こころ 2017


教材観
〇.あらすじ
 私とKの生い立ちはにている部分が多い。私は叔父に裏切られ人間不信に陥るが、奥さんとお嬢さんに接するうちに回復する。Kは信念を貫いて家から絶縁され神経衰弱になっているところを、私の下宿でお嬢さんと接するうちに回復していく。しかし、私の心の中には一方的にお嬢さんをめぐってKとライバル関係が発生し、嫉妬をするようになる。

一 Kの告白
 Kはお嬢さんの話を始める。Kの変化に不思議の私は感に打たれた。重い言葉が出る前兆で、Kの口元が震えている。そして、お嬢さんに対する切ない恋が打ち明けられた。私は恐ろしさと苦しさの塊になって、精神の働きが停止した。一瞬の後に、人間らしい気分を取り戻し、しまった、先を越されたと後悔した。その苦しさは私の顔の上にはっきりと出ていたにもかかわらず、Kも自分のことに一切を集中していたので私の表情を気にする余裕がなかった。Kの告白は重くてのろい代わりに、容易なことでは動かせない。私は、利害ではなく、Kは私より強いのだという恐怖の念から何も言えなかった。

二 私の後悔
 めいめいの部屋に引き取った時、私の心もKに打ち明けるべきだと思った。しかし、時機が遅れてしまったという気も起こった。今さら言えば、Kがお嬢さんを好きだといったから私もお嬢さんを好きになったことになって不自然である。私の頭は悔恨に揺られてぐらぐらした。
 Kが再び襖を開けて無効から突進してくれれば、私も自然に告白できる。午前に失ったものを今なら取り戻せるという下心はあった。しかし、しかし、Kは永久に静かだった。私はたまらなくなって、Kを姿を咀嚼しながら正月の町をむやみに歩き回った。第一に、Kが解しがたい男のように見えた。どうして突然私に打ち明けたのか、どうして恋が募ったのか、強いまじめな平生のKはどこに吹き飛ばされたのか。Kについて質問しなければならないことを多く持っていたが、Kを相手にするのが気味悪かった。Kが一種の魔物のように思えて、永久に祟られているのではないかとという気にさえなった。

三 晩の会話
 夕飯のとき、五人が顔を揃えるが、何も起こらなかった。その晩、Kの事が気になった私はおいと声をかけると、Kもおいと返事をした。私が「まだ寝ないのか」と言うと、Kは「もう寝る」と言う。私がお嬢さんのことについて詳しく話がしたいと言うと、Kは渋る。私ははっと思った。

四 私の確認
 翌朝になって、Kの方からお嬢さんの話をしようとしない。奥さんやお嬢さんの様子も変わったところがない。Kは私にしか告白していないことを知り安心する。しばらく放っておくことにした。ある日、Kに確認したところ私以外に話していないと言う。私は実際的にお嬢さんに告白するのかと問うと、何も答えない。ただ、私に隠す必要はないと断言した。

五 私の逆襲1
 ある日、図書館でKの方から散歩に誘ってきた。私はKの胸に一物があって談判に来られたような気がした。
 まず、Kの方から例の事件、お嬢さんへの恋について口を切った。まだ、実際的な方面、お嬢さんや奥さんへの告白までは進んでいないようである。
 次に、Kは「どう思う」と、恋愛の淵に陥った自分を私がどんな目で眺めているのか、現在の自分について私の批判を求めてきた。そこに、Kは平生と異なる点を確かに認めることができた。Kの平生は、他の思惑をはばかるほど弱くなく、こうと信じたら一人でどんどん進んでいく度胸も勇気もあった。
 次に、私が私の批評が必要な理由を尋ねると、Kは「自分が迷っていて自分で自分が分からない弱い人間であるので、私の公平や批評が必要なのだ」と言った。「迷う」とはお嬢さんに進んでいいかである。しかし、私が退こうと思えば退けるのかと聞くと、Kは退くことは苦しいと答える。もし、お嬢さんのことでなければ、私はKにとって都合がよい、お嬢さんに告白しろいう慈雨のような言葉を与えたはずだった。それぐらいの美しい同情は持っていたつもりである。

六 私の逆襲2
 私は他流試合をしているように敵であるKを注視した。Kの保管している要塞の地図、心の中は手にとるように見えた。Kは自分の道を貫くという理想と、お嬢さんに恋をしているという現実の間を彷徨していた。私は、一打ちで倒す方法だけを考え、Kの虚につけ込んだ。
 まず、策略から急に厳粛な改まった態度で、「精神的に向上心のないものはばかだ」と言い放った。この言葉は、房州旅行の際に、お嬢さんへの恋に悩む私にKが言った言葉で、その言葉には同情より侮蔑が込められていた。私は、その言葉に復讐以上の残酷な意味を持っていた。その一言で、Kの恋の行く手をふさごうとしたのである。Kは精進という言葉が好きであった。道のためには全てを犠牲にすべきであるというのが彼の第一信条で、欲を離れた恋そのものも道の妨げになると考えていた。だから、この言葉はKにとって痛いに違いない。それはKのせっかく積み上げた過去を今までどおり積み重ねさせてゆかせるというより、私の利害と衝突することを恐れた単なる利己心の発現であった。Kは「僕はばかだ」と答えた。それは居直ったにしては力に乏しいものであった。

七 私の逆襲3
 Kはあまりに正直で、あまりに単純で、あまりに善良だった。そんな羊のようなKに、私は狼のごとき心を向けた。Kは「その話はやめよう」と悲痛に言った。私は「それやめるだけの覚悟があるのか」と残酷な答えを与えた。「それ」とは「お嬢さんの話」ではなく、「お嬢さんへの恋」にすり替えたのである。Kの姿が萎縮して小さく見えた。するとKは「覚悟ならないこともない」と独り言のように夢の中の言葉のように言った。Kの姿は霜に打たれて青みを失った木立の茶褐色が、薄黒い空の中に、梢を並べてそびえているようであった。その頃になって、ようやく私は体の温かみを感じるように、狼から人間に戻ってきた。

八 覚悟の意味1
 上野から帰った晩、私は「覚悟」の意味を考えた。Kには投げ出すことのできない尊い過去があった。養家からも実家からも勘当されてまで哲学を学んだ過去である。また、Kには現代人(明治の後期)の持たない強情と我慢もあった。その双方からKが古い自分を投げ出して新しい方角へ走り出さない、Kはお嬢さんを諦めると、私は確信していた。夕食後、私はわざわざKの部屋に行き、勝利者のように世間話をした。この時初めて、Kを恐れるに足りないと自覚した。
 その夜遅くに、「ふすま」が二尺程開いて、Kが黒い影のように立っていた。Kは「もう寝たのか」「まだ起きているのかと思って便所に行ったついでに聞いてみただけだ」と普段より落ち着いた声で言って、ふすまをぴたりと立てきった。朝食の時にKに確かめると、確かに襖を開けて名前を呼んだと言う。そして理由を尋ねると調子の抜けた頃に「近頃は熟睡できるのか」と向こうから聞いてきた。学校へ行く道で「あの事件について何か話すつもりではなかったのかと念を押すと、Kは「その話はもうやめよう」と強い口調で言った。その時「覚悟」の2文字が再び私の頭を抑え始めた。

九 覚悟の意味2
 Kの性格は一般に果断に富んでおり、この事件においてだけ例外的に優柔になったのだと私は解釈していた。しかし、すべての疑惑、煩悶、懊悩を一度に解決する最後の手段を胸に畳み込んでいるのではないか、果断に富んだ性格をお嬢さんへの恋にも発揮するというのが「覚悟」の意味ではないかと考え直した。
 私は最後の決断、奥さんにお嬢さんをくれと談判することが必要だと考えた。Kより先に、Kもお嬢さんもいない時に事を運ばなければならない。一週間後、仮病を使ってその機会を作った。私はKが近頃何か言わなかったかと、Kが告白していないことを確認した。

