山月記 08
 


 李徴は非常に優秀だった。当時超難関であった管理登用試験に合格し、役人になった。今で言うなら、東大法学部に現役合格して、国家公務員になったようなものだ。将来は高級官僚のポストが約束されている。今の入試は学力だけの試験だか、当時の試験は学科だけでなく詩も作らなければならないので、単に暗記力だけに秀でた人物ではない。芸術家としての才能も要求される。
 しかし、李徴の性格は最悪だった。過剰なほどの自信家で人づきあいも悪かった。年功序列、いくら才能があってもそれに見合った仕事や出世ができない公務員に我慢できずに退職する。そんなことは先刻十分承知のはずであるが、今と同じで単なるエリートコースを進みたかっただけで、その仕事の内容まで考えずに職業選択をしたのであろう。役人になってみて初めて現実に直面したのだ。そこで、李徴は考えた。実力で勝負できる詩人になろう。これも、会社勤めを嫌ってミュージシャンになろうとする若者と同じである。かくして、李徴はフリーターになった。しかし、世の中そう甘いものではない。そうそう簡単にはメジャーになれない。生活の貯えも底を突いてきた。自分の才能を疑い始めた。それに、こんな男のどこがよかったのか、ただエリートという肩書に惹かれたのか、妻と子どもまであった。彼らを養わなければならない。このあたりの家長としての責任感はあったのだ。でも、それも自分の才能のなさを認めたくない言い訳の一部に使われていたきらいもある。
 そして、再度役人になる。しかし、かつて秀才と言われた男でも、一度リタイアした者に良い地位が与えられるはずがない。以前は馬鹿にしていたにしても年上の上司である。しかも、数年のブランクの間に、かつての同期の凡才が上司になったり、年下の上司の命令を聞かなくてはならない。これは、プライドの高い李徴にはきつい。生活はますます荒れ、性格もますますひどくなっていく。こんな状況も承知の上の再就職であったのではないか。ここに至っても、李徴の現実感のなさ、甘さはぬぐい去れない。だいたい、この男は働くということの意味をわかっていない。自分あった仕事があるはずというフリーター根性丸出しである。そして一年後、出張先で焼け酒でも飲んで憂さを晴らして寝てしまったのか、夜中突然目を覚まして大声でわめきながら外飛び出したまま行方不明になってしまった。

 翌年、偶然旧友の袁惨に出会う。彼は温厚な性格で、現役時代の李徴の唯一の友である。おそらく、酒を飲んでは不平不満ばかり言う李徴の愚痴を辛抱強く聞いてくれたのだろう。彼はコツコツ努力してきたので、いまや監察御史という官吏を取り締まる役人になっていた。姑息に上司の機嫌を取りながら出世する役人が多い中、彼は誠実に仕事をこなしてこの地位についていたのだろう。駅吏の忠告を無視して早朝出発したのも生真面目な性格からだろう。まぁ、そうしなければ李徴と遭遇できなかったのだから、小説とはいえ一つの運命の導きだったのだろう。突然、草むらから虎が飛び出してきたら、駅吏から人食い虎が出ると聞いていたにしても、もっと慌てるはずである。そして、部下に命じて退治するはずである。しかし、袁惨は冷静に李徴の声を聞き分ける。「恐懼の内にも」とあるが、その虎が李徴であるなんて咄嗟に判断できるものだろうか。その虎が李徴だなんて考えつくものだろうか。どう考えても不自然であるが、小説だから仕方ないのだろう。
 李徴の方は人間に戻って袁惨を認めるのはわかる。懐かしい気持ちは強いだろうが、プライドの高い李徴はかつての友に自分の惨めな姿を見せたくない。袁惨は外見など気にしない男だろうが、当の本人の李徴はそうはいかない。結局、自分の姿を見せずに、草むらの中から語ることになる。奇異というより哀れな図である。

 李徴のモノローグが始まる。発狂した夜のことが語られる。誰かの声に導かれて外に出る。声の正体はわからない。運命という言葉で片づけていいのかもしれないが、あるいは李徴の中のもう一人の李徴なのかもしれない。それは天使の李徴か悪魔の李徴か。それは神の悪戯なのか、罰なのか、救いなのか。声を追って走っていく内に自分の体の異変に気づく。そして、谷川に映った虎になった自分の姿をみて、最初は信じられなかった。当然である。誰が虎になった自分を直ぐに受けいれられるであろうか。次に夢だと思った。夢の中でこれは夢だと思う夢を僕も見たことがある。現実と似ていてどこか違う所がある。あるいは、現実の出来事の中でも自分にとって都合の悪い時はそうである。夢であってほしいと思うのである。しかし、夢ではないと現実を認めなければならなくなった時、初めて恐怖を感じる。どんな事でも起こりうるのだと恐れた。直ぐに理由を考える。このあたりは理性的な李徴の性格である。しかし、科学的な理由は見当たらない。運命としか言いようのないものだとあきらめた時、浮かんでくる考えは、理由もわからず押しつけられたものを受け取って、理由もわからずに生きていくのが生き物の定めであるという不条理を不条理として受けいれる諦観である。案外諦めが早い。潔いといってもよいかもしれない。その潔さの先にあるものは、死ぬことである。虎になって生きるよりは、死んだ方がましである。しかし、目の前を兎が走るのを見ると心身ともに虎になってしまう。人間として自分の意志で死ぬことすら許されないのだ。厳罰である。人間と虎が同居する中途半端な状態よりも、いっそ虎になりきってしまった方が後悔や反省して苦しまなくていい分、幸せかもしれない。しかし、それは我慢できない。どんな惨めな思いをしても、人間でいるわずかな自分を失いたくない。李徴のギリギリのプライドである。いったい、李徴は人間であることに何を望んでいるのだろうか。

