第一段

 1.ヨーロッパからの帰路で日記が書けない理由
 a)ドイツで無感動になった。
 b)自分自身が信用できなくなった。
 c)人知れぬ恨みに悩まされている。
   ↓概略を書く
  『舞姫』
 
第二段
 
2.豊太郎の生い立ち
 1)武士の家の一人っ子で、厳しい家庭教育を受けた。
 2)早くに父を失い、母の手一つで育てられる。
 3)学校では常に首席を通した。
 4)十九才で東京帝国大学法学部を卒業する。
 5)国家公務員になる。
 6)三年間、母と楽しい生活を送る。
 7)官長の評判がよく、留学の命令を受ける。
  a)自分と家の名誉のために留学する。
  b)五十才を越えた母を日本に残していく。
 
3.留学直後の様子
 8)あいまいな功名の念と自己規制に慣れた勉強力で留学した。
 9)美観に心を動かされず、仕事に専念する。
 10)大学で法学を学ぶ。
 
第三段

 4.豊太郎の変化
  1)それまでの豊太郎
   ・所動的、器械的の人物。
   ・母→生きた辞書
    ・官長→生きた法律
 2)三年後、自我に目覚める
  ・大学の自由な雰囲気に触れたから。
  3)その後の豊太郎
    ・官長に自分の意見を主張する。
   ・大学では、歴史や文学を学ぶ。
 
5.地位が危うくなる
 1)官長の評判が悪くなる。
  自分の心のままに動く器械のような部下を求めていた。
 2)留学生から嘲られ妬まれる。
  遊ぶために留学していた。
 ・つきあいが悪い。
  ↑
 ・弱くふびんな心=本性
  ↑
 ・早くに父を亡くして、母の手で育てられたから。
  責任転嫁
 
第四段
 
6.ある日の夕方、古い教会の前で少女と出会う
 1)少女の様子
  ・年は十六、七才。
  ・超美少女。
  ・青く清らかでもの問いたげな憂いを含んだ目。
  ・父の葬式の金がないので、泣いていた。
 2)豊太郎の対応
  ・憐憫の情臆病な心に打ち勝って、大胆にも声をかけた。
  ・外人の方が力を貸しやすいこともある。
  
Q1なぜ豊太郎は少女に声をかけたのか?
 ・少女の目が、一目で豊太郎の心をとらえた=魔性
 ・自我に目覚めで自由になっていた。
 ・当時の地位が危うく不安定な精神状態であった。
 ・教会の前で恍惚としていたから。
 
Q2なぜ少女は教会の前泣いていたのか?
             父の葬式代が工面できない
        人目につく
        誰かが声をかけてくくれるのを待っていた。
  
Q3エリスは母に何を話したのか?
   母…荒々しく戸を閉める
   │ ↓エリス「豊太郎が金を貸してくれる」
   │ 無礼を詫び部屋に招き入れる
   └─金のために娘も売る
 
7.エリスに金を貸して窮地を救ってやる
  
Q4なぜ豊太郎が大金を貸してやろうという気になったのか?
   ・自分も父を亡くした同じ境遇だったから。
   ・エリスの人には否とは言わせない媚びを含んだ目があったから。
    ○意識的か?
     無意識か?
 
第五段
 
8.エリスとの幼い交際が始まる
 ・「何らの悪因ぞ」
      何か?
 
9.免官になる
 1)原因
  ・留学生仲間→官長 エリスとの交際を密告─┐
   ↓                  ├─冤罪
  ・官長→公使館 すぐに報告────────┘
 2)条件
  a)帰国→旅費を支給する。
  b)残留→援助を断ち切る。
   ↓
  ・一週間の猶予をもらう。
 
10.母の死を知らせる手紙を受け取る
 1)
Q5母の手紙の内容は?
    今読んでも涙が止まらない
  ・豊太郎の免官を知っていた
  ・自殺=豊太郎への諫め
      夫や家への謝罪
 2)母の死が今後の豊太郎に与えた影響
  ・急いで帰国する必要がなくなった。
  ・心の支えを失った。
 
