村上陽一郎の評論

板書


第一段
 今日の科学を否定する立場、つまり反科学主義は、環境汚染やエネルギー問題などの現在の危機的状況の原因を科学技術に求め、政権交代的に科学を根こそぎ否定することによって、危機を乗り切ろうとしている。しかし、筆者は、科学の枠組みを根こそぎ否定することは得策ではなく、人類の生理的記憶や蓄積からいって不可能であると考えている。なぜなら、科学技術は現代の危機的状況を予見し解決に努力するという成果を上げてきた。また、過去にも反科学主義は現れたが、その根底には西洋が地球全体を科学化するという絶対性があった。
 今日の科学を否定する立場は、環境汚染やエネルギー問題などの現在の危機的状況の原因を科学技術に求め、その廃棄と出直しという、根こそぎの否定を要求している。しかし、筆者は、科学の枠組みを根こそぎ否定することは得策ではなく、人類の生理的記憶や蓄積からいって不可能であると考えている。
 こうした科学を否定する立場、つまり反科学主義、反合理主義、反近代主義は過去にもあった。西欧の近代主義は、従来の経験主義に対する合理主義を目指し、その中心に科学を据えていた。その科学主義が深化して行き過ぎるのを抑制するカウンターバランスとして、反科学主義が起こってきたのである。
 つまり、反科学主義は科学主義の補完として機能していたので、完全な自己否定になるはずがなく、現在まで健在であった。それどころか、その根底には西洋が地球全体に科学を広めて近代化する、西欧の認識論や方法論や実践のマニュアルを地球全体が受け入れるべきだという考え方があった。その考え方は、西欧だけでなく、地球全体が共有して持っていた。だから、科学主義は普遍的絶対的であった。しかし、それが今揺るぎ始めているということは、私の考えが虚妄であったことになる。
 しかし、現代の反科学主義は、西洋がだめなら東洋という安易な政権交代主義によって、科学を根こそぎ否定するものであった。筆者はこの発想に賛成できない。
 なぜなら、科学技術は現代の危機的状況の解決に努力し、またそれを予見し警告を発するという成果を上げてきたからである。また、これ以外にも、賛成できない理由がある。
第二段
 「政権交代主義」に賛成できない他の理由の第一は、反科学主義の段取りである。自然と人間を、ヌ保守的固定的に観念化し、ネ観念化された自然と人間を指標にし、ノ現状を悪と断じ、罪を科学主義にかぶせる。
 例えば、自然保護の場合、保護され保存される自然は、観念の中で理想化固定化された「自然」である。観念化された「自然」には、自然の中で生きている人間存在が欠落している。
 第二の理由は、自然は元来人間を含んだ概念であることを忘れがちになっている点である。日本では、「自然」は絶対価値であって、人間が自然に手を加えることは悪であると考える。
 西欧では、人間も自然の一部であり、人間を自然から切り離すことは不自然であると考える。「文化」とは「耕す」ことであり、「自然」を「耕す」のは「人間」である。「文化」は「人間」を含む「自然」が果たした自然な変容であり、「人間」が「自然」を自然に変容したのである。
 現在の「反科学主義」はこの根本的な認識が欠けていると考えることで、筆者は西欧的見解に立っている。人間の理性と意志で、危機の克服と言う目的に向かって、自然を協力に支配するという西欧流の考え方を検討する必要がある。
 第三の理由は、現在の「反科学主義」の「マッチ・ポンプ」である。かつて地球上の一部であった西欧が、地球全体に科学という火を放ち、その火の粉が自分たちを脅かすようになった時、あわてて水をかけ始めた。つまり、開発途上国の「後進性」を現段階で凍結するために、先進国の「先進性」をも現段階で凍結しようとしているのである。
第三段
 反近代主義を一視同仁に否定できない理由は、直面している問題の基本的特徴が、グローバルであることである。どの問題も、一つの限定された視点から考えられない。
 とすれば、地球規模でものを考える必要がある。共時的に地球上に存在する事態を一望に眺める「鳥の目視覚」が必要である。
 しかも、メタ地域的な鳥の目視覚から得た知識と、従来の時間貫通的視覚から得た知識を協合させ地球規模で自然制御に向かわせなければならない。自然制御の対象は、一切を含んだ自然であるので、共時的感覚が必要である。それは自然をも含み込む「超文化」である。
 「超文化」を支える技術は、人間に関するあらゆる側面を普遍的合意に導いていくものでなければならない。この技術は人類史の収斂点として自然に達成できるものである。もし自然選択できなければ人類は破滅の運命をたどることは明白である。


