『檸檬』14 梶井基次郎


 『檸檬』は鬱屈した青年の内面を鋭く描いた小説である。同年代の生徒にとっても共感するところがあるはずである。しかし、時代は変わった。自分の鬱屈した内面に深く悩まなくなった。本当だろうか。どの時代も、子どもから大人へのこの時期は不安定なものである。必ずや現代の生徒も悩んでいるはずである。もっとも梶井のように内面を掘り下げる若者は当時においても稀少であろう。ゆえに、この作品が長く読み続けられる理由でもある。『檸檬』を読み深めていくことによって現在の生徒が自己を洞察していく契機になるように、それが高校最後の現代文の教材としての位置づけである。

 「えたいの知れない不吉な塊」。正体がわからず、しかも不吉である。焦燥のようでもあり、嫌悪のようでもあり、宿酔のようでもある。将来に対する焦り、そういう自分への嫌悪感、それが原因と思われる毎日の宿酔。そうした精神状態や不摂生が原因となった肺尖カタルや神経衰弱の身体的影響、借金の経済的影響。それらが「いけないのではない」と言いながら明らかにそれらが原因である。私はそれを認めたくないだけである。その「えたいの知れない不吉な塊」が私をして街を浮浪させる。
 生活が蝕まれていなかったころ私が好きだったのは、高級舶来品を扱う「丸善」であった。しかし、そこでささやかな贅沢を重ねるような生活をした結果、そこは借金取りの亡霊のような場所になってしまった。
 そして蝕まれた生活をしてた頃のわたしを引きつけたものは、「みすぼらしくて美しいもの」「二銭や三銭のものといって贅沢なもの」、「美しいものといって無気力なわたしの触角にむしろ媚びてくるもの」であった。具体的には、壊れかかった町の裏通りであったり、おはじきであったり。街は、京都から遠く離れた場所にいるような錯覚を起こさせてくれ、おはじきは幼児時の甘い記憶を呼び起こしてくれる。つまり、現実から逃避させていれる安価なものである。
 ある朝、私は最も好きな店であった果物屋を訪れる。その店が好きであった理由は果物の色や形が引き立った美しさがあった。また、夜も魅力であった。
 その店でいつになく檸檬を買った。単純な色や、丈の詰まった紡錘形の形や、肺尖カタルで熱のあった身体に心地よい冷たさや、吸い込めば胸いっぱいに広がる匂いや、すべての善いものや美しいものを換算したような重さがよかった。檸檬を手に入れた私は、不吉な塊が弛んで非常に幸福になった。
 私は檸檬に勇気づけられて丸善に入る。途端に、幸福な感情は逃げていき、憂鬱が立て込めてくる。私は一つの試みを思いつく。本を積み重ねてその上に檸檬を置く。善や美の象徴である檸檬が不吉な塊の象徴である本を吸収してしまったのだ。さらに私は第二のアイディアを思いつく。檸檬を爆弾に見立てて丸善全体を破壊すると想像することである。それは建設的な想像なのか、破滅的な想像なのか。
 この小説で起こったことは、正体のわからない不吉に苛まれた私が、さまざまな解消法を求めて街を浮浪し、ある朝果物屋で買った檸檬を持って丸善に入り、本を積み上げてその上に檸檬を置き、それを放置して店を出た。その間、さまざまな想像を塗り重ねていく。

