第一段「名付けとは」
「名付けとは、物事の創造や生成であり、物事の認識である。」というのが結論である。
常識で考えれば、名付けるとは、既に存在する物事に名前を付け、他の物事と識別することである。物事は名付ける前から個別に存在しており、名付けることで新たに創造されるとは考えない。
筆者の考えでは、「連続体としてある世界に切れ目を入れ対象を区切り、相互に分離することを通じて事物を生成させ、それぞれの名前を組織化することによって事象を了解する」ことである。したがって「世界はいわば名前を網目組織として現れる」ことになる。人間が事物を名付けることによって、「『世界』は、人間にとっての世界」になり、「『生きられる』空間が創造された」ことになる。それが人間の「世界に対する関与の在り方」である。
もともと世界は連続した一塊のものであって、名付けることによって切れ目を入れ、連続体から分離する、その行為を創造や生成と言っている。切り取られ名付けられたものを相互に関連させて組織化して網目組織にすることを認識と言っている。そのようにして人間は積極的に世界に関与し、そこで人間の生命が感じられる空間が創造されるのである。
第二段「子どもの遊びの能力」
名付けの原初的な形態は、子どもの遊び能力に見られる。子どもは、すでに与えられた物事の名前を無視して、自分の経験や感覚で独自の名前を付け、一つの世界を造り上げる。それは「口承文芸」と共通していて、「定型と即興の相関的な働きが、子どもの遊びの中核部分を形造る」のである。文字によらないで語りつぐ「口承文芸」では、物語の定型をベースにしながら、聞き手との関係の中で即興的にアドリブを入れ込んで語っていく。子どもも独自にアレンジしていく。子どもも定型としてある既存の名前を、遊びの中で自分の感覚や仲間との物事の共有のために即興的に名前を付けていく。その名前には、「子供とその物との出来事を含んだ生きた関係」が示されている。もともと名付けるとはそういうことである。
このことから、「物とは本来多様にして変化に満ちた相貌を持つものであり、名前の付け換えが可能なのは、その交渉の中でものがその事態に特有の相貌を現す」からである。つまり、「名前の変更とは物それ自体」の変貌を意味する」のである。だから、子どもが名付ける機会を断ち切られることは、子どもにとって世界が死んだことになる。
第三段「忌み言葉」
もう一つ考える材料になるのが山言葉や沖言葉などの忌み言葉である。忌み言葉とは、不吉な意味や連想が悪いために使うのを避ける言葉、その代わりに使う言葉である。忌み言葉の存在は、「名前が人間とある事態との相互交渉のこもったもの」であり、「固有の経験が刻み込まれている」とすれば、「固有の場を持つ」ことになる。言い換えると、「特定の時空間の存在性格が特定の名前に込められている」ならば、「その名前は他の場における存在とは衝突する」ことになる。こうして、「特定の事物は別の名前で呼ばれる」ことになる。このことは「人間の生きる世界が、質的に多様なものである」ことを示す。特定の地域で人間と親密な関係にある物事の名前は、その地域の人間の思いが強く込められているので、他の地域では通用しないこともある。また、他の地域の同じ物事に付けられた名前と強く衝突することもある。これは人間世界の多様性を示している。
このことは、聖地や特定の神木に「ナシラズ」「ナナシノキ」と命名する習俗に裏打ちされている。それは「神聖な場や物に対する人々の畏怖が、日常的な名前の世界から敬遠と遮断を強いた」からである。同時に、「空間や事物の存在の在り方を決定付け、それを経験世界へと占有せずにおかない名前の威力が表明されている」。つまり、「名付けることは『所有する』ことである」。人間世界を超えた神聖なものは恐れ多くて名前を付けないということは、名前を付けるということは、人間世界の中に取り込むことになる。名付けるとはそれぐらい強い威力を持っている。
第四段「神話的世界の名前の固有性」
名前の事物を固有のものとして決定付ける働きは、「固有名詞が最大限の威力を発揮している」「神話的世界」に顕著に現れる。神話的思考は、「世界を、固有名詞を貼り付けた事物の総和」としてとらえ、「名前を付けられた物と物の間は切れている」と考える。つまり、「つぎはぎ空間」である。
