論語 荘子(言大而無用  荀子(学不可以已  韓非子(処知則難  公私相背) 孟子(性善不忍人之心


論語                   

子 曰「三 人 行、必 有 我 師 焉。択 其 善 者 而 従 之、其 不 善 者 而 改 之」           
子曰はく、「三人行けば必ず我が師有り。其の善なる者を択びて之に従ひ、其の善ならざる者にして之を改む。」と。

★先生は言われた。「三人で歩いていけば、必ずその中に自分の師とすべきものがある。そのよいものを選びとって従い、よくないものを見て自分を改めるのだ」
1)三人とは誰と誰か。
 ・自分と、他の二人。

 

曾 子 曰「吾 日 三 省 吾 身。為 人 謀 而 不 忠 乎。与 朋 友 交 而 不 信 乎。伝 不 習 乎」
                   
曾子曰はく、「吾日に三たび吾が身を省みる人の為に謀りて忠ならざるか。朋友と交はりて信ならざるか。習はざるを伝へざるか。」と。                  

★曾子は言った。「私は一日に何度も自分を反省する。人の相談に乗って真心を尽くさない ことがなかったか。友だちと交わって自分の言葉に責任を持たないことがなかったか。習 熟していないことを伝えなかったか。」

 

子 曰「君 子 和 而 不 同、小 人 同 而 不 和」           
子曰はく、「君子は和して同ぜず。小人は同じて和せず。」と。

★先生は言われた。「徳のある人は、異質なものを調和させるが、何にでも賛成しない。徳 のない人は何にでも賛成して、異質なものと調和しようとしない」
1)「君子」の意味を確認し、反対語を読み取る。
 ・徳のある人。
 ・小人。
2)「和」と「同」の違いと、「同」の四字熟語を考える。
 ・「和」は、主体性を保ちながら他との調和をはかる。
 ・「同」は、主体性を捨てて他の考えに賛成する。付和雷同。

 

子 曰「徳 不 孤、必 有 隣」
                   
子曰はく、「徳は孤ならず、必ず隣有り。」と。

★先生は言われた。「道徳に従って行動することは、孤独にならず、必ず同類が周囲にいる。

 

子 曰「温 故 而 知 新、可 以 為 師 矣」               
子曰はく、「故きを温ねて新しきを知れば、以つて師と為るべし。」と。

★先生は言われた。「過去の事柄や古典を習熟するところまで学んで、新しい意味を見つけて、考え、行動すれば、先生になることができる。」
1)「温」の原義を説明する。
 ・肉をとろ火で煮詰めてスープを作る。このことから、習熟する意味が出てくる。
2)「知新」とはどういうことかを考える。
 ・現実の問題を認識し、解決策を考えること。
3)古典や歴史をを勉強する意義を確認する。

 

子 曰「由、誨 女 知 之 乎。知 之 為 知 之、不 知 為 不 知。是 知 也」                 
子曰はく、「由よ、女に之を知るを誨へんか之を知るを之を知ると為し、知らざるを知らずと為す。是れ知るなり。」と。

★先生は言われた。「由よ。おまえに知るということを教えようか。知っていることを知っているとし、知らないことを知らないとする。これが知るということだ。」
1)孔子の言う「知る」とはどういうことかを考える。
 ・知っていることと知らないことをはっきり区別すること。
2)そうした姿勢が必要な理由を考える。
 ・知らないことを知らないというのは恥ずかしいことで、知ったかぶりをする。
 ・十分に知らないのに発想を飛躍させたり、軽率に行動に移すと失敗する。
 ・何を知らないかも知らないのは、学習の手がかりさえない。
 ・知らないことを知ろうとするところに学問が始まる。

 

子 曰「学 而 時 習 之。不 亦 説 乎。有 朋 自 遠 方 来。不 亦 楽 乎。人 不 知 而 不 慍。不 亦 君 子 乎」               
子曰はく、「学びて時に之を習ふ。亦説ばしからずや。朋有り遠方より来たる。亦楽しからずや。人知らずして慍みず。亦君子ならずや。」と。