 さて、この小説を協同学習でどのように扱うか。生徒がプリントをもとに協同で考える時間と、教師が内容を整理する時間と、生徒の意見を交流させる時間に分かれる。それらをうまく組み合わせながら構成していくところに醍醐味がある。しかも、人間の内面をえぐる作品であるので、時間をかけてじっくりと考える必要もある。講義中心の一斉授業ならば抑えたいところがいくつもある。しかし、協同学習に仕立て、しかも時間に制限があるので割愛していく部分も必要である。最低限抑えなければならないところは確認させ、大きな問題を協同で考えさせる、その中で気づくチームがあればよし。教師のまとめ整理の部分で紹介するのもよいだろう。また、生徒の内面と対照させたい部分については時間をしける必要もあるだろう。その部部はさまざまな解釈がある部分でもある。1.生活が蝕まれていた頃、私を始終抑えつけていたものについて
 生活が蝕まれていた頃、私は、えたいの知れない不吉な塊に始終抑えつけられていた。焦燥や嫌悪や宿酔と言おうか、はっきりと命名しがたい。肺尖カタルや神経衰弱や借金がいけないのではない、と言いながらそれも一因である。つまり、それらが絡み合って複雑になったものが不吉な塊である。将来に対する不安から焦燥感が起こり、現実の自分を嫌悪し、それを紛らすために酒を飲む。体を壊し、金銭的にも困窮し、神経もまいってくる。
 以前は、美しい音楽や詩によって解消できたが、今ではそんなものでは辛抱ができなくなった。
 えたいの知れない不吉な塊によって、私は街を浮浪した。

2.そのころ、私を引きつけたものについて。
 そのころ私を引きつけたものは、みすぼらしくて美しいという矛盾するものであった。それは言い換えれば、二銭や三銭で贅沢なもの、美しくて無気力なわたしに媚びてくるものであった。
 例えば、場所で言えば壊れかかった街の裏通りであった。そこを歩きながら、そこが京都から遠く離れた場所であると錯覚を起こし自分をそこに見失うのを楽しんだ。
  物で言えば、花火の絵やおはじきや南京玉であった。それをなめてみて、父母に叱られた甘い記憶を蘇られるのを楽しんだ。
 つまり、空間的にも時間的にも、現実から逃避したかったのである。
  生活が蝕まれていなっか以前好きだったのが丸善であった。そこでささやかな贅沢を楽しんだが、それが蓄積して今では借金取りの亡霊のような憂鬱な場所になってしまった。

3.お気に入りの果物屋について
  そのころのある朝、いつものように不吉な塊に追い立てられた私はお気に入りの果物屋で足を止める。そこは、果物屋固有の美しさがある。そこでは果物が「何か華やかな美しい音楽の快速調の流れが、見る人を石に化したというゴルゴンの鬼面的なものを差し付けられて、あんな色彩やヴォリュウムに凝り固まっ」ている。また、その店は夜が美しかった。周囲の暗さと店頭の明るさのコントラストが美しかった。
 ここには梶井の美的センスが見て取れるのだが、生徒にもお気に入りの店を最大級の言葉を使って紹介させてみる。

4.檸檬の魅力について
 その日、私はその果物屋で檸檬を買う。色、形、冷たさ、匂い、重さが気に入ったのだった。複雑な不吉な塊の対照的な単純な色、中身が充満していそうな丈の詰まった紡錘形の形、肺尖カタルで熱があった私に心地よい冷たさ、カリフォルニアを想像させる匂いを嗅ぐために息を吸い込む心地よさ、それらすべてをまとめてすべての美しいもの善いものの象徴のようなずっしりとした重さ。
 檸檬を手に入れた私は、不吉な塊が紛らされて、非常に幸福であった。

5.丸善での錯覚について
 檸檬を手に入れた幸福感で借金取りの亡霊のような丸善に入る。すると、幸福な感情はだんだん逃げていき、憂鬱が立て込めてくる。生活が蝕まれていなかった以前みて楽しんだ画本にも心が乗らない。
 そこで、檸檬を使った試みを思いつく。画本を積み上げてその上に檸檬を置いてみる。画本は不吉な塊の象徴であり、檸檬はすべての美しいもの善いものの象徴である。私に再び先程の軽やかな昂奮が蘇ってきた。
 すると不意に第二のアイディアが浮かんだ。檸檬を爆弾に見立てて、画本の上に置いたまま丸善を出て、気詰まりな丸善を爆破させると想像することである。この想像は私にとって面白いものであり、私をくすぐったい気持ちにさせた。このアイディアの意味するところは、破壊的であり健全な想像ではない。壊れかかった街の裏通りやおはじきと同じ頽廃的なものである。
 そんな気持ちを抱いて、私は京極を下っていく。


