意する。
 2)【L1】「外界」とは何か。
  ・「外の世界」
 4)【L1】「外の世界」の反対語は。
  ・「内の世界」
  ・「内界」
 5)【L3】なぜ、「内界」がますます変なものになるのか。
  ・何の内と外なのか。
  【注】ここでは、答えがでない。
  ・これが1つ目の問題になる。

5.【指】2〜4をペアリーディングさせる。
6.「外界」「内界」について生徒同士で考えさせる。
 1)【指】隣の人に説明できるように、自分で内容をまとめてノートに書く。
  ・文章でもいいし、図でもいい。
 2)【交】隣の人と2人組になり、ジャンケンして勝った人が、自分のまとめたことを1分間で話し、交代してする。
 3)【交】4人組なり、自分の組の考えを他の組の2人に1分間で伝え、交代する。
 4)【指】相手の組の説明がよくわかったという人を挙手させる。
 5)【指】推薦された組に発表してもらう。

7.「内界」について
 1)【L1】「机の上にコーヒーカップがある」は外界か内界か。
  ・「外界」
 2)【L1】「身体の中に収まったコーヒー」は外界か内界か。
  ・「外界」
 3)【L1】「コーヒーの苦味」は外界か内界か。
  ・「内界」
 4)【L2】外界と内界の基準は何か。
  ・皮膚の内と外でなく、心の内と外。
 5)【L1】心の内か外かを判断するのに必要なものは。
  ・他人のまなざし。
 6)「他人のまなざし」とは何か。
  ・他人には分かるか、わからないか。
  ・他人に分かるのが外界、分からないのが「内界」。
 7)【L1】「心の内」とは何か。
  ・意識。
  ・私だけが感じ取れること。
  ・私が意識していること。
 8)【説】ここまでの論理を確認する。
  ・外界=私の心の外。
      私の意識の外。
      私が意識していないこと。
      他人にも分かる。
  ・内界=私の心の内。
      私の意識の内。
      私が意識していること。
      他人には分からない。
 9)【L2】一言で言い換えると。
   ・外界=客観
   ・内界=主観

8.【指】5〜7をペアリーディングさせる。
9.「外界」について、生徒同士で考える。
 1)【L1】「そうだとすると」の「そう」の指示内容は。
  ・「それ(意識)は他人からは分からない。私だけが感じ取れること」
  【注】「それ」の指示内容も確認する。
 2)【L1】新たな問題は。
  ・外界はどこにあるのか。
 3)【指】なぜ、「外界はどこにあるのか」が問題になるのか、隣の人に説明できるように、自分で内容をまとめてノートに書く。
  ・文章でもいいし、図でもいい。
 4)【交】隣の人と2人組になり、ジャンケンして勝った人が、自分のまとめたことを1分間で話し、交代してする。
 5)【交】4人組なり、自分の組の考えを他の組の2人に1分間で伝え、交代する。
 6)【指】相手の組の説明がよくわかったという人を挙手させる。
 7)【指】推薦された組に発表してもらう。

10.「外界」について
 1)「コーヒーカップがある」を「私」を主語にして言い換えると。
  ・私がコーヒーカップを見ている。
 2)【L1】「見ている」を言い換えると。
  ・意識している。
  ・私がコーヒーカップを意識している。
 3)この言い方で言えば、内界か外界か。
  ・内界。
 4)【説】この考え方を進めて、外界表現を内界表現にする。
  ・(風が吹く)「風を感じる」
  ・(山並みがある)「山並みが見えている」
  ・(物音がする)「物音が聞こえる」
  ・全部私が意識したことである。
 5)【L1】ということは、どういうことになるか。
  ・すべてが私の意識に現れた姿である。
  ・すべてのものが「内界」になる。
  ・「外界」がなくなる。
 6)【L1】「そんなもの」の指示内容は。
  ・私が意識していないこと。
 7)【L2】「私が意識していないことは意識していない」とは。
  ・意識していないということ自体を意識していない。
  ・意識していないことを、意識によって認識できない。
  ・意識していないということは、私にとって存在していない。
  ・だから、存在しないことは、意識できない。
 8)【L3】「私は意識の内に閉じ込められる」とは。
  ・意識していないものが多くあるはずであるにもかかわらず、意識しているものしか存在しない。
  ・そんな狭い世界の中にいることを強制される。
 9)【L4】UFOは存在するか。【開いた発問】
  ・見た人には存在する。
  ・見たことのない人には存在しない。
 10)【L2】なぜ、「他人の内なる意識」も姿を消すのか。
  ・他人の内なる意識は、意識できないので、存在しないことになるから。
 11)【L2】なぜ、同じ方向を向いていても、同じものを見ているとは限らないのか。
  ・他人の意識は分からないので、同じものを見ているかどうか、どのように見ているかは分からない。
 12)【L4】例を考える。
  ・群盲象を撫でる。
  ・ある小説を読んだ感想が違う。
  ・美人と思う人のタイプも違う。デブ専。
  ・西村先生を見ても、人によって違う。事件を起こした時に、なんて証言されるか。