★先生が言われた。「古典をそのまま受け入れて、学ぶ意欲の起こるたびに復習する。なんと喜ばしいことではないか。同門の友がいて遠方から訪ねてくる。なんと楽しいことではないか。学問や能力を認めてくれないと言って心の中に不満を持たない。なんと立派な人ではないか。
1)「学」と「習」の違いを考える。
 ・学は、まねること。古典には、詩(経)・書(経)・礼(記)・楽(経)がある。
 ・習は、復習すること。本義は、雛鳥が繰り返し飛ぶ練習をすること。
 ・どちらも創造性がないが、繰り返し反復練習をして基本を固める。
 ・確実に力を付けていくことが喜びである。
2)「不亦〜乎」の感嘆の句法を説明する。
 ・なんと〜ではないか。
3)「有朋自遠方来」の二種類の読み方を説明する。
 ・「朋有り、遠方より来たる」と「朋の遠方より来たる有り」。
4)朋が来れば喜ばしい理由を考える。
 ・同じ事を研究しているので、話題が合う。
5)自己評価と他者評価の相違から来る不満の体験を質問する。

 

子 曰「不 憤 不 啓、不 悱 不 発。挙 一 隅、不 以 三 隅 反、則 不 復 也」               
子曰はく、「憤せずんば啓せず、せずんば発せず。一隅を挙げて、三隅を以つて反らざれば則ち復たせざるなり。」と。

★先生が言われた。「心中から噴き上がってくるものがなければ出口を開き端緒を示せない。感じて言葉にならずに苛立たなければ、開き導くことができない。物事を一部分を取り上げると、他の部分を反応しなければ、重ねてはしない。
1)何について述べたものかを考える。
 ・指導方法。教え方。
2)「憤」とは何に苛立っているのかを考える。
 ・物事を理解できないこと。
3)「悱」とは何に苛立っているのかを考える。
・理解したことを、うまく説明できないこと。
 ・どちらも理解したい、表現したいというモチベーションがなければ、教えても習得でき  ない。
4)「挙一隅」という教え方を考える。
 ・一部分だけ教えて、すべてを教えない。
 ・後の部分は一部を応用して、自分でできるようになる。
 ・マニュアルではなく、自分で考えて行動できるようになる。
                                        


荘子 言大而無用

 中国の思想の流れは、孔子の説いた仁愛と礼楽を理想とする儒家の思想がある。主な思想家は孟子である。また、文化的な営みを否定して、自然の道に変えるという無為の道を説いたのが道家である。主な思想家は、荘子や老子である。その後、儒家の流れをくむ荀子が現れ集大成するが、彼の性悪説をもとに法家が現れる。主な思想家は韓非子である。
 魏の宰相である恵子が荘子に言う。「自分の庭には大きな木があるが、幹は節くれだっていて枝は曲がりくねっていて使い物にならず、大工も見向きもしない。まるで、あなたの大法螺と同じで、誰も相手にしない。」荘子は言い返す。「狸や鼬は、身を低くして小動物をとらえたり、あちこち飛び跳ねて動き回るが、罠にかかったり網の中で死んだりする。まるで小賢しく動き回るあなたのように。要領よく機敏であるが、それが命取りになる。それに比べて、殻牛は大きくても鼠も捕らえられない。スケールは大きいが役に立たない。まるで私のように。あなたは、大木を役に立たないと思い悩んでいるようだが、人為の加えられない絶対無の理想の地に、妨げるものがない自由の地に、どうしてその側でのんびり暮らしたり寝そべったりしないのか。斧やまさかりで斬られたりすることもない。世間的には役に立たないかも知れないが、超俗的には有用性があり困らないことなのだ。


荘子 無用之為用

 恵子がまた荘子に「お前の言うことは役に立たないんじゃ」と喧嘩を売る。荘子は冷静に答える。「役に立たないことがあって、初めて役立つことがある。地面は広く大きいが、人間が歩くには足を踏み入れない部分が多すぎて、つまり役に立たない部分が大きい。だから、足を踏み入れる部分だけを残して後を掘り下げてしまうと、怖くて歩けなくなる。だから、役に立たない部分が役に立つことは明らかである。