全体

1.【指】学習プリントを配布し、学習の準備を宿題にする。
2.小段落番号をふる。
 ・1〜30
3.【説】全文を音読する。
4.【指】わたしの中のえたいの知れない不吉な塊について、ノートに5行程度で書く。
 ・自分の中にある、不安について作文する。


《1》えたいの知れない不吉な塊(1段落)
 
《ねらい》与えられた語を組み合わせて、複雑な集合体の正体を考える。

1.チームに分かれる。
2.自分の中の不吉な塊について交流する。
3.協同学習プリントをする。
 ・3)は、付箋を配布し、それに1)2)の語を縦書きで書かせ、それを並べ替えて、縦長の  用紙に貼り付けながら考える。
 ・貼らせた用紙を、黒板に掲示する。
4.板書しながら説明する。
1)【L1】生活が蝕まれていた「そのころ」私の心を抑えつけていた「えたいの知れない不吉な塊」は何といえるようなものだったか(3つ)。
  ・焦燥、嫌悪、宿酔
2)【L1】その原因として、私が否定しているものは何か(3つ)。ただし、否定することは、それが真実であるので認めたくないということがよくある。
  ・肺尖カタル、神経衰弱、借金
3)【L3】「不吉な塊」の正体について、1)2)の語を使い、その原因や関係を考えて説明し  なさい。
  ・将来に対する不安から焦燥が起こり、そんな自分を嫌悪し、それを紛らすために毎日酒を飲んで宿酔になる。そして、体を壊して肺尖カタルになると同時に借金がかさみ、神経衰弱になる。するとますます焦燥が強くなる。
  ・最初の焦燥の原因を考える。
4)【L1】生活が蝕まれていなかった「以前」私を喜ばせたものは何か(2つ)。
  ・美しい音楽、美しい詩
5)【L1】私を街から街へ浮浪させ続けた「何か」とは。
  ・えたいの知れない不吉な塊
6)【L4】あなたの中の「不吉な塊」は何ですか。
  ・時間があれば何人かに聞いてみる。
【板書】
A えたいの知れない不吉な塊
  
・焦燥─┐ 
  
・嫌悪├─といおうか
  
・宿酔─┘                                 
  
・肺尖カタル─┐
  
・神経衰弱 ├─いけないのではない→いけないのである
  
・借金   ─┘
   

  
・美しい音楽
  
・美しい詩
   

  
・街から街へ浮遊し続ける

《2》そのころ私を引きつけたもの(第1〜7段落) 
 
《ねらい》具体的な物を通して私の特異な美意識について考える。
1.チームに分かれ、協同学習プリントをする。
2.板書しながら説明する。
1)【L1】「そのころ」私を強く引きつけたものとは、どんな特徴を持ったものか。また、その言い換えを2つ抜き出せ。
  ・みすぼらしくて美しいもの
  ・二銭や三銭のものといって贅沢なもの
  ・美しいものといって無気力な私の触覚にむしろ媚びてくるもの
2)【L3】1)の3つに共通する特徴は何か。
  ・マイナスとプラスの相反する2つのものが組み合わさっている。
3)【L2】具体的な場所として、「壊れかかった街の裏通り」に引きつけられる理由は何か。
  ・そこが京都から遠く離れた場所であるかのような錯覚を起こさせるから。
 【説】壊れかかった街の裏通りの具体的な様子を読み取る。
    ・汚い洗濯物が干してある
    ・がらくたが転がっている
    ・むさ苦しい部屋がのぞいている
    ・雨や風が蝕んでやがて土に帰ってしまう
    ・土塀が崩れていたり家並みが傾きかかっていたり
    ・勢いのいい向日葵やカンナ
 【説】写真を見せる。
4)【L2】具体的なものとして、「おはじきや南京玉」に引きつけられる理由は何か。
  ・なめると、父母に叱られた幼児の甘い記憶を甦るから。
 【説】実物を見せて、なめてみる。
    駄菓子を見せる。
5)【L3】「壊れかかった街の裏通り」と「おはじきや南京玉」の共通点は何か。
  ・空間的、時間的に現実から逃避すること。
6)【L4】それ以外に、そのころの私を引きつけたと思われるものを挙げなさい。
  ・どんなものが挙がったか聞く。
7)【L3】生活が蝕まれていなかった以前私が好きだった丸善で売っている、オードコロンや香水瓶や煙管や石鹸や鉛筆は、どのようなものか。
  ・高級で美しいもの。
8)【L2】丸善が借金取りの亡霊のような場所になった理由は何か。
  ・上等な鉛筆を一本買うような贅沢を重ねたから。
【板書】
 