 李徴が袁惨に託した一つ目の願いは、詩の伝録である。李徴という人間がかつてこの世に存在したという証拠を残しておきたかったのである。虎は死んで皮を残す、人は死んで名を残す。この気持ちはわかる。たいしたことをしなくても、誰かの心に自分という存在を残したいという願いは僕にもある。ホームページづくりがそれである。李徴は若くして人間として生きることを断念せざるをえなくなったが、普通の人間も老年期になると、自分の人生を振り返り、足跡を残したくなるものである。よく自伝を書いて自費出版する人がいる。この気持ちは高校生にわかるだろうか。
 袁惨はその詩を聞き、確かに素晴らしいが第一流の作品になるのには微妙な点で欠けていることに気づく。それは、後まで読めば、人間性であり、家族への愛であり、自分の才能に対する不安かもしれない。旧詩を吐き終わった後、突然自嘲的になる。虎と成り果てた今でも、自分の詩集が長安の風流人の間で話題になっている夢を見るのだ。そして、李徴は今の惨めな心境を即興の詩で述べる。「自分は精神病によって虎になった。かつて袁惨とは名声を分け合ったが、今では自分は落ちぶれて虎になってしまったが、袁惨は出世をしている。そんな自分を哀れんで月に向かって吼えることしかできない」と。
 李徴は次に、虎になった理由について考え、語り始める。今まで人間と対話することがなかったので正面からこの疑問に向き合うことはなかったのだろう。かつての袁惨との関係が蘇ってくる。自分は自ら人との交わりを避け、人から尊大だと思われた。勿論、かつて郷党の奇才といわれた自分に自尊心がなかったわけではない。しかし、それは羞恥心に近いものあった。いわば「臆病な自尊心」「尊大な羞恥心」と名付けられるものである。詩によって有名になろうという自尊心はあったが、反面、自分の才能のなさが暴露するかもしれないという臆病さもあり、師に就いたり詩友と交わって切磋琢磨しなかった。同時に、鈍物と一緒にやってられるかという尊大さもあった。自分に才能のなさが露顕しないように、また、自分の才能を信じようとする。李徴は見た目の強さとは裏腹に、内面に強い不安を持っていたのだ。どっちつかずの優柔不断な、相矛盾する自分の内面の猛獣を飼い太らせ、外見までそれにふさわしい虎になってしまった。その結果、自分を損ない、妻子を苦しめ、友人を傷つけてしまった。わずかな才能でも専一に磨けば詩家になれたかもしれず、きっぱりあきらめてしまえれば役人として出世できたかもしれない。なまじっか才能があるために、努力を怠ったのだ。こんな人間は山ほどいる。イチローのように才能があり努力もするから一流になれるのだ。

 最後に、袁惨に託した二つ目の願いは、妻子のことである。自分は死んだことしておいてほしい。そうすれば、家族も諦めがつくだろうし、新たな出発もできるだろうから。その根底には、家族に対してさえプライドを守りたかったのかもしれない。そして、頼み終わってから、はたと気がつく。本来なら、自分の詩業より妻子のことを先に頼むはずなのに、こんな男だから虎になったのだと再び自嘲する。そして、最後にようやく自分の最も恥ずかしい姿を袁惨に見せることを決意する。それは、袁惨に帰路に会うこと臨ませないためであるというより、自尊心や羞恥心との決別である。同時に、人間であることに決別である。

 李徴は超のつくエリートで、学問もあり詩才もあった。しかし、自尊心と羞恥心を整理できずに決断が付かず、その才能を生かせなった。詩業と家族という問題もあるが、李徴が詩に専念できなかったのは家族の問題よりも、やはり自尊心と羞恥心の問題である。
 生徒は李徴のような非凡な才能に恵まれていない。しかし、共通して言えることは、自分のしたいことに専念できるかどうかである。失敗を恐れる羞恥心は李徴同様非常に強い。失敗を恐れて一生懸命になれない。自尊心の方は李徴ほど高くはないが、一線は引いている。大きな違いは、李徴にとっての詩のように、人生を懸けるものを持っていないことだ。いや、李徴も、本当に詩がやりたかったのか。役人を希望したのも学問ができたから、当時のエリートはみな官吏登用試験を受けるので受けただけ。詩人になりたかったのかも疑問である。役人とは対局の職業であり、かっこよさに引かれたのかもしれない。
 虎に変身するという問題もある。自分の内心にふさわしいものに変身するとしたら何になるのか。人間から虎に変身する過程もおもしろい。


【指】指示。【説】説明。【注】注釈。【提】問題提起。【交】交流。【確】確認。【要】まとめ。【W】グループワークや心理テストなど。
【L1】抜き出す。【L2】縮めたり組み合わせたり言い換えたりする。【L3】解釈や想像。【L4】体験や知識。
 
導入
0.【指】「学習プリント 第一段」を配布して、宿題にする。
1.【説】教師が範読する。
2.【指】感想を書かせる。

第一段
 
1.【確】「学習プリント」の漢字の読みと語句の意味を確認する。
 博学 才穎 狷介 賤吏 潔し 帰臥 耽る 下吏  遺す 焦燥 容貌 豊頬 骨秀で 炯々 登第 豊頰 貧窮 赴き 奉ず 半ば 鈍物 歯牙 下命 往年 儁才 怏々 狂悖 夜半 山野 捜索
 ・博学才穎=知識が豊富で才知が非常に優れていること。
 ・補す=任命する。
 ・狷介=自分を守ることにこだわり、他とたやすく協調でしない性格。
 ・自ら恃む=自分自身をあてにすること。自負。
 ・甘んず=与えられたものをそのまま受け入れる。しかたがないと思ってがまんする。
 ・賤吏=身分の低い役人。
 ・潔しとせず=自分の良心や誇りから、受け入れにくい。自ら許し得ない。
 ・いくばくもなく=まもなく。
 ・帰臥=官職を辞して故郷に帰り、静かに暮らすこと。
 ・下吏=身分の低い役人。
 ・膝を屈す=相手の強さ・勢いに負けて従うこと。力尽きて服従すること屈服する。
 ・焦燥=いらだちあせること。
 ・炯々=鋭く光り輝くさま。
 ・登第=合格すること。
 ・豊頬=肉づきのよい、ふっくらした頬。美人の形容に用いる。
 ・節を屈す=節操を屈して人に従う。
 ・奉ず=うけたまわる。
 ・鈍物=才知のにぶい者。
 ・歯牙にかけない=問題にしない。無視する。
 ・下命=命令を下すこと。また、その命令。
 ・拝す=ありがたくお受けする。拝受する。
 ・往年=過ぎ去った年。昔。先年。
 ・俊才=才知の優れた人。
 ・自尊心=自分をえらいものだと思う気持ち。また、自分の品位・人格を保とうとする気持ち。プライド。
 ・怏怏=不平不満でいらいらするま。
 ・狂悖=狂気じみてわがままなさま。
 