十 私の決断
 私は、Kの告白を内緒にして、突然「奥さん、お嬢さんを私に下さい」と談判する。奥さんは驚いた様子もなくよく考えたのかと念を押した後、「差し上げましょう」ときっぱり言った。父親のない子を宜しく頼むと言っただけで、他の条件、私の財産に関することは出なかった。そして「本人が不承知の所へ、やるはずがない」と言った。つまり、奥さんとお嬢さんの間では話はできていたのである。とにかくこの時、私の未来の運命は定められた。私はできるだけ早くお嬢さん伝えてほしいと頼む。

十一 私の良心
 私はさっきの奥さんの記憶と、お嬢さんのうちへ帰ってからの想像で一杯で、散歩をしていた。その間、Kのことは全く考えなかった。そしてKの部屋を抜ける瞬間、ようやくKに対する良心が復活した。もしKと二人きりなら謝っただろうが、奥には人がいる。体面を気にする私にとってそれはできなかった。
 私とKと奥さんの三人で鉛のような夕食をとった。さすがにお嬢さんは同席しない。すべてを知っている私は、なんにも知らないKの前で、なんにも知らない奥さんの口から私とお嬢さんのことを話されてはたまらないとヒヤヒヤしていた。部屋に帰ってKへの弁解を考えたが、どれも不十分であった。

十二 私の策略
 私にKになんとか事態を告げようと考えたが、倫理的に否を自認している私には至難の業であった。奥さんに頼んで私のいない間にありのままを告げてもらっても、面目がないのは変わりない。こしらえごとを話してもらおうとすれば、理由を話さねばならず自分の弱点をさらすことになる。結婚する前から恋人の信用を失うことは耐えられない。
 私は、Kに謝罪するという正しい道を歩くつもりで、自分の体面のためにその機会を逸し足を滑らせた馬鹿者、狡猾な男であった。その事に気づいているのは、「天」と私の「心」だけである。私は滑ったことを隠したがると同時に、前に出ずにはいられなかった。
 五、六日後、奥さんがKに私とお嬢さんの結婚を告げたことがわかった。その時Kは最も落ち着いた驚きで迎えたらしい。儀礼的な挨拶だけで他に何も言わなかったそうである。私はそれを聞いて胸がふさがるような苦しさを覚えた。
 Kは話を聞いてから二日たつが、私には以前と異なる様子を見せなかった。その超然とした態度と私の態度を比べて、「策略では勝っても人間として負けたのだ」という感じが胸に渦巻いて起こった。それでも、今さらKの前に出て恥をかかされるのは、私の自尊心には苦痛だった。

十三 Kの自殺
 私が進んでKにお嬢さんとの婚約を話そうかよそうかと考え、とりあえず明日まで待とうと決心した土曜の晩、Kが自殺する。上野公園から帰ったこの前の晩と同じように「ふすま」が開いるがKの影は見えない。Kの部屋を見るとKは自殺していた。
 第一の感じは、Kに恋を告白された時と同じであった。あの時一つの塊になったように、私の目はガラスで作った義眼のように動く能力を失い棒立ちになった。次に、しまった、取りかえしがつかないと思った。あの時は先を思いだったが、今回は私がKを自殺に追い込んだという思いだった。
 それでも私は冷静に、Kの遺書を見つける。それは予期したように私宛になっていたが、予期したような私を責める内容は書いてない。私は世間体の上だけだが助かったと思った。
 遺書の内容は、Kが薄志弱行で行く先の望みがないから自殺する、最後にもっと早く死ぬべきだったのになぜ今まで生きていたのだろうと、書き添えてあるだけだった。お嬢さんの名前はなく、私はKがわざと回避したのだと思った。
 私はみんなが遺書を読む方が私に有利になると考え、わざとみんなの目につくように元の通り机の上に置いた。

十四 私の結婚
 Kの葬式で、私はKの自殺の原因について質問される。第一発見者であり、唯一の親友であったのだから当然の人選だが、私はその質問の裏に、お前が殺したのだろうという声を聞く。それはそういう自覚があったからである。遺書のおかげで、私の罪はばれず、Kはきちがい扱いまでされる。しかし、ばれなかったことが却って真綿で首を絞めるように私を苦しめる。ただ、お嬢さんの名前が出なかったことは幸いだった。
 引っ越し、卒業、結婚。私は外面上は幸福の連続であった。しかし、この結婚が自殺への導火線に火をつけたことになっていたのであった。ある日、妻が私をKの墓参りに誘う。妻はKに結婚を報告して喜んでもらうつもりだっただろうか、私は心の中で済まないと繰り返すだけだった。早くも二人の間に亀裂が走る。穿った見方をすれば、妻は私の所業を知っていて、私を誘ったとしたら、じわじわと私を苦しめ、死にいたらしめる序章であったとも考えられるが、考えすぎだろう。
 私が自殺の導火線になる結婚に不安があったが、もしかしたら新しい生涯へのプロローグになるかもしれないとの一縷の望みをかけたが、無残にうち砕かれる。妻が中間に立ってKと私をどこまでも結びつける。私はこの一点おいて妻を遠ざける。妻からは詰問や怨言を受ける。そのころの私には結婚前のような自尊心はなく自分を飾る必要はなかった。ありのままを話せば妻も許してくれることは分かりながら、妻にKの自殺に関係していることを知らせないために、つまり妻の記憶に暗黒な一点を印するに忍びなかった、純白なものに一滴のインキも振りかけるのは苦痛であった。とすれば、Kが遺書にお嬢さんの名前を書かなかった理由も自然と納得される。Kも自分の自殺にお嬢さんを巻き込みたくなかったのだ。ただ、穿った見方をすれば、妻はそんなことは先刻承知で私のひとり相撲だったかもしれない。
 私は腕組みをして世の中を眺めだした(何もしないで過ごすようになった)。妻は心の弛みだと言うが、実際は叔父に裏切られ人に愛想を尽かしたのに、Kを裏切ってしまい自分にも愛想を尽かしてしまったのだ。
 それを妻に説明できない自分が悪いのだが、たった一人親愛する妻にも理解してもらえない寂しさを痛感する。その時、はたと、Kも唯一の親友だと思っていた私に理解されない寂しさのために自殺したのではないかと思い当たる。Kは奥さんから婚約の話を聞かされた時、「覚悟」の意味をお嬢さんに進むと誤解されたことに気づいて、驚いたのだ。自分はそんな人間に見られていたのかというショックである。そして、私は、私もKと同様自殺するのかとこの時初めて自覚して、ぞっとする。

十五 私の自殺
 私が世の中に意欲を持とうとすると、そんな資格はないと私を押さえつける力が働く。私の内面には常にこうした苦しい戦争があった。そんな繰り返しに私は疲れ果てる。その時、一番楽な努力で遂行できる道として、自殺が手を広げて待っている。Kの遺書にあった「薄志弱行」とはこのことだったのだろう。しかし、私は妻を一人残すことが不憫で、また一緒に死ぬ勇気もなく思い止まる。穿った見方をすれば、妻は一人でも生きていけるし、それを願っていたと考えると、身も蓋もなくなってしまう。
 そんな私もついに自殺を決意する日がくる。その引金になったのが、明治天皇の死であり、乃木大将の殉死である。明治の精神は天皇に始まって天皇に終わった。厳格と完全を求める古い部分と、自由と独立を求める新しい部分を表裏一体に併せ持った明治の精神を生きた自分の、そろそろ引き際だと思った。お嬢さんへの恋に代表される新しい精神と、Kに体する罪悪感を担い続けた古い精神。そんな明治の精神を体現している自分が次の時代を生きるのは時代後れだと感じた。
 気になる妻も一人で残す決意をした。乃木大将のように妻を道連れにするのは、忍びなかった。たが、妻には残酷な血の色は見せたくないし、自分のおぞましい過去も知らせたくない。妻はいつまでも純白のままでいてほしい。Kが襖を開けたまま自殺したのも、私に発見させることでお嬢さんに血の色を見せたくない思いからだったのだろう。たとえ、きちがい扱いされてもいいとも思ったのだろう。
 私は、Kに対する罪悪感で何をするのも許されない人間であったが、最後に長い遺書を書くことによって、こんなふうにして生きてきた自分を、明治の精神を、青年の胸に記憶してもらおうとした。その試みは、成功したのだろう。