・そのころ私を強く引きつけたもの
  
・みすぼらしくて(−)−美しいもの(+)
  
・二銭や三銭のもの(−)−贅沢なもの(+)
  
・美しいもの(+)−無気力な私の触覚にむしろ媚びてくるもの(−)
   
(例1)
    
・壊れかかった街の裏通り
      
‖錯覚
    
・京都から遠く離れた場所→空間的逃避
   
(例2)
    
・花火の絵、おはじき、南京玉。
      
↓なめる
    
・父母に叱られた幼児の甘い記憶→時間的逃避
    

 
・生活が蝕まれていなかった以前私が好きだった所
  
・丸善=高級で美しいもの。
   
↓ささやかな贅沢
 
・借金取りの亡霊

《3》お気に入りの果物屋(第8〜9段落) 
 
《ねらい》梶井の華麗な言語表現力を味わう。
1.チームに分かれ、協同学習プリントをする。
 ・お気に入りの店を紹介しあい、チームで一つ決めておく。
 ・後で発表してもらう。
2.板書しながら説明する。
1)【L1】私を追い立てる「何か」とは何か。
  ・えたいの知れない不吉な塊
2)【L1】私がその果物屋を気に入っていた理由は何か(2つ)
  ・果物屋固有の美しさ
  ・夜
 【説】八百卯の位置を地図を書いて説明し、写真を見せる。
3)【L3】「華やかな美しい音楽の快速調の流れが、見る人を石に化したというゴルゴンの 鬼面的なものを差し付けられて、あんな色彩やヴォリュウムに凝り固まった」とは、 端的に言えば、何が何によって果物になったのか。
 ・美しい音楽が、魔法によって果物になった。
  ・聴覚的なものが視覚的なものに変化した。
4)【L2】果物屋固有の美しさとはどんな様子か。
  ・鮮やかな色の果物が整然と並べられている。
【説】絵を描いて説明する。
5)【L3】夜が美しい理由は何か。
  ・周囲や庇の上の暗さと店頭の明るさが対照的だったから。
【説】夜の光のコントラストを図示して説明する。
 ・北側の二条通りが暗い。南側の隣家も暗い。
 ・打ち出した廂の上も暗い。
 ・店内の電灯の光だけが驟雨のように明るい。
 ・それを向かいの店の二階から見下ろしている。
 【L4】どんな感じがするか。
  ・幻想的。
6)【L4】あなたのお気に入りの店を表現を凝らしてメンバーに紹介してください。
  ・ぼくのお気に入りの喫茶店を紹介する。
  ・築地、ソワレ、フランソワ、イノダ、スマート
   葦島、六曜社、エレファントファクトリー、お多福、ウニール、直、
【板書】
・「何か」がを追い立てる
  
えたいの知れない不吉な塊
  

・お気に入りの果物屋
 
・果物屋固有の美しさ
 
・夜

《4》檸檬の魅力(第10〜16段落) 
 
