舞姫 2015年版
導入 《一時間》
あらすじを身の上相談風にまとめた文章を読んで、出世かと恋愛をとるメリットとデメリットを考える。
1.【GW】「恋愛か出世か〜マイクロディベート〜」をする。
1)プリントを配布して、読みながら説明する。
2)出世かと恋愛かを選ぶ長所と短所を書き出す。
3)3〜4人組になって、マイクロディベートをする。
2.【説】教科書を開かせ、これが「舞姫」の前半のあらすじであることを説明する。
・「舞姫」は擬古文で書かれていて読みにくいが、内容的には現代的なテーマを取り上 げている。
・いずれの場合でも、明治中期の日本と現在の日本では、国が置かれている状況も人の 考え方も違う。その点を考慮しながら考えさせる。
・仕事か恋愛かを考えると同時に、明治の日本や日本人が何を考えていたかを学習する ことを目的に、授業を進めることを予告する。
3.【指】小段落番号をつけさせる。
・1〜72。
第一段落(はじめ〜一八一15)『舞姫』を書く目的
・明治時代の中頃。
・五年前に、ドイツに留学した。
・日記が書けた。
・今は、日本へ帰国する船の中にいる。
・日記が書けない。
↑
・「人知らぬ恨み」に悩んでいる。
↓概略を書く
『舞姫』
第二段(4一八一16〜8一八四08) 《一時間》
豊太郎の生い立ちと留学直後の様子
母の存在の大きさ、その期待に答えようとする豊太郎が所動的器械的な性格を形成する生い立ちと行動を追う。
1.漢字の読みを書きなさい。
4 興さん 勇み 5 巧名 色沢 幽静 臨む 楼閣 神女 遮り
2.語句の意味を書きなさい。
4庭の訓へ(家庭教育)
出仕(官庁に勤めること。
覚え(信頼。
5模糊(漠然とした)
功名(手柄をたてて有名になること。
検束(自己抑制)
楼閣(高くて立派な構えの建物。
目睫の間(きわめて近いこと)
うべなり(いかにもその通りである。
あだなる(無駄だ。
3.「舞姫チェック」正しいものは●、間違っているものは正しく直しなさい。●10。
41)主人公は幼い頃からスパルタ教育を受けた。●
2)主人公は母子家庭に育った。●
★男性中心社会であり、母子家庭は、現在以上に厳しい環境であった。
★母は、父親の遺志を継いで、太田家の名誉ためにすべてを犠牲にして育てた。
3)主人公は商人の家の子どもである。(武士)
・藩校に行けるのは武士の子息だけ。
4)主人公は大学の医学部に入学した。(法学部)
5)主人公の名は、森林太郎である。(太田豊太郎)
・森林太郎は鴎外の本名。
6)トヨは藩校から大学までいつもナンバー1だった。●
★豊太郎も期待を裏切らず努力した。
7)主人公は九人兄弟の四男である。(一人っ子)
★主人公は長男で一人息子であるので、太田家の跡取りとして、幼い頃から家の期待 を一身に担って、超幼児英才教育を受けた。
8)母にとっては自慢の息子であった。●
9)トヨは二十二歳で大学を卒業した。(十九歳)
・当時も普通は二十二才で卒業。当時は飛び級が認められ、優秀なら進級できた。
★日本の最高学府である東京大学を最年少で首席で卒業するのであるから、同年代だけでなく3歳上の青年を含めて日本一優秀な青年であった。超エリートである。
10)トヨは国家公務員になった。●
★当時の憧れの職業である上級国家公務員になった。
★日本のために働き、日本を動かすことができる、やりがいのある仕事であった。
★現在の安定志向ではなく、大きな志があった。
11)トヨは親孝行である。●
★女手一つで育ててくれた母への恩返しである。
12)トヨは官長のお気に入りだった。●
13)トヨが洋行の官命を受けたのは二十一歳の時であった。(二十二歳)
・十九+三。
14)トヨは家と自分の名誉の為に洋行した。●
15)その時、母親は四十九才だった。(五十過ぎ)
16)トヨが洋行した先は、欧羅巴の新大都の巴里である。(ベルリン)
★官費留学生は最高の名誉であった。
★ドイツも後発国で、日本の目標であった。
★当時の女性の平均寿命は四十四才。今で言えば九〇才位の年令。洋行中に死ぬかも しれない。
517)トヨはぼんやりとした功名心と自己規制になれた勤勉さを持って洋行した。●
18)トヨは美観に感動したが、仕事に専念した。●
619)トヨは日本でドイツ語とロシア語をマスターしていた。(フランス語)
820)トヨは半年後、仕事の合間に大学で政治学を学んだ。(一、二カ月後、法学)
★勉強好きである。
第二段落(一八一16〜一八四08)
★豊太郎の生い立ちと留学直後の様子
1)武士の家の一人子で、幼い頃から厳しい家庭教育を受けた。
2)早くに父を失い、母の手一つで育てられた。
3)学校では常に首席を通した。
4)十九才で、大学法学部を卒業した。
5)某省に就職して国家公務員になった。
6)三年間、母を都に呼んで楽しい生活を送った。
7)官長の評判がよく、ベルリンに留学が決まる。
a)我が名と我が家の名誉のため。
b)五十才を越えた母を日本に残す。
8)模糊たる功名の年と検束になれた勉強力で留学する。
9)仕事に専念する。
10)ドイツの大学で法律を勉強する。
第三段(9一八四09〜13一八六15)
自我の目覚めと変化
留学して3年後、豊太郎は二十五歳にして自我に目覚める。そして自由を勘違いして官長に反抗する。かといって羽目を外すことができず、留学生仲間とも付き合えない。母に育てられた性格が豊太郎を支配している。これらが今後の豊太郎に艱難をもたらす。
自我の目覚めの前後の豊太郎の変化についてまとめる。所動的器械的人間から自由人間へ、法学から歴史文学へ、官長への反抗、そして母への疑問について、サラッと考える。
1.漢字の読みを書け。
9 好尚 神童 褒むる 潜む 雄飛 堪ふ 細目 破竹 講筵
10 面持ち 覆す 故 11 嘲り 長者 仕へ 欺き 顧みぬ 有為
豪傑 本性 13 就く 眼鏡 鼻音 疎き 暫時
2.語句の意味を書け。
9好尚(好み
神童(能力の優れた子ども。ノブレス。