0.ここまでのあらすじ
1.【W】「恋愛か出世か〜マイクロディベート〜」をする。
 1)プリントを配布して、読みながら説明する。
 2)出世かと恋愛かを選ぶ長所と短所を書き出す。
 3)3〜4人組になって、マイクロディベートをする。
2.【説】これが、「こころ」のあらすじであることを説明する。
 ・私は恋愛を選び、Kは自殺する。
 ・なぜ、私は恋愛を選んだのか。
 ・なぜ、Kは自殺したのかを考える。
3.【説】私の過去をまとめる。
 1)両親が病死して孤児になる。
 2)上京して高等学校に入る。
 3)叔父に財産を誤魔化され、人間不信に陥る。
 4)故郷を捨てて上京する。
 5)下宿の奥さんとお嬢さんに、厭世的な心がほぐれる。
 6)お嬢さんを愛し始める。
4.【説】Kの過去をまとめる。
 1)真宗の寺の次男に生まれる。
 2)同郷の幼なじみ
 3)医者の家の養子に出される。
 4)勝手に別の科に進む。
 4)養家と実家から絶縁される。
 5)過労から、神経衰弱になる。
5.【説】私とKの関係。
 1)(私)自分の下宿に引き取る。
 2)(私)お嬢さんにKの心がほぐすように頼む。
 3)(K)お嬢さんと親しそうに話す。
 4)(私)Kに対する嫉妬の念に苦しむ。
 5)(私)お嬢さんへの恋をKに打ち明けようとするが言い出せない。
私                   
1)両親が病死して孤児になる。
2)上京して高等学校に入る。
3)叔父に財産を誤魔化され、人間不信に陥る
4)故郷を捨てて上京する。

5)下宿の奥さんとお嬢さんに、厭世的な心が ほぐれる。
6)お嬢さんを愛し始める。
1)真宗の寺の次男に生まれる。
2)同郷の幼なじみ
3)医者の家の養子に出される。
4)勝手に別の科に進む。
4)養家と実家から絶縁される。
5)過労から、神経衰弱になる。
                
1)自分の下宿に引き取る。
2)お嬢さんにKの心がほぐすように頼む。
4)Kに対する嫉妬の念に苦しむ。
5)お嬢さんへの恋をKに打ち明けようとする が言い出せない。
3)お嬢さんと親しそうに話す。
                                                
5.【指】小段落番号1〜79を付けさせ、大段落の区切り指示する。
 一 Kの告白(138上01〜)
 二 私の後悔(140上06〜)
 三 その晩の会話(142下11〜 )
 四 私の確認(145上02〜 )
 五 私の逆襲1(147上10〜 )
 六 私の逆襲2(149上15〜 )
 七 私の逆襲3(151下02〜 )
 八 覚悟の意味1(154上07〜 )
 九 覚悟の意味2(156上12〜 )
 十 私の決断(158上15〜 )
 十一 私の良心(161上01〜 )
 十二 私の策略(163上12〜 )
 十三 Kの自殺(165上16〜 )


十三 Kの自殺(165上16〜 )

1【指】「それでも私は」から音読する。
2【L2】Kの遺書(「手紙の内容は」〜)から、自殺の原因を解明するのに重要なことを抜き出せ。
 ・薄志弱行でとうてい行く先の望みがないから自殺する。
 ・お嬢さんの名前だけはどこにも見えません。
 ・もっと早く死ぬべきだのになぜ今まで生きていたのだろう。
3【指】「私が進もうか」から音読する。
4【L2】その他の状況から、自殺の原因を解明するのに重要なことを抜き出せ。
 ・Kと私の部屋とのは仕切りの襖が、この間の晩と同じくらい開いています。
5【L3】問題点を整理せよ。
 A なぜ襖が開けてあったのか。この間の晩とはいつか。
 B 何に対する意志が弱かったのか。
 C なぜお嬢さんの名前を書かなかったのか。
 D 死ぬべき時期とは何時だったか。なぜ死ねなかったのか。
6.【指】これらの問題点を頭において、さかのぼって読解していく。

第十三段落 Kの自殺
・Kの自殺の手がかり
 
・薄志弱行でとうてい行く先の望みがないから自殺する。
 
・お嬢さんの名前だけはどこにも見えません。
 
・もっと早く死ぬべきだのになぜ今まで生きていたのだろう。
 
・Kと私の部屋とのは仕切りの襖が、この間の晩と同じくらい開いています。
  

・Kの自殺の謎
 
A なぜ襖が開けてあったのか。この間の晩とはいつか。
 
B 何に対する意志が弱かったのか。
 
C なぜお嬢さんの名前を書かなかったのか。
 
D 死ぬべき時期とは何時だったか。なぜ今まで死ねなかったのか。

一 Kの告白(138上01〜)

1【指】音読する。
2【指】漢字の読みを確認する。
 元来  平生  籠もって  切ない  塊  
3.Kの告白について
  【説】掲載部分前の、Kの「奥さんとお嬢さんの話」を説明する。
  ・奥さんとお嬢さんはどこへ行ったのか。
  ・その叔母さんはなんだ。
  ・正月の挨拶は十五日過ぎなのになぜ早く行ったのか。
1)1)【L2】なぜ、私は「面倒よりも不思議の感」に打たれたのか。
  ・以前は私の方から二人の話をしたが、Kの方から二人の話を始めたから。
 2)【L2】Kの話し方の癖は。また、与える印象は。
  ・言う前に、口元の肉が震える。口の当たりをもぐもぐさせる。
  ・言葉の重みが増す。強い力がある。
2)3)【L1】Kは私に何を打ち明けたのか。
  ・お嬢さんに対する切ない恋
3)4)【L2】Kの告白を聞いた瞬間、私はどうなったか。それは、どんな状態か。
  ・恐ろしさの塊、苦しさの塊
  ・固まってしまって、何も考えられない。
  ・人間的でない。
 5)【L1】一瞬間の後、私はどう思ったか。
  ・人間らしい気分
  ・しまった。先を越された
 6)【L2】「先を越された」とは。
  ・お嬢さんへの恋を、私がKに告白するより、Kの方から先に告白された。
4)7)【L1】その時の私の表情は。
  ・苦しさがはっきり出ていた
 8)【L1】なぜ、Kは私の表情に気づかなかったのか。
  ・自分のことに一切を集中しているから
 9)【タラレバ】もし、Kが私の表情に気づいていればどうなったか。
  ・私の気持ちも話すことができた。
 10)【L3】なぜ、私はKに恐怖の念を抱くのか。
  ・Kの言葉は容易なことでは動かせないから。
  ・Kは自分より強いのだという思い込みがあったから。

第一段落 Kの告白(138上01〜)

  
K                        │私
 
──────────────────┼─────────────────── 
 ・奥さんとお嬢さんの話をやめない       →・不思議の感に打たれる

 
・口の当たりをもぐもぐさせる          │ ・Kの調子が変わっている
  
・言葉の重み、強い力            │
 
・お嬢さんに対する切ない恋を打ち明ける  →・恐ろしさと苦しさの塊になる
                   
       │  ↓
                   
       │・人間らしい気分を取り戻す
                   
       │ ・しまった
                   
       │ ・先を越された
                   
       │  ↓
 
・私の表情に気づかないタラレバ        ←・苦しさが表情に出る
  
・自分のことに集中している         │・恐怖の念を感じる
                          
│ ・Kの言葉を動かせない
                    
     │ ・相手は自分より強いのだ

二 私の後悔(140上06〜)