9.「他我問題」「外界問題」について
 1)【説】「しかし」が納得のいかないことを示している。
  ・解決していない。
 2)【L2】「それはどうしてもあれである」は変な言い方であるが、「それ」「あれ」の指示内容は。
  ・それ=外界と他我が完全に消え去ること。
  ・あれ=具体的なものを指示していない。
      問題である。そのまま認められない。言い過ぎ。
 3)【L1】「それが他我問題」の指示内容は。
   ・そんな人の抱え込んだ問題。
 4)【L2】「そんな人」の指示内容は。
   ・健全にそう思うと同時に、すべては私の意識の世界だということに強い共感を示す人。
 5)【L1】「そう思う」の指示内容は。
   ・外界や他我などないのだといって済ますわけにはいかない。
 6)【L2】まとめると。
   ・外界や他我などないと言い切れないと思うと同時に、すべては私の意識の世界だと思う人が抱え込んだ問題。
 7)【説】他我問題、外界問題をまとめる。
  1)外界(他我)と内界(自我)は対である。
  2)内界(自我)は、意識の内である。
  3)ならば、外界(他我)は、意識の外である。
  4)しかし、意識の外を意識することは不可能である。
  5)つまり、すべては内界(自我)の世界である。
  6)だから、外界(他我)は存在しない。
  7)しかし、外界(他我)の存在は否定できない。
  8)つまり、5)と同時に7)であると思っていることが問題である。

10.【指】8)〜9)をペアリーディングさせる。
11.哲学の洞窟について
 1)【L1】「哲学の長いトンネル」とは何か。
  ・「他我問題」「外界問題」
 2)【L1】トンネルと洞窟の違いは。
  ・トンネルは、出口がある。
  ・洞窟は、出口がない。
 3)【L1】洞窟の様子は。
  ・見通しが悪く曲がっている。
  ・いくつもの枝道を持っている。
  ・向こうに抜けられるように人に期待させる。
 4)【L2】「外界(他我)問題」に当てはめると。
  ・解決の見通しがない。
  ・いろいろな解決策がある。
  ・解決できる可能性がある。
 5)【L1】どんな行動を取ったか。
  ・出口がありそうなので、一生懸命そちらに行こうとするが、徒労に終わる。
  ・疲れ果てて倒れる。
 6)【L1】解決法は。
  ・入口から出て行く。
  ・もといた所に引き返す。
 7)【L1】もといた所とはどこか。
  ・「世界があり、意識を持った私と意識を持った他人たちがいる」
  ・「『すべては私の意識だ』と言わなくてもよいような形で『意識』という概念をとらえ直す」
  ・世界、私、他者がある。
  ・すべては私の意識と考えない。
  ・私も他者も意識を持っている。
 8)【L3】この評論で言えばどの箇所か。
  ・「じゃ、外界はどこにあるんだ」と考える前の段階。
  ・4)が終わった所。
 9)【説】4)までの内容を確認する。
  ・自我があって他我がある。
  ・外界があって内界がある。
  ・内界とは、意識していることである。
  ・外界とは、意識していないことである。
  ・私が意識していないものも存在する。
 10)【L1】「それはそれで」の指示内容は。
  ・「すべては私の意識だ」と言わないでもよいような形で「意識」をとらえ直すこと。
 11)【L2】なぜそれが困難な道なのか。
  ・私が意識できないものについて考えなければならないから。