所動的(受動的)
雄飛(意気盛んに勇ましく活躍すること。
獄を断ずる(訴訟に判決を与える。)
瑣々たる(つまらない。)
紛々たる(ごたごたして複雑な
破竹のごとく(勢いが激しく、押さえきれないこと。
庶を嚼む(物事のおもしろみを感じるようになる。)
10猜疑(疑ったりねたんだりすること。
讒誣する(事実を曲げ、他人を悪く言う。)
11有為(才能があって役に立つこと)
13冤罪(無実の罪)
暫時(しばらくの間
艱難(つらいこと
閲する(体験する
3.次の設問を考えなさい。
【L1】そのまま抜き出す。【L2】少し訳したり変形して抜き出す。【L3】自分の言葉で説明する。【L4】自由に考える。
9一八四09〜一八五06
1)【L1】トヨは何才になったか。
・二十五才
・十九才+三年+三年
★現在の30代後半。
2)【L1】これまでのトヨは、父の遺言を守り、母の教えに従い、官長の期待に添う生き方 をして きたが、それを一言で言えばどんな人物か。
・所動的・器械的な人物
★言われたことは正確にできる。指示待ち人間。マニュアル人間。
★現在のエリートにも多い。
3)【L1】トヨは、自由なる大学の雰囲気の中で、どんな「我」が出てきたか、今までの自 分はどんな「我」か。
・まことの我
・我ならぬ我
★「まことの我」は本当の自分、「我ならぬ我」は嘘の自分。
★30代後半で人生をやり直すのは危険である。
4)【L1】トヨは、今まで何になりたかったか。
・今の世に雄飛すべき政治家
・法典をそらんじて獄を断ずる法律家
★しかし、所動的な豊太郎には適性がない。
5)【L1】母や官長は、トヨを何にしようとしていたか。
・母=活きた辞書
・官長=活きた法律
★母は、これからは国際化の時代だから、語学が役立つと思った。
★官長は、聞けばすぐに答えてくれ、自分の仕事に便利だから。
6)【L1】学問では、何に興味を持つようになったか。
・歴史や文学
★政治や経済=人間不在の機械的な学問。
歴史や文学=人間中心の人間的な学問。
10一八五07〜11
7)【L1】トヨは、官長に対して自分の意見を主張し反抗するようになったが、心のままに 用いるべき器械を作ろうとした官長はどう思ったか。
・喜ばなかった。
★国家公務員は今も昔も上意下達の世界。
8)【L2】トヨと留学生のおもしろくない関係とは、留学生がどうすることか。
・トヨを疑い悪口を言った。
★留学生仲間は、私費の留学生。金持ちの道楽息子が遊ぶために留学していることが多 かった。
9)【L1】トヨの地位はどうだったか。
・危なかった。
1112一八五12〜一八六09
10)【L1】留学生は、トヨの付き合いの悪さの原因を何だと考えていたか。
・かたくななる心(頑固)
・欲を制する力(禁欲)
11)【L3】トヨが学問や仕事の道に専念した理由は、「勇気」ではなく、一言で言えば何か。 ・臆病
★一旦快楽の世界を知ればそれにのめり込むことを恐れたからである。
12)【L1】トヨは、日本を出る時、自分をどんな人物だと思っていたか。2つ。
・有為な人物。
・豪傑。
★自己肯定感が高かった。
13)【L1】しかし、実際のトヨの本性は何か。
・弱くふびんな心
14)【L1】それは何によって生じたと思っているか。
・早く父を失い、母の手で育てられたから。
★責任転嫁
13一八六10〜一八六15
15)【L2】留学生との関係が、何を体験する原因になったか。
・無実の罪。
4.「舞姫チェック」正しいものは○、間違っているものは正しく直せ。●7
91)トヨは二十七才になった。(二十五才)
【L3】現在の何歳ぐらいか。
・30代後半。
2)これまでのトヨは、父の遺言を守り、母の教えに従い、官長の期待に添う、能動的・器械的な人物であった。(受動的)
【説】父や母や官長などの他動的な力で頑張ってきた。
【L3】言い換えれば、どんな人間か。
・言われたことは正確にできる。指示待ち人間。マニュアル人間。
・現在のエリートにも多い。
3)「まことの我」が「我ならぬ我」を責めるのは、自我の目覚めである。●
・今では30歳代後半。働き盛りで、自我に目覚めるには遅く、危険である。
4)トヨは、政治家にも外交官にも向いていないと思った。(法律家)
【L3】政治家や裁判官はどんな職業か。
・自分で決断しなければならない能動的な職業。
・所動的な豊太郎には適性がない。
5)母は、トヨをウォーキング・ディクショナリーに、官長は、WALKING−RO PPOUにしようとしていた。●
【L2】ウォーキング・ディクショナリー、WALKING−ROPPOUとは何 か。
・生きた辞書、生きた法律。
【L3】なぜ、母はウォーキング・ディクショナリーにしようとしたのか。
・これからは国際化の時代だから、語学が役立つと思った。
【L3】なぜ、官長は、WALKING−RO PPOUにしようとしたのか。
・聞けばすぐに答えてくれ、自分の仕事に便利だから。
6)トヨは、母に対して自分の意見を主張し、反抗するようになった。(官長)
【L2】豊太郎の対応に、どのような変化があったか。
・つまらない問題にも丁寧に答えていた。生きた法律。
↓
・法の根本精神を習得すれば、つまらない問題は簡単に解決すると主張する。
7)トヨは政治や経済に興味を持つようになった。(歴史や文学)
【L3】政治や経済と歴史や文学はどこが違うか。
・人間不在の機械的な学問。
・人間中心の人間的な学問。
108)官長は、独立した思想を持ったトヨを喜ばなかった。●
【L3】なぜ、官長は喜ばなかったのか。
・指示通りに動く部下が必要であって、意見を言ったり反抗したりする部下は嫌う。
・国家公務員は今も昔も上意下達の世界。
9)トヨと留学生の間の関係は悪く、留学生はトヨを疑い悪口を言った。●
【説】留学生仲間は、私費の留学生。金持ちの道楽息子が遊ぶために留学しているこ とが多かった。
10)トヨの地位は危なかった。●
【説】上司に反抗することや、権力者の愚息との人間関係の悪さは免官につながる。