2.【交】二人で一文ずつ交代して音読する。
3.【交】二人で内容を確認する。
 1)若くして、官吏登用試験に合格して、役人になる。
 2)まもなく、退官して、故郷で詩作にふける。
 3)数年後、再び一地方官吏になる。
 4)一年後、出張先で発狂する。
4.【指】ポイントや疑問点をノートに書かせる。
5.【交】二人で交流する。
6.【指】何人かに発表させる。
7.【提】役人になった動機、詩人になった動機、職業についてどこまで真剣に考えていたか。職業選択について考える。
9.若くして役人になったことについて、
 1)【説】官吏登用試験について。
  ・「科挙」という最も難しい試験。
  ・現在の高級官僚。エリート中のエリート。
  ・暗記力だけでなく、詩を作る才能も試される。
  ・高齢になって合格する人も多く、若くして合格するのは非常に優秀であった。
 2)【L1】李徴が役人になった理由は。
  ・博学才穎であったから。
  【注】博学才穎は条件である。理由は後で考える。
10.退官したことについて
 1)【L1】退官した理由は。
  ・賤吏に甘んずるを潔しとしない。
  ・詩家としての名を死後百年に残そうとした。
  【注】「性、狷介」「自らたのむところが厚い」は性格である。
 2)【L1】そのもとになる性格は。
  ・性、狷介。
  ・自らたのむところが厚い。
 3)【L2】言い換えると。
  ・協調性がない。
  ・自信過剰。
  ・自尊心が高い。
 4)【説】役人社会について。
  ・自分を殺して組織(国)のために働く。
  ・年功序列で、有能なものが出世できるわけではない。
  ・上意下達で、上の命令は絶対で、下は意見を言えない。
  ・協調性が重視され、突出すると叩かれる。
 5)【L3】にもかかわらず、役人になった理由を書かせる。
  ・最も難しい官吏登用試験に合格すること自体が目標であった。
  ・仕事の内容や組織について考えていなかった。
  ・進路選択の間違いがあった。
 6)【W】「あなたは上司とうまく付き合えるタイプか」チャートをする。
 7)【交】結果を隣の人と交流する。
 8)【L3】詩人になろうとした理由は。
  ・詩の才能に自信があった。
  ・自分の実力次第で有名になれる。
  ・協調性は不要で、一人でできる。
  ・役人とは正反対の職業。
 9)【L4】詩人とは詩を作ることによって何をする仕事か書かせる。
  ・自分の思いを表現する。
  ・読む人に夢や感動を与える。
 10)【説】李徴は目的ではなく有名になろうという手段として詩人になった。ここでも職業選択を間違っている。
 11)【L1】退官後の生活は。
  ・文名は容易に揚がらない。
  ・生活は日を追って苦しくなる。
  ・焦燥にかられてくる。
  【説】世の中そんなに甘いものではない。
11.復官したことについて
 1)【L1】理由は。
  ・妻子の衣食のため。
  ・己の詩業に半ば絶望したため。
 2)【L2】「半ば」絶望したとは見方を変えると。
  ・半分は絶望したが、残りの半分はまだ詩業に未練を残していた。
  【注】文名が揚がらなかった理由は後で述べられる。
  【注】この中途半端が虎になる要因になる。
 4)【L3】李徴の気持ちを想像してノートに書かせる。
 5)【交】隣の人と交流する。
 6)【指】何人かに発表させる。
  ・以前は、俗悪であっても年上の上司であったが、今は明らかに自分より才能のない同輩の命令など聞けるはずがない。
  ・以前より一層自尊心が傷つき、不平不満も強くなる。
  ・しかも、以前は詩人になればなんとかなるという希望があったが、それにも失敗している。
  ・まだ詩人に未練を残しているとしたら、さらに苦しい。
  ・八方塞がりである。
12.【確】発狂した様子についてまとめる。
 ・公用で如水に泊まる。
 ・急に顔色を変えて起き上がる。
 ・訳の分からないことを叫んで闇の中に掛けだす。
 ・二度と戻って来なかった。
 【注】第三段落の李徴の独白と比較する。
13.【発】別冊宝島『珍国語』のパロディ「木曜スペシャル風山月記0」を配布する。
 ・週刊誌の記事のパロディ。
 ・山月記のような事件が、過去の中国特有のものでなく、現在でも起こりうることを確  認する。
14.【要】あらすじを、4つの行動とその理由などを押えながら、二〇〇字以内でまとめ、感想を書かせる。
 ・1)李徴は博学才頴で、2)若くして役人になったが、3)協調性がなく、自信過剰で、4)身分の低い役人に我慢できず退官し、5)詩人として名をなそうとする。6)しかし、文名は揚がらず、生活も苦しくなり、7)妻子の衣食のためと、8)自分の才能に半ば絶望して、9)地方官吏に復職する。10)しかし、同輩や後輩の命令を聞かねばならず、自尊心を傷つけられ、11)不平不満が強く、ますますわがままになり、12)ついに旅先で発狂し、行方不明になった。(一八九字)

