こころ 13


教材観
 
〇.あらすじ
 私とKの生い立ちはにている部分が多い。私は叔父に裏切られ人間不信に陥るが、奥さんとお嬢さんに接するうちに回復する。Kは信念を貫いて家から絶縁され神経衰弱になっているところを、私の下宿でお嬢さんと接するうちに回復していく。しかし、私の心の中には一方的にお嬢さんをめぐってKとライバル関係が発生し、嫉妬をするようになる。
 
一.私の嫉妬
 まずは火鉢事件。Kの部屋の火鉢には火が入っていた形跡があるが、私の部屋の火鉢には火がなかった。次に帰宅時間。ということはKが部屋にいたことになり、今日はKは私より遅く帰る日なのにおかしい。最後は泥道事件。落ち着かない私が散歩に出ると、泥道でKとその後ろにいるお嬢さんに出会う。私は水たまりに足を踏み込んで道を譲った。帰って、Kに事情を聞くと偶然出会ったと言う。お嬢さんに同じ質問をすると、嫌な笑い方をして当ててみろと言う。無邪気なのか、ワザとしているのか。お嬢さんのそんな嫌いなところはKが来てから目につきだした。それは、単なる私の嫉妬なのか、お嬢さんの技巧なのか。嫉妬ならば、それはお嬢さんへの愛の反面である。
 私は奥さんにお嬢さんとの結婚を談判しようと思いながら断行の日を延ばしていった。その理由は、Kが来る前は人の手に乗るのが嫌だ、つまり奥さんが私の財産を狙っているかもしれないという疑念から、Kが来た後はお嬢さんはKが好きなのではないかという疑念である。私は相思相愛でなければ結婚の意味がないと考えていた。その意味で、高尚な愛の理論家であり、迂遠な愛の実際家であった。また、直接お嬢さんに打ち明けなかったのは、日本の習慣として許されないし、お嬢さんも断りにくいだろうと思ったからである。
 年明けにはカルタ事件もあった。カルタのとれないKをお嬢さんが目立つように加勢したのである。私の嫉妬はますます強くなる。しかし、Kは得意そうな様子を見せなかったのは幸いであった。
 
二.Kの告白
 その二、三日後、Kは不意に「ふすま」を開け、何を考えていたかと問う。私は、当然お嬢さんと奥さんのことを考え、Kを邪魔者のように思っていたが、そう答えるわけには行かなかった。すると、Kの方から部屋に入ってきて、いつもに似合わない話、お嬢さんの話を始める。Kの変化に不思議の私は感に打たれた。重い言葉が出る前兆で、Kの口元が震えている。そして、お嬢さんに対する切ない恋が打ち明けられた。私は恐ろしさと苦しさの塊になって、精神の働きが停止した。一瞬の後に、人間らしい気分を取り戻し、しまった、先を越されたと後悔した。その苦しさは私の顔の上にはっきりと出ていたにもかかわらず、Kも自分のことに一切を集中していたので私の表情を気にする余裕がなかった。Kの告白は重くてのろい代わりに、容易なことでは動かせない。私は、利害ではなく、Kは私より強いのだという恐怖の念から何も言えなかった。
 
三.私の後悔
 めいめいの部屋に引き取った時、私の心もKに打ち明けるべきだと思った。しかし、時機が遅れてしまったという気も起こった。今さら言えば、Kがお嬢さんを好きだといったから私もお嬢さんを好きになったことになって不自然である。私の頭は悔恨に揺られてぐらぐらした。
 Kが再び襖を開けて無効から突進してくれれば、私も自然に告白できる。午前に失ったものを今なら取り戻せるという下心はあった。しかし、しかし、Kは永久に静かだった。私はたまらなくなって、Kを姿を咀嚼しながら正月の町をむやみに歩き回った。第一に、Kが解しがたい男のように見えた。どうして突然私に打ち明けたのか、どうして恋が募ったのか、強いまじめな平生のKはどこに吹き飛ばされたのか。Kについて質問しなければならないことを多く持っていたが、Kを相手にするのが気味悪かった。Kが一種の魔物のように思えて、永久に祟られているのではないかとという気にさえなった。
 
四.私の逆襲
 ある日、図書館でKの方から散歩に誘ってきた。私はKの胸に一物があって談判に来られたような気がした。
 まず、Kの方から例の事件、お嬢さんへの恋について口を切った。まだ、実際的な方面、お嬢さんや奥さんへの告白までは進んでいないようである。
 次に、Kは「どう思う」と、恋愛の淵に陥った自分を私がどんな目で眺めているのか、現在の自分について私の批判を求めてきた。そこに、Kは平生と異なる点を確かに認めることができた。Kの平生は、他の思惑をはばかるほど弱くなく、こうと信じたら一人でどんどん進んでいく度胸も勇気もあった。
 次に、私が私の批評が必要な理由を尋ねると、Kは「自分が迷っていて自分で自分が分からない弱い人間であるので、私の公平や批評が必要なのだ」と言った。「迷う」とはお嬢さんに進んでいいかである。しかし、私が退こうと思えば退けるのかと聞くと、Kは退くことは苦しいと答える。もし、お嬢さんのことでなければ、私はKにとって都合がよい、お嬢さんに告白しろいう慈雨のような言葉を与えたはずだった。それぐらいの美しい同情は持っていたつもりである。
 私は他流試合をしているように敵であるKを注視した。Kの保管している要塞の地図、心の中は手にとるように見えた。Kは自分の道を貫くという理想と、お嬢さんに恋をしているという現実の間を彷徨していた。私は、一打ちで倒す方法だけを考え、Kの虚につけ込んだ。
 まず、策略から急に厳粛な改まった態度で、「精神的に向上心のないものはばかだ」と言い放った。この言葉は、房州旅行の際に、お嬢さんへの恋に悩む私にKが言った言葉で、その言葉には同情より侮蔑が込められていた。私は、その言葉に復讐以上の残酷な意味を持っていた。その一言で、Kの恋の行く手をふさごうとしたのである。Kは精進という言葉が好きであった。道のためには全てを犠牲にすべきであるというのが彼の第一信条で、欲を離れた恋そのものも道の妨げになると考えていた。だから、この言葉はKにとって痛いに違いない。それはKのせっかく積み上げた過去を今までどおり積み重ねさせてゆかせるというより、私の利害と衝突することを恐れた単なる利己心の発現であった。Kは「僕はばかだ」と答えた。それは居直ったにしては力に乏しいものであった。
 Kはあまりに正直で、あまりに単純で、あまりに善良だった。そんな羊のようなKに、私は狼のごとき心を向けた。Kは「その話はやめよう」と悲痛に言った。私は「それやめるだけの覚悟があるのか」と残酷な答えを与えた。「それ」とは「お嬢さんの話」ではなく、「お嬢さんへの恋」にすり替えたのである。Kの姿が萎縮して小さく見えた。するとKは「覚悟ならないこともない」と独り言のように夢の中の言葉のように言った。Kの姿は霜に打たれて青みを失った木立の茶褐色が、薄黒い空の中に、梢を並べてそびえているようであった。その頃になって、ようやく私は体の温かみを感じるように、狼から人間に戻ってきた。
 