1111)留学生仲間は、一緒にビールを飲んだり麻雀をしたりしない理由を、頑固と禁欲の力だと思っていた。(ビリヤード)
【説】「かたくななる心」は「頑固」、「欲を制する心」は「禁欲」。
12)トヨは、自分の心に正直に生きてきた。(欺いて)
13)トヨは、自分の心を、紅葉や赤ん坊にたとえている。(合歓、処女)
【L3】自分の心と合歓や処女の共通点は。
・物が触れば避けようとする臆病さ。
14)トヨが仕事や勉強に専念したのは、勇気があったからである。(臆病だ)
【L3】なぜ、留学生と遊ぶことに臆病になるのか。
・一旦快楽を知れば、免疫のない豊太郎は際限なく遊びにのめり込んでいくことを 恐れたから。
15)トヨは、日本を出発する時、有能で豪快な人物だと自己肯定感が強かった。●
16)トヨが、神戸の港を出る時に笑っていたのは、本性の表れである。(横浜、泣いて)
1217)トヨの本性は、尊大な自尊心である。(弱くふびんな心)
18)その心は父に育てられたから生じたと思っている。(母)
【L3】この心理を何と言うか。
・責任転嫁している。
1319)ドイツで売春婦や道楽者と遊ばなかったのは、金がなかったからである。(勇気)
・一旦遊ぶと、流されてしまうことを恐れている。
20)留学生仲間との関係が、無実の罪で苦しみを体験する原因になる。●
第三段落(9一八四09〜13一八六15)自我の目覚めと変化
・三年後、二十五才。
・自由な大学の雰囲気
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第五段落(26〜35)
261)エリスがトヨの下宿を訪れる。
・「なんらの悪因ぞ」=免官・母の死・エリスの発狂
2)エリスとの関係(1)
・痴騃なる歓楽(たわいない関係)
273)免官になる=冤罪。悪因。
・エリスとの交際
↓
・留学生の密告
↓
・官長の報告
×父の遺言や母の期待
4)公使の条件
a)日本に帰国する→旅費を支給する。
b)ドイツに残留する→援助を断ち切る。
↓
・一週間の猶予をもらう
5)母の死を知らせる「手紙1)」
・今読んでも涙が止まらない
・「夫や先祖に申し訳ない。責任をとって自殺する。」
↓
・心の支えを失った。喪失感。
・急いで帰国する必要がなくなった。
286)舞姫の境遇=当世の奴隷
・少ない給料
・厳しい労働
・貧しい生活→身を売る
⇔
・おとなしい性格
・剛気な父の守護
死ぬ
7)エリスとの関係(2)
・師弟の関係
・トヨ=免官をエリスに隠す。
・エリス=免官に気づく
・女の直感
母には内緒にする=エリスの愛
・学資を失えば別れさせる
298)エリスとの関係(3)
・離れ難い仲=肉体関係
↑
・一目惚れしていた
・トヨの不幸を憐れみ、別離を泣いてくれた。
・母に代わる存在。
・深い悲しみで恍惚としていた。
309)公使への返事
a)帰国する→学問ができない→出世できない
b)残留する→学費がない
×エリスへの愛
3110)ドイツに残留する。
・相沢→新聞社の通信員の仕事を紹介
・エリス→エリスの家に同居できるよう母を説得。
3211)貧しいが楽しい愛の生活を送る。
33 ・喫茶店で新聞を読み原稿を書く。
・エリスと一緒に帰る
⇔
34 ・学問が衰えた。
・大学へは行かなくなった
第六段(36明治二十一年の冬〜45車を見送りぬ。)
エリスの妊娠
明治二十一年、豊太郎はエリスの妊娠を知り、将来に不安を覚える。そんな時に相沢から大臣に会うようにという手紙が来る。第二の手紙である。豊太郎、大臣ではなく旧友に会いに行くのだと言って出かける。エリスは捨てられるのではないかと予感する。
相沢との約束
大臣は豊太郎の力を試そうと独逸語の翻訳の仕事を依頼する。その後、相沢は豊太郎を昼食に誘う。親友は離れていても豊太郎の臆病な心を見抜いていた。そして、語学の才能を示して自力で大臣の信用を得ることを勧める。これは自分の推薦責任のリスクを回避する高級官僚の保身術でもある。また、スキャンダルは出世の妨げになるのでエリスと別れることを忠告する。豊太郎にとって出世は遠い彼方、また自分が出世を望んでいるかも不確実である。確実なのは、エリスへの愛である。愛と友情と出世の狭間で、とりあえず目の前にいる相沢の忠告に従い、エリスと別れると約束するが、心の中でエリスへの罪悪感を感じる。
1.漢字の読みを書け。
36 凸凹 凍り 飢ゑ凍え 37 卒倒 39 不興 40 富貴 41 細叙
謁し 42 生路 43 閲歴 凡庸 成心 曲庇者 薦むる
2.語句の意味を書け。
36卒倒(急に意識を失って倒れること。
さらぬだに(そうでなくても
おぼつかなし(不安定なこと。
37いぶかる(疑わしく思う。
とみのこと(急なこと)
心になかけそ(心配するな
39不興(おもしろくないこと。
よしや(たとえ
41踟躕(ためらうこと)。
品行方正(普段の行いが正しいこと。
気象(性格。
失行(あやまち)
意に介す(気にする。
42生路(人生の道)
轗軻(何ごとも思うようにならないこと)
数奇(不運
43閲歴(経歴
凡庸(平凡なこと。
色を正す(あらたまった表情をする。
成心(先入観)
曲庇者(えこひいきする者)
人材(身分。
3.次の設問を考えなさい。
【L1】そのまま抜き出す。【L2】少し訳したり変形して抜き出す。【L3】自分の言葉で説明する。【L4】自由に考える。
361)【L1】何年のいつの出来事か。
・明治二十三年の冬
★年代が明記されているのはここだけである。
★緊張感と新たな展開を感じさせる。
★時代を明記して現実味を帯びさせる。
2)【L1】エリスが舞台で倒れた理由は。
・悪阻。妊娠。
3)【L2】それを知ったトヨの気持ちは。
・「まことなりせばいかにせまし。」
(もし本当ならどうしよう。)
・「せば〜まし」は反実仮想。
・反実仮想は、事実に反することを仮定してその結果を想像することだが、事
実に反することとは?