12.4)以前と5)以降の違いについて
 1)【L2】4)以前の「外界」と「内界」を分ける基準は。
  ・他人のまなざし。
  ・外界=他人に分かる。
   内界=他人に分からない。
  【説】この段階では、外界は存在していた。
 2)【L2】5)以降の基準は。
  ・私の意識。
  ・内界=私が意識している。
   外界=私が意識していない。
      私が意識しないものは存在しない。
  【説】この段階で、外界がなくなる。
 3)【L3】なぜ、「外界問題」「他我問題」が起こるのか。
  ・「心の内」と「意識」はイコールか。
   ・心の内にあるが、意識していないものである「無意識」はどうなるのか。
  ・「内と外」という二項対立の考え方は正しいのか。
   ・簡単に割り切れないものがある。
   ・むしろ、その方が多い。
 4)【説】だから、「他我問題」「外界問題」は解決しなければならない問題だが、いくら考えても解決しないので、「あった」過去形にして、「今はない」と現在は考えないようにしている。

後半

1.10)11)をペアリーディングさせる。
2.他者性の問題、実在性の問題について
 1)【説】「ところが」という逆接の接続詞で、一旦解決したように思われる問題に、反対の展開を予告している。
 2)【L1】新しい他我問題、外界問題とは何か。
  ・他者性の問題、実在性の問題
 3)【L2】「他者」と「他者性」の違いは。
  ・他者そのものだけでなく、他者に関するさまざまな性質を含む。
  ・他に、「○○」と「○○性」と言う言葉を出して考える。
  ・「〜のようなもの」
 4)【L1】今度の基準は、「意識の内と外」でなく、何か。
  ・言語の内と外。
 5)【L2】前の基準との共通点は。
  ・また「内と外」という比喩を使っている。
 6)【L1】「言語の内」「言語の外」とは何か。
  ・語り得るもの。意識していて、自分の言葉で語ることができるもの。
  ・語り得ぬもの。意識しているが、自分の言葉で語ることができないもの。
 7)【L1】ここで、単純に考えるとどんな態度が可能か。
  1)すべては語り得る。語り得ぬものは存在しない。
   「言語の外」を拒否する。
   【説】意識の外で考えた「意識できないものは存在しない」と同じ。
  2)語り得るものと、語り得ぬものの両方を認める。
   【説】外界問題での、「内界も外界も存在する」と同じ。
 8)【L2】外界問題では、それぞれ何に当るか。
  1)洞窟。
  2)もといた所。
 9)【L3】なぜ、単純な態度になるのか。
  ・外界問題と同じく、「内と外」の2項対立で考えているから。

3.「愛」という言葉の意味について
 1)【指】各自、ノートに書かる。
 2)【交】4人組で交流させる。
 3)【交】いくつかの組に発表させる。
 4)【説】多様な答えが出てくることによって、個人的な意味が付加されていることを確認する。
4.12)〜14)をペアリーディングさせる。
5.日常のコミュニケーションについて
 1)【L1】日常のコミュニケーションはどのように行われているか。
  ・言語の内と外を行き来している。
 2)【L2】「言語の内と外を行き来している」とは。
  ・私の言語の外に向けて話し掛け、私の言語の外からの声を聞いている。
 3)【説】「言語の外」とは何かをこれから考えていく。
 4)【L4】「一つの共有された言葉のものでコミュニケーションが成立していると思うのは素朴な幻想である」という意見に納得できるか。
  ・我々は同じ日本語を使っている。
  ・しかし、「愛」の例でも分かるように、その意味は微妙に違う。
 5)【説】バベルの塔の説明をする。
  ・人間が天に達しようとする高い塔を築こうとしたことに対して、神が怒り、人々の言葉を通じなくさせ、コミュニケーションをとれなくして、仕事を中止させた。
6.2種類の言葉について
 1)【L1】今、私が話している言葉をどのように獲得したか。
  ・周囲の大人たちから学んだ。
 2)【L1】その結果、どんな特徴があるか。
  ・公共的な。
  ・外に開かれた。
 3)【説】この言語を「他者の言葉の意味」と呼ぶことにする。
 4)【説】しかし、個人の用いる言語の意味は、その人の体験によって多様化する。
 5)【L1】このことをどのように表現しているか。
  ・人生の分だけ言語がある。
  ・個人のもとに発散していく。
 6)【説】「愛」の意味で体験した通りである。
 7)【説】この言語を「私の言葉の意味」と呼ぶことにする。
 8)【L2】「言語の内と外」とは。
  ・言葉の内が私の言葉の意味、外が他者の言葉の意味。