1【指】音読する。
2【指】漢字の読みを確認する。
 悔恨  襖  鉄瓶  往来  咀嚼  解しがたい  募って
3【指】抱くの意味を確認する。
 手抜かり(注意が行き届かなかったための欠陥)
 一段落つく(一つの区切りがつく)
 咀嚼(言葉の意味をよく考えて理解すること)
4.私の悔恨について
2)1)【L2】私が部屋に戻って考えた、二つの相反することは。
  ・自分の心をKに打ち明けるべきはずだ
  ・時機が遅れてしまった
 2)【L3】なぜ、「時機が遅れてしまった」と思ったのか。
  ・Kがお嬢さんを好きだと言ったから、後出しで、私も好きになったと思われるから。
 3)【タラレバ】Kの告白の後に、自分も告白していたらどうなったか。
 4)【L2】「この不自然」(40上17)とは。
  ・いまさら私が告白すること。
 5)【L1】その時の私の気持ちは。
  ・悔恨に揺られてぐらくらしていた。
3)6)【L1】私は、どうなればいいと思ったか。
  ・Kが再び仕切りの襖を開けて向こうから突進して来る。
  ・もう一度Kの方から相談に来る。
 7)【L3】「午前中に失ったもの」(40下06)とは何か。
  ・お嬢さんへの恋の主導権。
 8)【L3】いつまでたっても開かない「襖」の意味は。
   ・私とKの心の壁。
  ★自殺していた夜に開いていた襖。
4)9)【L2】永久に静かなKに対して私はどう思ったか。
  ・普通は、Kが静かであるほど存在を忘れている。
  ・今は、襖の向こうで何を考えているのか気になる。
6)10)【L2】Kを咀嚼した結果、「解しがたい男」と見えたのはどんな点か。
  ・どうして突然私に打ち明けたのか
  ・どうして彼の恋が募ってきたのか
  ・平生の彼はどこに行ったのか
 11)【L1】「平生のK」はどんな性格か。
  ・強い。真面目。
 12)【L2】私のこれから先のKに対する気持ちは。
  ・相手にするのが変に気味が悪い。
 13)【L1】私には今のKがどのようなものに思われたか。
  ・一種の魔物
  ・永久に祟られている。
  ★この予感が、Kの自殺によって確実なものになる。

 
第二段落 私の後悔(140上06〜)
 
1.私の後悔
  
・自分の心をKに打ち明けるべきだタラレバ
    
↓↑
  
・時機が遅れてしまった=不自然
   
・Kが告白した→私も好きになった
    

  
・悔恨の念
    

  
・Kが襖を開けてくれればタラレバ
     
私とKの心の壁
   
・午前に失ったものを取り戻そうとする下心
    
恋の主導権
    
↓↑
  
・永久に静か
   
・Kが気になる。
 
2.Kの姿を咀嚼する
  
・解しがたい男
   
a)どうして突然私に打ち明けたのか。
   
b)どうして彼の恋が募ってきたのか。
   
c)平生のKはどこに言ったのか
    
強い、真面目
    

  
・一種の魔物
   
・永久に祟られた
三 その晩の会話(142下11〜 )

1【指】音読する。
2【指】漢字の読みを確認する。
 支度  寡言
3.その晩の二人のやりとりについて
1)1)【L1】その日の夕食の私とKの様子は。
  ・私は、そっけない挨拶。
      少し気持ちが悪い。
  ・Kは、寡言。
      ただ口をききたくない。
4)5)2)【L1】その晩の二人のやりとりは。
5)3)【L3】なぜ、私ははっとしたのか。
  ・まだ、Kが奥さんやお嬢さんに直接告白していない。

三 その晩の会話(142下11〜 )
 
夕飯
   
私                         │K
  
───────────────────┼───────────────────
   
・そっけない挨拶                 │・寡言
   
・少し気持ちが悪い               │・口がききたくない         
                             
│・唇が少し震えている
                               
・お嬢さんに告白?
 
その晩=襖が細めに開いている
   
私                         │K
  
───────────────────┼────────────────── 
  1)「おい」とKに声をかけた。            │1)「おい」と返事する  

  
2)「まだ寝ないのか」                │2)「もう寝る」
  
3)「何をしているのだ」               │3)答えがない
  
4)「もう何時か」                  │4)「一時二十分だ」
  
5)「おい」と声をかけた               │5)「おい」と答えた
  
6)「今朝のことについて詳しく話をしたい     │6)「そうだなぁ」と低い声で渋る
   
↓                        │                
  
7)はっとする。                    │
  
・まだ、奥さんやお嬢さんに伝えていない      │
   


四 私の確認(145上02〜 )

1【指】音読する。
2【指】漢字の読みを確認する。
 肝心  欺いて
3【指】語句の意味を確認する。
 肝心(最も重要なこと)
 てんでん(めいめい思い通りに行動すること)

4.私の観察について
1)1)【L1】Kが例の問題に触れないことから、私は何を決心したか。
  ・こちらから口を切ろうと決心した。
2)2)【L1】奥さんとお嬢さんの素振りに変わった点がないことから、私は何を確かめたか。
  ・Kの告白が奥さんやお嬢さんに通じていない。
 3)【L1】それを知って、私はどう思ったか。
  ・安心した。
  ・自然の与えてくれるものを待つ。
 4)【L3】「自然の与えてくれるもの」とは。
  ・Kと話し合う機会。
3)5)【L1】そう結論しながらも、奥さんとお嬢さんの言語動作を観察してどう思ったか。
  ・二人の心がそこに現れている通りなのか疑った。
 6)【L3】「人間の胸の中の複雑な器械が盤上の数字を指す」とはどういうことか。
  ・心がそのまま表現されるのか。

5.私の確認について
4)7)【L1】「この前の自白が私だけなのか、奥さんやお嬢さんにも通じているか」という問いに対する答えは。
  ・他の人には打ち明けていない。
 8)【L1】その答えに対する私の気持ちは。
  ・うれしがる。
  ・彼を信じている。
5)9)【L1】「Kの恋をどう取り扱うつもりなのか」という問いに対する答えは。
  ・単なる告白にすぎないのか、実際の効果も収める気なのか。
  ・何も答えない。
  ・何も隠す必要はないと断言する。
 10)【L3】「何も隠す必要がない」とはどういうことか。
  ・隠しているのでなく、結論が出ていない。
4)11)【L2】私の知ろうとする点とは何か。
  ・奥さんとお嬢さんに告白するのか。

第四段落 私の確認(145上02〜 )
1.私の観察
 
1)Kが自分から例の問題について触れない
   
↓    お嬢さんへの恋
  
・私から口火を切る決心をする
 
2)奥さんとお嬢さんの素振りに変わった点がない
   

  
・Kはお嬢さんに告白していない。
   

  
・私は例の問題について手を着けずに置く
   
↓↑
  
・人間の心はありのまま表現されるのか疑う
2.私の質問
 
1)奥さんやお嬢さんにも告白したか?
   

  
・他の人には打ち明けていない。
   

  
・Kを信じる
 
2)単なる自白なのか?実際に進むのか?
   

  
・何も答えない
  
・何も隠す必要はないと断言する。
   
・まだ決めていない


五 Kの相談(147上10〜)

1【指】音読する。
2【指】漢字の読みを確認する。
 一物  談判  漠然  思惑  悄然  渇き  慈雨
3【指】語句の意味を確認する。
 胸に一物(口には出さないが心の中にたくらみを抱くこと)
 談判(物事に決着をつけるために意見を戦わせること)
 口を切る(話し始める)
 悄然(元気がなく、うちしおれているさま。しょんぼり)
 慈雨(恵みの雨)

4.Kの相談について
1)1)【L1】図書館でKが小さな声で呼んだことに対して、私はどう思ったか。
  ・一種変な気持ちがした。
  ・小さな声は図書館のマナーだが、小さな声でしか言えないことを話しかけてきたと   思った。
2)2)【L2】私を散歩に誘うKに対して感じた「胸の一物」とは何か。
  ・お嬢さんへの恋について決着をつけること。
3)3)【L2】Kの方から口を切った「例の事件」とは何か。
  ・Kが私にお嬢さんへの恋を告白したこと
 4)【L2】まだ進んでいない「実際的な方面」とは何か。
  ・お嬢さんに告白すること
 5)【L1】Kが私に言った「どう思う」とはどういう意味の質問か。
  ・恋愛の淵に陥ったKを、どんな目で私が眺めか
  ・現在の自分について、私の批判を求めたい
 6)【L2】今の状態と異なる「Kの平生」はどんな性格か。
  ・他の思惑をはばからない。
  ・こうと信じたら一人でどんどん進んでいく度胸と勇気がある。
  【説】養家事件を確認する。
  ・医者の家に養子に出されたKが、医学の勉強をせずに、自分の勉強したかった哲学科に転科していた。
4)7)【L1】私の「なんで私の批評が必要なのか」に対するKの答えは。
  ・自分の弱い人間であるのが恥ずかしい。
  ・迷っているから自分で自分がわからなくなった。
 8)【L2】Kの言った「弱い」とはどういう状態か。
  ・自分で自分が分からない状態。
  【説】質問を焦点化して追い詰める。詰問。
 9)【L1】Kの言った「迷う」とは何に迷っているのか。
  ・進んでいいのか退いていいのか
 10)【L3】Kが迷う「進む」「退く」とはどうすることか。
  ・進む=お嬢さんへの恋に進む
  ・退く=お嬢さんへの恋をあきらめる
 11)【L2】私の「退こうと思えば退けるのか」に対するKの答えは。
  ・ただ苦しいと言うだけ。
  ・諦められない。
  【説】「進む」でなく「退く」に焦点を当てる私の策略。
 12)【L3】相手がお嬢さんでなかったらできた「都合のよい返事」とはどんな返事か。
  ・迷わずお嬢さんへの恋に進め。
 