・エリスが妊娠していないこと。
・豊太郎は、エリスが妊娠していることを信じたくなかった。
4)【L2】トヨがそれを信じたくなかった理由は。
・経済的に不安定になる。
・学問ができなくなる。
375)【L1】誰からの手紙が来たのか。差出人はどこにいるか。
・相沢。天方大臣の秘書官になっている。
・ベルリン。
★母の手紙に続く、第二の手紙。
6)【L2】相沢の手紙には何が書いてあったか。
・「伯の汝を見まほしとのたまふに疾く来よ。」
(大臣がお前に会いたいとおっしゃっているので、早く来い。)
・「汝が名誉を回復するもこのときにあるぶきぞ。」
(おまえの名誉を回復するのもこの機会である。)
7)【L2】トヨは手紙の内容をエリスに何と伝えたか。
・相沢が大臣と一緒にベルリンに来て、私を呼んでいるから行く。
398)【L2】エリスはトヨの支度を手伝いながら、考えた末に何と言ったか。
・「よしや富貴になりたまふ日はありとも、我をば見捨てたまはじ。」
(たとえ出世なさる日が来ても、私をお見捨てにならないでください。)
★出世すれば見捨てられるのではないかという予感。
・「我が病は母ののたまふごとくならずとも。」
(私の病気が母が言う通りでなくても。」
・【L2】私の病とは。
・妊娠。
・妊娠していなくても見捨てないでほしい。
↓
妊娠していたら見捨てるはずはないでしょうね。
★妊娠を武器に、豊太郎を束縛しようとしている。
409)【L2】それに対して、トヨは何と答えたか。
・「大臣は見たくもなし。ただ年久しく別れたりし友にこそは会ひには行け。」
(大臣は見たくもない。ただ長年別れていた友だちに会いに行くだけだ。)
★出世ではなく、友情のために行く。
10)【L4】あなたはトヨの言葉を信じますか?
4111)【L3】トヨは久しぶりに超一流のカイゼルホオフホテルに来たが、相沢に会うのを一瞬ためらった理由は。
・落ちぶれた自分を相沢に見られるのが恥ずかしかったから。
・学生時代は、豊太郎の方が上位にあった。
・今は、相沢は大臣の秘書、豊太郎はフリーター。
12)【L2】相沢の対応はどうだったか。
・豊太郎の失敗をまったく非難しなかった。
13)【L1】大臣から委託されたことは何か。
・ドイツ語の文書の翻訳。
4314)【L3】相沢が昼食をとりながら言った「この一段のこと」とは何か。
・エリスとの恋愛関係。
15)【L1】相沢は「この一段のこと」の原因は何だと言っているか。
・弱き心。
★相沢は、トヨの本性である弱くふびんなる心を見抜いていた。
・さすが友人である。社会人としての豊太郎の弱点を見抜いている。
16)【L2】相沢が大臣の成心(先入観)を動かそうとしなかった理由は。
・大臣が豊太郎が女性問題でクビになったことを知っているから。
・自分が曲庇者(依怙贔屓する人)と思われたくなかった。
★相沢の用心深さ。保身。官僚的。
17)【L2】相沢はトヨに大臣の信用を得るために何をすすめたか。
・語学の才能を示す。
18)【L2】相沢がトヨにエリスと別れるよう忠告した理由は。
・人材(身分の差)があるから。
★出世には女性関係のスキャンダルは致命傷になる。
・弱い心の豊太郎が、大事な局面で迷うことが予想されるから。
★しかし、エリスと別れるには「強い心」が必要である。
4419)【L3】トヨの気持ちを比喩的に表現した「大洋」「舵を失ひし舟人」「はるかなる山」とは何を指しているか。
・大洋=ヨーロッパ
・舟人=豊太郎
・はるかなる山=出世
20)【L2】トヨは、相沢の示した前途の方針(出世への道)に対してどう思っているか。
・いつ行き着くか。
・行き着いても満足できるか。
21【L1】それに対して楽しいもの、捨てがたいものは何か。
・貧しいが楽しい生活。
・エリスの愛。
22【L1】トヨが相沢にエリスと別れると約束した理由は。
・友に対しては否とは言えぬが常だったから。
★「弱い心」が思い定めたわけではない。
4523【L1】ホテルを出るトヨの心は。
・一種の寒さを感じていた。
・エリスへの罪悪感
3.「舞姫チェック」正しいものは○、間違っているものは正しく直せ。●8
361)明治二十三年の夏の出来事である。(二十一年の冬)
・年代が明記されているのはここだけである。
・緊張感と新たな展開を感じさせる。
・時代を明記して現実味を帯びさせる。
2)エリスが気分が悪く物を食うと吐くのを食べ過ぎであると気づいたのは豊太郎である。 (妊娠・母)
3)トヨは、エリスの妊娠を知って将来に希望を感じた。(不安)
★なぜ不安かは後で考える。
374)相沢が日本から出した手紙には、「尼方大臣の秘書官である相沢に会い名誉挽回せ
よ」とだけ書いてあった。(天方、ベルリン、大臣)
5)エリスは新聞社をクビになった手紙だと勘違いした。●
6)トヨは相沢の手紙の内容をそのまま伝えた。(部分的に)
・出世の話については伝えていない。
397)エリスは、正装したトヨを見て、妊娠しているので出世しても見捨てないでほしいと嘆願した。(いなくても)
★その様子は後で考える。
408)トヨは、「馬鹿言ってんじゃねぇよ」と富貴や出世をキッパリ否定し、大臣に会いに 行くと言い切って、高級馬車に乗って出かけた。(友)
★本心かどうか後で考える。
419)トヨは、超一流の豪華なカイゼルホオフホテルに初めて来た。(久しぶりに)
・「久しく踏み慣れぬ」とあるので初めてではない。
・留学直後には通ったのだろう。
10)トヨが相沢に会うのを一瞬ためらったのは、落ちぶれた自分を相沢に見られるのが恥 ずかしかったからである。●
・学生時代は豊太郎の方が上位にあった。
・しかし今は、相沢は大臣の秘書、豊太郎はフリーター。
11)相沢は、デブになったが、快活な性格は変わらず、トヨの失敗を非難しなかった。●
12)大臣は、トヨにフランス語の文書の翻訳を依頼した。(ドイツ語)
13)相沢が、トヨをディナーに誘った。(ランチ)
4314)相沢は、トヨを責めずに、官長をなじった。(留学生)
・諸生輩とは留学生のこと。