五.Kの覚悟
 上野から帰った晩、私は「覚悟」の意味を考えた。Kには投げ出すことのできない尊い過去があった。養家からも実家からも勘当されてまで哲学を学んだ過去である。また、Kには現代人(明治の後期)の持たない強情と我慢もあった。その双方からKが古い自分を投げ出して新しい方角へ走り出さない、Kはお嬢さんを諦めると、私は確信していた。夕食後、私はわざわざKの部屋に行き、勝利者のように世間話をした。この時初めて、Kを恐れるに足りないと自覚した。
 その夜遅くに、「ふすま」が二尺程開いて、Kが黒い影のように立っていた。Kは「もう寝たのか」「まだ起きているのかと思って便所に行ったついでに聞いてみただけだ」と普段より落ち着いた声で言って、ふすまをぴたりと立てきった。朝食の時にKに確かめると、確かに襖を開けて名前を呼んだと言う。そして理由を尋ねると調子の抜けた頃に「近頃は熟睡できるのか」と向こうから聞いてきた。学校へ行く道で「あの事件について何か話すつもりではなかったのかと念を押すと、Kは「その話はもうやめよう」と強い口調で言った。
 その時「覚悟」の2文字が再び私の頭を抑え始めた。Kの性格は一般に果断に富んでおり、この事件においてだけ例外的に優柔になったのだと私は解釈していた。しかし、すべての疑惑、煩悶、懊悩を一度に解決する最後の手段を胸に畳み込んでいるのではないか、果断に富んだ性格をお嬢さんへの恋にも発揮するというのが「覚悟」の意味ではないかと考え直した。
 
六.私の決断
 私は最後の決断、奥さんにお嬢さんをくれと談判することが必要だと考えた。Kより先に、Kもお嬢さんもいない時に事を運ばなければならない。一週間後、仮病を使ってその機会を作った。
 私はKが近頃何か言わなかったかと告白していないことを確認した後で、Kの告白を内緒にして、突然「奥さん、お嬢さんを私に下さい」と談判する。奥さんは驚いた様子もなくよく考えたのかと念を押した後、「差し上げましょう」ときっぱり言った。父親のない子を宜しく頼むと言っただけで、他の条件、私の財産に関することは出なかった。そして「本人が不承知の所へ、やるはずがない」と言った。つまり、奥さんとお嬢さんの間では話はできていたのである。とにかくこの時、私の未来の運命は定められた。私はできるだけ早くお嬢さん伝えてほしいと頼む。
 
七.私の良心
 私はさっきの奥さんの記憶と、お嬢さんのうちへ帰ってからの想像で一杯で、散歩をしていた。その間、Kのことは全く考えなかった。そしてKの部屋を抜ける瞬間、ようやくKに対する良心が復活した。もしKと二人きりなら謝っただろうが、奥には人がいる。体面を気にする私にとってそれはできなかった。
 私とKと奥さんの三人で鉛のような夕食をとった。さすがにお嬢さんは同席しない。すべてを知っている私は、なんにも知らないKの前で、なんにも知らない奥さんの口から私とお嬢さんのことを話されてはたまらないとヒヤヒヤしていた。部屋に帰ってKへの弁解を考えたが、どれも不十分であった。
 私にKになんとか事態を告げようと考えたが、倫理的に否を自認している私には至難の業であった。奥さんに頼んで私のいない間にありのままを告げてもらっても、面目がないのは変わりない。こしらえごとを話してもらおうとすれば、理由を話さねばならず自分の弱点をさらすことになる。結婚する前から恋人の信用を失うことは耐えられない。
 私は、Kに謝罪するという正しい道を歩くつもりで、自分の体面のためにその機会を逸し足を滑らせた馬鹿者、狡猾な男であった。その事に気づいているのは、「天」と私の「心」だけである。私は滑ったことを隠したがると同時に、前に出ずにはいられなかった。
 五、六日後、奥さんがKに私とお嬢さんの結婚を告げたことがわかった。その時Kは最も落ち着いた驚きで迎えたらしい。儀礼的な挨拶だけで他に何も言わなかったそうである。私はそれを聞いて胸がふさがるような苦しさを覚えた。
 Kは話を聞いてから二日たつが、私には以前と異なる様子を見せなかった。その超然とした態度と私の態度を比べて、「策略では勝っても人間として負けたのだ」という感じが胸に渦巻いて起こった。それでも、今さらKの前に出て恥をかかされるのは、私の自尊心には苦痛だった。
 
八.Kの自殺
 私が進んでKにお嬢さんとの婚約を話そうかよそうかと考え、とりあえず明日まで待とうと決心した土曜の晩、Kが自殺する。上野公園から帰ったこの前の晩と同じように「ふすま」が開いるがKの影は見えない。Kの部屋を見るとKは自殺していた。
 第一の感じは、Kに恋を告白された時と同じであった。あの時一つの塊になったように、私の目はガラスで作った義眼のように動く能力を失い棒立ちになった。次に、しまった、取りかえしがつかないと思った。あの時は先を思いだったが、今回は私がKを自殺に追い込んだという思いだった。
 それでも私は冷静に、Kの遺書を見つける。それは予期したように私宛になっていたが、予期したような私を責める内容は書いてない。私は世間体の上だけだが助かったと思った。
 遺書の内容は、Kが薄志弱行で行く先の望みがないから自殺する、最後にもっと早く死ぬべきだったのになぜ今まで生きていたのだろうと、書き添えてあるだけだった。お嬢さんの名前はなく、私はKがわざと回避したのだと思った。
 私はみんなが遺書を読む方が私に有利になると考え、わざとみんなの目につくように元の通り机の上に置いた。
 