第一段


1.タイトルを読み、「パラダイム」の意味を確認する。
 ・その時代に支配的な思考の枠組み。
■作業をさせる。
2.「読解の手引き」を配布する。
3.「読解の手引き」Aの全体把握、語句と部分のチェックを指示する。
4.教師が音読する。
 ・生徒は3の作業をしながら聞く。
5.全体把握、語句と部分のチェックの結果を聞く。
 1)全体把握を聞くことで、おぼろげながら全体像を明らかにしていく。
  ・評論を読む場合、何について書いてあるか、対立する2つのものは何かを把握する。
 2)難解語句は口頭で解説する。
  ・評論用語と一般的な語句に分類される。
 3)難解部分は設問される箇所に重なることを説明する。
  ・言葉が難しいのか、言葉と言葉のつながりが難しいのか。
6.生徒に精読させながら、「読解の手引き」Bの設問の答の部分に波線を引かせる。
■解説をしていく。
7.今日の科学を否定する立場について
 1)どんな考え方をしているのか。
  ・現在の(我々の迎えている)危機的状況の原因を、科学技術の本質に求め、その廃 棄と出直しを鋭く要求しようとするもの
 2)筆者は、今日の科学を否定する立場をどのように思っているか。
  ・従来の科学を支える枠組みを根こそぎ捨て去ることは得策ではない。
  ・生理的記憶もしくは蓄積から考えて不可能である。
 3)「そのような事態」の指示内容は。
  ・従来の科学を支える枠組みを根こそぎ捨て去ること。
 4)「科学技術の本質」「廃棄と出直し」の言い換えは。
  ・「科学技術の本質」=科学を支える枠組み
  ・「廃棄と出直し」=根こそぎ捨て去ること
 5)科学を否定する立場を言い換えている言葉は。
  ・反合理主義、反科学主義、反近代主義
 6)逆に、否定しない立場は。
  ・合理主義、科学主義、近代主義とする。
 7)合理主義、科学主義、近代主義の関係は。
  ・すべてイコールの関係。
  ・近代主義は、経験主義ではなく合理主義によって物事を考えていく。
  ・その中心になるのが科学である。
  ・これから先、科学主義に代表させて考えていく。

8.過去の反科学主義について
 1)どのようにして現れたか。
  ・科学主義の深化のカウンターバランスとして深化した。
 2)「カウンター・バランス」とは。
  ・釣り合いをとること。
  ・科学だけが深化しないように調整する。
 3)「この両者」の指示内容は。
  ・科学主義と反科学主義。
 4)その結果、科学はどうなったか。
  ・完全な自己否定となることなく、最近まで健在であった。
 5)その根底にあった考え方は。
  ・西欧は、地球全体を、近代化、西欧化する。
 6)近代化、西欧化とは。
   ・価値観、認識論、方法論、実践のためのマニュアルの総体を、地球全体が受け入れる。
   ・この信念を地球全体が等しく共有していた