言大而無用

0.学習プリントを配布して、宿題にする。

0.中国の思想の流れについて説明する。

1.教師が音読する。

2.生徒と音読する。

3.注意すべき書き下し文を確認する。

4.恵子謂荘子曰、「吾有大樹。人謂之樗。其大本擁腫而不中縄墨、其小枝巻曲而不中規矩。

 1)恵子の説明をする。

 2)縄墨、規矩を説明する。

5.立之塗、匠者不顧。今子之言、大而無用。衆所同去也。」

 1)匠者が顧みない理由は。

 2)恵子の発言の意図は。

6.荘子曰、「子独不見狸狌乎。卑身而伏、以候敖者。東西跳梁、不避高下、中於機辟、死於罔罟。

 1)「子独不見狸狌乎」を疑問の句法に注意して訳させる。

 2)狸狌は何に例えられているか。

7.今夫リ牛、其大若垂天之雲。此能為大矣、而不能執鼠。

 1)「今夫」の意味は。

 2)「若」が比況の句法であることを確認する。

 3)「リ牛」は何を例えているか。

8.今子有大樹、患其無用。何不樹之於無何有之郷、広莫之野、彷徨乎無為其側、逍遥乎寝臥其下。

 1)「何不〜」が疑問の句法であることに注意する。

 2)「無何有之郷」を説明する。

 3)「広莫之野」を説明する。

 4)荘子の大樹に対する考え方は。

9.不夭斤斧、物無害者。無所可用安所困苦哉。」

 1)「安所困苦哉」を反語の句法に注意して訳させる。

無用之為用

1.教師が音読する。

2.生徒と音読する。

3.注意すべき書き下し文を確認する。

4.恵子謂荘子曰、「子言無用。」荘子曰、「知無用、而始可与言用矣。

 1)「与」の読み方に注意する。

 2)荘子の論法に注意する。

5.夫地非不広且大也。人之所用容足耳。然則側足而墊之、致黄泉、人尚有用乎。」

 1)「非不〜」を二重否定に注意して訳させる。

 2)「〜耳」が限定の句法であることを確認する。

 3)「〜乎」が疑問の句法であることに注意して訳させる。

 4)荘子の意見をまとめる。

6.恵子曰、「無用。」荘子曰、「然則無用之為用也、亦明矣。」(外物)

 1)荘子の論法に注意する。


荀子 学不可以已

 学問はやめてはいけない。無限のものである。青が藍から取って藍よりも青くなるように、氷は水からできて水よりも冷たいように、作られたものは、もとのものを乗り越えることができる。また、真っ直ぐな木でも曲げることができるし、乾燥しても曲がったままになる。それは、外から加えられた力がそのものの性質を変えることができることを示している。だから木は定規を当てられれば真っ直ぐになり、刃物は砥石で研げば鋭くなる。立派な大人は学問をして自分を反省すれば行いに過ちがなくなる。高い山に登れば天の高さを知ることができるし、谷を臨めば地面の厚さがわかるように、実際にその場に行き、身をもって体験すると実感として本当に理解することができる。同じように、古代の聖王の残した言葉を聞けば、学問の偉大さがわかる。古典を学ぶ意義はここにある。辺境の異民族は、生まれた時は我々と同じ産声であるが、成長するに連れて習俗が異なるのは、そさぞれの民族や国家の教育のおかげである。


0.学習プリントを配布して、宿題にする。

1.教師が音読する。

2.生徒と音読する。

3.注意すべき書き下し文を確認する。

4.学不可以已。青取之於藍、而青於藍、氷水為之、而寒於水。

 1)「於」の用法に注意する。

 2)何のための例話か。

5.木直中縄、輮以為輪、其曲中規。雖有槁暴、不復挺者、輮使之然也。

 1)「不復挺者」を部分否定の句法に注意して訳させる。

 2)「使之然也」を使役の句法と指示内容を明らかにして訳させる。

 3)何のための例話か。

6.故木受縄則直、金就礪則利、君子博学而日参省乎己、則智明而行無過矣。

 1)何のための例話か。

7.故不登高山、不知天之高也。不臨深谿、不知地之厚也。不聞先王之遺言、不知学問之大也。

 1)何のための例話か。

8.干・越・夷・貊之子、生而同声、長而異俗、教使之然也。

 1)「教使之然也」を使役の句法と指示内容を明らかにして訳させる。

 2)何のための例話か。


韓非子 処知則難

 鄭の武公は内心で胡を討とうと思っていた。そのためにまず、自分の娘を胡に嫁がせた。政略結婚で、胡と同盟を結ぶためであるかのように偽装工作の第一弾である。次に、家来達に、「どの国を攻めればいいか」と問いかける。関其思は武公の本心を知っていたので、得意気に「胡を討つべきです」と答える。しかし、武公は「兄弟国である胡を討てとは何事だ」と激しく怒るふりをして、関其思を殺してしまう。これが、偽装工作の第二弾である。胡はそれを聞いて、すっかり武公を信じてしまって、国境の警備を解いた。その隙に、武公は胡を攻めて、占領した。
 宋の金持ちの家の塀が雨で崩れた。息子が、「修理しないと盗人が入る」と言った。また隣の主人も同じことを言った。果たして、その夜に、盗人が入った。金持ちは、自分の息子は先見の明があるといって誉め、隣の主人は盗人ではないかと疑った。我が子は可愛く、他人は疑わしいからである。 関其思と隣の主人は、本当のことを言っている。しかし、ひどい場合は殺され、軽い場合でも疑われたりしている。つまり、真実を知るのは難しくなく、知ったことを言うのか言わないのかの対処が難しいのである。