九.その後のこころ
 Kの葬式で、私はKの自殺の原因について質問される。第一発見者であり、唯一の親友であったのだから当然の人選だが、私はその質問の裏に、お前が殺したのだろうという声を聞く。それはそういう自覚があったからである。遺書のおかげで、私の罪はばれず、Kはきちがい扱いまでされる。しかし、ばれなかったことが却って真綿で首を絞めるように私を苦しめる。ただ、お嬢さんの名前が出なかったことは幸いだった。
 引っ越し、卒業、結婚。私は外面上は幸福の連続であった。しかし、この結婚が自殺への導火線に火をつけたことになっていたのであった。ある日、妻が私をKの墓参りに誘う。妻はKに結婚を報告して喜んでもらうつもりだっただろうか、私は心の中で済まないと繰り返すだけだった。早くも二人の間に亀裂が走る。穿った見方をすれば、妻は私の所業を知っていて、私を誘ったとしたら、じわじわと私を苦しめ、死にいたらしめる序章であったとも考えられるが、考えすぎだろう。
 私が自殺の導火線になる結婚に不安があったが、もしかしたら新しい生涯へのプロローグになるかもしれないとの一縷の望みをかけたが、無残にうち砕かれる。妻が中間に立ってKと私をどこまでも結びつける。私はこの一点おいて妻を遠ざける。妻からは詰問や怨言を受ける。そのころの私には結婚前のような自尊心はなく自分を飾る必要はなかった。ありのままを話せば妻も許してくれることは分かりながら、妻にKの自殺に関係していることを知らせないために、つまり妻の記憶に暗黒な一点を印するに忍びなかった、純白なものに一滴のインキも振りかけるのは苦痛であった。とすれば、Kが遺書にお嬢さんの名前を書かなかった理由も自然と納得される。Kも自分の自殺にお嬢さんを巻き込みたくなかったのだ。ただ、穿った見方をすれば、妻はそんなことは先刻承知で私のひとり相撲だったかもしれない。
 私は腕組みをして世の中を眺めだした(何もしないで過ごすようになった)。妻は心の弛みだと言うが、実際は叔父に裏切られ人に愛想を尽かしたのに、Kを裏切ってしまい自分にも愛想を尽かしてしまったのだ。
 それを妻に説明できない自分が悪いのだが、たった一人親愛する妻にも理解してもらえない寂しさを痛感する。その時、はたと、Kも唯一の親友だと思っていた私に理解されない寂しさのために自殺したのではないかと思い当たる。Kは奥さんから婚約の話を聞かされた時、「覚悟」の意味をお嬢さんに進むと誤解されたことに気づいて、驚いたのだ。自分はそんな人間に見られていたのかというショックである。そして、私は、私もKと同様自殺するのかとこの時初めて自覚して、ぞっとする。
 私が世の中に意欲を持とうとすると、そんな資格はないと私を押さえつける力が働く。私の内面には常にこうした苦しい戦争があった。そんな繰り返しに私は疲れ果てる。その時、一番楽な努力で遂行できる道として、自殺が手を広げて待っている。Kの遺書にあった「薄志弱行」とはこのことだったのだろう。しかし、私は妻を一人残すことが不憫で、また一緒に死ぬ勇気もなく思い止まる。穿った見方をすれば、妻は一人でも生きていけるし、それを願っていたと考えると、身も蓋もなくなってしまう。
 そんな私もついに自殺を決意する日がくる。その引金になったのが、明治天皇の死であり、乃木大将の殉死である。明治の精神は天皇に始まって天皇に終わった。厳格と完全を求める古い部分と、自由と独立を求める新しい部分を表裏一体に併せ持った明治の精神を生きた自分の、そろそろ引き際だと思った。お嬢さんへの恋に代表される新しい精神と、Kに体する罪悪感を担い続けた古い精神。そんな明治の精神を体現している自分が次の時代を生きるのは時代後れだと感じた。
 気になる妻も一人で残す決意をした。乃木大将のように妻を道連れにするのは、忍びなかった。たが、妻には残酷な血の色は見せたくないし、自分のおぞましい過去も知らせたくない。妻はいつまでも純白のままでいてほしい。Kが襖を開けたまま自殺したのも、私に発見させることでお嬢さんに血の色を見せたくない思いからだったのだろう。たとえ、きちがい扱いされてもいいとも思ったのだろう。
 私は、Kに対する罪悪感で何をするのも許されない人間であったが、最後に長い遺書を書くことによって、こんなふうにして生きてきた自分を、明治の精神を、青年の胸に記憶してもらおうとした。その試みは、成功したのだろう。


授業の展開
 
第一時
 ・「恋愛か友情か」であらすじを把握させ、恋愛・友情を選ぶ場合のメリット・デメリット  を列挙させる。
 ・4人組になって、2対2でディベートをする。立場を交代してする。
 ・「恋愛か友情か」が『こころ』の粗筋であることを告げ、Kも私も自殺する結末も話す。
 ・「下」の授業で取り上げる部分までのあらすじを確認する。
 
第二時
 ・授業で取り上げる部分に、小段落番号を付け、段落分けをする。
 ・全文黙読させ、「こころツイート1)」を書かせる。
 
第三時
 ・「八 Kの自殺」を読み、ポイントになる出来事や遺書の内容を確認する。
 ・学習プリント(一私の嫉妬〜三私の後悔)の確認をする。
 
第四時 「一 私の嫉妬」の前半
 ・「一 私の嫉妬」の前半について、4人組で協同学習プリントをさせる。
  ・協同学習プリント」は、次の4つのレベルでできている。
   【L1】文中の語をそのまま抜き出す。【L2】文中の語をつないで答える。【L3】自分の言葉でまとめて答える。【L4】様々な答えを推測する。
   「A」は易し目、「B」は難し目になっている。
 ・板書して要点をまとめる。
 ★以下、同じパターンで授業する。
 
第五時 「一 私の嫉妬」の後半
 
第六時 「二 Kの告白」
 ・「こころツイート2)」を書かせる。
 
第七時 「三 私の後悔」
 
第八時 「四 私の逆襲」の序盤
 ・学習プリント(四私の逆襲)の確認をする。
 
第九時 「四 私の逆襲」の中盤
 
第十時 「四 私の逆襲」の終盤
 ・「こころツイート3)」を書かせる。
 
第十一時 「五 Kの覚悟」その1
 ・学習プリント(五Kの覚悟〜八Kの自殺)の確認をする。
 
第十二時 「五 Kの覚悟」その2
 ・ロールプレイとKの覚悟について考える。
 ・「こころツイート4)」を書かせる。
 
第十三時 「私の決断」
 ・「こころツイート5)」を書かせる。
 
第十四時 ビデオを見る
 
第十五時 「私の良心」
 
第十六時 「Kの自殺」
 ・「こころツイート6)」を書かせる。
 
第十八時 ここまでの経過をふりかえって、Kの自殺の原因を考える。
 
第十九時 その後の「こころ」
 ・教科書掲載以後の部分を読み、Kの自殺、私の自殺の原因を考える。
 
第二十時 改めてKの自殺の原因を考える。


0.ここまでのあらすじ  板書
 
1.【W】「恋愛か仕事か」
 1)プリントを配布し、自分ならどちらを選ぶかとその理由を書かせる。
 2)4人組になり、グループとしての結論を出す。
 3)グループごとに、どちらを選んだかと、理由を発表させる。
2.【説】これが、「こころ」のあらすじであることを説明する。
 ・私は恋愛を選び、Kは自殺する。
 ・なぜ、私は恋愛を選んだのか。
 ・なぜ、Kは自殺したのかを考える。
3.【説】私の過去をまとめる。
 1)二十の頃、両親を病気で亡くす。
 2)上京して高等学校で学ぶ。
 3)叔父に財産を横領され、人間不信になる。
 4)故郷と絶縁する。
 5)下宿の奥さんとお嬢さんに、人間不信を癒される。
 6)お嬢さんを愛し始める。
4.【説】Kの過去をまとめる。
 1)私と同郷の真宗の寺の次男に生まれる。
 2)医者の家の養子になる。
 3)医学を勉強せず、哲学を学ぶ。
 4)養家と実家から絶縁される。
 5)生活に困り、神経衰弱になる。
5.【説】私とKの関係。
 1)(私)下宿にKを同居させる。
 2)(私)お嬢さんにKの世話を頼む。
6.【指】小段落番号1〜79を付けさせ、大段落の区切り指示する。
 一  私の嫉妬(1〜9)
 二  Kの告白(10〜18)
 三  私の後悔(19〜25)
 四  私の逆襲(26〜44)
 五  Kの覚悟(45〜51)
 六  私の決断(52〜60)
 七  私の良心(61〜73)
 八  Kの自殺(74〜79)
 