15)「この一段のこと」とは、トヨが官長に逆らったことである。
(エリスと交際して免官になった)
・弱き心から生じたことなので、官長に逆らうのは弱いといえない。
16)相沢は、トヨの失敗の原因を生まれながらの臆病な心のせいだと見抜いていた。●
・さすが友人である。社会人としての豊太郎の弱点を見抜いている。
17)相沢も大臣も、トヨが女性問題でクビになったことを知っていた。●
18)相沢は、トヨへの友情だけでなく、自分の保身も考えている官僚的な人物である。●
19)相沢は、トヨに法律の才能を示して大臣の信用を得るように勧めた。(語学)
20)相沢がトヨにエリスと別れるよう忠告した理由は、年令の差がありすぎるからである。 (身分)
・出世には女性関係のスキャンダルは致命傷になる。
・とはいえ、権力者のほとんどは愛人をもっていただろう。
・問題はエリスの職業、身分である。
4421)トヨは、相沢の示した前途の方針が実現するか、実現しても幸せに結びつくか、わか らなかった。●
22)トヨは、確実に現実にある、今の生活やエリスへの愛に満足していた。●
・「捨て難きはエリスへの愛」と明言している。
23)トヨは、エリスを譲れという相沢の忠告を約束した。(エリスと別れろ)
24)トヨは、友に対してはNO!と言えない弱い性格だった。●
4525)トヨの心は、午後七時の気温だけでなく、エリスへの罪悪感からさぶ〜かった。
(四時)
第六段落(36〜45)
1)明治二十一年の冬、エリスが妊娠する。
1)豊太郎の気持ち
「もしまことなりせばいかにせまし」
反実仮想
(もし妊娠していたらどうしようか)
↓妊娠していないことを前提にしている
妊娠を信じたくない
↑
将来が不安である
学問
2)相沢の手紙(二通目)を受け取る。
・「大臣に会いに来い。名誉を回復するチャンス」
↓
・相沢が大臣と一緒にベルリンに来て、私を呼んでいる。
1)エリスの気持ち
「たとひ富貴になりたまふ日はありとも、我をば見捨てたまはじ」
・豊太郎が出世すれば、見捨てられることを予感している。
・女の直感。
「我が病は母ののたまふごとくならずとも」
妊娠
×妊娠→見捨てない
○妊娠→見捨てるはずがない
↓
・妊娠を武器に、豊太郎を束縛する。
2)豊太郎の返事
・大臣ではなく、相沢に会いに行く。
出世 友情
3)相沢と再会する
・会うことをためらう←劣等感
・相沢=大臣の秘書官
・豊太郎=免官
・相沢はまったく気にしていない
4)大臣からドイツ語の翻訳を依頼される
5)相沢と昼食をする
1)「この一段のことは生まれながらの弱き心より出でしなれば」
エリスとの関係 トヨの本性
2)語学の才能を示して大臣の信用を得ろ=友情
×直接推薦しない
・大臣も豊太郎の免官の理由を知っている。
エリスとの関係
・曲庇者と思われたくない=保身
3)エリスと別れろ
・人材(=身分)が違う
・仕事に専念させる
↑
・弱い心が再びエリスを選ぶ
6)豊太郎の気持ち
・「大洋で舵を失った舟人がはるかなる山を望む」
ヨーロッパ 出世
免官になった豊太郎
・行き着くか? ─┬─不確実
・満足できるか?─┘
⇔
・貧しいが楽しい生活 ─┬─確実
・捨て難いエリスへの愛─┘
7)エリスと別れると約束する
・友の言葉にはノーと言えない=優柔不断、主体性の欠如
↓
・一種の寒さを覚える
エリスへの罪悪感
第七段(46翻訳は一夜に〜60涙満ちたり。)
豊太郎は大臣の信用を得ていく自分に気づかない。一月後、ロシア行きを打診され、信頼する人の依頼を断れず承諾する。ロシアではエリスのことも忘れてしまいそうになるほど通訳の仕事に生き甲斐を感じる。そんな中、エリスの手紙で自分の地位に気づく。軽率にもエリスと別れる約束をしたことを後悔するが、出世と帰国の可能性に心中穏やかではない。自我の目覚めが偽物であったことに気づく。ベルリンに帰り、エリスと再会するまでは出世に心が傾いていたが、エリスに会うと一気に愛に傾く。エリスは旅行中に準備していたおむつを見せて認知を迫る。
1.漢字の読みを書け。
47 卒然 48 賜り 費え 49 憂かる 50 拉し 巧み 賓主 周旋 51 否 55 縛して 操り 万戸 寂然 60 木綿
2.語句の意味を書け。
47卒然(突然)
咄嗟(わずかの間。
うべなふ(承知する)
49うしろめたし(気がかりな
50舌人(通訳)
拉す(無理に連れて行く。
青雲(宮廷)
囲繞(周りを取り囲む)
驕奢(贅沢。
賓主(客と主人)
周旋(間にはいって取り持つこと。
52路用(旅費。
袂を分かつ(別れる。
しるく(はっきりする。
53順境(物事が都合よく運び、不幸なことなどのない境遇。
逆境(苦労の多い不幸せな境遇。)
55寂然=寂しい様子。
57刹那(わずかな間。
低徊踟躕(迷いためらうこと)
59一瞥(ちらっと見ること。
60あだし名(正当でない名)
3.次の設問を考えなさい。
【L1】そのまま抜き出す。【L2】少し訳したり変形して抜き出す。【L3】自分の言葉で説明する。【L4】自由に考える。
461)【L1】翻訳には何日か。
・一夜
★トヨの有能さが証明された。
2)【L2】大臣の対応はどのように変わったか。
・初めは用事だけだった。
・次第に豊太郎の意見を聞いたり、冗談を言って笑ったりするようになった。
★冗談を言うということは、大臣がトヨを信用しだした。
★しかし、豊太郎は気づかない。
473)【L2】一カ月後、大臣は突然トヨに何を命じたか。
・ロシア同行。
・「従ひて来べきか」(付いてくるか)
・疑問であるが、実は命令である。
★トヨへの信頼の現れである。
4)【L2】トヨの返事は。
・即座に承諾した。
・「いかで命に従はざらん」
(どうして命令に従わないことがありましょうか、絶対に従います)
・反語。即断。
5)【L2】トヨは、なぜ承諾したのか。
・信頼している人の依頼はすぐに承知する。
6)【L3】前にも同じことがなかったが、それは何か。
・相沢にエリスと別れると約束した。
★所動的な性格が復活している。