固有性の強さゆえに「名前は人々の想像力を刺激し動かして、物事の発生を促す」。地名の起源や語源という形で「物語的な意味産出」が企てられる。
名前はそれだけ強烈な威力を持っているので、新たな物語を作りだす。ましてや、実際に存在する連続体を切り取った名前は事物の制約を受けるが、想像力が造り上げたものに付けられた名前は無限の広がりを持つ。何ものにも制約されることなく想像力の赴くまま人間世界を広げていくことができる。
全体把握
1.学習プリントを配布し、語句調べを宿題にする。
2.形式段落に1〜8の番号を打たせる。
3.全文を黙読させ、全体を四つの段落に分け、見出しを考えさせる。
4.確認をする。
第一=1 「名付け」とは
第二=234 子供の遊びの能力
第三=56 忌み言葉
第四=78 神話的世界
第一段 板書
0.姓名判断をする。
・子供の名付けから導入する。
・総運=すべての画数
社会運=姓の下の一字と名の上の一字の画数の合計。姓名いずれか一字の時はその画数を足す。
人生運=総運の画数−社会運の画数
伏運=社会運の画数+名の画数
1.生徒と音読する。
2.学習プリントの読みと意味を確認する。
3.一般的な名付けとは何か。
・既に存在する物事に名前を付け、他の物事と識別すること。
★子供の名付けから考える。
4.作者の定義は。
・名付けとは、物事の創造や生成であり、物事の認識である。
5.違いを確認する。
・一般=事物が先
・筆者=名前が先
★筆者の意見を明らかにしていく。
6.評論は言い換えの連続であることを説明する。
7.「物事の創造や生成であり/物事の認識である」の言い換えを前後に分けて、1の中から抜き出させる。
・「連続体としてある世界に切れ目を入れ対象を区切り、相互に分離することを通じて事物を生成させ」
「それぞれの名前を組織化することによって事象を了解する」
★筆者は、すべてのものが連続体と考え、個々別々に存在するものはないという前提の もとに考えている。
★これがこの評論の根本である。
8.牛の例で説明する。
1)牛の体を図示して、牛肉の部位の名称を説明する。
2)日本語では「牛」でけであるが(子牛・乳牛は二語である)、英語ではどんな呼び方があるか。
・カテル(cattel)蓄牛。ウシの総称。
・カウ(cow)雌牛。乳牛。
・オックス(ox)雄牛。食用の去勢雄牛。
・ブル(bull)去勢していない成長した雄牛。
・ヘファー(heifer)3歳未満でまだ子供を生まない若い雄牛。
・ブロック(bullock)去勢牛。4歳以下の雄牛。
・カフ(calf)子牛。
★牛肉を多く食べる英語圏では、必要に応じて細かく呼び分けている。
★逆に、日本の場合は魚を細かく呼び分けている。
東京近海 ワカシ(ワカナゴ)→イナダ→ワラサ→ブリ
関西 モジャコ→ワカナ→ツバス→ハマチ→メジロ→ブリ
紀州近海 ワカナ→ツバス→イナダ→ハマチ→ブリ(オオウオ)
瀬戸内海 ツバス→ツカナ→ハマチ→メジロ→ブリ
丹後地方 マンリキ(イナダ)→マルゴ→ハマチ→ブリ
3)その牛も、哺乳類、動物、生物と分類された結果である。
・机も椅子も台であるが、人を乗せる物を椅子、物を乗せる物を机といい分けた。
4)このように世界の物事を言葉で区別していく。
5)そして、カテゴリーとして分類した言葉の網の中で認識していく。
9.「名前を組織化すること」の言い換えを、1の中から2カ所抜き出させる。
・「名前の網目組織」
・「名前の体系」
10.「名付けられることによって、『世界』は、人間にとっての世界になった」について、
1)2つの世界の違いは。(「 」がなるのとないのとの違いは。)
・2つ目の世界=人間にとっての世界。
名付けられた後の世界。
・1つ目の「世界」=名付けられる前の連続体である世界。
11.「人間にとっての世界」の言い換えを、1の中から抜き出させる。
・「『生きられる』空間」
12.食物か毒物かの区分ける「人間とその物との間に数限りなく繰り返されたであろう試験」を説明する。
・実際に食べてみて、死ぬかどうか、上手いかどうかを確かめたこと。
・毒茸や河豚など。
13.第一段の要約を120字以内でさせる。