八.Kの自殺(74〜79)
 
1.【W】4人組になる。
2.【L3】Kの自殺の原因を解明するのに重要なことを、その夜の様子やKの遺書から、4つ考える。
 ・Kと私の室とのは仕切りの襖が、この間の晩と同じくらい開いています。74
 ・薄志弱行でとうてい行く先の望みがないから自殺する。78
 ・お嬢さんの名前だけはどこにも見えません。78
 ・もっと早く死ぬべきだのになぜ今まで生きていたのだろう。78
3.【説】問題点を整理する。
 ・なぜ襖が開けてあったのか。
 ・何に対する意志が弱かったのか。
 ・なぜお嬢さんの名前を書かなかったのか。
 ・死ぬべき時期とは何時だったか。また、なぜ死ねなかったのか。
4.【指】これらの問題点を頭において、さかのぼって読解していく。


一.私の嫉妬(1〜9) 協同学習プリント@ A /板書
 
1.学習プリントを配布し、学習の準備を宿題にする。
2.読み方を確認する。
 外套  火鉢  火種  侘しさ  蛇の目  土塀  勾配  足駄  癇癪
 然るべき  瑣事  躊躇  否応  迂遠
 生返事  遊戯  懐手  襖  細君  塊  兆し
 咀嚼  募る  解し難い  祟る
3.語句の意味を確認する。
 書見   書物を読むこと。
 癇癪   感情を抑えきれないで激しく怒り出すこと。
 帰する  罪・責任などを他の人や物のせいにする。
 瑣事   取るに足らないつまらないこと。
 否応なし 良いとも悪いとも言わせない。
 哲理   人生や世界の本質などに関する奥深い道理。
 迂遠   実際の用に向かないさま。
 肝心   最も重要なこと。
 生返事  いいかげんな受け答え。
 懐手   自分では何もしないこと。
 細君   親しい人に対し、自分の妻をいう語
 
4.火鉢事件ついて
11)【L2】「私は急に不愉快になりました」(二四二上10)の理由は。(35)
  ・Kの部屋の火鉢には火が燃えていたのに、私の火鉢は火種が尽きていたから。
  ★Kの火鉢に火を入れたのはお嬢さんである。
  ★私とKの比較が始まる。
22)【L2】「私はどうしたわけかと思いました」(二四二上18)理由は。(30)
  ・Kは私より遅れて帰る時間割だったのに、先に帰っていたから。
5.泥道事件について
 1)【説】私は書見していたが、落ち着かなくなって、にぎやかな所へ外出する。泥道の細帯でKに出会って、どこへ行っていたのかと短い会話を交わして行き違う。
32)【L3】「私は少なからず驚きました」(二四三上16)理由は。(15)
  ・お嬢さんがKと一緒だったから。
 3)【説】私のほうが泥の中に入って道を譲った。
  ・屈辱的な気持ち。
54)【L1】下宿に帰って「お嬢さんと一緒に出たのか」(二四四上03)と質問した時のK とお嬢さんの答えは。(6・12)
  ・K=偶然出会った。
  ・嬢=どこへ行ったか当ててみろ。
 5)【L1】お嬢さんの「若い女に共通な私の嫌いなところ」(二四四上18)が「Kが来てから目につきだした」(二四四下02)理由は。(9・12)
  ・Kに対する私の嫉妬
  ・私に対するお嬢さんの技巧
 6)【説】私が嫉妬するのは、お嬢さんを愛しているからである。
 7)【L3】何のための技巧か。
  ・私に嫉妬を起こさせて、気を引く。
 8)【L4】Kとお嬢さんが一緒だった理由はをどう推測するか。
  a 偶然会った。
  b たまたまKが早く帰ってきたのでお嬢さんが誘った。
  c あらかじめ約束ができていて、Kが早く帰って二人で出かけた。
6.奥さんへの談判について
61)【L1】「躊躇していた自分の心」(二四四下15)とはどうすることか。(22)
  ・奥さんにお嬢さんをくれろと明白な談判を開こう
 2)【L1】「断行の日を延ばしていった」(二四五下02)理由を、a)Kが来ないうち、b)Kが来た後に分けて。(16・34)
  a)人の手に乗るのがいやだという我慢
  b)もしかするとお嬢さんが私よりKの方に意があるのではないかという疑念
 4)【説】人の手に乗るとは、奥さんが私の財産を狙っているのではないかという疑い。
 5)【L1】そんな私の恋愛論を何と言うか。(8・8)
  ・高尚な愛の理論家
  ・迂遠な愛の実践家
 6)【L3】そんな愛し方を四字熟語で言うと。
  ・相思相愛
 7)【説】「高尚な愛の理論家」「迂遠な愛の実践家」とは。
  ・相思相愛でなければ恋愛の価値はないという立派な恋愛論を持っているが、実際には恋愛に進まない。
78)【L2】お嬢さんに直接打ち明けない理由は。(26・29)
  ・直接打ち明けることは、日本の習慣として許されていない
  ・日本の若い女は、自分の自分の思ったとおりを言う勇気に乏しい
7.カルタ事件について
91)【L1】正月に四人でカルタをした時、お嬢さん・私・Kの行動や様子は。18・13・12
  ・嬢=に立つようにKの加勢をしだしました
  ・私=相手次第ではけんかを始めた
  ・少しも最初と変わりません
 2)【説】だから、私も無事その場を切り上げることができた。