9.それに対する現在の反科学主義について
 1)何と呼んでいるか。
  ・政権交代主義。
 2)どういう考え方か。
  ・西洋が駄目なら東洋に乗り換える。
  ・西洋の科学主義の根こそぎの否定。
 3)「そのこと」の指示内容は。
  ・科学技術の普遍性、絶対性が揺らいでいること。
 4)筆者が、政権交代主義を肯定しない理由は。
  ・科学はそれなりに、多くの成果を上げてきたし、これからも上げるはずである。
 5)科学はどんな成果を上げてきたか。
  ・その解決に努力している。
  ・危機を予見し警告を発することを可能にしている。
 6)「その解決」の指示内容は。
  ・環境汚染、エネルギー問題
 7)環境汚染、エネルギー問題の言い換えは。
  ・現在の危機的状況
 8)「そのこと」の指示内容は。
  ・科学は多くの成果を上げてきたこと。

10.現在の反科学主義と過去の反科学主義の違いのポイントは。
 ・過去=完全否定ではない。
 ・現在=根こそぎの否定。



第二段

1.「読解の手引き」を宿題にする。
2.語句の意味を確認する。
 横行=悪事などがあちこちで盛んに行われること。
 ★保守的=古くからの制度や伝統を守って、急激な改革に反対の立場をとること。進歩     的。革新的。
 ★観念化=具体的な事実から離れて、抽象的に頭の中だけの考えにかたよるようす。多     くは、実際の役にたたないというような、悪い意味に使う。現実化。
 ★指標=ある物事の目的の基準とするめじるし。目標。
 郷愁=故郷をなつかしく思う気持ち。
 ★媒介=二つのものの間にはいって仲介をすること。
 ★対価=報酬として受け取るもの。
 ★概念=あるものに対していだく大ざっぱな意識内容。
 ★人為=人間の力ですること。
 被造物=造られたもの。
 ★変容=姿・外観が変わること。
 必然的=必ずそうなるにきまっているようす。偶然的。
 見解=ものの見方、考え方。
 理性=物事を論理的・概念的に思考する能力。感性。
 血肉化=自分の肉体の一部になること。
 いかがわしさ=うたがわしいこと。信用できないこと。
 奇矯=ひどく変わっているようす。

2.教師が音読する。

3.「政権交代主義」に賛成できない理由はいくつあるか。
 ・政権交代主義が、西洋を完全否定して東洋に乗り換える考え方であることを確認する。
 ・3つ。

4.第一の理由について
 1)反科学主義の段取りを段階に分けると。
  @自然と人間を保守的固定的に観念化する。
  A観念化された自然と人間を指標にする。
  B現状を悪と断じ、罪を科学主義にかぶせる。
 2)自然保護の場合の、@観念化された「自然」の具体例は。
  ・トンボやカブトムシがふんだんに群生し、川には魚があふれ、空が青く、緑濃き山に恵まれた絵はがきのごとき姿。
  ・いかにも東洋のどこかにある神秘的なユートピア的な風景である。
 3)「それ」(3414)の指示内容は。
  ・保護され保存される自然や環境。
 4)ABについては、どのように展開するか。
  A昔はあったし、今もどこかにある。
  Bそれが失われたのは科学の責任である。
 5)科学の悪を実証する具体例は。
  ・水俣病、四日市ゼンソク。
 6)現実はどうか。
  ・歴史的に見ても、地球上のどこを探してもない。
  ・洪水、旱魃、害虫、しもやけ、肺炎は抜け落ちている。
  ・東洋では、これらに苦しんでいる人々が多くいる。
  ・西洋では科学が、それらを解決してきた。
 7)観念化された自然に欠落しているものは。
  ・自然の中で生きている人間存在が欠落している。
 8)「自然の中で生きている人間存在」とは。
  ・自然に苦しむ人間の姿。
  ・科学によってそれらを解決してきた人間の姿。
 9)筆者が政権交代主義に賛成しない理由をまとめると。
  ・存在しえない東洋的な観念化された自然を想定して、西欧の科学の悪を強調しようとしているから。