《ねらい》一つのものをさまざまな角度から観察する。
1.チームに分かれ、協同学習プリントをする。
2.板書しながら説明する。
1)【L1】檸檬が気に入った点を5つ挙げよ。冷覚・触覚・嗅覚・視覚に分類せよ。
  ・単純な色(視覚)
  ・丈の詰まった紡錘形の格好(視覚)
  ・冷たさ(冷覚)
  ・匂い(嗅覚)
  ・重さ(触覚)
 【説】本物の檸檬を見たり触ったりして確認する。
2)【L3】単純な色が気に入った理由は。
  ・単純な色が、複雑な不吉な塊と対照的だったから。
3)【L3】丈の詰まった紡錘形の格好が気に入った理由は。
(紡錘形とは糸を巻いたように真  ん中が膨らんだ形。それが上下から圧縮されて短くなっている)
  ・圧縮され中身が詰まっているような感じがするから。
4)【L2】冷たさが気に入った理由は。
  ・肺尖カタルで熱があったので心地よかったから。
【説】手の握りあいをして誰よりも熱いことを自慢している。
 ・肺病は不摂生による病気で、当時の文学青年の憧れであった。
  ・人並でないことが、文学者の証であると思っていた。
5)【L2】匂いが気に入った理由は(2つ)。
  ・カリフォルニアが想像に上ってくる。
  ・肺尖カタルで胸いっぱいに呼吸したことがないので、匂やかな空気を吸い込めたから。
6)【L1】重さは何を重量に換算したものに思えたか。
  ・すべての善いものすべての美しいもの
7)【L1】これらの想像をもたらした心は。
  ・思い上がった諧謔心。
8)【L1】檸檬を握った瞬間からどんな気持ちになったか。
・軽やかな興奮。
・一種誇りやかな気持ち。
  ・幸福だった。
9)【L3】そんな気持ちになった理由は。
  ・探していたものが見つかったから。
  ・みすぼらしくはなく、それ程高級ではないが、少し贅沢である。
  ・確かな手応えを感じた。
10)【W】食べ物や形や色に関する心理テストをする。
  ★ミカン、ナツミカン、グレープフルーツ、リンゴ、メロン、イチゴ、ブドウ、ナシ、
 パパイヤ、カキ、バナナ、モモの中から好きなものを選ぶ。
・ミカン 食べるのに手間がかからないし、ビタミンも豊富であるためか、もっとも好かれるフルーツのひとつ。ミカンの好きな人は、無理を好まない安全第一主義者。決して危険な冒険をせず、地道にコツコツと努力をしていく。おだやかでだれとでも調和していける人で、少しくらいイヤなことがあっても笑顔を忘れないし、人づき合いも上手で、ほどほどのペースを守っていけるタイプ。ただ意外に頑固なところがあり、周囲が驚かされることも。
・ナツミカン 人づき合いがとても上手で、社交性はバッグン。だれとでも気軽につき合うし、相手に合わせるタイプなので友達も多い。世話好きで、困っている人を見ると黙っていられないところもある。お人好しすぎてだまされたり、失敗することもあるが、一度の失敗ではへコタレない頑張り屋でもある。とてもエネルギッシュで、行動力にあふれているタイプ。
・グレープフルーツ 健康や美容に対する関心の強い人。平凡なことでは満足できず、理想は高く、いつもまわりから注目されたい、認められたいといった気持ちが強い。オシャレにも気をつかい、流行に敏感で、しかも超一流のものを求めるタイプ。スポーツ、絵画、音楽にも興味を持っている。言うなれば華やかに自分の生活をエンジョイしていきたいという気持ちを強く持っている人でなかなかのロマンチスト。また、楽天家でもある。
・リンゴ もっとも一般的で、だれからも好まれるフルーツ。リンゴが好きという人は、ものごとをキチンと処理していく真面目型で、なにごとにもけじめを大切にし、エチケットやマナーにもうるさいだろう。はじめはつき合いにくい人のように見られるが、相手の気持ちをよく考えて行動できる人なので、次第に理解され、つき合う期間が長くなるにつれて、その良さがわかってもらえる。