第二段
 
1.【確】「学習プリント」の漢字の読み方を確認する。
監察御史 勅命 駅吏 供回り 多勢 躍り出た 翻して 恐懼 懐かしげ 峻峭 久闊を叙す 異類 故人 畏怖嫌厭 図らずも 愧赧 傍ら 消息 叢中
2.【確】語句を確認する。
 ・勅命=天子の命令。
 ・あわや=危険などがその身に及ぶ寸前であるさま。あやうく。
 ・恐懼=おそれおののくこと。
 ・峻峭=きびしいさま。また、けだかくすぐれているさま。
 ・久闊を叙す=無沙汰をわびるあいさつをする。久し振りに友情を温める。
 ・異類=人間でないもの。鳥・獣・化け物など。
 ・おめおめ=恥ずべきことと知りながら、そのままでいるさま。また、恥とも思わないで平気でいるさま。
 ・畏怖嫌厭=恐れ、嫌がること。
 ・愧赧=恥ずかしさに赤面すること。
 ・消息=たより。音信。連絡。
 
3.【交】ペアリーディングさせる。
4.【確】李徴の変化をまとめ、行方不明後、虎になっていたことを確認する。
5.【L1】新たな登場人物と、その人に関する情報は。
 ・袁惨。
 ・同期生。
 ・監察御史=中央、地方の官吏の不正取り締まりを行う役人。
 ・勅命の使者。
6.【L3】どれぐらいの身分か。
 ・勅命を受けるぐらいであるから、天子の信頼がある。
7.【L1】【L3】なぜ、駅吏の言葉を退けて出発したのか。
 ・部下が多くいたから。
 ・早く役目を果たそうとした。
 ・任務に忠実であった。
 【説】まじめな役人であり、出世することがわかる。
8.【説】「残月の光りをたよりに」と「月」の描写があることに注目させる。
9.【L1】「果たして」と言うのは「予期したとおり」という意味だが、何と何が一致したのか。
 ・駅吏が人食い虎が出ると言ったことと、一匹の猛虎が躍り出たこと。
10.【L1】「あぶないところだった」とは何が危なかったのか。
 ・友とも知らずに食ってしまうところだった。
11.【L3】なぜ、思い止まったのか。
 ・偶然、人間の心に戻ったから。
 【説】偶然というのも、小説だから仕方がない。
12.【L3】なぜ、袁惨は声を聞いただけで李徴とわかったのか。
 ・親友だったから。
13.【L1】なぜ二人は親友だったのか。
 ・同期生だった。
 ・袁惨の温和な性格と李徴の峻峭な性情が衝突しなかったから。
14.【L4】自分の性格と友だちの性格について考える。
15.李徴が袁傪に姿を見せなかったことについて
 1)【L1】理由は。
  ・旧友の前にあさましい姿をさらしたくないから。
  ・袁傪に恐怖と嫌悪を起こさせたくないから。
 2)【L3】李徴の性格は。
  ・虎になっても自尊心が強い。
 3)【L1】相反する気持ちは。
  ・恥ずかしさを忘れるほど懐かしい。
 4)【要】李徴の心情をまとめる。
  ・旧友に再会できた、懐かしさとうれしさ。
  ・旧友はあさましい姿を見られたくない、自尊心。
16.袁傪の気持ちについて。
 1)【L1】袁傪の反応は。
  ・超自然の怪異を素直に受けいれ、怪しもうとしない。
 2)【L3】袁傪の性格は。
  ・友人思い。
  ・物事に動揺しない。
  ・落ち着いて対処できる。
17.【発】別冊宝島『珍国語』のパロディ「木曜スペシャル風山月記1」を編集して配布する。
18.【要】あらすじを七五字以内でまとめ、感想を書かせる。
 1)虎になった袁惨は、2)親友の袁惨に出会い、3)襲いかかる寸前に人間に戻る。4)あさましい自分の姿を恥ずかしく思うが、5)懐かしいので、6)話を交わしてくれるように頼む。(七五字)


第三段
 
1.【確】「学習プリント」の漢字の読みを確認する。
一睡 無我夢中 跳び越えて 臨んで 既に 茫然 所行 到底 操れば 堪え得る 経書 残虐 憤ろしい 経る 礎 故人 裂き食ろうて
2.【確】語句の意味を確認する。
 ・無我夢中=一つの事にすっかり心をとらわれ、他に何も考えないこと。われを忘れて行動すること。
 ・茫然=ぼんやりしていて、とりとめのないようす。
 ・所行=行ったこと。行い。ふるまい。しわざ。
 ・経書=儒教の教典。易経、詩経、春秋など。
 ・章句=文章の章と句。文句。
 