5.第二の理由について
 1)「このこと」(3514)の指示内容は。
  ・観念化された絵はがきの自然像には、自然の中で生きている人間存在が欠落していること。
 2)第二の理由は何か。
  ・自然は元来人間を含んだ概念であることを忘れがちになっている点。
 3)日本の、自然に対する解釈は。
  ・「自然」は絶対価値であって、人間が自然に手を加えることは悪である。
 4)西欧の、自然に対する発想は。
  ・人間も自然の一部であり、人間を自然から切り離すことは不自然である。
  ・文化=(人間が)(自然を)耕す=自然に変容させる。
   文化には科学も含まれる。
 5)「この根本的な認識」の指示内容を確認する。
  ・「人間」が「自然」を自然に変容した
 6)筆者の見解は。
  ・人間の理性と意志で、危機の克服と言う目的に向かって、自然を協力に支配する。
 7)筆者が政権交代主義に賛成しない理由をまとめると。
  ・東洋の自然を絶対価値と見なす解釈を持ち出して、西洋の人間が自然を支配するという見解を否定しようとしているから。

6.第三の理由について
 1)第三の理由は。
  ・「マッチ・ポンプ」が潜んでいること。
 2)「マッチ・ポンプ」の辞書的意味は。
  ・自分で意図的に起こした問題を、自分でもみ消すこと。
 3)「マッチ・ポンプ」を反科学主義に当てはめて説明すると。
  @地球全体に科学という火を放つ。
  Aその火の粉が自分たちを脅かすようになった。
  Bあわてて水をかけ始めた。
 4)その結果は。
  ・開発途上国の「後進性」を現段階で凍結するために、先進国の「先進性」をも現段階で凍結、維持する。
 5)政権交代主義の目的は。
  ・東洋に対する西洋の科学的優位を維持する。



第三段

1.「読解の手引き」を宿題にする。
2.語句の意味を確認する。
 一視同仁=すべての者を差別なく平等に扱うこと。
 グローバル=世界的な。
 勘案=いろいろと考え合わせること。
 ★共時的反=ある時間で同時に起こっている事柄に視点を置く様子。
 ★メタ=超。高次の。
 制御=適当な状態に保って作動させること。コントロール。
 ★収斂反=一か所に集まること。
 暗中模索=暗やみの中で手さぐりして物をさがすこと。
 試行錯誤=ためすことと失敗することのくり返しによって、学習がなされること。

2.教師が音読する。

3.筆者の立場を確認する。
 ・反科学主義を完全に否定しない。
 ・反科学主義も含めて考えていく。

4.現在の問題の基本的特徴について
 1)すべての「反近代主義」を一視同仁に否定できない理由は。
  ・直面している問題の基本的特徴が、グローバルだから。
 2)グローバルとはどんな性格か。
  ・一つの視点で判断や処理をできない性格。
 
5.解決方法について
 1)我々のとるべき道は。
  ・地球全体の規模でものを見据えること。
 2)その言い換えは。
  ・共時的に存在する事態をも、一望のもとに納める鳥の目視角を持つ。
  ・メタ地域的な鳥の目視角を持つ。
 3)鳥の目の特徴は。
  ・視野が広いこと。
 4)それ以外には。
  ・従前のような時間貫通的な視角から得た知識と協合させ、地球的な規模での自然制御に向かわせる。
 5)「時間貫通的」と対照的な意味の語句は。
  ・共時的。
 6)両者の違いは。
  ・時間貫通的は、ある場所で時間の流れの中で起こっている出来事を考えること。
        時間的な広がり。
  ・共時的は、ある時間にさまざまな空間で同時に起こっている出来事を考えること。
        空間的な広がり。
 7)ここでも「共時的感覚」が必要になる理由は。
  ・地球規模での自然制御の対象は、一切を抱合した総体としての自然だから。
 8)「一切」とはどんなものを含んでいるか。
  ・個人、家庭、地域住民、国家、民族、文化圏。
 9)総体としての自然の言い換えは。
  ・「自然」をも包み込む「文化」
  ・超文化