7.意味の他者性の問題について
 1)【L1】すると、どう言うことが起こるか。
  ・私の言葉の意味と他者の同じ言葉はズレを生じてくる。
  ・他者はコミュニケーションにおいて私と異なる意味の発信源になる。
 2)【L1】ここで起こる問題は。
  ・意味の他者性。
 3)【L1】「意識における他我」と「意味の他者性」の違いは。
  ・意識における他我は、他人の持っている意識。
  ・意味の他者性は、他者の持っている言葉の意味。
 4)【L2】なぜ、「他者」ではなく「他者性」と「性」がついているのか。
  ・理解しきれないが、全く理解を拒むわけでもない。
  ・理解してごらんと誘惑する。
 5)【L3】外界問題の洞窟にたとえると。
  ・他者の意味は完全には理解はできないが、公共的な言語を使っているので、理解できそうに思える。
 6)【L3】「言語の内と外を行き来する」とは。
  ・私の言語を使って、他人の言語でも理解できるように伝える。
  ・他人の言語を、私の言語に翻訳して理解する。

8.15)16)をペアリーディングさせる。
9.「実在性」の問題について
 1)【L1】「同じような誘惑の声」とは。
  ・「さぁ、理解してごらんという声」と同じ、「さぁ、語り出してごらん」。
 2)【L1】「それらは語りえぬ」の指示内容は。
  ・コーヒーの味わいや山歩きの様子。
 3)【L1】「そんな誘惑」の指示内容は。
  ・「さぁ、語りだしてごらん」
 4)【L1】「ここにこそ」の指示内容は。
  ・語りだしてごらんという誘惑が響いている所。
 5)【L3】「実在性の問題」とは。
  ・実在しているが言葉で表現し尽くすことができない私の体験を、なんとか言葉を使って表現する。
 6)【L4】実在しているが言葉で表現し尽くせないものは、他に何があるか。
  ・感動や感覚。
  ・何となくわかっているが、うまく言い表せない難しい問題。
  ・得たいの知れない不吉な塊。
 7)【L1】「それらを理解し」の指示内容は。
  ・今は理解できない、今は語りだせないもの。
 8)【L1】どうすれば理解し、語り出せるか。
  ・私自身の手持ちの言葉を変え、私自身を変える。
 9)【L1】「それらと出会う」の指示内容は。
  ・今は理解できない、今は語りだせないもの。
 10)【L1】「そんな予感」「そんな誘惑」の指示内容は。
  ・今は理解できない、今は語りだせないものと出会える
 11)【L1】「それが、私の」の指示内容は。
  ・他者と実在の誘惑を響きをとらえること。
 12)【L3】実在性の問題とは何か。
  ・自分で実感しているが、自分の言葉で表現しきれない存在の問題。
  ・言語を通して、私と実在を結びつけていく。
 13)【L4】そのためにはどうしたらいいか。
  ・私の言葉の意味を増やす。
  ・語るもとになる人生体験を増やす。
  ・人生体験を増やせば、私自身が変わる。



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学習の準備
1.読み方を書きなさい。
 30 他我 外界 対 収まる 31 苦味 32 洞窟 33 堅気 36 鎮座 声高 
2.語句の意味を調べなさい。
他我問題
外界問題
みょうちきりん
自閉
袋小路
堅気
清算
鎮座


学習のポイント
1.「他我問題」「外界問題」とは何かを理解する。
2.それらの問題が過去形で語られ、現在形で「今はない」と表現できる理由を理解する。
3.外界とは何か、内界とは何かを理解する。
4.「意識」の働きを理解する。
5.「他我問題」と「外界問題」の関係と、その矛盾の解決法を理解する。
6.「他者性の問題」「実在性の問題」とは何かを理解する。
7.「言語の外」とは何かを理解する。
8.コミュニケーションにおける言語の性質と働きを理解する。
9.「意味の他者性」とは何かを理解する。
10.「他者性の問題」「実在性の問題」を解決する方法を理解する。
11.指示語の指示内容を確認する。
12.接続語の働きを確認する。