第五段落 Kの相談

Kの相談 青はK、黒は私
 
1)図書館で声をかける
 
2)一種変な気持ちになる
 
3)散歩に誘う
 
4)腹に一物があるのではないか
  
お嬢さんへの恋に決着をつける
 
5)例の事件について口火を切る
  
・Kが私にお嬢さんへの恋を告白したこと
 
6)実際的な方面に進んでいない
  
・お嬢さんに告白すること
 
7)どう思う
  現在の自分に私の批判を求めたい
  
・恋愛の淵に陥った
 
8)平生のKと異なる
  
・人の思惑をはばからない
  
・信じた道を一人で進む
 
9)なぜ私の批評が必要なのか
 
10)弱い人間であるのが恥ずかしい
  
・迷っていて自分がわからない
   
・進むか=告白する
   
・退くか=あきらめる
 
11)退こうと思えば退けるのか
 
12)苦しい
  
・諦められない
 
13)Kに都合のよい返事をしない
  
・恋に進め
  
K                          │私
 
────────────────────┼────────────────────
 1)図書館で声をかける                │2)一種変な気持ちになる

 
3)散歩に誘う                     │4)腹に一物があるのではないか
                             
 │ お嬢さんへの恋に決着をつける
 
5)例の事件について口火を切る           │
  
Kが私にお嬢さんへの恋を告白したこと      │
 
6)実際的な方面に進んでいない           │                    
  
お嬢さんに告白すること               │
 
7)どう思う                        │
  
・現在の自分に私の批判を求めたい        │
   
恋愛の淵に陥った                 │
 
8)平生のKと異なる                  │9)なぜ私の批評が必要なのか
   
・人の思惑をはばからない             │
   ・信じた道を一人で進む              │
 10)弱い人間であるのが恥ずかしい           │11)退こうと思えば退けるのか
   ・迷っていて自分がわからない            │  ・進む=告白する
                               │   ・退く=あきらめる
 12)苦しい                        │13)Kに都合のよい返事をしない

  
・諦められない                     │  ・恋に進め
  


六 私の逆襲(149上15〜 )

1【指】音読する。
2【指】漢字の読みを確認する。
 要塞  彷徨  厳粛  策略  滑稽  羞恥  復讐  塞ぐ  宗旨  男女  精進  妨げ  侮蔑 
3【指】語句の意味を確認する。
 彷徨(目的もなくあちこち歩き回る)
 虚をつく(すきを襲う)
 精進(一つのことに精神を集中して励むこと。一生懸命に努力すること)
4.私の逆襲について
1)1)【L2】「他流試合でもする人」とは私はKをどんな相手だと思っていたか。
  ・友だちではなく、倒すべき敵
 2)【L2】「彼の保管している要塞の地図」とは何か。
  ・Kの心。
2)3)【L3】Kが彷徨してふらふらしている「理想と現実」とは何と何か。
  ・理想=恋をあきらめ、道を追求する。
  ・現実=道を捨て、恋をしている。
  ・道とは、後で出てくる精神的な向上心、精進、第一信条。
 4)【L2】私はKを一打ちで倒すためにどうしたか。
  ・虚につけ込んだ。
  ・厳粛な改まった態度をとった。
   ・真剣にKのことを心配していると思わせる策略のため。
   ・これから言う自分の言葉に重みを持たせる策略のため。
 5)【L1】私がKを一打ちで倒すために言った言葉は何か。
  ・精神的に向上心のない者はばかだ
  【説】この言葉は、以前、二人で房州を旅行しているとき、Kがお嬢さんを思っていた私に言った言葉である。
   ・Kは私がお嬢さんを好きなことを知らずに、一般論として言った。
 6)【L3】「精神的に向上心のない者」とはどんな者か。
  ・道を追求せず、恋愛をしている者
 7)【L1】その言葉に含まれている「復讐以上に残酷な意味」とは何か。
  ・Kの前に横たわる恋の行く手をふさごうとした。
  ・Kにお嬢さんを諦めさせる。

3) 【説】生家の宗旨は真宗なので、念仏を唱えれば救われる他力本願。
     Kの宗旨は、禅宗に近く、自力本願で修行して達成するもの。
3)8)【L2】Kの好きな「精進」の意味やKの第一信条は何か。
  ・道のためには全てを犠牲にすべき。
  ・欲を離れた恋も道の妨げになる。
 9)【L2】以前Kが私にその言葉を言った時の気持ちは。
  ・同情より侮蔑の方が強かった。
  ・道を究めず、恋などしている馬鹿な奴だ。
4)10)【L1】私がこの言葉を言った本当の理由は。
  ・私の利害と衝突するのを恐れたから。
  ・Kに恋を諦めさせ、自分の道を進んでもらいたい。
 11)【L1】その時の私の「心」を3文字で。
  ・利己心。
5)〜8)【説】私はこの言葉を二度繰り返す。
5)〜8)12)【L1】この言葉に対するKの答えと様子は。
  ・「僕はばかだ」
  ・力に乏しい
 13)【L2】私はKの答えに対してどう思ったか。
  ・居直り強盗のように感じた。
  ・開き直って、道を捨てて、お嬢さんに告白する
第六段落 私の逆襲
私の逆襲 
  K                           │私

─────────────────────┼────────────────────
                              
│1)他流試合でもするようにKを見る。
                              
│ ×友○敵
 
2)理想と現実の間を彷徨している          │3)一打でKを倒す
  
・理想=道を追究する               │ 虚につけ込む
  
・現実=恋をしている                │ 厳粛な改まった態度
 
4)「精神的に向上心のない者はばかだ」       │4)「精神的に向上心のない者はばかだ」
   
恋をしている者                   │ ・復讐以上に残酷な意味
   
・同情より侮蔑                   │ ・Kの恋の行く手をふさぐ
  
精進=第一信条                  │ ・利害の衝突を恐れる=利己心
  
・道のためにはすべてを犠牲にすべきだ       │
         
欲を離れた恋              │
 
5)「僕はばかだ」                    │6)居直り強盗のように感じる
  
・力に乏しい                     │ 開き直って恋に進む
 


七 Kの反応(151下02〜 )

1【指】音読する。
2【指】漢字の読みを確認する。
 刹那  卑怯  赤面  萎縮
3【指】語句の意味を確認する。
 刹那(きわめて短い時間。瞬間。)
 卒然(事が急に起こるさま。だしぬけ。突然。)