6.超文化について
 1)「『超文化』を支える技術」とは。
  ・従来のごとき性格に加えて、人間に関するあらゆる側面を、一つの普遍的合意へと   導いていくようなもの。
 2)「従来のごとき性格」とは。
  ・人間を含まない。
  ・人間に関するあらゆる側面とは反対のもの。
 3)それはどのようにして手に入れられるのか。
  ・人類史の収斂点として自然に達成される。
  ・個人の人間の意識的な働きかけではなく、放っておいても自然に人間が働きかける。
 4)それを言い換えると。
  ・自然選択。
 5)自然に新しい技術が獲得できるとは、非常に楽天的ではないか。



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新しいパラダイムを求めて 読解の手引き 第一段落
A 一度通読して次のことをする。
1.何が書いてあるのか、大づかみする。
2.わからない語句に*印をつける。
3.わからない部分に直線を引く。
B もう一度精読して、次の問の答に当たる部分に波線を引く。
1.今日の科学を否定する立場とは、どんな考え方をしているのか。
2.筆者は、今日の科学を否定する立場どのように思っているか。
3.科学を否定する立場を言い換えている言葉は。
4.反科学主義は過去にもあったか、どのように深化したか。
5.過去の反科学主義の結果、科学はどうなったか。
6.その理由になった考え方は何か。
7.それに対して、今日の反科学主義の特徴は。また、それはどういう考え方か。
8.筆者が、政権交代主義を肯定しない理由の一つは。
9.科学はどんな成果を上げてきたか。





新しいパラダイムを求めて 読解の手引き 第二段落
A 一度通読して次のことをする。
1.「政権交代主義」に賛成できない理由はいくつあるか。
2.次の語句の意味を調べる。★は評論用語。反反対語、同同義語も調べる。
 横行 ★保守的反 ★観念化 ★指標同 郷愁 ★媒介 ★対価 ★概念 ★人為 被造物 ★変容 必然的反 見解 理性反 血肉化 いかがわしさ 奇矯 
3.次の部分の意味をBを解答した後で考える。
 @「文化」とは、人間を含む「自然」が果たした自然な変容であっても、「自然」外にあるものではない。とすれば、人間存在自体が必然的に「自然」を自然に変容させたのである。
 A現時点での「反・科学技術政策」の採用は、開発途上国の「後進性」を現時点で凍結する、という対価において、先進諸国の「先進性」をも現段階で凍結情争ロ持するという結果になるのである。
B もう一度精読して、次の問の答に当たる部分に波線を引く。
1.「政権交代主義」に賛成できない第一の理由である現在の反科学主義の段取りとは。
2.自然保護の場合の、観念化された「自然」の具体例は。
3.観念化された自然に欠落しているものは。
4.「政権交代主義」に賛成できない第二の理由は。
5.日本の、自然に対する解釈は。
6.西欧の、自然に対する発想は。
7.西欧における「文化」の定義は。
8.「この根本的な認識」とは。
9.西欧流の考え方とは。
10.「政権交代主義」に賛成できない第三の理由は。
11.「マッチ・ポンプ」の辞書的意味は。
12.「マッチ・ポンプ」を反科学主義に当てはめて説明すると。
13.その結果は。





新しいパラダイムを求めて 読解の手引き 第三段落
A 一度通読して次のことをする。
1.作者は科学に対してどういう立場に立っているのか。
2.次の語句の意味を調べる。★は評論用語。反反対語、同同義語も調べる。
 一視同仁 グローバル 勘案 ★共時的反 ★メタ 制御 ★収斂反 暗中模索 試行錯誤
3.次の部分の意味をBを解答した後で考える。
B もう一度精読して、次の問の答に当たる部分に波線を引く。
1.すべての「反近代主義」を一視同仁に否定できない理由は。
2.「グローバル」とはどんな性格か。
3.我々の執るべき道は。
4.「地球全体の規模でものを見据える」の言い換えは。2カ所。
5.「メタ地域的な鳥の目視覚」は持つだけでなく、どうしなければならないか。
6.「時間貫通的」と対照的な意味の語句は。
7.ここでも「共時的感覚」が必要になる理由は。
8.「総体としての『自然』」の言い換えは。
9.「『超文化』を支える技術」とは。
10.それはどのようにして手に入れられるのか。
11.それを言い換えると。