1)名付けとは、連続体としてある世界に切れ目を入れ対象を区切り、相互に分離することを通じて事物を生成させ、2)それぞれの名前を組織化することによって事象を了解することである。3)名付けられることによって、「世界」は、人間にとっての世界になった。
第二段 板書
0.正体不明の物体を持ってきて、名付けさせる。
1.生徒と音読する。
2.学習プリントの読みと意味を確認する。
3.「名付けの原初的形態」が「子供の遊びの能力」に見いだせることを確認する。
★以下、言い換えを追っていく。
4.「子供の遊びの能力」の言い換えを2から抜き出させる。
・「所与性への正当な無視において、名前に基づく創造の「奇跡」的能力が発揮される」
5.1)「所与性への正当な無視」の言い換えを3から、2)「名前に基づく創造の「奇跡」 的能力」の言い換えを2から抜き出させる。
1)「既存の社会が与える名前の体系から離脱」
2)「断片や破片を組み合わせ、自在に「変形」を加えて、一つの世界を造り上げる」
6.「所与性への正当な無視において、名前に基づく創造の「奇跡」的能力が発揮され
る」のさらに短い言い換えを3から抜き出させる。
・「定型と即興の相関的な働き」
7.「口承文芸」について説明する。
8.「口承文芸」における「定型と即興の相関」を説明する。
・物語の定型をベースにしながら、聞き手との関係の中で即興的にアドリブを入れ込んで語っていく。
9.ミズスマシの例で説明する。
・水すまし(所与性)
│水の上を泳いでいる姿が字を書いているように見える(断片)
↓名前を変える(変形)
字書き虫(一つの世界)
・スミレとオオバコ(所与性)
│茎を絡ませて引っ張りあう(断片)
↓名前を変える(変形)
スモウトリ草(一つの世界)
★みずすまし(水澄)とは「あめんぼう(飴ん坊)」「かわぐも(川蜘蛛)」「あしたか(足高)」とも言う。
★スモウトリ草は実演する。
★「断片」の部分に、「子供とその物との出来事を含んだ生きた関係」があることを確認する。
10.「所与性の無視」の正当性について説明する。
・子供の名付けの能力は、「定型と即興の相関的な働き」にあり、それが「子供の遊びの構造の中核部分」であるから。
11.以上のことから、子供の命名が示唆しているものは。
・物とは本来多様にして変化に満ちた相貌を持つものである。
・交渉の中で物がそのその事態に特有の相貌を現す。
12.これを簡単に言い換えると。
・名前の変更とは物それ自体の変貌を意味する。
13.自然に触れない子供の増加は、命名の機会の喪失であり、子供の世界の死滅になるこ とを確認する。
14.第二段を110字以内で要約する。
1)名付けの持つ原初的な形態は、子供の遊びの能力の中に見いだすことができる。2)子供の付けは、子供と事物との生きた関係が示している。3)物とは本来多様にして変化に満ちた相貌を持つものであり、4)名前の変更は物それ自体の変貌を意味する。
第三段 板書
1.若者言葉を配布してどれだけわかるか試してみる。
2.生徒と音読する。
3.学習プリントの読みと意味を確認する。
4.「山言葉」「沖言葉」「忌み言葉」「里言葉」の関係は。
・山言葉と沖言葉が忌み言葉で、里言葉と対立している。
5.山言葉の定義とその例は。
・きこりや猟師などが山に入ったときに限って使う、日常語の代わりの言葉。
・マタギたちが里人(農耕民)たちからやや特殊視されていたとしたら、それは狩猟民独特の生活様式に由来するものと思われる。
・草の実(米)、つぶら(味噌)、かへなめ(塩)、ざわり(焼き飯)、ぞろ(雑炊)、
たかがいい(天気がよい)、そよ(風)、そよがもふ(雨・雪)
・イタズ(クマ)、アオジシ(カモシカ)、シロビレ(鉄砲)、ワッカ(水)、セタ
(犬)、サンベ(心臓)、ハッケ(頭)、キジ撃ち(たちションに行く)、お花摘み (女子の野外での排尿)
6.そのほかの忌み言葉の例を説明する。
・忌み言葉も嫌がる人には使わない。知っておくのも損はない。
【結婚を祝うとき】
去る・帰る・切れる・戻る・返す・離れる・飽きる・嫌う・破る・薄い・疎んじる
【妊娠、出産を祝うとき】
流れる・落ちる・滅びる・死ぬ・逝く・敗れる
【新築を祝うとき】
火・赤い・緋色・煙・焼ける・燃える・倒れる・飛ぶ・壊れる・傾く・流れる・潰れる・
【開店を祝うとき】