0.学習プリントを配布して、宿題にする。

1.教師が音読する。

2.生徒と音読する。

3.注意すべき書き下し文を確認する。

4.昔者、鄭武公欲伐胡。故先以其女妻胡君、以娯其意。

 1)武公が娘を胡に嫁がせた理由は。

5.因問於群臣曰、「吾欲用兵。誰可伐者。」大夫関其思対曰、「胡可伐。」

 1)接続詞「因」に注意する。

 2)「誰〜」が疑問の句法であることを確認し、訳させる。

 3)関其思が「胡可伐。」と言った理由は。

6.武公怒而戮之曰、「胡兄弟之国也。子言伐之何也。」胡君聞之、以鄭為親己、遂不備 鄭。鄭人襲胡取之。

 1)武公が関其思を殺した理由は。

7.宋有富人。天雨牆壊。其子曰、「不築必将有盗。」其隣人之父亦云。暮而果大亡其財。其家甚智其子、而疑隣人之父。

 1)再読文字「将」に注意する。

 2)「父」の読みと意味は。

 3)息子は誉められ、隣人は疑われた理由は。

8.此二人、説者皆当矣。厚者為戮、薄者見疑。則非知之難也、処知則難也。(説難)

 1)「此二人」とは。

 2)「説者皆当」とは具体的に。

 3)受身の句法「為〜」「見」に注意する。

 4)「処知」とはどうすればいいのか。


韓非子 公私相背

 楚人の直躬が、自分の父が羊を盗んだことを正直に役人に告げた。宰相は直躬を死罪にした。なぜなら、法律を守り君主に対しては忠誠を尽くしたが、親には忠義を尽くさなかったからである。
 魯人が戦争に行ってはその度逃げて帰って来た。孔子が理由を尋ねると、自分が死ねば老親の面倒を見る者がいなくなるからだと答えた。孔子はこの男は君主に対しては不誠実であるが親に対しては孝行なので、推挙して昇進させた。
 その後、楚では肉親の罪を正直に言えば死罪になるので誰も正直に申し立てることはなくなった。一方、魯では逃げた方が昇進できるので平気で降伏して逃げるようになった。このように君主の利益と庶民の利益は異なっているのである。韓非子の結論としては、君主が庶民の善行を取り立てながら、国家の幸福をも願うことは無理なことであるから、国家の幸福を優先すべきである。
 昔、蒼頡が文字を作った時、自分のことを優先させることを「私」とし、「私」に反す「公」とした。「公」と「私」が相反することは、蒼頡の時代からわかっていたことである。今は公私の利害を同じだ、「私」の幸福は「公」の幸福につながる、「公」の幸福は「私」の幸福であると考えるのは間違いである。


