塞翁馬


 隣国との砦の近くに占い上手の老人がいた。砦の近くであるから、いつもトラブルが耐えない。ある日馬が逃げて隣国の遊牧民族の胡の国に逃げた。胡とは仲が悪く、もう取り戻すことができないので周囲の人は慰めてくれた。しかし、占い名人の老人は、これは災い転じて福になるかもしれないと楽観している。
 すると、数カ月後、逃げた馬が遊牧民族の駿馬を多数引き連れて帰って来た。海老で鯛を釣るである。周囲の人は儲けたと思って祝ってくれた。しかし、占い名人の老人は、油断大敵と悲観的である。
 家は裕福になり良馬も増えたのだが、子供が乗馬を好むようになり、ある日落馬して腿の骨を折るじけ重傷を負った。みんな跡取り息子が障害者になったことを慰めてくれた。しかし、占い名人の老人は、災い転じて福になるかもしれないと楽観している。
 一年後、胡の国が大挙して攻め入ってきた。健康な若者は徴兵され、戦い、十人に九人は戦死した。しかし、足に障害を持った息子は徴兵されず、親子共々無事であった。老人が占った通り、災いが福に転じたのである。
 このように、禍福はあざなえる縄のように、交互に訪れてくるものであり、むやみに悲しんだり喜んだりしてはいけない。災いがあった時にはプラス思考で考え、福があった時は喜びすぎず油断せず慎重になることが必要である。そうすれば、最終的に福がつかめるのである。災いの時に落ち込みすぎたり、福の時にはしゃぎすぎると、最終的に禍に終わってしまうのである。


1.【指】学習プリントを配布し、本文写しと書き下し文をさせる。
2.【指】教師が音読する。
3.【指】生徒が音読する(2〜3回)。
4.【指】黒板に書き下し文を書く。

5.近塞上之人、有善術者。
 1)【語】
  ・塞上=砦のほとり。
  ・術=占い。
 2)【訳】
  ・砦の辺に近い人で、占いなどの上手な人がいた。

6.馬無故亡而入胡。人皆弔之。其父曰、
 1)【語】
  ・故=理由。
  ・亡=逃げる。
  ・胡=西北の移民の地。
  ・弔=見舞って、慰める。
  ・父=老人。
 2)【訳】
  ・馬が理由もなく逃げて胡に入った。人はみんなこれを見舞って慰めた。その老人が言った。
 3)【L1】「之」「其」の指示内容は。
  ・弔之=善術者。
  ・其父=善術者。
 4)【説】胡に入るとなぜまずい理由。
  ・異民族の敵対する国なので、馬は戻って来ないから。

7.「此何不為福乎。」
 1)【句】
  ・何ゾ不ラン〜乎=[反語+打消]どうして〜にならないだろうか、いや〜になる。
 2)【訳】
  ・これはどうして福とならないだろうか、いやなる。
 3)【L2】「此」の指示内容は。
  ・馬無故亡而入胡。

8.居数月、其馬将胡駿馬而帰。人皆賀之。其父曰、
 1)【語】
  ・居数月=数カ月たって。
  ・将=連れる。
  ・駿馬=足の速い良馬。
  ・賀=祝う。
 2)【L2】「賀」の反対語は。
  ・弔。
 3)【訳】
  ・数カ月たって、その馬が胡の足の速い良い馬を連れて帰ってきた。人々はこれを祝った。その老人はこう言った。
 4)【L1】「其馬」「賀之」の指示内容は。
  ・其馬=無故亡而入胡
  ・賀之=其馬将胡駿馬而帰

9.「此何不能為禍乎。」
 1)【語】
  ・禍=災い。
 2)【L2】「禍」の反対語は。
  ・福。
 3)【句】
  ・何ゾ不ラン能ハ〜A乎=[反語+打消]どうして〜することができないだろうか、いや〜できる。
 4)【訳】
  ・これは、どうして災いとなることができないだろうか、いやできる。
 5)【L1】「此」の指示内容は。
  ・其馬将胡駿馬而帰

10.家富良馬其子好騎、堕而折其髀。人皆弔之。其父曰、「此何不為福乎。」
 1)【語】
  ・騎=乗馬。
  ・堕=落ちる。
  ・脾=大腿骨。
 2)【訳】
  ・家は良い馬に富んだ。その子どもは乗馬を好んだ。馬から落ちて大腿骨を折った。人はみんなこれを見舞って慰めた。その老人が言った。これはどうして福にならな   いだろうか、いやなる。
 3)【L1】「之」「其子」「此」の指示内容は。
  ・其子=善術者。
  ・弔之→堕而折其髀。
  ・此=堕而折其髀。

11.居一年、胡人大入塞。丁壮者、引弦而戦、近塞之人、死者十九。
 1)【語】
  ・丁壮=働き盛りの者。丁=一人前の男。一丁上がり。壮=三、四〇歳の男。
  ・弦=弓。
 2)【訳】
  ・一年がたって、胡の人が大いに砦の中に入ってきた。働き盛りの男たちは、弓を引いて戦って、砦の近くに住む人で、死んだ人は十人中九人であった。

12.此独以跛之故父子相保。
 1)【語】
  ・跛=片足が不自由なこと。
  ・相保=互いに無事であった。
 2)【句】
  ・〜独リ=[限定]〜だけ。
 3)【訳】
  ・これだけが片足が不自由なために、父子ともに互いに無事であった。
 4)【L1】「此」の指示内容は。
  ・其子
 5)【L2】父子とも無事であった理由は。
  ・足が不自由だったので徴兵に取られなかった。

13.故福之為禍、禍之為福、化不可極、深不可測也。
 1)【語】
  ・化=ものごとの変化の微妙さ。
  ・深=ものごとの道理の奥深さ。
 2)【訳】
  ・だから、福が災いになり、災いが福になる、ものごとの変化の微妙さは極めることができないし、ものごとの道理の奥深さは測ることができない。

14.まとめ
 1)【L2】この話の主題は。
  ・禍福は交互にやってくる。
  ・禍でも悲観しすぎず、福でも楽観しすぎない。
 2)【L4】同じような諺は。
  ・禍福はあざなえる縄のごとし。
  ・人間万事塞翁が馬。
  ・七転び八起き。(七転八倒)
  ・人生苦もありゃ楽もある。



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塞翁馬  学習プリント                 点検日  月  日
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学習の準備
1.3回音読しなさい。
2.4行ずつ空けて白文(句読点や訓点がない漢字だけの文)を写し、句読点(、。)を 付け、訓点(返り点と送り仮名)を付けなさい。
3.次の語の読み方を歴史的仮名遣いで書きなさい。

 塞上  善クスル  故  弔ス  父  将ヰテ  駿馬  賀ス  能ハ  禍

 堕チテ  脾  丁壮  弦  独リ  跛
4.書き下し文の決まりに注意して本文の右に書きなさい。特に次のものに注意しなさい。
 1)近塞上之人、有善術者。
 2)此何不為福乎。
 3)此何不能為禍乎。
 4)此独以跛之故父子相保。

学習のポイント
1.主語と述語を確認する。
2.反語、限定の句法に注意する。
3.指示語の内容を考える。
4.話の展開を把握する。
5.禍福に当たるものを理解する。