3.【交】ペアリーディングさせる。
4.【W】「三匹の動物」ゲームをする。
 1)ノートに、思い浮かぶ順に3種類の動物を書き、それぞれについて3つずつその特徴を書かせる。
 2)4人組になって発表する。
 3)解答をする。
  1番目は、自分がこうなりたいと思う人物像。
  2番目が、人からどう見られているか。
  3番目が、本当の自分。
6.【確】李徴が虎になるまでの過程をまとめる。
 1)ふと目を覚ます。              
 2)だれかが我が名を呼んでいる。
 3)覚えず、声を追って走りだす。
 4)無我夢中で駆けていく。
 5)いつしか山林に入る。
 6)知らぬ間に左右の手で地をつかんで走っていた。
 7)何か体じゅうに力が満ち満ちている。
 8)気がつくと手先やひじに毛が生えている。
 9)既に虎になっていた。
7.【L2】副詞に注意し、共通することは。
 ・無意識を表す副詞が多い。
8.【説】無意識の心理学的な説明をする。
 ・意識 ────────────┬─自我
 ・前意識(意志によって思い出せる)─┘
 ・無意識 超自我(抑圧するもの)
      エス(抑圧されるもの)
      個人的無意識(個人的なもの)
      普遍的無意識(人類に共通するもの)
9.【L3】「だれか」の正体は。
 ・運命、神
 ・自分の中のもう一人の自分。無意識。
 【説】虎になった原因である。
 【注】特定の答えを出さないで、今後の伏線として確認しておく。
10.【確】変身後の心理の変化をまとめる。
 1)初め目を信じなかった。
 2)次に、夢にちがいないと考えた。
 3)茫然とした。
 4)そうしておそれた。
 5)しかし、理由がわからない。
 6)すぐに死を想うた。
 7)しかし兎を見た途端に自分の中の人間が姿を消した。
 8)再び人間が目を覚ました時、うさぎを食っていた。
11.【L2】副詞に注意し、共通することは。
 ・順序や関係を表す副詞が多い。
 ・論理的にとらえている。
12.「夢の中でこれは夢だと知っている夢」について
 1)【L1】「1)これは夢にちがいない」「2)これは夢だぞ」の指示内容は。
  1)虎となっていたこと。
  2)夢。
 2)【L4】そんな見たことがあるか。
  ・現実に近いが、どこか違っている。
  ・明け方に見ることが多い。
 3)【L3】なぜ夢だと思ったのか。
  ・非現実的だから。
  ・信じたくなかったから。
 4)【W】「あなたの夢の自己チェック」をする。
  ・李徴ならどのタイプになるか考える。
13.【L3】茫然とした理由は。
 ・現実を受け入れた。
 ・たいへんなことになったと認識した。
14.「理由も分からずに押しつけられたものをおとなしく受け取って、理由も分からずに生きてゆくのが、我々生き物のさだめだ」について
 1)【L2】こんなことを一言で何と言うか。
  ・不条理。
 2)【L3】どんな気持ちか。
  ・「さだめ」→あきらめ。悲しみ。
 3)【説】「自分」ではなく「我々」とある意味。
  ・個人的なことでなく、普遍性を持たせるため。
  ・僕たちにも起こり得るし、現実に起こっているかもしれない。
 4)【L4】「理由も分からずに押しつけられたもの」とは何があるか。
  ・なぜ人間に生まれたのか。
   ・なぜ男や女に生まれたのか。
  ・なぜ日本人に生まれたのか。
  ・なぜ今の親から生まれたのか。
  ・なぜこのクラスにいるのか。
  ★すべて偶然であり、合理的な答えはない。
15.【L3】すぐに死を想った理由は。
 ・人間として生きていくことへの絶望。
 ・虎になって生きていくことは人間としての自尊心が許さない。
 【注】ためらいもなく死を考えた。
16.「自分の中の人間はたちまち姿を消した」について
 1)【L2】「自分の中の人間」とは。
  ・理性、倫理、道徳。人間性。
 2)【L2】対義語反対の語は。
  ・獣。
17.数時間は人間の心が帰ってくることについて
 1)【L1】「そういう時」の指示内容は。
  ・人間の心が帰ってくる時。
 2)【L1】どんなことができるか抜き出す。
  ・人語を操れる。
  ・複雑な思考にも堪え得る。
  ・経書の章句をそらんじることもできる。
 3)【L1】人間の心で虎としての所業を見た時の気持ちは。
  ・情けなく、恐ろしく、憤ろしい。
 4)【L3】「憤ろしい」理由は。
  ・酷いことをしているのに、自分でどうにもできないから。
18.人間のかえる時間が短くなっていくことについて
 1)【L1】「1)その、」「2)これは恐ろしいことだ」の指示内容は。
  1)人語も操れれば、〜そらんずることもできる。
  2)おれはどうしてて以前人間だったのかと考えていたこと。
 2)【L3】恐ろしい理由は。
  ・虎に近づいているから。
19.【L1】「古い宮殿の礎」「土砂」は何を比喩しているか。
 ・古い宮殿の礎=おれの中の人間の心。
 ・土砂=獣としての習慣。
20.「いったい、獣でも人間でも、もとは何か他のものだったんだろう。初めはそれを覚えているが、しだいに忘れてしまい、初めから今の形のものだったと思い込んでいるのではないか」について。
 1)【説】仏教では、輪廻転生と言う。
 2)【L4】この考え方をどう思うか。
 3)【W】「前世動物占い」をする。
21.虎になることについて
 1)【L1】李徴の中の2つの矛盾する心は。
  ・しあわせ。
  ・恐ろしい。
 2)【L2】「しあわせ」の理由は。
  ・虎としての残虐な行為に悩まなくてすむ
  ・自分の不可解な運命について悩まなくてすむから。
 3)【L2】「恐ろしい」理由は。
  ・人間への未練。
  ・運命に引きずられる不安
 4)【L3】李徴の本心はどちらか。
  ・恐ろしい。
  ・「しあわせ」に傍点がある理由は、本心でないことを表現している。
22.【発】別冊宝島『珍国語』のパロディ「木曜スペシャル風山月記2」を編集して配布 する。
23.【要】あらすじを一〇〇字以内でまとめ、感想を書かせる。
1)誰かの声を追って走っている内に虎になった。2)はじめ信じられず夢かと思ったが、3)現実を受け入れ理由を考えたがわからない。4)死のうと思ったが死ねなかった。5)人間としての時間が短くなることを恐ろしく思っている。(九八字)

第四段
 
1.【確】「学習プリント」の漢字の読みを確認する。
元来 業 遺稿 記誦 伝録 詩人面 巧拙 執って 朗々 格調高雅 意趣卓逸 嘲る 岩窟 嗤う 自嘲癖 狂疾 殊類 災患 爪牙 蓬茅 軺 渓山 長嘯 嘷
2.【確】語句を確認する。
 ・息をのむ=一瞬、非常に驚く。
 ・名を成す=有名になる。ある事をなし遂げて声価が定まる。
 ・業=学問・技芸。自分のなすべき仕事。
 ・遺稿=故人がその生前に書いておいた未発表の原稿。
 ・記誦=記憶し暗誦すること。
 ・巧拙=じょうずなことと、へたなこと。
 ・産を破る=財産を失う。破産する。
 ・朗々=声などが大きくはっきりして透き通っている様子。
 ・意趣=意味・内容。
 ・卓逸=際立って優れていること。
 ・自嘲=自分で自分を軽蔑し、あざけること。
 ・狂疾=気の狂う病気。精神病。
 ・災患=外部から受ける災いと、心中の憂い。内憂外患。
 ・渓山=谷と山。
 