0.学習プリントを配布して、宿題にする。

1.教師が音読する。

2.生徒と音読する。

3.注意すべき書き下し文を確認する。

4.楚人有直躬。其父窃羊、而謁之吏。令尹曰、「殺之。」以為「直於君、而曲於父。」執而罪之。以是観之、夫君之直臣、父之暴子也。

 1)「而シテ」の意味は。

 2)「謁之」の指示内容は。

 3)「殺之」の指示内容は。

 4)「以為」の用法は。

 5)「而(置き字)」の意味は。

 6)「罪之」の指示内容は。

 7)「以是観之」の用法は。

 8)直躬の例話からの結論は。

5.魯人従君戦、三戦三北。仲尼問其故。対曰、「吾有老父、身死莫之養也。」仲尼以為孝、挙而上之。以是観之、夫父之孝子、君之背臣也。

 1)「仲尼」とは誰か。

 2)「其故」の指示内容は。

 3)「之養」の指示内容は。

 4)「而(置き字)」の意味は。

 5)「上之」の指示内容は。

 6)魯人の例話からの結論は。

6.故令尹誅而楚姦不上聞、仲尼賞而魯民易降北。上下之利、若是其異也。而人主兼挙匹夫之行、而求致社稷之福、必不幾矣。

 1)「而(置き字)」の意味は。

 2)楚での結果と、魯での結果を確認する。

 3)「而ルニ」の意味は。

7.古者蒼頡之作書也、自環者謂之私、背私謂之公。公私之相背也、乃蒼頡固以知之矣。今以為同利者、不察之患也。

 1)「知之」の指示内容は。

 2)蒼頡の例話の意図は。

 3)韓非子の結論は。


孟子  性善

 告子は、人の性を水に例えて、水が東西どちらへでも流れるように、人の性も善悪どちらにもなると言う。
 それに対して孟子は、確かに東西ではそうだが、上下ではそうはならないと言う。水が低いところに流れるように、人の性は善に流れるものだ。人が善でないことがないのは、水が低い方へ流れないことがないのと同じである。ただし、水面を打てば水は跳ね上がるし、激しく打てば山より高くなることもある。しかし、これは水の本来の性質ではない。人が不善をなすのも同じことである。
 しかし、なぜ低い方に流れるのが善と言えるのか。低い方に流れるのを不善とすれば、論理は正反対になる。易きに流れれるとも言うように、低い=不善の方が一般的ではないか。と考えると、一種のトリックである。


1.学習プリントを配布し、宿題にする。
2.教師が音読、生徒と音読する。
3.学習プリントの書き下し文を確認する。
 
4.告子曰「性猶湍水也。決諸東方、則東流、決諸西方、則西流。人性之無分於善不善也、 猶水之無分於東西也」
 1)告子の説明をする。
  ・孟子の論争のライバル。
 2)語句の意味を説明する。
  ・性=人間の本性。
  ★猶ホ〜ノゴトシ=再読文字。比喩。まるで〜のようだ。
  ・湍水=渦巻く流れ。
  ・決=堰を切って落とす。
  ・分=区別。
 3)訳す。
  ・告子が言った。人間の本性はまるで渦巻く流れのようである。これを東の方に堰を切って落とすと東に流れ、これを西の方に堰を切って落とすと西に流れる。人の本性が善か不善かを区別できないのは、まるで水が東に流れるか西に流れるか区別できないようなものである。
 4)告子が言う人間の本性と水の共通点を考える。
  ・水は、東か西かどちらに流れるか決まっていない。
  ・人間の本性も、善か不善かどちらになるかわからない。
 5)当時の論法を考える。
  ・物に例えて論じる。
  ・その例えが妥当かどうかによって説得力が決まる。
 
5.孟子曰「水信無分於東西、無分於上下乎。人性之善也、猶水之就下也。人無有不善、 水無有不下。
 1)語句の意味を確認する。
  ★無ン〜乎(や)=否定の反語。〜ないだろうか、いや〜である。
  ★無シ〜不ルコト〜=二重否定。〜でないことはない。
 2)訳す。
  ・孟子が言った。「水は本当に東に流れるか西に流れるかわからないが、上に流れるか下に流れるかを区別できないだろうか、いやできる。人の本性が善であることは、ちょうど水が下に流れるようなものである。人の本性は善でないことはなく、水は下に流れないことはない。
 3)孟子の論点を整理する。
  ・たしかに、水の流れの東西はわからない。
  ・しかし、水の流れの上下は決まっている。
  ・水は、下に流れるに決まっている。
  ・同じように、人間の性も善であるに決まっている。
 4)孟子の論法を考える。
  ・まず、相手の意見を受け入れる。
  ・その上で、同じことについて違う観点から考える。
 
6.今夫水搏而躍之可使過顙、激而行之、可使在山。是豈水之性哉。其勢則然也。
 1)語句の意味を確認する。
  ・搏=手で打つ。
  ・躍=跳ね返させる。
  ・激=水を遮り、水勢を激しくする。
  ★豈に〜哉(や)=どうして〜だろうか、いや〜ない。
 2)訳す。
  ・今、水を手で打って水を跳ね返させると、額を越えさせることができ、水を遮り、水勢を激しくすれば、山の上に上がらせることもできる。これは、水の本性と言うことができるだろうか、いやできない。外から加える勢いがそうさせているのである。
 3)指示語の指示内容を考える。
  ・行之=水搏。
  ・是=水搏而躍之可使過顙、激而行之、可使在山。
  ・其勢=激
  ・然=躍之可使過顙、可使在山。
 4)孟子の水が上に上がる論理を考える。
  ・水は下に流れるものである。
  ・しかし、水を打てば上に跳ね返る。
 