敗れる・失う・落ちる・閉まる・哀れ・枯れる・寂れる
【災害の見舞いや凶事】
又(また)・再び・重ねる・追って・つづいて・尚・猶(なお)重ね重ね、たびたび、返す返す、しばしば、ますます、再三
四→「死」に通じるので「よ」
九→「苦」に通じるので「ここのつ」
披露宴では「切る」→ケーキにナイフを入れる
梨→「無し」に通じるので「有りの実」
するめ→「金を擦る・スリ」に通じるので「あたりめ」
すり鉢→「あたり鉢」
スリゴマ→「あたりゴマ」
7.なぜ山言葉が生まれるのかを考える。
・名付けの原初的形態が、子どもの名付けと同じとすれば、特定の人間が特定の物事と深く関わるれば、特定の名前が付けられることになる。
(文中の語で言うなら)
・「名前が人間と物事との相互交渉のこもった」状態である。
・「人間とある事態の相互交渉」を「固有の経験」と言い換えることができる。
(「固有の経験」が組み込まれているとしたら)
・「発せられ用いられる固有の場を持つ」
(「固有の場」に「固有の名前」がある。)
(場所によって名前が変わる。)
8.文中の語で言い換えると。
・「特定の時空間の存在性格が特定の名前に込められている」。
9.とすると、「名前は他の場所における存在とは衝突せざるをえなくなる」。
・ある地域ではある言葉が、違う地域では違う言葉が使われる。
・それが、方言である。
10.「京言葉」のプリントをする。
・京都の閉鎖性を考える。
・関西弁と関東弁の対立を考える。
11.このことを「名前(言葉)」ではなく、「物(世界)」の観点から考えるとどうなるか。
・「人間が生きる世界が、質的にも多様である」
12.第二段の中で同じことを述べていた文を探す。
・「物とは本来多様にして変化に満ちた相貌を持つ」
13.「名前は、事物の秩序と緊密に応答し合っていた」ので、特定の時空間では特定の名前になることを説明する。
14.聖地を「ナシラズ」、神木を「ナナシノキ」と呼ぶことことの意味を考える。
・「ナシラズ」「ナナシノキ」は名前を付けられないということである。
・名前が付けられない理由は、聖地や神木は「畏怖」されるものであり、「日常的な名前の世界からの敬遠と遮断」があるからである。
・名前がないということは、人間世界が関わりを持てない、ということである。
・逆に言えば、名前のあるものは、人間世界が関わりを持てる、ということである。
15.「名付けることは、「所有する」ことであった」とはどういうことか。
・名付けることは、人間の経験世界の秩序の中に取り入れることである。
16.第三段を110字以内で要約する。
1)忌み言葉は2)人間とある事態の相互交渉のこもったものであり、3)固有の場を持つ。4)人間が生きる世界は質的に多様なものであり、5)名前は、空間や事物の存在のあり方を決定づける威力を持っている。6)名付けることは「所有する」ことである。(107字)
第四段 板書
1.生徒と音読する。
2.学習プリントの読みと意味を確認する。
3.「神話的世界」について考える。
1)「名前の固有性」を最も明らかに示す。
2)「名前の固有性」を示すものは「固有名詞」である。
3)「固有名詞」にはどんなものがあるか。
・人名、地名、商品名。
4)「固有名詞」とは、そのものだけに付けられた特別な名前である。反対語は「普通名詞」である。
5)「固有名詞」は、そのものだけに付けられた特別な名前なので、特定の存在性格を持っている。(第三段でも触れた)
6)したがって、「固有名詞と固有名詞との間は切れている」。
7)つまり、「神話的世界」とは「固有名詞を張り付けられ事物の総和」である。
8)いわば、「つぎはぎの空間」と呼ぶことができる。
・そのものだけに付けられた特別な名前。
4.「熊野」と「吉野」の例を説明する。
1)地図上の位置を確認する。
2)互いの名の由来を確認する。
1)神武天皇の東征
2)一種の貴種流離覃である。
3)試練を克服して神になる。
4)試練の地が、クマ(奥地)である「熊野」である。
5)神になる地が、ヨシ(めでたい地)である「吉野」である。
3)地理的なつながりではなく、神話的思考の善悪によって命名されたもので、両者の間に地理的な関係はない。
5.神武の東征の例から言えることを考える。