3.【交】ペアリーディングさせる。
4.第一の依頼について
 1)【L1】何を依頼したのか。
  ・暗誦している漢詩の伝録。
 2)【L1】その理由は。
  ・一人前の詩人面がしたいのではない。
  ・自分が生涯執着したものを後代に伝えたい。
  【説】虎になった李徴に詩人面したいと言う理由はない。
 3)【L4】李徴の思いは理解できるか。後世に伝えたいものはあるか。
  ・年をとるにつれ死が近づくにつれて、このような思いが強くなる。
  ・子ども、自叙伝、ホームページ・プログ。
5.袁傪の感想について。
 1)【L1】どんな印象を持ったか。
  ・格調高雅、意趣卓逸。
  ・才能の非凡さを感じる。
  ・第一流の作品になるには、どこか微妙な点において欠けている。
 2)【L3】「微妙な点」とは何か。
  ・家族よりも自分のことを優先する。
  ・臆病な自尊心と尊大な羞恥心。
  【注】後の部分で出てくるので、ここでは意見を聞く程度に留める。
6.【L1】李徴が自嘲的になった理由は。
 ・虎と成り果てても、詩に未練を残していることに気づいたから。
 【注】「詩人面したいのではない」との矛盾に気づいた。
7.【L1】李徴は自分のことをどのように表現しているか。
 ・詩人になりそこなって、虎になった哀れな男。
 【説】李徴を一言で言い表した言葉。
8.漢詩ついて
 1)【説】訳す。
  偶然、精神病によって人間以外のものになってしまった。
  災いが襲いかかって避けることもできなかった。
  今では、この爪や牙に誰が歯向かうだろうか。
  当時は、私も君も二人とも評判が高かった。
  私は虎になって雑草の下にいるが、
  君はすでに車に乗って順調に出世している。
  この夕方谷山の明月に向かって、
  私は詩を吟ずるのでなくほえ叫んでいるだけだ。
 2)【L2】虎になった理由をどのように詠んでいるか。
  ・偶然の精神病による。
 3)【L2】李徴の心情を最もよく表している一句は。
  ・不成長嘯但成嘷
 4)【L1】「山月記」の題名の根拠は。
  ・渓「山」名「月」に対し。
9.【発】別冊宝島『珍国語』のパロディ「木曜スペシャル風山月記」を編集して配布す る。
10.【要】あらすじを九〇字以内でまとめ、感想を書かせる。
1)李徴は生きていた証に詩の伝録を依頼する。2)袁傪は李徴の才能を認めながらも微妙に欠ける所に気づく。3)李徴は虎になっても詩に未練を残している自分に自嘲的になり、4)今の気持ちを漢詩に述べる。

第五段
 
1.【確】「学習プリント」の漢字の読みを確認する。
 暁 奇異 粛然 薄幸 先刻 努めて 倨傲 羞恥心 鬼才 就いたり 切磋琢磨 伍する 潔し 珠 刻苦 碌々 瓦 塹恚 性情 損ない 警句 弄し 暴露 危惧 怠惰 専一 巌 空谷 哮って
2.【確】語句を確認する。
 ・粛然=おごそかなさま。また、かしこまるさま。しずかなさま。
 ・奇異=通とようすが違っていること。不思議なこと。
 ・粛然=なんの物音も聞こえず静かなさま。また、静かで行儀正しいさま。
 ・倨傲=おごりたかぶっていること。
 ・尊大=たかぶって偉そうにすること。横柄。傲慢。
 ・羞恥心=恥かしく思う心。はじらいの気持。
 ・郷党=郷里。同郷の人々。
 ・鬼才=人間のものとは思われないほどすぐれた才能。また、その才能を持った人。
 ・切磋琢磨=玉・石などを切りみがくように、道徳・学問に勉め励んでやまないこと。  また、仲間どうし互いに励まし合って学徳をみがくこと。
 ・俗物=名利にとらわれてばかりいるつまらない人物。無学・無風流な人。
 ・伍する=仲間に入る。同等の位置にならぶ。肩を並べる。
 ・珠=才能。
 ・刻苦=心身を苦しめて、励み努めること。
 ・碌々=ほとんど
 ・憤悶=憤り悶えること。
 ・塹意=恥じ憤ること。
 ・空費=むだに使うこと。
 ・警句=人生・社会・文化などについて真理を簡潔な中に鋭く表現した語句。
 ・弄す=もてあそぶ。
 ・危惧=あやぶみおそれること。不安心。気がかり。
 ・専一=一つの物事だけを一生懸命にすること。
 