7.人之可使為不善、其性亦猶是。
 1)訳す。
  ・人に不善を行わせることができるのは、その本性がやはりこのようである。
 2)指示語の指示内容を考える。
  ・是=水搏而躍之可使過顙、激而行之、可使在山。
 3)孟子の不善の論理を考える。
  ・人間の本性は、本来善である。
  ・しかし、外から力が加われば不善を行うこともある。
 4)人間の本性について、「水搏」に当てはまるものを考える。

8.全体について
 1)孟子の論の矛盾を考える。
  ・水が「下」に流れる=本性が「善」であるとしたが、
   水が「下」に流れる=本性が「不善」であるといえるではないか。
  ・出発点から決めつけがある。


孟子  不忍人之心


1.【指】学習プリントを配布し、学習の準備を宿題にする。
2.【指】宿題を点検する。
3.【説】漢字の読み方を確認する。
 斯チ  政  所以  謂フ  乍チ  孺子  将ニ  怵タ  惻隠  要ム  誉レ  悪ム  然ス  由リテ是ニ  観ル  羞悪   是非
4.【指】一文ずつ音読させる。
5.【指】注意すべき書き下し文を確認する。

6.孟 子 曰「人 皆 有 不 忍 人 之 心 先 王 有 不 忍 人 之 心、  斯 有 不 忍 人 之 政 矣。以 不 忍 人 之 心 行 不 忍 人 之 政、治 天 下、可 運 之 掌 上。
 【訳】孟子が言った。「人にはみんな他人にむごいことができない心がある。古代の聖王は、他人にむごいことができない心があれば、他人にむごいことができない政治ができる。他人にむごいことができない心で他人にむごいことができない政治を行なえば、天下を治めることは、これを手のひらの上で転がすことができる。
 1)【説】語句の意味。
  ・不忍人=他人にむごいことができない。
  ・先王=古代の聖王。堯、舜、禹。
 2)【L1】「運之」の指示内容は。
  ・天下。

7.所‐以 謂 人 皆 有 不 忍 人 之 心 者、今 人 乍 見 孺 子 将 入 於 井、皆 有 怵 タ 惻 隠 之 心。非 所‐以 内 交 於 孺 子 之 父 母 也。非 所‐以 要 誉 於 郷 党 朋 友 也。非 悪 其 声 而 然 也。
 【訳】人にみんな他人にむごいことができな心があるという理由は、もし、人がふと幼児が今にも井戸に落ちそうなのを見れば、みんな驚いてはっとし、かわいそうに思うだろう。交際を幼児の父母に入れるたからはない。名誉を自分の住む村里や友だちに求めるからではない。(助けなかったという)悪い噂を恐れるからそうするのではない。
 1)【説】語句の意味。
  ・所以=理由。
  ・乍=ふと。突然。
  ・今〜レバ=もし〜ならば。
  ・孺子=幼児。
  ・将ニ〜す=再読文字。いまにも〜しようとする。
  ・怵タ=驚いて、はっとする。
  ・惻隠=かわいそうに思う。
  ・郷党=自分の住む村里。
  ・声=噂。(助けなかったという)悪い噂。
  ・然スル=そうする。
 2)【L1】「非所以内交於孺子之父母也」の対句は。
  ・非所以要誉於郷党朋友也。
  ・非悪其声而然也。
 3)【L2】「然」の指示内容は。
  ・有怵タ惻隠之心。
 4)【L3】それでは、なぜ「怵タ惻隠之心」の心が生まれるのか。
  ・人間の本性が善だから。

8.由 是 観 之、無 惻 隠 之 心、非 人 也。無 羞 悪 之 心、非 人 也。無 辞 譲 之 心、非 人 也。無 是 非 之 心、非 人 也。
 【訳】以上のことから考えると、かわいそうに思う心がないのは人間ではない。恥じ憎む心がないのは人間ではない。遠慮し譲り合う心がないものは人間ではない。善悪をわきまえる心がないものは人間ではない。
 1)【説】語句の意味。
  ・由観之=以上のことから考えると。
  ・羞悪=恥じ、憎む。
  ・辞譲=遠慮し、譲り合う。
  ・是非=善悪をわきまえる。
 2)【L1】対句は。
  ・無 惻 隠 之 心、非 人 也。
   無 羞 悪 之 心、非 人 也。
   無 辞 譲 之 心、非 人 也。
   無 是 非 之 心、非 人 也。