板書

第一段
・現在の科学を否定する立場=反合理主義=反科学主義=反近代主義
 ・現在の危機的状況の原因を、科学技術の本質に求め、廃棄と出直しを要求する。
  ↓筆者
 ・従来の科学を支える枠組みを根こそぎ捨て去ることは得策ではない。
 ・生理的記憶もしくは蓄積から考えて不可能である。

・過去の反科学主義
 ・科学主義の深化のカウンターバランスとして深化
   ↓       釣り合いをとること。
 ・完全な自己否定となることなく、最近まで健在であった。
   ↑
 ・根底の考え方
  ・西欧は、地球全体を、近代化、西欧化する。
             西洋の考え方を受け入れる。
  ・この信念を地球全体が等しく共有していた
・現在の反科学主義
 ・政権交代主義。
  ・西洋が駄目なら東洋に乗り換える。
  ・西洋の科学主義の根こそぎの否定。
   ↓筆者
  ・科学は多くの成果を上げてきた。
     ・その解決に努力している。
      環境汚染、エネルギー問題=現在の危機的状況
     ・危機を予見し警告を発することを可能にしている。

第二段
・政権交代主義に賛成できない理由
 イ第一の理由
  ・反科学主義の段取り
   ヌ自然と人間を保守的固定的に観念化する。
   ネ観念化された自然と人間を指標にする。
   ノ現状を悪と断じ、罪を科学主義にかぶせる。
    錘ゥ然の中で生きている人間存在が欠落している。
    ・自然に苦しむ人間
    吹E科学によってそれらを解決してきた人間
  ・歴史的にも地球上にも存在しない。
  ●存在しえない東洋的な観念化された自然を想定
    O
   西欧の科学の悪を強調する。
 ウ第二の理由
  ・自然は元来人間を含んだ概念であることを忘れがちになっている点。
  ・日本=自然は絶対価値である。
      人間が自然に手を加えることは悪である。
   西欧=人間も自然の一部である。
    吹@人間を自然から切り離すことは不自然である。
     文化=(人間が)(自然を)耕す=自然に変容させる。
    吹@科学を含む
  ・筆者の見解
   ・人間が、危機克服の目的のために、自然を支配する。
  ●東洋の自然を絶対価値と見なす解釈
    O
   西洋の人間も自然の一部であるという発想を否定する。
 エ第三の理由
  ・マッチ・ポンプが潜んでいること。
   ヌ開発途上国に科学を広める。
   ネ開発途上国の科学が先進国を脅かす。
   ノ開発途上国の科学を凍結させる。
     O
   東洋に対する西洋の科学的優位を維持する。

第三段
・すべての「反近代主義」を一視同仁に否定できない
   ↑理由
 ・直面している問題の基本的特徴=グローバル
   O我々のとるべき道     一つの視点で判断や処理をできない性格
 ・地球全体の規模でものを見据える
 ・共時的に存在する事態を一望のもとに納める鳥の目視角を持つ。
 ・メタ地域的な鳥の目視角を持つ。
   +
 ・時間貫通的な視角
   ↓共時的感覚
 ・地球的な規模での自然制御
   |
  ・一切を抱合した総体としての自然
          ・「自然」をも包み込む「文化」
          ・超文化
             | 人類史の収斂点として自然に達成される
             |自然選択
          ・超文化を支える技術
          ・従来のごとき性格=人間を含まないもの
            +
          ・人間に関するあらゆる側面
            ‖
          ・一つの普遍的合意