11.エリスと離れ難い仲になる
      ・肉体関係ができた。
 1)「一身の大事」
  ・帰国か残留かを決断すること
 2)エリスが豊太郎の免官を母に内緒にした理由
  ・金のなくなった豊太郎と別れさせられる。
    ↓
  ・エリスは豊太郎を愛している。
 3)離れ難い仲になった理由
  ・エリスに一目惚れしていた。
  ・不幸のどん底の豊太郎のために涙を流してくれた。
   ・母に変わる存在
   ・深い悲しみで恍惚としていた。
 
12.運命の日が迫る
 a)帰国→学問が完成せず出世の見込みがない。
 b)残留→学資を得る手段がない。

○学問ができるかどうか
×エリスへの愛
 
13.ドイツに残留する
 ・相沢→新聞社の通信員の職を世話してくれる。
 ・エリス→同居できるように世話してくれる。                 
   ↓
 ・憂きが中にも楽しい生活を送る。
  ・第二の安息の日々。
 ・民間学に長じる
  ↓↑
  学問は衰える
 
第六段
 
14.エリスが妊娠する
 1)豊太郎の気持ち
  「もしまことなりせばいかにせまし
          反実仮想
  ・もし(妊娠が)本当ならば、どうしよう=妊娠していないことを前提
    ↓
  ・妊娠していることを信じたくなかった。
    ↑
 ・経済的に不安定になる。
 ○学問ができなくなる。
 
15.相沢の手紙を受け取る
1)内容
 ・名誉を回復するために大臣に会いに来い。
 2)相沢の価値観
  ・出世=幸せ
  ・出世の援助=友情
 
16.相沢に会いに行く
1)エリスの気持ち
 「たとひ富貴になりたまふ日はありとも、我をば見捨てたまはじ。」
  ・豊太郎が出世すれば見捨てられることを予感している。
 「我が病は母ののたまふごとくならずとも」
  ・妊娠していない→見捨てないでほしい。
   妊娠している →見捨てるはずがないでしょうね。
   ↓
  ・子どもによって豊太郎をつなぎ止めようとしている。
2)豊太郎の気持ち
  ・大臣でなく相沢に会いに行く。
  出世   友情
 
第七段
 
17.相沢と再会する
 ・立場が逆転
  ↓羞恥心
  一瞬ためらう
  ↓↑
  以前と変わらない快活な性格
  ↓
  すぐに大臣に会わせる
 
18.大臣にドイツ語の翻訳を委託される
 
19.相沢と昼食をとる
 1)豊太郎を責めない
  「この一段のこと」
   エリスとの交際
   ↑
  ・弱き心=豊太郎の本質=友情
 2)大臣に語学の才能を示して信用を求めることを勧める
  ・豊太郎=学識や才能が惜しい
  ・大臣 =語学の才能を利用するだけ
       免官の理由を知っている
   ↑推薦↓曲庇
  ・相沢 =保身
 4)エリスと別れるように忠告する
  ・身分が違う→出世の妨げ
  ・仕事に専念させる←弱い心
 
20.エリスと別れる約束をする
 1)
豊太郎の気持ち
  ・大洋=ヨーロッパ
  ・舵を失ひし舟人=免官になった豊太郎
  ・はるかな山=大臣の信用を得て出世すること
   ↓
  ・行き着くか──┐            
   満足できるか─┴─わからない──不確実
     ↓↑
  ・貧しいが楽しい生活──┬────確実
  ・捨てがたいエリスの愛─┘
 2)約束した理由
  ・親友の意見には逆らえないから←弱き心
 3)その後の気持ち
  ・心に一種の寒さを覚える
      ・エリスを裏切った罪悪感
  ・エリスと別れる気はない
   ↓
  先延ばし第八段
 
第八段
 
21.大臣からロシア行きを打診される
 1)大臣の対応
  ・用事だけ│
  ・意見を問う│信頼
  ・笑い話 ↓                               
  ・「従うひて来べきか」
         命令
 2)豊太郎の気持ち
  ・突然の打診に驚いた。
  ・「いかで命に従はざらん」=反語→強い肯定
   ↑
   ・信頼している人の依頼を断れない←弱き心
  ・答えの範囲をよく考えない。
   ・大臣の信用を得て、再び出世の機会ができる。
   ・エリスとしばらく別れて暮らさなければならない。
 3)エリスの気持ち
  ・エリスは豊太郎を信じて送り出す。
 