9.論理構造を理解する。
 1) 人 皆 有 不 忍 人 之 心
 2) (不 忍 人 之 心)
     ↓
   (不 忍 人 之 政)
     ↓
    治 天 下
 3)その理由は
   今、人 乍 見 孺 子 将 入 於 井
     ↓ 
  ○(有 怵 タ 惻 隠 之 心)
  ×(内 交 於 孺 子 之 父 母)
  ×(要 誉 於 郷 党 朋 友)
  ×(悪 其 声)
 4)以上のことから考えると
  ×(惻 隠 之 心)─┐
  ×(羞 悪 之 心)├─×人
  ×(辞 譲 之 心)│
  ×(是 非 之 心)─┘ 



















不忍人之心 学習プリント               点検  月  日
                  組  番 氏名 
学習の準備
1.次の漢字の読み方を現代仮名遣いで書け。
 斯チ  政  所以  謂フ  乍チ  孺子  将ニ  怵タ  惻隠  要ム 誉レ  悪ム  然ス  由リテ是ニ  観ル  羞悪   是非
2.左右2行ずつ空けて原文を写しなさい。
3.原文の右に書き下し文を書きなさい。特に、次の部分に注意しなさい。
 1)先王有不忍人之心、斯有不忍人之政矣。
 2)治天下、可運之掌上。
 3)所‐以謂人皆有不忍人之心者、
 4)今人乍見孺子将入於井、
 5)非所‐以内交於孺子之父母也。
 6)非悪其声而然也。
4.原文の左に現代語訳を書きなさい。

学習のポイント
1.「不忍人之心」の意味を理解する。
2.よい政治をする秘訣を理解する。
3.人が井戸に落ちようとする幼児を助ける理由を理解する。
4.人であるのに必要か心を理解する。
5.「将」の再読文字の用法を理解する。
6.比喩表現を理解する。
7.対句表現を理解する。
8.仮定の句法を理解する。
9.指示語の指示内容を理解する。



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荘子 言大而無用 無用之為用  学習プリント

学習の準備

1.白文プリントに、句読点、返り点、送り仮名を付けなさい。
2.次の語の読み方を歴史的仮名遣いで書きなさい。
 規矩 匠者 不顧 独 跳梁 若 患 無何有 彷徨 側 逍遥 寝臥 夭 安 与 夫 且 耳 然 則 尚 亦
3.白文プリントの右側に書き下し文を書きなさい。特に、次の部分に注意しなさい。
 1)子独不見狸狌乎。
 2)其大若垂天之雲。
 3)何不樹之於無何有之郷、広莫之野、彷徨乎無為其側、逍遥乎寝臥其下。
 4)無所可用安所困苦哉。
 5)夫地非不広且大也。
 6)人之所用容足耳。
 7)然則無用之為用也、亦明矣。
4.白文プリントの左側に訳を書きなさい。特に次の部分に注意しなさい。
 1)今子之言、大而無用。
 2)子独不見狸狌乎。
 3)其大若垂天之雲。
 4)此能為大矣、而不能執鼠。
 5)何不樹之於無何有之郷、広莫之野、彷徨乎無為其側、逍遥乎寝臥其下。
 6)無所可用安所困苦哉。
 7)人之所用容足耳。
 8)人尚有用乎。
 9)然則無用之為用也、亦明矣。

学習のポイント
1.恵子は、大樹をどのように評価しているのかを理解する。
2.大樹は、何を例えていているのかを理解する。
3.恵子は荘子をどのように評価していたのかを理解する。
4.荘子は、狸狌をどのようなものと考えているかを理解する。
5.狸狌は、何を例えているのかを理解する。
6.荘子は、大樹をどのように評価しているかを理解する。
7.荘子の「無用之用」の考え方を理解する。
8.疑問の句法「独〜乎」「何不〜」「〜乎」に注意する。
9.反語の句法「安〜哉」に注意する。
10.限定の句法「〜耳」に注意する。








荀子 学不可以已  学習プリント

学習の準備

1.白文プリントに、句読点、返り点、送り仮名を付けなさい。
2.次の語の読み方を歴史的仮名遣いで書きなさい。
 已 雖 復 使 然 博 過 遺言
3.白文プリントの右側に書き下し文を書きなさい。特に、次の部分に注意しなさい。
 1)学不可以已。
 2)輮使之然也。
4.白文プリントの左側に訳を書きなさい。特に次の部分に注意しなさい。
 1)不復挺者、輮使之然也。