・メロン 外観はとてもエレガントで控えめな人だが、心の中にはいつも大きな夢や理想を燃やしている。人の言いなりになることを嫌い、自分なりの理想や信念で生きていこうとする、かなり頑固な面もある。向上心も強く、いまの状態に満足して落ちついてしまうようなことは大嫌いだし、人に負けたり追い抜かれたりすることも大嫌い。ただ欲望はわりと現実的で、金銭的欲求がたいへん強
く、ブランド品にあこがれるタイプ。
・イチゴ 洗練された美的センスがいっぱいの人。オシャレにも気をつかい、自分らしさをいろいろなところにあらわしていこうとするタイプ。美的感覚をなによりも大切にし、センスを磨き、人生をできるだけ楽しいものにしようと努力する。カッコイイことが大事で、ダサイこと、カッコ悪いことは死ぬほど嫌いという人。ロマンチックな夢を追い求め、異性に対してもひと目惚れすることが多い。
・ブドウ 知性にあふれ、美的センスや詩的空想力も豊かで、とても個性的な人。夢や理想を大切にし、お金のためよりも夢を求めて行動していこうとする。慎重で忍耐強い人だが、人づき合いはわりと苦手で、自分のカラに閉じこもりやすい。このため近寄りにくく冷たい印象を与えることもある。人を好きになるのにも時間がかかるが、親しくなるとイメージとはガラリとちがった姿になり、献身的だったり、わがままだったりする。
・ナシ 慎重で、落ちついたムードの人。自分の欲求をコントロールしていく真面目型で、派手な生き方よりも堅実第−。人づき合いでも控えめで、自分を主張するよりも相手に合わせていく。だが本心は、人とワイワイ騒ぐよりも、だれにも束縛されずにのんびり一人で過ごしたいと思っている。シンは意外と強く、趣味に打ちこんで素晴らしい才能を発揮したりするが、消極的すぎて、目の前のチャンスを逃してしまうということもある。
・パパイヤ 情熱的で、冒険心とスタミナにあふれた個性的な人。常に新しいものに挑戦していこうとする積極的なタイプで、いつも刺激とスリルを求めている。発想もユニークで、枠にはめられるのは大の苦手。金もうけのオ能もあり、ギャンブルなどにも興味を示すことがあるだろう。ただ粘り強さが不足しがちで、あきらめがはやいのが欠点。ただしライバルがあらわれると、かえってやる気を燃やしてがんばるタイプ。
・カキ やや保守的。地味で豊たないが、確実に宗一歩進んでいくような生き方を選ぶ人。目先の利益よりも、将来のことを考えてコツコツ努力していくので、専門の知識や技術を身につけて出世する人が多い。金銭的にも無駄づかいをしない堅実型。人づき合いでも礼儀正しいので、年上の人に評判はいいが、少々頑固で、好き嫌いがハッキリしているところや、明るさや面白味に欠けるところがあるため、友人が偏りやすい。
・バナナ カロリーの高い果物であるバナナは、テキパキとして行動力のある人が好みやすい。バナナの好きな人は、細かなことをあまりクヨクヨ考えない楽天家。人づき合いでもとても開放的で、だれにでもフランクに話しかけて、友達になれる社交性がある。とてもエネルギッシュな人で、女性なら、やや男勝りかも。仕事や金もうけに対しても積極的で非常に大胆な人。ただ、ときにはわがままな面が出て、まわりを手こずらせることもある。
・モモ 寂しがり屋で、一人ぼっちになることは大の苦手。心やさしく、思いやりのある人なので、いつも他人のことを考えていて、人のためなら、少々自分が犠牲になることなど気にしないタイプ。義理や人情をとても大切にする。いつも感じがよい人だが、本質的にはかなり勝ち気で、批判的で攻撃的な面がある。矛盾が多い人だが、生き生きとしたところが魅力的。