3.【交】ペアリーディングさせる。
4.【説】「時に、残月〜告げていた」の引き締まった描写の見事さを味わう。
 ・「虎」ではなく、「薄倖の詩人」である。
5.【L1】「なぜこんな運命になったかわからぬと、先刻は言った」の該当部分を探す。
 ・第三段「なぜこんなことになったのだろう、分からぬ」
6.【説】「思い当たることが全然ないでもない」の二重否定の意図を考える。
 ・思い当たる理由はあるのだが、不確かである。
 ・話している内に明確になる。
7.虎になった理由について
 1)【L1】キーワードになる二つの心は。
  ・自尊心、羞恥心
 2)【確】それぞれの修飾語とその意味を確認する。
  ・臆病な自尊心
  ・尊大な羞恥心
 3)【説】「臆病な自尊心」「尊大な羞恥心」のねじれに注目する。
  ・臆病な=弱い態度、自尊心=強い心理
  ・尊大な=強い態度、羞恥心=弱い心理
  ・心理と態度の強弱が不一致の形で一緒になっている。
 4)【L3】それぞれどのようなものか、ノートにまとめさせる。
 5)【交】四人組になって書いたものを言い合う。
 6)【指】何人かに発表させる。
8.臆病な自尊心と尊大な羞恥心について
 1)【L2】記述を分類する。
  ・詩によって名を成そう=自尊心
  ・進んで師に就いたり、求めて詩友と交わって切磋琢磨に努めたりすることをしなか   った=臆病
  ・俗物の間に伍することも潔しとしなかった=尊大
  ・己の珠にあらざることを恐れる=羞恥心
  ・刻苦して磨こうともせず=臆病
  ・己の珠なるべきを半ば信ずる=自尊心
  ・碌々として瓦に伍することもできなかった=尊大
 2)【説】接続語に注意する。
  ・ながら=逆接
  ・かといって=逆接
  ・ゆえに=順接
 3)【L3】臆病な自尊心と尊大な羞恥心の関係は。
  ・自尊心はあるが、失敗を恐れて、臆病になる。
  ・臆病になると、羞恥心が強くなる。
  ・羞恥心を隠そうとして、尊大になる。
  ・尊大になれば、自尊心が強くなる。
  ・自尊心はあるが、………。
 4)【説】4つのものが悪循環して虎になる。
 5)【L1】そのような性情が虎になることを表している表現は。
  ・飼いふとらせる、猛獣使い。
 6)【L3】結局、李徴の何が虎にさせたのか。
  ・中途半端。
  【説】「半ば」という語に注意する。
 7)【L4】「人生は何事をも成さぬにはあまりに長いが、何事かを成すにはあまりに短
  い」という言葉をどう思うか。
  ・人生は目的なしに生きるには長いが、目的を達成しようとすれば短い。
  ・目的の有無によって感じる長さが違う。
 8)【L2】どうすれば虎にならなかったのか。
  ・自分の才能を信じて詩作を続ける。
  ・詩才のなさを自覚して、詩人になることをあきらめる。
 9)【L3】それをしなかった理由は。
  ・才能の不足を暴露するかもしれないとのひきょうな危惧
  ・刻苦をいとう怠惰。
9.虎になった後の心情について
 1)【L2】月に向かって吠える心情は。
  ・激しい後悔を感じる。
  ・悲しみを訴えたい。
  ・誰も理解してくれない。
 2)【L1】何を後悔しているのか。
  ・人間としての生活ができない。
  ・優れた詩を作っても発表する手段がない。
  【注】自分の詩業について後悔している。
 3)【L1】人間だった時の行動との共通点は。
  ・おれの傷つきやすい内心をだれも理解してくれなかった。
  【注】虎となった今も、人間だった頃と本質的には変わっていない。
 4)【L2】「おれの毛皮がぬれたのは、夜露のためばかりではない」とすれば他に何か。
  ・涙。
10.性格タイプの心理テストをする。
 1)自分の立場で回答させ、自分のタイプを考える。
 2)李徴の立場で回答させ、タイプを考えさせる。
11.別冊宝島『珍国語』のパロディ「木曜スペシャル風山月記」を編集して配布する。
12.あらすじを七〇字以内でまとめ、感想を書かせる。
 ・李徴は1)臆病な自尊心と2)尊大な羞恥心という3)猛獣を飼い太らせた結果虎になった  と4)反省し、5)空費した過去を後悔して吼えるが、6)誰も理解してくれない。(67字)

第六段
 
1.【確】「学習プリント」の漢字の読みを確認する。
木の間 暁角 道途 飢凍 計らう 恩幸 慟哭 旨 飢え凍える 帰途 懇ろ 咆哮
2.【確】語句を確認する。
 ・恩幸=(神や天子が与える)特別のいつくしみ。
 ・慟哭=声をあげてはげしく泣くこと。
 ・意に添う=気に入る。満足する。
 ・懇ろ=ていねいであるようす。
 ・咆哮=(猛獣が)さけびほえること。
 
3.【交】ペアリーディングさせる。
4.【説】時間の推移の表現を味わう。
5.【L2】「別れを告げる」「酔わねばならぬ」の意味は。
 ・虎に返る。
 【注】「返る」という表現は、基盤が虎にあることになる。
6.二つ目の依頼について
 1)【L1】何を依頼したのか。
  ・おれは死んだと告げてほしい。
  ・妻子が飢え死にしない様に援助してやってほしい。
 2)【L3】「死んだと告げてほしい」と依頼した理由は。
  ・妻子に、生きているかもしれないという期待や、夫が虎になってしまったという驚きを起こさせないため。
  ・虎になったことを知られると、李徴の自尊心が傷つくから。
 3)【L3】李徴が慟哭した理由は。
  ・家族のことを思い出したから。
 4)【説】再び自嘲的になる。
 5)【L3】自嘲的になるパターンは。
  ・依頼した後。
7.虎になった理由2)について
 1)【L1】自嘲的になった理由は。
  ・飢え凍えようとする妻子の生活よりも、自分の詩の方を先に依頼したから。
 2)【L1】虎になった理由は。
  ・家族のことより、自分のことを優先させたから。
  【説】人間性の欠如。
8.三つ目の依頼について
 1)【L1】何を依頼したのか。
  1)帰途にはこの道を通らないでほしい。
  2)丘の上から虎になった自分の姿を見てほしい。
 2)【L1】その理由は。
  1)完全に虎になっていて袁傪に襲いかかるかもしれないから。
   2)袁傪に再び自分に会おうという気を起こさせないため。
  ×勇に誇るためではない。
 3)【L3】どのような意味があるのか。
  ・虎になったあさましい醜悪な自分の姿を見てもらおうと思った。
  ・自尊心や羞恥心を捨てた。
9.【L3】李徴が咆哮した気持ちについて
 ・袁傪に会えた喜び。
  ・人間への未練を捨て切った。
 【注】さまざまな意見を出させる。
10.別冊宝島『珍国語』のパロディ「木曜スペシャル風山月記」を編集して配布する。
11.あらすじを八〇字以内でまとめ、感想を書かせる。
 ・1)自分は死んだと妻子に伝え、2)今後の生活の援助を依頼するが、3)妻子より自分の  詩業を気にかけるようだから虎になったと反省する。4)最後に虎になった姿を袁傪に見せる。(76字)

山月記と人虎伝

1.【指】「人虎伝」の口語訳を配布する。
2.【交】4人組でサークルリーディングさせる。
3.【交】4人組で『山月記』との相違点をまとめ、理由を考えさせる。
4.【説】相違点
  1)詩人になるために役人を辞めた。
  2)詩の伝録の依頼をしてから、妻子のことを依頼した。
  3)袁傪が詩を批評している。
  4)尊大な羞恥心と臆病な自尊心が虎になった理由。
5.【説】「山月記」の主題。
  ・李徴を詩人にすることで、小説家としての自分の問題を追究求する。
  ・近代人の自意識の分裂