7)【L3】「その答えの範囲」とは何か。
・大臣の信用を得て、再び出世する。
・エリスとしばらく別れて暮らす。
488)【L2】エリスがトヨを見送るときの気持ちは。
・豊太郎を厚く信じているので心を悩ましていない。
509)【L2】ロシアでのトヨの仕事は。
・通訳。
★信用されてななければ任せられない仕事である。
5110)【L2】トヨがエリスを忘れることができなかった理由は。
・エリスの手紙が頻繁に来るから。
5111)【L2】エリスの一通目の手紙には何か書いてあったか。
・一人で暮らすことの心細さ。
5212)【L1】二通目の手紙で最も重要な所は。
・「大臣の君に用ゐられたまはば我が路用の金はともかくもなりなむ」
・豊太郎の出世の可能性に気づいている。
・一緒に帰国できると思っている。
5314)【L1】トヨは二通目の手紙を読んで何に気づいたか。
・「我が地位」
15)【L3】「我が地位」とは何か。
・大臣の信用を得て出世し帰国できる。
5416)【L2】「我が地位」を知ったトヨの気持ちは。
・冷静でいられなくなった。
・帰国したい、出世したい。
17)【L1】以前、相沢に勧められて翻訳の仕事を始めたときの大臣の信用は何にたとえら れているか。
・屋上の鳥。
18)【L2】大臣の信用を得た理由は。
・語学の才能が認められたから。
・相沢が、トヨがエリスと別れると約束したことを、大臣に伝えていたから。
★女性問題を清算することが、豊太郎を重用する条件であった。
5519)【L1】トヨは、自分を何にたとえているか。
・足を縛して放たれし鳥。
20)【L1】トヨは、自分を操っているのは誰だと考えているか。
・先=官長。
・今=大臣。
5721【L1】エリスと再開する前に強かった気持ちは。
・故郷を思う気持ちと栄達を求める心。
22【L3】エリスと再開した後はどんな気持ちが強くなったか
・エリスへの愛情。
6023【L1】トヨは何を見て驚いたか。
・おむつ。
24【L2】「よもあだし名をば名のらせたまはじ」とはどういう意味か。
・子どもの認知を迫る。
4.「舞姫チェック」正しいものは○、間違っているものは正しく直せ。
361)明治二十三年の夏の出来事である。
2)エリスが気分が悪く物を食うと吐くのを食べ過ぎであると気づいたのは豊太郎である。3)トヨは、エリスの妊娠を知って将来に希望を感じた。
374)相沢が日本から出した手紙には、「尼方大臣の秘書官である相沢に会い名誉挽回せ
よ」とだけ書いてあった。
5)エリスは新聞社をクビになった手紙だと勘違いした。
6)トヨは相沢の手紙の内容をそのまま伝えた。
397)エリスは、正装したトヨを見て、妊娠しているので出世しても見捨てないでほしいと嘆願した。
408)トヨは、「馬鹿言ってんじゃねぇよ」と富貴や出世をキッパリ否定し、大臣に会いに 行くと言い切って、高級馬車に乗って出かけた。
419)トヨは、超一流の豪華なカイゼルホオフホテルに初めて来た。
10)トヨが相沢に会うのを一瞬ためらったのは、落ちぶれた自分を相沢に見られるのが恥 ずかしかったからである。
11)相沢は、デブになったが、快活な性格は変わらず、トヨの失敗を非難しなかった。
12)大臣は、トヨにフランス語の文書の翻訳を依頼した。
13)相沢が、トヨをディナーに誘った。
461)翻訳は三日で完成した。(一夜)
・トヨの有能さが証明された。
2)大臣の話は当初は仕事だけだったが、次第にトヨの意見を聞いたり、時にはジョークを言って笑ったりするようになった。●
・冗談を言うということは、大臣がトヨを信用しだした。
473)一週間後、大臣は突然トヨに三日後、フランスに「随ひてた来べきか」と命じた。(一カ月、明日、ロシア)
・急な申し出である。トヨへの信頼の現れである。
4)トヨは、不意のことだったので、「いかで命に従はざらん」と即座に断った。(承諾した)
5)トヨは、信頼している人から頼まれた時は、その答えの意味も考えずに即座にOKを出し、我慢して実行することがしばしばあった。●
・相沢との約束に続いて2つ目の対応である。
・相沢の場合も、信用する友にNOと言えなかった。
486)トヨはエリスに当座の生活費を与え、エリスもトヨを信じていたので不安を感じていなかった。●
497)トヨはエリスに見送られて旅立った。(一人で)
508)トヨは書記官として、ロシア語を駆使して客と主人の間をとりもち大活躍していた。(通訳、フランス語)
・通訳は信用されてななければ任せられない仕事である。
9)トヨは、仕事に夢中で、この間エリスのことを忘れなかった。(忘れることができなかった)
5110)エリスの一通目の手紙は、一人で暮らすことの心細さが切々と書いてあった。●
5211)エリスの二通目の手紙には、「妊娠してるんだからゼッタイゼッタイ捨てないでネ!」と書いてあった。●
12)また、「相沢の信用を得たら旅費は出してくれるだろうから、母と一緒に日本に連れてってネ」と書いてあった。(大臣、私だけを)
・「ゆめな〜そ」の強い禁止に注意する。
・エリスは自分の立場を理解していない。
第七段落(46〜60)
461)大臣の信用を得る
・翻訳を一夜で完成
↓
・大臣が意見を聞いたり、冗談を言って笑う
信頼
472)一カ月後、ロシア同行を命じられる
・「随ひて来べきか」
疑問→命令
1)豊太郎の返事
・「いかで命に従はざらん」
反語
・信頼している人の依頼はすぐに承知する=弱き心
×答えの範囲
・大臣の信用を得て出世する。
・しばらくエリスと離れて暮らす。
48 2)エリスの気持ち
・偽りのない豊太郎の心を厚く信じている。
3)ロシアで通訳として活躍する
・エリスを忘れざりき
・エリスをえ忘れざりき
514)ロシアでエリスの手紙(3つ目)を受け取る
52 1)一通目の手紙
・一人残された心細さ
2)二通目の手紙
・愛の力でベルリンにつなぎ止める
・もし、帰国するなら母と着いていく
・しかし、旅費がない。
↓別離の寂しさ
・「我をばゆめな捨てたまひそ」
禁止
・母は親戚に身を寄せる