【板書】
・檸檬が気に入った点
 
・単純な色(視覚)↕複雑な不吉な塊
 
・丈の詰まった紡錘形の格好(視覚)→充実
 
・冷たさ(冷覚)─┬─肺尖カタル
 
・匂い(嗅覚)──┘
 
・重さ(触覚)=すべての善いものすべての美しいもの
   

 
・思い上がった諧謔心(ユーモア)
   

・軽やかな興奮。
・一種誇りやかな気持ち。
 
・非常に幸福な気持ち

《5》二つのアイディア(第17〜30段落) 
 
《ねらい》私の心の変化をし理解する。
1.チームに分かれ、協同学習プリントをする。
2.板書しながら説明する。
1)【L1】丸善に入る前後の気持ちの変化は。
  ・前は、やすやすと入れるように思えた。
  ・後は、幸福な感情はだんだん逃げ、憂鬱が立てこめてくる。
  【説】丸善の位置を地図を書いて説明する。
 【説】以前、私が大好きだった画本を見終わったときに味わった気持ちは。
  ・変にそぐわない気持ち。
2)【L2】檸檬を使って何を試してみたのか(第一のアイディア)。
  ・画本を積み重ねて、その上に檸檬を置く。
3)【L2】不意に起こった第二のアイディアとは何か。
  ・檸檬が爆弾になって、丸善を爆破すると想像すること。
4)【L1】第二のアイディアを思いついたときの気持ちは(3つ)。
  ・ぎょっとさせた。
  ・くすぐったい気持ち。
  ・おもしろいだろう。
5)【L3】第一のアイディアにはどんな意味があるのか。
  ・不吉な塊の象徴である画本を、すべての善いもの美しいものの象徴である檸檬が吸   収することによって、不吉な塊を解消する。
6)【L3】この第二のアイディアにはどんな意味があるのか。
  ・不吉な塊の元凶である丸善全体を破壊することによって、不吉な塊を解消する。
7)【L4】京極下っていく私の気持ちは。
  ・再び、頽廃的な不吉な塊の中に帰っていく。

【板書】
4.二つのアイディア
 
・丸善に入る
  
・幸福
   

  
・憂鬱
 
・第一のアイディア
  
・画本の上に檸檬を置く。
   
不吉な塊 すべての善いものすべての美しいもの
   
│    ↑
   
└─吸収─┘
 
・第二のアイディア
  
・檸檬が丸善を爆破する。
   
爆弾 気詰まりな=不吉な塊
         
破壊
    

  
・ぎょっとさせた。
  
・くすぐったい気持ち。
  
・おもしろいだろう。
 
・奇体な看板画の彩る京極を下る
  
みすぼらしくて美しいもの



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檸檬 学習プリント
                  組  番 氏名
学習の準備
1.読み方を書きなさい。

 塊 焦燥 嫌悪 宿酔 肺尖 辛抱 趣 向日葵 努める 布団 蚊帳 浴衣 洒落た

 切子細工 琥珀 翡翠 煙管 石鹸 煙草 駄菓子屋 凝り固まる 廂 目深  驟雨

 八百屋 紡錘形 憂鬱 紛らす 不可思議 身内 闊歩 諧謔心 慌ただしい 諧調 

 悪漢 木っ端みじん



『檸檬』 協同学習プリント《1》えたいの知れない不吉な塊(第1段落) 
              組  番 氏名
【L1】文中の語をそのまま抜き出す。【L2】文中の語を組み合わせる。【L3】文中の表現を参考にして自分の言葉で答える。
 《ねらい》与えられた語を組み合わせて、複雑な集合体の正体を考える。
1)【L1】生活が蝕まれていた「そのころ」私の心を抑えつけていた「えたいの知れない不吉な塊」は何といえるようなものだったか(3つ)。
  ・
  ・
  ・
2)【L1】その原因として、私が否定しているものは何か(3つ)。ただし、否定することは、それが真実であるので認めたくないということがよくある。
  ・
  ・
  ・
3)【L3】「不吉な塊」の正体について、1)2)の語を使い、その原因や関係を考えて説明し  なさい。
  ・