4.Kの反応について
1)1)【L2】「待ち受け」と「待ち伏せ」の違いは。
  ・待ち受けは、単に待っているだけ。
  ・待ち伏せは、不意をついて攻撃する込めに隠れて待っていること。
 2)【L1】私のKに対する気持ちは。
  ・だまし討ちにしても構わないほど、お嬢さんを諦めさせようとしていた。
 3)【L1】私がつけこんだ「そこ」とはKのどんな性格か。
  ・正直で単純で善良な性格。
2)4)【L1】私とKをどんな動物に例えているか。
  ・私=狼。狡賢い。
  ・K=羊。弱い、優しい。
3)5)【L2】Kが言った「その話をやめよう」の「その話」とは何か。
  ・お嬢さんの話
  ・変に悲痛なところがあった。
4)6)【L2】私が言った「それをやめるだけの覚悟」の「それ」とは何か。
  ・お嬢さんへの恋
  【注】巧妙なすり替えが行われている。
5)7)【L1】Kが萎縮して小さくなったのはなぜか。
  ・自分の矛盾を非難される場合に平気でいられないから。
 8)【L1】Kは突然何と言ったのか。その時の様子は。
  ・「覚悟ならないこともない」
   ・「覚悟」はある。
   ・「やめる」ではなく、「覚悟」に反応した。
  ・独り言のよう
  ・夢の中の言葉のよう
 9)【L4】Kの「覚悟」とはどうする覚悟か。
  a)恋をあきらめて道に進む。
  b)道をあきらめて恋に進む。
  c)道も恋もあきらめて自殺する。
6)10)【L2】Kの心理が風景として描写されている部分は。
  ・霜に打たれて青みを失った杉の木立の茶褐色が、薄黒い空の中に、梢を並べてそびえている
 
第七段落 Kの反応
Kの反応   
 
K                            │私
─────────────────────┼────────────────────
 
・罪のない羊                      │・狼のごとき心
  
・正直、単純、善良                 │ ・卑怯、残忍
 
1)もうその話はやめよう                │2)それをやめるだけの覚悟はあるのか
    
お嬢さんの話                   │ お嬢さんへの恋
 
3)覚悟ならないこともない               │
  
・独り言                       │
  
・夢の中の言葉                   │
  
a)恋をあきらめ、道に進む。            │
  
b)道を捨て、恋に進む。              │
  
c)道も恋も捨て、自殺する。            │  
 


八 覚悟の意味1(154上07〜)

1【指】音読する。
2【指】漢字の読みを確認する。
 覚醒  尊い  熾烈  強情  熟睡
3【指】語句の意味を確認する。
 覚醒(目を覚ますこと。
 一意(一つの物事に心を集中すること。
 熾烈(勢いが盛んで激しいこと。
4.「覚悟」の解釈1)について
1)1)【L2】「古い自分をさらりと投げ出して、新しい方角に走り出さなかった」とはどういうことか。
  ・道を捨てて恋に進まなかった。
 2)【L2】「新しい方角に走り出さなかった」理由を2つ。
  ・投げ出すことのできないほど尊い過去があったから。
  ・現代人の持たない強情と我慢があったから。
 3)【L3】「尊い過去」とは何か。
  ・養家の意志に背いて道を追求したために勘当された。
  【説】「現代人」とは明治四十五年頃である。明治末期の人も昔の人に比べれば、強情や我慢がなかった。
2)4)【L1】上野から帰った晩、私はKにどんな思いを持っていたか。
  ・恐るるに足りないという自覚。
 5)【L3】この時点で、私はKの「覚悟」をどう解釈していたか。
  ・恋をあきらめて、道に進む

2.襖事件について
3)6)【L2】襖が二尺ばかり開くが、この前開いたのはいつだったか。
  ・Kの告白の夜。
  ・自殺した夜の「この間の晩」とはこの晩のことである。
4)7)【L4】Kが「もう寝たのか」と聞いた理由は。
  ・お嬢さんのことについて悩んでいて眠れないと思っていたのに意外だった。
  ・私がお嬢さんを好きなことに気づいている。
 8)【L4】Kの声がふだんより落ち着いていた理由は。
  ・お嬢さんのことは諦めて、私のことを心配している。
  ・でも、悩ましたことを謝れない。
5)9)【L4】翌朝、Kが「近頃は熟睡できるのか」と問うた理由は。
  ・Kが告白してから、私が悩んで眠れないのではないかと思っている。
6)10)【L4】Kがお嬢さんの話ではないと強い調子で言い切った理由は。
  ・お嬢さんのことを諦められない未練深い人間ではないというプライド。
 11)【L2】このとき、「覚悟」が私の頭を抑え始めた理由は。
  ・お嬢さんを諦める覚悟だと確信していたが、そうではないかもしれないと思ったから。

第八段落 覚悟の意味(1)
  
襖事件
  
K                │私
 
───────────────────┼─────────────────── 覚悟の解釈(1)          │
 
・新しい方角に走り出さない     │
  
恋                │
  
・投げ出すことのできない尊い過去 │
  
・現代人の持たない強情と我慢   │
  
↓                │
 
・恋を諦め道に進む         │・恐るるに足りない
 
襖事件               │
  
1)「もう寝たのか」        │
   
・普段より落ち着いた声     │                   
  
2)「近ごろは熟睡できるのか」   │3)変に感じる。
  
5)「そうではない」        │4)「あの事件について話すつもりか」
   
・強い調子で言い切る      │6)「覚悟」という言葉を連想する。
                    


九 覚悟の意味2(156上12〜)

1【指】音読する。
2【指】漢字の読みを確認する。
 果断  煩悶  懊悩  仮病  催促  屈託 
3【指】語句の意味を確認する。
 果断(決断力のあること。
 煩悶(悩み苦しむこと。
 懊悩(なやみもだえること。
 屈託(一つのが気にかかって他のことが手につかないこと。
4.「覚悟」の解釈2)について
1)1)【L1】「一般を心得た上で、例外の場合をしっかり攫まえたつもり」とあるが、「一般」 「例外」とはどんな性格か。
  ・一般=果断に富んだ性格。強いK
  ・例外=この事件についてのみ優柔。弱いK
 2)【L2】「この場合も例外ではない」とはどういうことか。
  ・お嬢さんへの恋についても果断な性格が発揮される。
 3)【L1】すべての疑惑、煩悶、懊悩を一度に解決する最後の手段とは何か。
  ・奥さんにお嬢さんをくれと談判する。
 4)【L1】この時点で、私はKの「覚悟」をどんな意味に解釈したか。
  ・Kがお嬢さんに対して進んで行くという意味
  ・果断にとんだ性格が恋に発揮される。
 5)【L4】第五段落の上野公園の場面からの二人のやりとりをロールプレイして、Kの
  「覚悟」の意味を考えなさい。


ロール・プレイ  こころ
《 上野公園で》
K ( ただ漠然と)「 どう思う」
私 「 どう思うって」
K 「 恋のふちに陥っている僕を、君はどんな眼で眺めているのか」
私 「 この際、なんで私の批評が必要なのか」
K ( しょんぼりした口調で)「 自分の弱い人間であるのが実際恥ずかしい。迷っているから自分で自分が分からなくなってしまったので、公平な批評を求めるよりほかしかたがない」
私 ( すかさず)「 迷うとはどういう意味か」
K 「 進んでいいのか、退いていいのか、それに迷うのだ」
私 ( すぐに一歩先に出て)「 退こうと思えば退けるのか」
K ( 不意に行き詰まり、苦しそうな表情で)「 苦しい」
私 ( Kを一打で倒そうと、虚につけ込んで、厳粛な改まった態度で)「 精神的に向  上心のない者はばかだ」
  
( 少し間をおいてもう一度)「 精神的に向上心のない者は、ばかだ」
K ( 力の乏しい声で)「 ばかだ。僕はばかだ」
私 ( Kの口を出る次の言葉を腹の中で暗に待ち受ける)
K ( 悲痛な感じで)「 もうその話はやめよう」
  
( 頼むように)「 やめてくれ」
私 ( 狼がすきをみて羊ののど笛に食らいつくように)「 やめてくれって、ぼくが言い出したことじゃない、もともと君のほうから持ち出した話じゃないか。しかし君がやめたければ、やめてもいいが、ただ口の先でやめたってしかたがあるまい。君の心でそれをやめるだけの覚悟がなければ。いったい君は君の平生の主張をどうするつもりなのか」
K ( 萎縮して小さくなる。突然、独り言のように、夢の中の言葉のように)「 覚悟?覚悟、──覚悟ならないこともない」
《 その夜》
K ( 襖を開けて)「 おい」
私 ( 目を覚ます)
K ( 黒い影が立っている)「 もう寝たのか」
私 「 何か用か」
K ( 普段よりかえって落ち着いた声で)「 たいした用でもない。ただもう寝たのか、まだ起きているのかと思って、便所に行ったついでに聞いてみただけだ」
《 翌朝》
私 ( 不思議に思って)「 昨日の夜、襖を開けて、私の名を呼んだか」
K 「 確かに、襖を開けて、名前を呼んだ」
私 「 なぜ、そんなことをしたのか」
K ( それには答えず、調子の抜けた頃に)「 近ごろは、熟睡できるのか」
《 通学路》
私 ( 念を押すように)「 あの事件について何か話すつもりではなかったのか」
K ( 強い調子で)「 そうではない。昨日上野公園で、その話はもうやめようと言っ  たではないか」 