・「大臣の君に用ゐられたまはば我が路用の金はともかくもなりなむ」
出世 一緒に日本に行ける
53 3)豊太郎の気持ち
●初めて我が地位明視する
大臣の信用→出世・帰国
屋上の鳥
⇔
54 己が尽くしたる職分をのみ見ていた
翻訳・通訳
●冷静でいられなくなる=帰国、出世したい
大臣の信用
屋上の鳥=手が届かないもの
↓相沢が大臣にエリスと別れたと報告した
現実的
55 ↓
×自我の目覚め
○足を縛して放たれし鳥
官長→大臣
575)ベルリンでエリスと再会する
1)豊太郎の気持ち
・故郷を思ふ念と栄達を求むる心
↓弱き心
・エリスへの愛。
602)エリスの気持ち
・おむつを見せる
・「よもあだし名は名のらせまはじ」
(まさか子どもに違う名前を名乗らせないでしょうね)
子どもの認知を迫る。
第八段(二、三日の間は大臣をも〜おわり)
大臣から帰国の命令が下る。エリスのことを理由に帰国をを断ることは相沢の顔を泥を塗ることになる。もしこのチャンスを逃せば日本に帰ることも出来なくなり、名誉を回復することもできなくなる。このドイツでうだつの上がらぬまま死んでいくのかというかつてのエリート意識が頭のそこから突き上げてきて、帰国を承知してしまう。しかし、エリスにどのように説明すればよいのか。雪の街を一晩中彷徨った挙げ句、家にたどり着くと同時に高熱で倒れてしまう。
豊太郎が倒れている数週間の間に、相沢がエリスに真実を伝え、エリスが発狂する。相沢も自分の身分を守るのに必死だったろう。卑しい職業のエリスがどうなろうとかまわなかったのだろう。意識が戻った豊太郎は発狂したエリスを抱きしめて涙を流す。そして、エリスと子どものことをエリスの母親に頼んで帰国する。豊太郎の心には相沢に対する人知らぬ恨みが残る。
1.漢字の読みを書け。
61 待遇 滞留 係累 心頭 特操 承り
2.語句の意味を書け。
61係累(関係。
特操(終始一貫して変わらない自分の志。 62黒がねの額(鉄面皮。厚顔)
64ふつに(全然)
66蒼然(顔色が青ざめて)
3.「舞姫チェック」正しいものは○、間違っているものは正しく直せ。●5
61@トヨは、一週間後の昼過ぎ、大臣から招待された。(二、三日後の夕方)
A大臣は、トヨに帰国を命じた。●
Bその理由の一つは、大臣がトヨの法学の力を評価したからである。(語学)
Cもう一つの理由は、大臣が相沢から、トヨが女性関係を清算したと報告を受けていたからである。●
Dトヨは、エリスとの約束を嘘だったと言えなかった。(相沢)
Eまた、断れば帰国や名誉回復の機会は二度となく、異国で一生フリーターになると思った。●
Fトヨは、一週間の猶予をもらった。(すぐに承諾した)
62Gトヨの頭の中はエリスへの罪悪感でいっぱいだった。●
6263 Hトヨは、雨の降る中、夜半過ぎまでベンチに座っていた。(雪、十一時)
64I一月上旬の夜なので、空には上弦の三日月が出ていた。(月はなかった)
65Jエリスはまだ起きていて、四階の屋根裏部屋の窓の灯は、雪で見えたり見えなかったり、まるでエリスが運命に弄(もてあそ)ばれているようであった。●
67Kトヨは帰宅と同時に、帰国を承知したことをエリスに伝えた。(倒れた)
5.質問をしながら板書する。
第八段落(61〜72)
@二、三日後、帰国の命令を受ける
・「東に還る心なきか」
疑問→命令
↑理由
・豊太郎の語学の才能を認めた。
・相沢から豊太郎がエリスと別れたと報告を受けた。
【L1】大臣が帰国を信用した理由は。
・豊太郎の語学の才能を認めた。
・豊太郎がエリスと別れたと、相沢から報告を受けていた。
【説】エリスと別れることが帰国の条件であった。
A豊太郎が承知する=確信的
・相沢の言を偽りだといえない。
・相沢の信用を傷つける。
・この機会を逃せば、帰国も出世もできない。
‖
×エリスと別れると約束した時=弱き心
×ロシア行きを承諾した時=弱き心
【L3】エリスと別れていないことを言えば、相沢はどうなるか。
・相沢が嘘を言っていたことになれば、相沢の信用がなくなる。
・相沢が嘘をついていないとすれば、人を見る目がないことになり、やはり信用がな くなる。
【L2】エリスと別れると約束した時や、ロシア行きを承諾した時との違いは。
・エリスと別れる時は、友だちの言うことに否と言えない=弱き心
・ロシア行きの時は、信用している人の依頼を断われない=弱き心
・帰国の承諾は、帰国や出世がしたいから=確信的
Bエリスへの罪悪感に苦しむ
・雪の降る中を一晩中歩き回る。
・「許すべからぬ罪人」
a)正直に話す。
・エリスに激しく非難される→帰国をあきらめる
b)黙って帰国する
・弱い心は隠しきれない。
・勘の鋭いエリスは必ず気づく。
c)黙ったまま残留する
・帰国や出世のチャンスは二度とない。
・相沢の信用を傷つける。
【L3】いい解決方法があるか。
a)正直に話す。
・エリスに激しく非難される。
・帰国をあきらめるかもしれない。
b)黙って帰国する
・豊太郎の弱い心は隠しきれない。
・勘の鋭いエリスは必ず気づく。
c)黙ったまま残留する
・帰国や出世のチャンスは二度とない。
・相沢の信用を傷つける。
【説】どの場合も行き詰まる。
今まで問題を先延ばしにしていた報いが来た。
C帰宅と同時に倒れる
・一時的に、エリスに帰国を説明しなくてすむ。
【L2】どんな意味があるか。
・一時的にしろ、エリスに帰国を説明しなくてすむ。
・再び問題の先延ばし。
6.漢字の読みを書け。
68 窮す 69 一諾 欺き 70 痴なる 治癒 71 癒えぬ
7.語句の意味を書け。
68人事を知る(意識が回復する)
68顛末(はじめから終わりまで。一部始終。
つばらに(詳しく)
8.「舞姫チェック」正しいものは○、間違っているものは正しく直せ。●3
68Lトヨは、数週間意識不明だった。●
Mその間に、大臣が見舞いに来た。(相沢・様子を見に)
N「余が彼に隠したる顛末」とは、トヨが相沢に意識不明になっていたことを隠してい たことである。(エリスと別れていないこと)