22.エリスの手紙を受け取る
 1)手紙の内容
  ・お腹が大きくなった→絶対見捨てないでほしい。
  ・私一人でついていく。
  ・「大臣の君に重く用ゐられたまはば」
    ↓
   大臣の信用を得つつある
 2)豊太郎が大臣の信用を得た理由
  ・豊太郎の語学の才能が認められたから。
  ・相沢にエリスと別れると約束したことを、大臣に伝えていたから。
 3)豊太郎の気持ち
  ・仕事≠出世──神に誓う
    ↓・初めて自分の地位に気がつく
  ・冷静でいられない=出世に期待し始める
    ↓       はるかなる山・屋上の鳥
  ・自我の目覚が偽物であった
  ・以前=官長
  ・現在=大臣
 3)エリスの気持ち
  ・豊太郎の出世の可能性に気づいている。
  ・一緒に帰国できると思っている。
 
23.ベルリンに帰りエリスと再会する
1)豊太郎の気持ち
 ・帰国や出世の念が愛情を圧していた
  ↓エリスと再会
 ・愛情が強くなる
 2)エリスの気持ち
   ・豊太郎の子を産む幸せ
 ・子どもの認知を迫る
 
第九段
 
24.大臣から帰国を勧められ、承知する
 1)大臣が帰国を勧めた理由
  ・豊太郎の語学の才能を認めた。
  ・豊太郎がエリスと別れたと、相沢から報告を受けていた。
 2)豊太郎が承知した理由
   ・相沢の信用を傷つけられない。
   ・嘘をついていた→信用がなくなる
   ・だまされていた→人を見る目がない→信用がなくなる
   ・この機会を逃せば、帰国も出世もできない。
    ↓
   ・確信的な返答
 
25.エリスを裏切った罪悪感に苦しむ
 
26.帰宅と同時に倒れる
        先延ばし
 

Q6豊太郎が倒れなかったらどうしたか?

 
1)正直に話す→エリスに激しく非難される→帰国を諦める
 2)黙って帰国する→隠しきれない+エリスの勘→帰国できない
  3)黙って残留する→帰国や出世のチャンスは二度とない→後悔する
          相沢の信用を傷つける。
 
第十段
 
27.相沢が来る
 1)豊太郎がエリスと別れていないことを知る。
   「余が彼に隠したる顛末」=エリスと別れていないこと
   ↓
  ・驚き
  ・豊太郎の裏切りを恨む
  ・自分の甘さを後悔する
   ↓
  ・自分の身分が危ない
 2)エリスに真実を伝える。
  「余が相沢に与えし約束」=エリスと別れるという約束
   「かの夕べ大臣に聞こえ上げし一諾」=大臣と一緒に帰国すること。
   ↑
  ・エリスと別れさせねならない。
  ・豊太郎はエリスに言えない←弱き心
  ・エリスの気持ちは全く考えない
 3)大臣へ病気のことだけを報告する。
 
28.エリスが発狂する
 1)エリスの気持ち
  ・豊太郎を厚く信じていた
  「過激な心労」=豊太郎の裏切り
 2)発狂後の様子
  ・赤ん坊のことを忘れられない
  ・豊太郎のことを心配している
   ↓
  ・時間が止まっている
 3)豊太郎の気持ち
  ・エリスを抱いて涙を流す
  ・エリスを愛している
  ・エリスに謝罪している
 
29.エリスを残して帰国する
 1)エリスに対する気持ち
  ・罪悪感
  ・安堵感=責められずにすむ
 2)相沢に対する気持ち
  ・相沢を憎む心が今日まで残っている=人知らぬ恨み
 

Q7発狂か流産かどちらが良かったか?
  1)エリスにとって
   a)発狂 ○嫌なことを忘れられる。
       ×一生台無しになる。
       ×子どもがどうなるか不安。
   b)流産 ○人生をやり直せる。
       ×豊太郎への恨みは一生残る。
  2)豊太郎にとって
   a)発狂 ○責められることなく帰国できる。
       ○最後までエリスを抱きしめられる。
       ○エリスの中にいい思いでだけが残る。
       ×道義的な憐憫の情が残る。
   b)流産 ○入院している間に帰国できる。
       ×エリスの恨みが残る。