二.Kの告白(10〜18) 協同学習プリントB /板書
 
1.Kの告白について
101)【説】この日、奥さん・お嬢さん・私・Kの行動は。
  ・奥さんとお嬢さんは親類の所へ行く。
  ・私とKは、下宿に残っている。
112)【説】Kが不意に仕切りの襖を開けた。
  ★この時から襖が意味を持ち始める。
 3)【L2】Kの「何を考えている」(二四七下10)に対して、私は誰のことを考えていたか。
  ・お嬢さん(恋人)と奥さん(親)とK(邪魔者)
 4)【L1】Kのことはどのように意識していたか。3
  ・邪魔者。
125)【L1】Kの「いつもに似合わない話」(二四八上09)とは誰の話か。10
  ・奥さんとお嬢さんの話
136)【L3】私が「不思議の感に打たれました」(二四八下03)の理由は。
  ・以前は私の方から二人の話をした時と調子が変わって、Kの方から二人の話を始めたから。
 7)【説】Kの「口元の肉が震える」(二四八下09)のは何の前兆か。12
  ・重要なことを言い出す前兆。
148)【L1】Kは私に何を打ち明けたのか。12
  ・お嬢さんに対する切ない恋
2.私の反応について
151)【L2】Kの告白を聞いた私は何の塊になったか。4.3
  ・恐ろしさ・苦しさ
 2)【L3】「塊」とはどんな様子か。
  ・固まってしまった。
  ・何も考えられない。
  ・人間的でない。
 3)【L1】「人間らしい気分」(二四九上12)とはどう思ったことか。4・6
  ・しまった・先を越された
 4)【L3】「先を越された」とは。
  ・Kの方から先にお嬢さんへの恋を告白された。
165)【L3】「私は苦しくてたまりませんでした」(二四九下02)の理由は。
  ・自分もお嬢さんが好きなのに、Kもお嬢さんが好きだと言ったので、どうしていいか分からなくなったから。
 6)【L2】「私の表情」(二四九下07)は。12程度
  ・苦しさがはっきり出ていた
 7)【L1】Kがそれに気づかなかった理由は。17
  ・自分のことに一切を集中しているから
  【注】ここで私の様子に気づいていたなら、今後の展開は変わっていた。
 8)【L1】「一種の恐ろしさを感ずるようになった」(二四九下16)理由は。23
  ・Kは自分より強いのだと言う恐怖の念が兆し始めた(から)
 9)【L3】なぜ、恐怖の念を抱くようになったのか。
  ・日頃からKには劣等感や負い目を感じていたから。
 10)【L1】私の対応は。
  ・何事も言えなかった。
  ・利害を考えたわけではない。
  ・同じ意味の告白をするか、打ち明けない方が得策か。
 11)【L4】この時どうすれば今後の悲惨な事件は起こらなかったか。2つ。
  ・私が私もお嬢さんが好きだと告白する。
  ・Kが私の苦しい表情に気づく。
1812)【L4】「二人は食事中もほとんど口を利きませんでした」(二五〇上11)とあるが、二人の気持ちは。
  ・私=Kが恐ろしい。
  ・K=お嬢さんへの恋をどう扱ったらいいか。


三 私の後悔(19〜25) 協同学習プリントC /板書
 
1.私の悔恨
191)【説】めいめいの部屋に戻る。私はKについて考える。
202)【L1】「私もじっと考え込んでいました」(二五〇上17)とは何を考えていたのか。
  ・自分の心をKに打ち明けるべきはずだ
  ・時機が遅れてしまった
 3)【L3】「時機が遅れてしまった」(二五〇下02)と思った理由は。
  ・Kがお嬢さんを好きだと言ったから、後出しで、私も好きになったと思われるから。
214)【L2】どうなればいいと思ったのか。
  ・Kが再び仕切りの襖を開けて向こうから突進して来る。
 5)【L3】「午前中に失ったもの」(二五〇下15)とは何か。
  ・お嬢さんへの恋の主導権。
 6)【L3】襖の意味は。
   ・私とKの心の壁。
  【注】自殺していた夜に開いていた襖。

2.Kへの疑問
241)【説】じっとしていられなくなり、散歩しながらKについて考える。
  ・下宿の構造と私の移動経路を確認する。
  ・二五一ページの 下宿の推定図を参照する。
 2)【L2】「彼が解しがたい男のように見えました」(二五二下02)の疑問点は。15×3
  ・どうして突然私に打ち明けたのか
  ・どうして彼の恋が募ってきたのか
  ・平生の彼はどこに行ったのか
 3)【L1】「平生のK」(二五二下05)はどんな性格か。2・3
  ・強い・真面目
 4)【L1】私にはKがどのようなものに思われたか。5
  ・一種の魔物


四.私の逆襲(26〜42) 協同学習プリントDA DB EA EB F /板書@ A
 
1.【指】学習プリントを配布し、学習の準備を宿題にする。
2.【説】読み方を確認する。
 一物  悄然  慈雨  彷徨  復讐  生家  男女  精進  妨げ  侮蔑 
 刹那  卑怯  赤面  強情  
3.【説】語句の意味を確認する。
 所作=身のこなし。しぐさ。
 胸に一物=口には出さないが心の中にたくらみを抱くこと。
 口を切る=話し始める。
 平生=ふだん。いつも。
 悄然=元気がなく、うちしおれているさま。しょんぼり。
 慈雨=恵みの雨。
 彷徨=目的もなくあちこち歩き回る。その辺りを行ったり来たりする。
 精進=一つのことに精神を集中して励むこと。一生懸命に努力すること。
 刹那=きわめて短い時間。瞬間。
 卒然=事が急に起こるさま。だしぬけ。突然。
 