5.私の最後の決断
2)6)【L2】私が心の耳で聞いた「最後の決断」とは。
  ・奥さんにお嬢さんとの結婚を談判する
 7)【L1】その決断を実行する条件は。
  ・Kより先に
  ・Kの知らない間に
  【説】恋の告白では先を越されたので今回は先にする。
3)8)【L1】奥さんに談判する日を作るためにどうしたか。
  ・仮病を使った。
4)9)【L2】「Kが近ごろ何か言いはしなかったか」(二六三上12)の「何か」とは。
  ・お嬢さんとの結婚の申し込み

第九段落
覚悟の解釈(2)
 
・果断=一般──→道
 
・優柔=例外──→恋
  

 
・最後の手段=お嬢さんに求婚する
最後の決断
 
・奥さんにお嬢さんとの結婚を談判すること
  
・Kより先に
  
・Kの知らない間に
  

 
・仮病


十 私の決断(158上15〜)

1【指】音読する。
2【指】漢字の読みを確認する。
 快からず  頓着  是非  問答  憐れ  拘泥  
3【指】語句の意味を確認する。
 頓着(こだわること。
 是非(どうしても
 拘泥(こだわること。
4.私の談判について
1)1)【L1】「Kか聞かされた打ち明け話」とは何か。
  ・お嬢さんへの恋
 2)【L2】「自分のうそ」とは何か。
  ・Kが私に告白したのに、何も言っていないと答えたこと。
 3)【L3】私の突然の告白に対して、「奥さんは私の予期してかかったほど驚いた様子も見せませんでした」理由は。
・奥さんは私が談判に来ることを予期していた。
2)4)【L1】「差し上げましょう」と「もらってください」の違いは。
  ・「差し上げる」は対等または優位な人があたえる。
  ・「もらってください」は下位の者があたえる。
  ・お嬢さんは、父親のない憐れな子というハンデを背負っている。
  ・私も、両親がいない。
  【説】「差し上げるなんて威張った口の聞ける境遇ではない」と言っているように、
    当時は男性中心社会で、母子家庭は不利な条件であった。
3)5)【L3】「何の条件も持ち出さなかった」はあるが、どんな条件を出されると思っていたか。
  ・私の財産を妻に分けてほしい。
  【説】かつて、叔父が財産目当てに、自分の娘と結婚させようとした。
     金目当てでなく、純粋に私を愛してくれていた。
 6)【L3】奥さんが「本人の意向さえ確かめるに及ばない」と言った理由は。
  ・奥さんはお嬢さんが私を愛していることを確認していたから。
  【説】「本人が不承知なところへやるはずがない」と言っている。
  ・ということは、私が求婚することを予想していた。待っていた。
 7)【L4】今までのKに対するお嬢さんの態度は何だったのか。
  a)私がお嬢さんにKを世話してくれと言ったことを忠実に守っていた。
  b)私とKと二人に好意を持っていた。
  c)私に嫉妬させて、求婚を急がせる策略であった。
4)8)【L4】「私の未来の運命」とは何か。
  ・お嬢さんと結婚すること。
  ・Kが自殺して、私が苦しみ、私も自殺すること。

第十段落
 
奥さん                        │私
 
────────────────────┼──────────────────── 
  1)Kが何か言わなかったか」と聞く         │2)「いいえ」と嘘をつく。

     
お嬢さんとの結婚              │
  
3)「そうですか」と言って後を待つ。        │4)お嬢さんをください」と突然言う。
                            

  
5)予期していたほど驚かない          │
  
6)「差し上げましょう」              │
    
↓・父親のない憐れな子          │
   
「もらってください」               │
  
7)何の条件も出さない              │
     
私の財産                  │
  
8)「本人の意向さえ確かめる必要はない」   │9)未来の運命が定められた
    
・お嬢さんが私を好きであることを確     │ a)お嬢さんとの結婚。
     
かめていた                 │ b)Kの自殺?
                            
│ c)私の自殺?
                     
  


十一 私の良心( 161上01〜 )

1【指】音読する。
2【指】漢字の読みを確認する。
 界隈  回顧  書見  催促  追及  機嫌
3【指】語句の意味を確認する。
 界隈(そのあたり。近所。
 書見(書物を読むこと
 追及(どこまでも問い詰めること
4.散歩中の私の気持ち
1)1)【L1】私が散歩の間、考えていたことは何か。
  ・さっきの奥さんの記憶。談判の時の様子。
  ・お嬢さんがうちへ帰ってからの想像。
2)2)【L1】逆に、私が考えなかったことは何か。
  ・Kのこと。
  ・Kを裏切ってしまった。
 3)【L1】それは私に何が欠けているからか。
  ・良心
5.良心の復活について
3)4)【L2】私の良心が復活した理由は。
  ・Kの部屋を通る時、Kが私の仮病を信じて心配してくれたから。
 5)【L3】良心が復活したのに、謝らなかった理由は。
  ・奥にはお嬢さんと奥さんがいて、私の裏切りがばれるから。
 6)【L2】「良心」を言い換えている語は。
  ・自然
 7)【L3】良心が「永久に復活しなかった」とはどういうことか。
  ・謝る前にKが自殺して、機会を失ったから。
6.夕飯の様子について
4)8)【L2】夕飯の時の、K・奥さん・私・お嬢さんの様子は。
  ・K=何も知らず、ただ沈んでいただけ。
  ・奥=何も知らず、いつもよりうれしそう。
  ・私=すべてを知っていて、鉛のような飯を食う。
  ・嬢=みんなと同じ食卓に並ばない。
 9)【L2】「何も知らないK」とは何を知らないのか。
  ・Kを出し抜いて結婚の話を進めたこと
 10)【L2】「何も知らない奥さん」とは何を知らないのか。
  ・先にKが私にお嬢さんへの恋を告白したこと。
 11)【L2】「私だけがすべてを知っていた」とは何を知っていたのか。
  ・Kを出し抜いて結婚話を進めたこと
  ・先にKが私にお嬢さんへの愛を告白したこと。
 12)【L2】「お嬢さんはいつものようにみんなと同じ食卓に並びませんでした」理由は。
  ・婚約が決まった私と同席するのが恥ずかしかった。
5)13)【L2】「私の恐れを抱いている点」とは何か。
  ・奥さんが私とKのいる前で、結婚話が成立した経緯を話すこと。
 14)【L1】私の気持ちは。
  ・自分で自分をKに説明するのが嫌になる卑怯な気持ち。
 
第十一段落
1.散歩中の私の気持ち
 
○さっきの奥さんの記憶
 
○お嬢さんがうちへ帰ってからの想像
 
×Kのこと
   

  
・良心の欠如
2.良心の復活=自然
  
・Kは私の仮病を信じ、心配してくれた
   

  
・Kに謝りたくなった
   
↓↑奥には人がいる→奥さんとお嬢さんに知られる
  
・謝らなかった
  
↓   
  
・永久に復活しなかった
   
Kの自殺
3.夕飯の様子
  
・K=何も知らず、沈んでいる。
     
私とお嬢さんの結婚
  
・奥=何も知らず、いつもよりうれしそう
     
私の裏切り
  
・嬢=同じ食卓に並ばない
     
恥ずかしい
  
・私=すべてを知り、鉛のような飯を食う
     
裏切りがばれるのを恐れている。
     
自分で説明するのが嫌=卑怯


十二 私の策略( 163上12〜 )