4)【L1】生活が蝕まれていなかった「以前」私を喜ばせたものは何か(2つ)。
  ・
  ・
5)【L1】私を街から街へ浮浪させ続けた「何か」とは。
  ・
6)【L4】あなたの中の「不吉な塊」は何ですか。


『檸檬』 協同学習プリント《2》そのころ私を引きつけたもの(第1〜7段落) 
              組  番 氏名
 《ねらい》具体的な物を通して私の特異な美意識について考える。
1)【L1】「そのころ」私を強く引きつけたものとは、どんな特徴を持ったものか。また、その言い換えを2つ抜き出せ。
  ・
  ・
  ・
2)【L3】1)の3つに共通する特徴は何か。
  ・

3)【L2】具体的な場所として、「壊れかかった街の裏通り」に引きつけられる理由は何か。
  ・

4)【L2】具体的なものとして、「おはじきや南京玉」に引きつけられる理由は何か。
  ・

5)【L3】「壊れかかった街の裏通り」と「おはじきや南京玉」の共通点は何か。
  ・

6)【L4】それ以外に、そのころの私を引きつけたと思われるものを挙げなさい。
  ・

7)【L3】生活が蝕まれていなかった以前私が好きだった丸善で売っている、オードコロンや香水瓶や煙管や石鹸や鉛筆は、どのようなものか。
  ・

8)【L2】丸善が借金取りの亡霊のような場所になった理由は何か。
  ・

『檸檬』 協同学習プリント《3》お気に入りの果物屋(第8〜9段落) 
              組  番 氏名
 《ねらい》梶井の華麗な言語表現力を味わう。
1)【L1】私を追い立てる「何か」とは何か。
  ・
2)【L1】私がその果物屋を気に入っていた理由は何か(2つ)
  ・
  ・
3)【L3】「華やかな美しい音楽の快速調の流れが、見る人を石に化したというゴルゴンの 鬼面的なものを差し付けられて、あんな色彩やヴォリュウムに凝り固まった」とは、 端的に言えば、何が何によって果物になったのか。
 ・
4)【L2】果物屋固有の美しさとはどんな様子か。
  ・

5)【L3】夜が美しい理由は何か。
  ・

6)【L4】あなたのお気に入りの店を表現を凝らしてメンバーに紹介してください。
  ・


『檸檬』 協同学習プリント《4》檸檬の魅力(第10〜16段落) 
              組  番 氏名
 《ねらい》一つのものの魅力をさまざまな角度から考える。
1)【L1】檸檬が気に入った点を5つ挙げよ。また「冷覚・触覚・嗅覚・視覚」に分類せよ。
  ・
  ・
  ・
  ・
  ・
2)【L3】単純な色が気に入った理由は。
  ・

3)【L3】丈の詰まった紡錘形の格好が気に入った理由は。(紡錘形とは糸を巻いたように真ん中が膨らんだ形。それが上下から圧縮されて短くなっている)
  ・

4)【L2】冷たさが気に入った理由は。
  ・

5)【L2】匂いが気に入った理由は(2つ)。
  ・

  ・

6)【L1】重さは何を重量に換算したものに思えたか。
  ・
7)【L1】これらの想像をもたらした心は。
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8)【L1】檸檬を握った瞬間からどんな気持ちになったか(3つ)。


  ・
9)【L3】そんな気持ちになった理由は。
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『檸檬』 協同学習プリント《5》二つのアイディア(第17〜30段落) 
              組  番 氏名
 《ねらい》私の心の変化をし理解する。
1)【L1】丸善に入る前後の気持ちの変化は。
  前
  後
2)【L2】檸檬を使って何を試してみたのか(第一のアイディア)。
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3)【L2】不意に起こった第二のアイディアとは何か。
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4)【L1】第二のアイディアを思いついたときの気持ちは(3つ)。
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5)【L3】第一のアイディアにはどんな意味があるのか。
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6)【L3】この第二のアイディアにはどんな意味があるのか。
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7)【L4】京極下っていく私の気持ちは。