4.Kの相談
271)【L3】「Kの胸に一物」(二五三下08)とは何か。15以内
  ・お嬢さんへの恋に関すること
282)【L3】「例の事件」(二五三下15)とは何か。20以内
  ・Kが私にお嬢さんへの恋を告白したこと
 3)【L3】「実際的な方面」(二五四04)とはどうすることか。12以内
  ・お嬢さんに告白すること
 4)【L2】「どう思う」(二五四上05)とはどういう意味の質問か。30以内
  ・恋愛のふちに陥った現在の自分について、私の批判を求めたい
 5)【L2】「Kの平生」(二五四上09)とはどんな性質か。45
  ・他の思わくをはばからず、こうと信じたら一人でどんどん進んでいくだけの度胸もあり勇気もある
 6)【説】養家事件を確認する。
  ・医者の家に養子に出されたKが、医学の勉強をせずに、自分の勉強したかった哲学科に転科していた。
296)【L1】「この際なんで私の批評が必要なのか」(二五四上17)への答えは。17・25
  ・自分の弱い人間であるのが恥ずかしい(から)
 7)【L1】「弱い」(二五四下01)とはどういう状態か。25
  ・迷っているから自分で自分が分からなくなってしまった(状態)
 8)【L1】「迷う」(二五四下04)とは何に迷っているのか。14
  ・進んでいいのか退いていいのか
 9)【L3】「進む」「退く」とは。10以内
  ・進む=お嬢さんへの恋に進む
  ・退く=お嬢さんへの恋をあきらめる
 10)【L1】「退こうと思えば退けるのか」(二五四下07)への答えは。5
  ・ただ苦しい
 11)【L3】「彼に都合のよい返事」(二五四下11)とは。10以内
  ・迷わずお嬢さんへの恋に進め
5.私の逆襲
301)【L3】「他流試合でもする人」(二五四下18)とは私はKをどんな相手だと思っていたか。
  ・倒すべき敵
312)【L3】「理想と現実」(二五五下08)とは何か。
  ・理想=恋を捨て、道を進む。
  ・現実=道を捨て、恋に進む。
 3)【L1】「一打ちで彼を倒す」(二五五下09)必殺の言葉は。15
  ・精神的に向上心のない者はばかだ
 4)【L3】「精神的に向上心のない者」とはどんな者か。
  ・恋愛をしている者
 5)【L1】私は、その言葉に込めた「復讐以上に残酷な意味」とは。
  ・Kの前に横たわる恋の行く手をふさごうとした
326)【L1】「精神的な向上心」と同じ意味の言葉は。2
  ・精進
 7)【L2】「彼の第一信条」(二五六上17)とは。25以内
  ・道のためには欲を離れた恋そのものも犠牲にすべき
338)【L3】「こういう過去」(二五六下07)とはどんなことがあったのか。
  ・二人で房州を旅行していた時,お嬢さんを思っていた私に「精神的に向上心のない者はばかだ」と侮蔑したこと。
 9)【L1】私が「精神的に向上心のない者はばかだ」と言った本当の理由は。29
  ・Kが急に生活の方向を転換して、私の利害と衝突するのを恐れた(から)
 10)【L1】その時の私の「心」は。3
  ・利己心。
6.Kの反応
361)【L1】「精神的に向上心のない者はばかだ」に対するKの言葉と声の様子は。5・5
  ・僕はばかだ
  ・力に乏しい
 2)【L3】「居直り強盗のごとく感ぜられた」(二五七上05)とは私はKがどうすると思ったのか。15以内
  ・道を捨ててお嬢さんに告白する
393)【説】二人の身長差を考える。(28)
  ・Kは背が高く、私は見上げる。
  ・精神的にも、身体的にもKの方が優位にあった。
 4)【L1】「罪のない羊」(二五七下14)とはKのどんな性質か。38から2×3
  ・正直・単純・善良
405)【L3】「もうその話をやめよう」(二五七下15)の「その話」とは。8以内
  ・お嬢さんの話
 6)【L1】その時の様子は。14
  ・変に悲痛なところがありました
417)【L3】「それをやめる」(二五八上09)の「それ」とは。8以内
  ・お嬢さんへの恋
  【注】巧妙なすり替えが行われている。
 8)【説】「彼の平生の主張」(二五八上10)を確認する。
  ・道のためには精神的な恋でさえ捨てる。
429)【L1】「人一倍の正直者」(二五八上15)とはどんな性質か。32
  ・自分の矛盾などをひどく非難される場合には、決して平気でいられない
 10)【説】「やめる」ではなく、「覚悟」という言葉に反応した。
 11)【L1】「覚悟ならないこともない」と言った時のKの様子は。6.9
  ・独り言のよう
  ・夢の中の言葉のよう
4312)【L1】Kの心理が風景として描写されている部分は。41から始めと終わりの3
  ・霜に打たれて青みを失った杉の木立の茶褐色が、薄黒い空の中に、梢を並べてそびえている
 13)【L4】Kの「覚悟」とはどうすることか。
  a)恋をあきらめて道に進む。
  b)道をあきらめて恋に進む。
  c)道も恋もあきらめて自殺する。


五 Kの覚悟 協同学習プリントG H I /板書
 
1.【指】学習プリントを配布し、学習の準備を宿題にする。
2.【説】読み方を確認する。
 覚醒  熾烈  強情  熟睡  果断  煩悶  懊悩  仮病  催促  屈託 
 快からず  頓着  是非  問答  憐れ  拘泥  挙止動作  詰問
 一分一厘  狡猾  窮境  因縁  疾風  世間体
3.【説】語句の意味を確認する。
 覚醒=目を覚ますこと。
 一意=一つの物事に心を集中すること。
 熾烈=勢いが盛んで激しいこと。
 果断=決断力のあること。
 煩悶=悩み苦しむこと。
 懊悩=なやみもだえること。
 屈託=一つのが気にかかって他のことが手につかないこと。
 頓着=こだわること。
 是非=どうしても
 拘泥=こだわること。
 挙止動作=立ち居振る舞い。
 詰問=問い詰めること。
 狡猾=ずるがしこいこと。
 
4.「覚悟」の解釈1)
451)【L3】「古い自分をさらりと投げ出して、新しい方角に走り出さなかった」(二五九下06)とあるが、「古い自分」「新しい方角」とは何か。
  ・古い自分=道を進む
  ・新しい方角=恋。
 2)【L1】「古い自分をさらりと投げ出して、新しい方角に走り出さなかった」(二五九下06)のは何があったからか。17・13
  ・投げ出すことのできないほど尊い過去
  ・現代人の持たない強情と我慢
 3)【L3】「尊い過去」とは。
  ・養家の意志に背いて道を追求したために勘当された。
 4)【説】「現代人」とは明治四十五年頃である。明治末期の人も昔の人に比べれば、強情や我慢がなかった。
465)【L2】「取り留めもない世間話をわざと彼に仕向けました」(二六〇上11)の理由は。
  ・Kに勝利して得意だったから
 6)【L1】「上野から帰った晩」(二六〇上09)、私はKにどんな思いを持っていたか。13
  ・恐るるに足りないという自覚
 7)【L3】この時点で、私はKの「覚悟」をどう解釈していたか。
  ・恋をあきらめて、道に進む
5.襖事件
 1)【説】襖が開いたのはKの告白依頼2回目である。自殺した夜も襖が開いていた。
 2)【L1】「上野から帰った晩」(二六〇上09)に起こったことをまとめる。
 471)(襖)が開いて(Kの黒い影)が立っている。
 482)「(もう寝たのか)」と、ふだんより(落ち着い)た声で聞く。
 493)翌朝、「(近ごろは熟睡できるのか)」と問う。
 504)あの事件の話ではないと(強い調子)で言い切る。