学習のポイント

1.青や氷や木の例の意図を理解する。
2.高山や深谷の例の意図を理解する。
3.異民族の話の意図を理解する。
4.荀子の思想の特徴を理解する。
5.部分否定の句法に注意する。
6.使役の句法に注意する。





韓非子 処知則難  学習プリント

学習の準備

1.白文プリントに、句読点、返り点、送り仮名を付けなさい。
2.次の語の読み方を歴史的仮名遣いで書きなさい。
 昔−者 伐ツ 故ニ 先ヅ 妻ス 因リテ 対ヘテ 戮ス 遂ニ 将ニ(ス) 父 亦 甚ダ 説ク 戮サ為 疑ハ見 則チ
3.次の部分について白文プリントの右側に書き下し文を書きなさい。
 1)不築必将有盗。
 2)厚者為戮、薄者見疑。
 3)則非知之難也、処知則難也。
4.白文プリントの左側に訳を書きなさい。特に次の部分に注意しなさい。
 1)誰可伐者。
 2)子言伐之何也。
 3)厚者為戮、薄者見疑。
 4)則非知之難也、処知則難也。

学習のポイント

1.武公が娘を胡君に嫁がせた理由を理解する。
2.武公が群臣に質問した理由を理解する。
3.関其思が「胡可伐。」と答えた理由を理解する。
4.武公が関其思を殺した理由を理解する。
5.武公の真意を理解する。
6.その家の息子がほめられ、隣の主人が疑われた理由を理解する。
7.関其思と隣の主人に共通することを理解する。
8.疑問の句法に注意する。
9.受身の句法に注意する。
10.再読文字に注意する。






韓非子 公私相背  学習プリント

学習の準備

1.白文プリントに、句読点、返り点、送り仮名を付けなさい。
2.次の語の読み方を歴史的仮名遣いで書きなさい。
 直躬 窃ミ 而シテ 吏 以為ヘラク 直臣 暴子 北グ 仲尼 背臣 誅ス 姦 上下 若ク 而ルニ 匹夫 而モ 社稷 古−者 背ク 乃チ 固ヨリ
3.次の部分について白文プリントの右側に書き下し文を書きなさい。
 1)上下之利、若是其異也。
 2)公私之相背也、乃蒼頡固以知之矣。
4.白文プリントの左側に訳を書きなさい。特に次の部分に注意しなさい。
 1)其父窃羊、而謁之吏。
 2)而人主兼挙匹夫之行、而求致社稷之福、必不幾矣。

学習のポイント

1.令尹が直躬を処罰した理由を理解する。
2.直躬の話から得られる教訓を理解する。
3.孔子が魯人を推挙した理由を理解する。
4.魯人の話から得られる教訓を理解する。
5.直躬を処罰してからの変化を理解する。
6.魯人を推挙してからの変化を理解する。
7.君主のあり方を理解する。
8.「私」と「公」の文字の成り立ちを理解する。
9.公私に対する韓非子の考え方を理解する。
10.接続詞「而」の用法に注意する。
11.指示語の指示内容に注意する。





性善  学習プリント

学習の準備
1.次の漢字の読み方を書け。
猶ホ  則チ  信ニ  就ク  夫レ  搏ツ  躍ラセバ  可ク  使ム   是レ  豈ニ   然ル  為ス  亦  是クノ
2.左右1行ずつ空けて原文を写しなさい。
3.原文の右に書き下し文を書きなさい。特に、次の部分に注意しなさい。
 1)猶水之無分於東西也。
 2)水信無分於東西、無分於上下乎。
 3)人性之善也、猶水之就下也。
 4)人無有不善、水無有不下。
 5)今夫水、搏而躍之、可使過顙、
 6)檄而行之、可使在山。
 7)是豈水之性哉。
 8)人之可使為不善、其性亦猶是也。
4.原文の左に現代語訳を書きなさい。

学習のポイント
1.告子は、人間の本性を水のどのような性質に例えているかを理解する。
2.孟子と告子の水に対する視点の違いを理解する。
3.孟子は、人間の善性を水のどのような性質に例えているかを理解する。
4.孟子は、人間の不善性を水のどのような性質に例えているかを理解する。
5.比喩の再読文字「猶」に注意する。
6.反語の句法「〜ン乎」「豈〜哉」に注意する。
7.二重否定の句法「無〜不〜」に注意する。
8.二重否定の句法「無〜不〜」に注意する。