1【指】音読する。
2【指】漢字の読みを確認する。
 挙止動作  面目  詰問  一分一厘  狡猾  窮境
3【指】語句の意味を確認する。
 挙止動作(立ち居振る舞い。
 詰問(問い詰めること。
 狡猾(ずる狡賢いこと。
 なじる(問い詰める
4.私の不安について
1)1)【L2】「Kに対する絶えざる不安」とは何か。
  ・私の裏切りがKにばれること。
 2)【L1】不安を解消するために、私はどうしなければならないと考えていたか。
  ・私とこの家族との間に成り立った新しい関係を、Kに知らなければならない。
 3)【L1】「新しい関係」とは何か。
  ・私とお嬢さんの婚約。
  【注】二人の結婚によって、Kの居場所がなくなる。
 4)【L3】「論理的な弱点」とは何か。
  ・Kが先にお嬢さんへの恋を告白したのに、Kを出し抜いて結婚の話を進めたこと。
5.私の解決策について
2)5)【L3】一つ目の解決策とその欠点は。
  ・奥さんに頼んでKに改めてそう言ってもらおう。
  ・Kが私の裏切りを訴える。
 6)【L3】二つ目の解決策とその欠点は。
  ・こしらえ事を話してもらう。
  ・たとえば、私から談判したのでなく奥さんから依頼があった。
  ・なぜ嘘をつく必要があるか問われて、Kを裏切ったことを話さねばならない。
 7)【L3】三つ目の解決策とその欠点は。
  ・奥さんにすべてを打ち明けて頼む。
  ・好んで自分の弱点をさらけ出さなければならない。
 8)【L2】これらの方法の欠点に共通するものは何か。
  ・結婚する前から恋人の信用を失うこと。
6.私の葛藤について
3)9)【L1】私は自分のことをどんな人間だと思っているか。
  ・正直な道を歩くつもりで、つい足を滑らしたばか者
  ・狡猾な男
 10)【L3】「正直な道」「足を滑らした」とはどういうことか。
  ・正直=自分の心に正直に、嬢さんへの恋に進んだ。
  ・足を滑らす=親友のKを裏切った。
 11)【L1】それを知っているものは何か。
  ・天と私の心
  【説】漱石に座右の銘が「則天去私」である。
 12)【L3】「もう一歩前に出そうとする」とはどうすることか。
  ・お嬢さんと結婚すること。
7.最後の打撃について
4)13)【L3】「あのことを話したか」の「あのこと」とは何か。
  ・私とお嬢さんが婚約したこと。
6)16)【L2】「Kがそのとき何か言いはしなかったか」の私が予想した「何か」とは何か。
  ・私に裏切られたこと。
7)17)【L3】私が予想するKにとっての「最後の打撃」とは何か。
  ・お嬢さんを私に横取りされたこと。
 18)【L4】「最も落ち着いた驚き」とは、何に驚いたのか。なぜ落ち着いていたのか。
  ・私が仮病まで使って求婚したこと。
   Kが諦めていたことを私が理解していなかったこと。
、 ・私もお嬢さんを好きなことに気づいていたから。
   お嬢さんを諦めていたから。
   自殺を覚悟していたから。
   仮病を使って談判するまで私を追い詰めていたことを知ったから。
  【注】ここで答えは出ないので、保留しておく。
 19)【L4】「結婚はいつですか」と聞いた理由は。
  ・自分がこの家にいられなくなる日を知りたかったから。
  ・自分の自殺の時期を考えていたから。
  【注】社交辞令で聞くようなKではない。
 
第十二段落
1.私の不安
 
・私と家族との新しい関係をKに知らせなければならない
  
↓↑    私とお嬢さんの結婚
 
・倫理的な弱点
  
・Kが先に私に告白をした
   
私が先に奥さんに談判した
2.私の解決策
 
a)奥さんから言ってもらう
  
×ありのままを告げられれば裏切りがばれる
 
b)こしらえごとを話してもらう
  
×奥さんから理由を詰問される
 
c)奥さんにすべてを打ち明けて頼む
  
×自分から自分の弱点をさらけ出す
  

 
・結婚する前から恋人の信用を失いたくない
3.私の葛藤
 
・正直な道を歩くつもりで、つい足を滑らしたばか者=狡猾な男
  
恋に進んだ         Kを裏切った
  

 
・天と私の心
  

 
・前に踏み出す
   
お嬢さんと結婚する
4.最後の打撃
 
・Kが私とお嬢さんの婚約を知る
  

 
・最も落ち着いた 驚き
 
・「結婚はいつですか」
 


十三 Kの自殺(165上16)

2【指】漢字の読みを確認する。
 敬服  窮境  因縁  疾風  世間体  血潮
3【指】語句の意味を確認する。
4.私の敗北感
1)1)【L1】「彼の超然とした態度」とはどんな態度か。
  ・私に対して少しも以前と異なった様子を見せない。
  ・本来なら私の裏切りを責める。
  ・失恋に落胆する。
 2)【L1】「彼の超然とした態度」を見て私はどう思ったか。
  ・おれは策略で勝っても人間としては負けた
 3)【L3】「策略」とは何か。
  ・「精神的に向上心がないものはばかだ」と言ってお嬢さんをあきらめさせようとした。
  ・仮病を使って、奥さんに談判したこと。
 4)【L1】その時に苦痛を感じた私の心は。
  ・自尊心。

5.自殺の夜の様子
2)5)【L2】「進もうかよそうか」とはどうすることか。
  ・Kに謝るか謝らないか。
 6)【L1】「この間の晩」とはいつか。
  ・上野公園から返った晩。

6.私の反応
4)7)【L1】Kの自殺を発見した時、「私が受けた第一の感じ」は何か。
  ・目は動く能力を失った。棒のように立ちすくんだ。(=一つの塊になった)
  ・ああしまった。取り返しがつかない(=人間らしい気分を取り戻した。)
  【説】Kから告白された時と同じ。第一段落。
 8)【L4】「取り返しのつかない」とはどうなることか。
  ・謝る機会を失ってしまった
  ・私の責任でKを自殺に追い込んでしまった。
  ・お嬢さんと結婚できない。
  【注】Kに済まないと言う気持ちではない。

7.Kの遺書
5)9)【L2】「私の予期したようなこと」とは何か。
  ・私の裏切りに対する恨み。
  ・私に裏切られたので自殺する。
 10)【L2】「助かった」とはどういうことか。
  ・奥さんとお嬢さんに、私の責任でKが自殺したことがばれないこと。
6)11)【L2】遺書の内容のポイントは。
  ・薄志弱行で行く先の望みがないから自殺する
  ・お嬢さんの名前がない
  ・もっと早く死ぬべきだった
 12)【L3】「薄志弱行」とは、何に対する意志の弱さか。
  ・道を貫けなかったこと。
  ・お嬢さんの恋を貫けなかったこと。
 13)【L3】「お嬢さんの名前だけはどこにも見えません」理由は。
  ・Kの自殺とお嬢さんは無関係である。
  ・お嬢さんに迷惑をかけたくなかった。
  ・お嬢さんのことは諦めていた。
8.私の処置について
7)14)【L2】「私はわざとそれをみんなの目につくように、元のとおり机の上に置きました」
   理由は。
  ・私がKの自殺と無関係であることを証明してくれるから。
 15)【L3】「そうして振り返って、襖にほとばしっている血潮を初めて見た」から何がわかる  か。
  ・Kの自殺よりも、自分の立場を優先した。
 
第十三段落

1.私の敗北感
 ・Kの超然とした態度
  ↓
 
・おれは策略で勝っても人間としては負けた
     
「精神的に向上心がないものはばかだ
     
仮病を使って談判した
   ↓
 
・自尊心が痛む

2.その夜の様子
 
・進もうかよそうか迷う
  
Kに謝る
 
・襖がこの間の晩と同じくらい開いている
    
上野から帰った晩

2.私の反応
 
1)目は動く能力を失い棒立ちになる
 
3)しまった、取り返しがつかない
  
×Kが自殺した
  
○私がKを殺した

3.Kの遺書=簡潔、抽象的
 
1)予期したことは書かれていない
  
私に裏切られたこと
 
2)薄志弱行で行く先の望みがないから自殺する
 
3)お嬢さんの名前がない
 
4)もっと早く死ぬべきだった←墨の残り

4.私の対応
 
・わざと目につくように置く
 
・はじめて襖の血潮を見る