1)地名は地理的関係でなく、願望の地政学である。
2)ある空間が持つ意味や性格と、人々の願望が、名前によって示されている。
6.固有名詞の強さを考える。
1)固有名詞は、他の物から切れているので、何ものにも束縛されない。
2)しかも、人々の願望が込められている。
3)したがって、自由にいろいろな物を生み出していくことができる。
4)つまり、「人びと想像力を刺激」して、「物語の発生」を促す。
7.ヤマトタケルの例を説明する。
・兄をひねり殺す残忍な性格。
・熊襲征伐の時の、女装、奸智、勇猛さの「タケル」の命名。
・東征の勅命と理由。
・草薙の太刀、焼津、吾妻、三重の語源。
8.他の知っている神話を問う。
9.第四段の70字要約をさせる。
1)名前の固有性を示すのが神話的世界である。2)名前を付けられた物と物との間は切 れており、3)固有性の強さゆえに、4)想像力を刺激して、物語の発生を促す。
「名付け」の精神 第一段 学習プリント 点検 月 日
学習のポイント |
「名付け」の精神 第二段 学習プリント 点検 月 日
学習のポイント |
「名付け」の精神 第三段 学習プリント 点検 月 日
学習のポイント |
「名付け」の精神 第四段 学習プリント 点検 月 日
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第一段 名付けとは、物に名前を付ける。=事物が先 a)名付けるとは、b)物事を創造や生成させる行為であり、c)そのようにして誕生した 物事の認識そのものである=名前が先 ↓言い換え a)名付けられることによって、b)連続体としてある世界に切れ目を入れ対象を区切り、相互に分離することを通じて事物を生成させ、c)それぞれの名前を組織化する ことによって事象を了解する ↓ a)名付けとは、b)連続体としてある世界を分離して事物を生成させ、 c)名前を組織化することである。 名前の網目組織 名前の体系 ↓ 「世界」は、人間にとっての世界になった ・名付けられる前の世界 ・名付けられた後の世界 ・自然のままの連続体 ・「生きられる」空間 |
第二段 子供の遊びの能力=名付けの原初的形態 所与性への正当な無視→名前に基づく創造の「奇跡」的能力→一つの世界 ・既存の社会が与える ・断片や破片を組み合わせ、 ・小さな天地創造 名前の体系から離脱 自在に「変形」を加えて、 ‖ ・定型と即興の相関的な働き(=口承文芸) ‖ ・子供の遊びの構造の中核部分 ・水すまし(所与性) ↓名前を変える(変形) 水の上を泳いでいる姿が字を書いているように見える(断片) ・スミレとオオバコ(所与性) ↓名前を変える(変形) 茎を絡ませて引っ張りあう(断片) スモウトリ草(一つの世界) ↓ ・物とは本来多様にして変化に満ちた相貌を持つものである。 ・交渉の中で物がそのその事態に特有の相貌を現す。 ‖ ・名前の変更とは物それ自体の変貌を意味する。 |
第三段 ・山言葉=きこりや猟師が山だけで使う言葉 ↓ 特定の人間 特定の場所 ・a)名前はb)人間と物事との相互交渉のこもったものである。 固有の経験を刻み込まれている ↓とすれば 固有の場を持つ ↓言い換え ・b)特定の時空間の存在性格がa)特定の名前に込められている ↓ ・その名前は他の場における存在と衝突する=方言 聖地=ナシラズ(名知らず) 神木=ナナシノキ(名なし) ↓ ・名前がない=人間世界が関わりを持てない。 ・名前がある=人間世界が関わりを持てる。 ↓ ・名付けることは、「所有する」ことであった。 人間の世界の秩序の中に取り入れる。 |
第四段 神話的世界=名前の固有性を明らかに示す 固有名詞=そのものだけに付けられた特別の名前。 ↓ 特定の存在性格を持っている。 ↓ 物と物との間は切れている 固有名詞を張り付けられ事物の総和 ‖←つぎはぎの空間 例 神武天皇の東征 ・試練=クマ(奥地)→「熊野」 ↓ ・神 =ヨシ(めでたき地)→「吉野」 ↓ ・願望の地政学 ・ある空間が持つ意味や性格 |名前の内に要約 ・人々の願望 ↓ ・固有性の強さ=他の物から切れているので束縛されない。 人々の願望が込められている。 ↓人々の想像力を刺激 ・物語の発生 ↓ ・「名前」が「物」を作り出す |