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山月記  学習プリント 第一段(はじめ〜だれもなかった。)
 
学習の準備
1.次の漢字の読み方を書きなさい。
 博学 才穎 狷介 賤吏 潔し 帰臥 耽る 下吏  遺す 焦燥 容貌 豊頬  骨秀で 炯々 登第 豊頰 貧窮 赴き 奉ず 半ば 鈍物 歯牙 下命 往年 儁才 怏々 狂悖 夜半 山野 捜索
2.次の語句の意味を国語辞典で調べて書きなさい。
博学才穎 
補す 
狷介
賤吏
自ら恃む
甘んず
潔しとせず
いくばくもなく
帰臥
下吏
膝を屈す
焦躁
炯々
登第
豊頬
節を屈す
奉ず
鈍物
歯牙にもかけない
下命
拝す
往年
儁才
自尊心
怏々
狂悖

 
学習のポイント
1.李徴の性格を理解する。
2.李徴が退官した理由を理解する。 
3.李徴の退官後の生活を理解する。 
4.李徴が再び地方官吏になった理由を理解する。
5.復官後の生活を理解する。
6.李徴が行方不明になった様子を理解する。





山月記  
学習プリント 第二段(翌年、観察御史〜次のように語った)

 
学習の準備
1.次の漢字の読み方を書きなさい。
 監察御史 勅命 駅吏 供回り 多勢 叢 躍り出た 翻して 恐懼 懐かしげ 峻峭 洩れる 久闊を叙す 異類 故人 畏怖嫌厭 図らずも 愧赧 醜悪 怪異 傍ら 消息 隔て 訊ねた 叢中
2.次の語句の意味を国語辞典で調べて書きなさい。

勅命
あわや
驚懼
峻峭
久闊を叙す
異類
おめおめ
畏怖嫌厭
愧赧
消息


学習のポイント
1.袁傪の身分と任務を理解する。
2.虎になった李徴に出会った袁惨の様子を理解する。
3.李徴と袁傪の関係を理解する。
4.李徴が袁傪の前に姿を現さない理由を理解する。





山月記  
学習プリント 第三段(今から一年〜頼んでおきたいことがある)

 
学習の準備
1.次の漢字の読み方を書きなさい。
 一睡 招く 無我夢中 跳び越えて 肱 臨んで 既に 茫然 途端 所行 操れば 堪えうる 経書 章句 残虐 憤ろしい 経る 礎 土砂 故人 裂き食ろうて 悔い
2.次の語句の意味を国語辞典で調べて書きなさい。

無我夢中
茫然
所行
経書
章句

 
学習のポイント
1.李徴を呼ぶ「誰か」の正体を考える。
2.李徴が虎になる過程を理解する。
3.夢の中でこれは夢だと知っている夢について考える。
4.生き物のさだめについて考える。
5.「人間」に傍点がついている理由を理解する。
6.人間の心が還って来る時の気持ちを理解する。
7.李徴がどうして以前人間だったのかと考えることを恐ろしいと思うのかを理解する。
8.人間のもとは何だったのかを考える。
9.李徴の中の人間の心がすっかりなくなることをしあわせであると同時に恐ろしく感じ ている気持ちを理解する。





山月記  学習プリント 第四段(袁参はじめ〜嘷を成すのみ)
 
学習の準備
1.次の漢字の読み方を書きなさい。
元来 業 遺稿 記誦 伝録 詩人面 巧拙 執って 朗々 格調高雅 意趣卓逸 嘲る 岩窟 嗤う 自嘲癖 狂疾 殊類 災患 爪牙 蓬茅 軺 渓山 長嘯 嘷
2.次の語句の意味を国語辞典で調べて書きなさい。

息をのむ
名を成す
業 
遺稿
記誦
巧拙
産を破る
朗々
意趣
卓逸
自嘲
狂疾
災患
渓山

 
学習のポイント
1.李徴の第一の依頼を理解する。
2.詩の伝録を依頼する理由を理解する。
3.李徴の詩を聞いた袁傪の感想を理解する。
4.李徴の詩の第一流の作品になるには欠けている非常に微妙な点を考える。
5.李徴が自嘲的になった理由を理解する。
6.李徴の即席の詩の意味を理解する。





山月記  
学習プリント 第五段(時に、残月〜夜露のためばかりではない。)

 
学習の準備
1.次の漢字の読み方を書きなさい。
暁 奇異 粛然 薄幸 先刻 努めて 倨傲 羞恥心 鬼才 就いたり 切磋琢磨 伍する 潔し 珠 刻苦 碌々 瓦 塹恚 性情 損ない 警句 弄し 暴露 危惧 怠惰 専一 巌 空谷 哮って
2.次の語句の意味を国語辞典で調べて書きなさい。

粛然
奇異
粛然
倨傲
尊大
羞恥心
郷党
鬼才
切磋琢磨
俗物
伍する
刻苦
碌々
憤悶
塹恚
空費
警句
弄す
危惧
専一

 
学習のポイント
1.漢文調の風景描写を味わう。
2.李徴の語る虎になった理由を理解する。
3.尊大な羞恥心と臆病な自尊心の内容を理解する。
4.李徴の中の猛獣について理解する。
5.虎に近づいていく李徴の心情を理解する。






山月記  
学習プリント 第六段(ようやく〜おわり)

 
学習の準備
1.次の漢字の読み方を書きなさい。
 木の間 暁角 道途 飢凍 計らう 恩幸 慟哭 旨 飢え凍える 帰途 懇ろ 咆哮
2.次の語句の意味を国語辞典で調べて書きなさい。

恩幸
慟哭
意に添う
懇ろ
咆哮

 
学習のポイント
1.時間の経過の表現を味わう。
2.李徴の最後の依頼を理解する。
3.李徴が再び自嘲的になった理由を理解する。
4.帰途にここを通らないように言った理由を理解する。
5.最後に虎になった姿を袁傪に見せた気持ちを理解する。
6.最後の表現を味わう。