6.「覚悟」の解釈2)
511)【L1】「一般を心得た上で、例外の場合をしっかり攫まえたつもり」とあるが、「一般」「例外」とはどんな性格か。2・2
  ・一般=果断。強いK
  ・例外=優柔。弱いK
 2)【L3】これまでの覚悟の解釈では、「果断」と「優柔」はどんな行動に発揮されると思っていたか。
  ・果断=道に進む
  ・優柔=恋をする
 3)【L1】すべての疑惑、煩悶、懊悩を一度に解決する最後の手段とは。
  ・奥さんにお嬢さんをくれと談判する。
 4)【L1】この時点で、私はKの「覚悟」をどんな意味に解釈したか。20
  ・Kがお嬢さんに対して進んで行くという意味
 5)【L1】「果断にとんだ彼の性格」(二六二上06)が何に発揮されると思い込んだか。4
  ・恋の方面
7.Kの覚悟の真相
1)【W】「協同学習プリント9)」で、上野公園でのやりとり、その晩や翌朝の出来事について、ロールプレイをする。
 ・役割を変えながら、各自が私とKを体験する。
2)【説】KP法について、KP法を使いながら説明する。
 ・KP法とは、紙芝居プレゼンテーションである。
 ・KPシート(A4白紙)に、各項目のポイントを、横書きで、1行10字3行以内で書き出す。
 ・色使いについて
  ・タイトルは、目立つ赤色
  ・文字は、見やすい青色
  ・補足は、少し弱い緑色や茶色
  ・アンダーラインは、あまり見えないピンク(赤色に対して)や水色(青色に対して)
  ・重要ポイントは、とても目立つ赤色
  ・事務連絡は、少し沈んで見える黒色
 ・黒板に、マグネットパーで貼りながら、説明する。
3)【W】「協同学習プリント10)」で、Kの覚悟の真相について話し合う。
 ・話し合う項目をKP法で説明する。
 1)【L4】公園から帰った晩、Kが襖を開けて、「もう寝たのか」と、落ち着いた声で聞い
   たのはなぜか。
 2)【L4】翌朝、Kが「近ごろは熟睡できるのか」と問うたのはなぜか。
 3)【L4】あの事件について話すつもりではないと強い調子で言い切ったのはなぜか。
 4)【L4】以上のことから考えて、Kの覚悟の真相は何だと思うか。
4)【W】各チーム前でKP法を使って説明する。
5)【W】「こころツイート」を書く。


六.私の決断(52〜60) 協同学習プリントJA  JB /板書
 
1.最後の決断
521)【L3】「最後の決断」(二六二上09)とは。
  ・奥さんにお嬢さんとの結婚を談判する
 2)【L1】決断を実行する条件は。5・8
  ・Kより先に
  ・Kの知らない間に
  【説】恋の告白では先を越されたので今回は先にする。
533)【L1】談判の日を作るために何を使ったか。2
  ・仮病
2.奥さんとの談判
551)【L3】「Kが近ごろ何か言いはしなかったか」(二六三上12)の「何か」とは。
  ・お嬢さんとの結婚の申し込み
562)【L3】「自分のうそ」(二六三下03)とは。
  ・Kが私に告白したのに、何も言っていないと答えたこと。
 3)【説】私が突然「お嬢さんをください」と言う。
 4)【L3】「奥さんは私の予期してかかったほど驚いた様子も見せませんでした」(二六三下09)の理由は。
  ・奥さんは私が談判に来ることを予期していた。
575)【L1】「差し上げましょう」(二六四上08)を「もらってください」(二六四上10)と言い換えた理由は。9
  ・父親のない憐れな子(だから)
  【説】「差し上げるなんて威張った口の聞ける境遇ではない」と言っているように、
    当時は男性中心社会で、母子家庭は不利な条件であった。
586)【L3】「何の条件も持ち出さなかった」(二六四上15)の条件とは何に関することか。
  ・私の財産
  【説】かつて、叔父が財産目当てに、自分の娘と結婚させようとした。
     金目当てでなく、純粋に私を愛してくれていた。
 7)【L3】「本人の意向さえ確かめるに及ばない」(二六四上17)「本人の不承知のところへ、私があの子をやるはずがありません」(二六四下04)と言った理由は。
  ・奥さんはお嬢さんが私を愛していることを確認していたから。
 8)【L4】今までのKに対するお嬢さんの態度は何だったのか。
  a)私がお嬢さんにKを世話してくれと言ったことを忠実に守っていた。
  b)私とKと二人に好意を持っていた。
  c)私に嫉妬させて、求婚を急がせる策略であった。
3.談判後の私の気持ち
591)【L1】「自分の室に帰った私」(二六四下06)の気持ちは。17
  ・私の未来の運命は、これで定められた
 2)【L4】「私の未来」(二六四下10)とは。
  a)お嬢さんとの結婚。
  b)Kの自殺?
  c)私の自殺?