O相沢は大臣に、病気のことと、トヨがエリスと別れていないことを報告した。(だけ を)
Pトヨの意識が回復した時、エリスは痩せ細り、精神を病んでいた。●
69Q「余が相沢に与へし約束」とは、トヨがエリスを譲ると相沢に約束したことである。 (エリスと別れる)
R「かの夕べ大臣に聞こえ上げし一諾」とは、ロシア同行を承知したことである。
(帰国を承諾したこと)
S真相を知らされたエリスは、暴れ回ったが、襁褓を渡すと涙を流した。●
7021「過激なる心労」とは、流産したことである。(豊太郎に騙されたこと)
22エリスの病名はバンパイアで、治癒の見込みはなかった。(パラノイア)
23エリスは、時々「シャブをくれ、シャブをくれ」と言った。(豊太郎に薬をあげなく ては)
7124全快したトヨは、発狂したエリスの死体を抱きしめ涙を流し、エリスの母に慰謝料を 渡して帰国した。(生ける屍、生活費)
7225トヨは大臣を恨んでいる。(相沢)
26ラストクエスチョン、トヨが帰国したのは明治二十四年の、二十九才の時である。(二十二年、二十七才)
・二十二才で留学して五年間に帰国した。
9.質問をしながら板書する。
D数週間、意識不明になる。
E相沢が訪問する
@「余が彼に隠したる顛末」に気づく。
エリスと別れていないこと
↓
・病気のことだけ報告する=保身
【L2】なぜ来たのか。
・ホテルに来ないので様子を見に来た。
・見舞いではない。
【L3】「余が彼に隠したる顛末」とは。
・豊太郎がエリスと別れていないこと。
【L3】相沢の気持ちは。
・自分の地位が危ない。
・豊太郎がエリスと別れていないことが大臣に知れれば、嘘をついていたか、騙され ていたことになる。
【L2】大臣には病気の事だけを伝えた理由は。
・エリスと別れていないことは隠して、何とかする。
Aエリスに真実を伝える
・「余が相沢に与へし約束」
エリスと別れる
・「大臣に聞こえあげし一諾」
大臣に付いて帰国する
↓
・豊太郎と別れさせる
【L2】「余が相沢に与へし約束」とは。
・エリスと別れる約束。
【L2】「大臣に聞こえあげし一諾」とは。
・帰国の承諾。
【L3】相沢がエリスに真実を伝えた理由は。
・豊太郎と別れさせるため。
・豊太郎の弱き心では、豊太郎の口から真実を伝えるのは難しいと判断した。
【注】エリスがどう思うか、どうなるかは考えていない。
Fエリスが発狂する
・「我が豊太郎ぬし、かくまでに我をば欺きたまひしか。」
・「過激なる心労」
裏切られたショック
↓
・精神病=治癒の見込みがない
・裏切られる前で時間が止まっている。
【L2】「過激なる心労」とは。
・豊太郎に裏切られたショック。
Gエリスを残して帰国する
1)エリスに対する気持ち
・エリスを抱いて涙を流す。
・愛情
・謝罪
?安堵
2)相沢に対する気持ち
・彼のような良友は得難い
⇔
・相沢を憎む心が今日まで残っている。
「人知らぬ恨み」
a)エリスを発狂させたから。
b)再び出世の道を開いたから。
c)エリスと別れる約束をさせたから
【L2】エリスが発狂していなければどうなったか。
・激しく罵られる。
・大臣に別れていないことがばれ、帰国できなくなる。
・エリスを抱きしめられない。
・安堵感。
【説】豊太郎にとってもベストの結末。
【L4】エリスにとっては発狂したことはどうか。
・一生発狂したままで過ごす。
・裏切りを知るまでの幸せな時間でとまり、一生幸せの中で過ごせる。
【L4】なぜ、豊太郎は相沢を憎んでいるのか。
a)エリスを発狂させたから。
・相沢が言わなければ、いずれ豊太郎が言わなければならなかった。
・相沢に自分の責任を転嫁していることになる。
b)再び出世の道を開いたから。
・エリスが妊娠した時に将来に不安を覚えていた。
・エリスとの破局はいずれやって来たはずである。
c)エリスと別れる約束をさせたから。
・いずれ、現実に負けて愛は冷めるかもしれない。
・結果的には、豊太郎はエリスから直接非難されなくてすむ。
・にもかかわらず、恨んでいるのは責任転嫁である。
第八段落(61〜72)
@二、三日後、帰国の命令を受ける
・「東に還る心なきか」
疑問→命令
↑理由
・豊太郎の語学の才能を認めた。
・相沢から豊太郎がエリスと別れたと報告を受けた。
A豊太郎が承知する=確信的
・相沢の言を偽りだといえない。
・相沢の信用を傷つける。
・この機会を逃せば、帰国も出世もできない。
‖
×エリスと別れると約束した時=弱き心
×ロシア行きを承諾した時=弱き心
Bエリスへの罪悪感に苦しむ
・雪の降る中を一晩中歩き回る。
・「許すべからぬ罪人」
a)正直に話す。
・エリスに激しく非難される→帰国をあきらめる
b)黙って帰国する
・弱い心は隠しきれない。
・勘の鋭いエリスは必ず気づく。
c)黙ったまま残留する
・帰国や出世のチャンスは二度とない。
・相沢の信用を傷つける。
C帰宅と同時に倒れる
・一時的に、エリスに帰国を説明しなくてすむ。
・問題の先送り
D数週間、意識不明になる。
E相沢が訪問する
@「余が彼に隠したる顛末」に気づく。
エリスと別れていないこと
↓
・病気のことだけ報告する=保身
Aエリスに真実を伝える
・「余が相沢に与へし約束」
エリスと別れる
・「大臣に聞こえあげし一諾」
大臣に付いて帰国する
↓
・豊太郎と別れさせる
Fエリスが発狂する
・「我が豊太郎ぬし、かくまでに我をば欺きたまひしか。」
・「過激なる心労」
裏切られたショック
↓
・パラノイアという精神病=治癒の見込みがない
・裏切られる前で時間が止まっている。
Gエリスを残して帰国する
1)エリスに対する気持ち
・エリスを抱いて涙を流す。
・愛情
・謝罪
?安堵
2)相沢に対する気持ち
・彼のような良友は得難い
⇔
・相沢を憎む心が今日まで残っている。
「人知らぬ恨み」
a)エリスを発狂させたから。
b)再び出世の道を開いたから。
c)エリスと別れる約束をさせたから
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