七.私の良心(61〜73) 協同学習プリントKA  KB  Kの1B  Lの2B /板書@ A
 
1.散歩中の私の気持ち
611)【L1】「私は歩きながら絶えずうちのことを考えてい」(二六五上17)たことは。
  ・さっきの奥さんの記憶
  ・お嬢さんがうちへ帰ってからの想像
622)【L1】逆に、私が考えなかったことは。4
  ・Kのこと
 3)【L1】Kのことを考えなかったことは、何が欠如していたからか。2
  ・良心
2.良心の復活
631)【L3】「Kに対する良心」(二六六上09)とは、私のしたどんな行為に対してどうすることか。
  ・Kが先にお嬢さんへの恋を告白したのに、Kを出し抜いて結婚の話を進めた私の裏切りに対して、謝ること。
 2)【説】私が彼の部屋を抜けようとした時の、Kの対応を説明する。
  ・いつものとおり机に向かって書見をしていました。
  ・いつものとおり書物から目を離して、私を見ました。
  ・いつものとおり今帰ったのかと言わずに、病気はいいのかと言った。
 3)【L3】その時、謝りたくなった理由は。
  ・Kが私の仮病を信じて心配してくれたから。
 4)【L3】しかし、謝らなかった理由は。14
  ・奥にはお嬢さんと奥さんがいて、私の裏切りがばれるから。
 5)【L1】「私の自然」(二六七上03)とは何か。2
  ・良心
  ・Kに対する友情は私にとって自然の感情であり、裏切りを謝罪したいと思う良心も自然な感情である。
 6)【L3】「永久に復活しなかった」(二六七上05)理由は。
  ・謝る前にKが自殺して、機会を失ったから。
3.夕飯の様子
641)【L2】「夕飯のとき」(二六七上06)のK・奥さん・私・お嬢さんの様子は。24・13・12・24
  ・K=何も知らず、ただ沈んでいただけ。
  ・奥=何も知らず、いつもよりうれしそう。
  ・私=すべてを知っていて、鉛のような飯を食う。
  ・嬢=みんなと同じ食卓に並ばない。
 2)【L3】「何も知らないK」(二六七上06)とは何を知らないのか。
  ・Kを出し抜いて結婚の話を進めたこと
 3)【L3】「何も知らない奥さん」(二六七上08)とは何を知らないのか。
  ・先にKが私にお嬢さんへの恋を告白したこと。
 4)【L3】「私だけがすべてを知っていた」(二六七上09)とは何を知っていたのか。
  ・Kを出し抜いて結婚話を進めたこと
  ・先にKが私にお嬢さんへの愛を告白したこと。
 5)【L3】「お嬢さんはいつものようにみんなと同じ食卓に並びませんでした」(二六七上10)理由は。
  ・婚約が決まった私と同席するのが恥ずかしかった。
656)【L3】「私の恐れを抱いている点」(二六七下07)とは何か。
  ・奥さんが私とKのいる前で、結婚話が成立した経緯を話すこと。
4.私の不安
661)【L3】「Kに対する絶えざる不安」(二六八上03)とは何か。
  ・私の裏切りがKにばれること。
  【注】今までは、Kが恋に進むのではないかという不安であった。
 2)【L1】「なんとかしなければ」(二六八上05)ならないこととは何か。34
  ・私とこの家族との間に成り立った新しい関係を、Kに知らなければならない(こと)
 3)【L3】「新しい関係」(二六八上13)とは。
  ・私とお嬢さんの結婚。
  【注】二人の結婚によって、Kの居場所がなくなる。
 4)【L3】「論理的な弱点」(二六八上15)とは。
  ・Kが先にお嬢さんへの恋を告白したのに、Kを出し抜いて結婚の話を進めたこと。
5.私の解決策
671)【L3】「奥さんに頼んでKに改めてそう言ってもらおう」(二六八上18)という方法の欠点は。28以内
  ・ありのままを告げられては、面目のないのに変わりはない
 2)【L3】「ありのまま」とは。
  ・私が仮病を使って、奥さんに談判をして、お嬢さんと婚約した。
 3)【L1】「こしらえごとを話してもらう」(二六八下04)方法の欠点は。15
  ・奥さんからその理由を詰問される
 4)【L4】「こしらえごと」の例は。
  ・お嬢さんや奥さんの方から私に求婚した。
 5)【L2】「奥さんにすべてを打ち明けて頼む」(二六八下06)方法の欠点は。24以内
  ・好んで自分の弱点をさらけ出さなければならない。
 6)【L1】これらの方法の欠点に共通するものは。15
  ・結婚する前から恋人の信用を失う(こと)
6.私の葛藤
687)【L3】「正直な道を歩くつもりで、つい足を滑らしたばか者」(二六八下12)の1)「正直な道」2)「足を滑らせた」とは、私がどうしたことか。
  a)お嬢さんへの恋に進んだこと。
  b)Kを裏切ったこと。
 8)【L1】「ばか者」を言い換えると。4
  ・狡猾な男
 9)【L1】それを知っているものは何か。5
  ・天と私の心
  【説】漱石に座右の銘が「則天去私」である。
 10)【L3】「前に出ずにはいられなかった」(二六九上01)とはどうすることか。
  ・お嬢さんと結婚すること。
7.最後の打撃
691)【L3】「あの事」(二六九上04)とは何か。
  ・私が奥さんにお嬢さんをくれと談判したこと
 2)【説】結局、奥さんが直接Kに話したことになった。
713)【L3】「Kがそのとき何か言いはしなかったか」(二六九上12)の「何か」とは。
  ・先に私にお嬢さんへの恋を告白したこと。
724)【L3】「最後の打撃」(二六九下01)とは。
  ・お嬢さんとの恋の可能性を完全に断たれたこと。
 5)【L1】「最後の打撃」を受けた時のKの反応は。9
  ・最も落ち着いた驚き
  【注】私が最後の打撃と考えているだけで、Kには打撃ですらなかったのかもしれない。
 6)【説】Kの「落ち着いた」対応を確認する。
  ・「そうですか」と一口言っただけ。
  ・「おめでとうございます」と微笑を漏らして言う。
  ・立ち去る前に「結婚はいつですか」と聞く。
  ・「お金がないのでお祝いを上げられない」と言う。
 7)【L4】「最も落ち着いた驚きをもって迎えた」(二六九下01)理由は。
  ・私もお嬢さんを好きなことに気づいていたから。
   お嬢さんを諦めていたから。
   自殺を覚悟していたから。
  ・仮病を使って談判するまで私を追い詰めていたことを知ったから。
  【注】ここで答えは出ないので、保留しておく。
 8)【L4】「結婚はいつですか」(二六九下08)と聞いた理由は。
  ・自分がこの家にいられなくなる日を知りたかったから。
  ・自分の自殺の時期を考えていたから。
  【注】社交辞令で聞くようなKではない。
8.私の敗北感
731)【L1】「彼の超然とした態度」(二七〇上02)を見て、私はどう思ったか。19
  ・おれは策略で勝っても人間としては負けた
 2)【L3】「策略で勝っても人間としては負けた」(二七〇上05)について、1)「策略」とは何か。2)「人間としては負けた」と思った理由は。
  1)「精神的に向上心がないものはばかだ」と言ってお嬢さんをあきらめさせようとした。
   仮病を使って、奥さんに談判したこと。
  2)Kが私の結婚や裏切りを知っても、私を責めず超然としていたこと。
 3)【L1】「大いな苦痛」(二七〇上76)どんな心から出ているか。3
  ・自尊心。


十.Kの自殺(74〜79) 協同学習プリントMA MB N板書
 
1.自殺の夜の様子
741)【L3】「進もうかよそうか」(二七〇上10)とはどうすることか。
  ・Kに謝るか謝らないか。
 2)【L1】「この間の晩」(二七〇上16)とはいつか、段落番号で。
  ・47
 3)【L1】「この間の晩」と違うことは。17
  ・Kの黒い姿はそこには立っていません
2.私の反応
761)【L1】「Kから突然恋の自白を聞かされたとき」とは、段落番号で。
  ・15
  ・一つの塊になった
  ・人間らしい気分を取り戻した。
 2)【L2】「私の受けた第一の感じ」(二七〇下13)は。12以内×4
  1)目は動く能力を失った
  2)棒立ちに立ちすくんだ
  3)ああしまったと思った
  4)もう取り返しがつかない
 3)【L1】1)「目が動く能力を失った」2)「棒立ちに立ちすくみました」と一致するのは。
  ・一つの塊になる。
 4)【L4】3)「しまった」4)「取り返しのつかない」(二七〇下18)とは。
  ・謝る機会を失ってしまった
  ・私の責任でKを自殺に追い込んでしまった。
  ・お嬢さんと結婚できない。
  【注】Kに済まないと言う気持ちではない。
3.Kの遺書
771)【L3】「私の予期したようなこと」(二七一上07)とは何か。
  ・私に裏切られたので自殺する。
 2)【L3】「世間体の上だけで助かった」(二七一上13)とはどういうことか。
  ・奥さんとお嬢さんに、私の責任でKが自殺したことがばれないこと。
783)【L2】遺書の内容のポイントは。
  ・薄志弱行で行く先の望みがないから自殺する
  ・お嬢さんの名前がない
  ・もっと早く死ぬべきだった
 4)【L3】「薄志弱行」(二七一上17)とは、私以外の人は何に対する意志の弱さと思うか。
  ・道を貫けなかったこと。
 5)【L3】「お嬢さんの名前だけはどこにも見えません」(二七一下06)ことについて、私以外の人はどう思うか。
  ・Kの自殺とお嬢さんは無関係である。
4.私の対応
791)【L3】「私はわざとそれをみんなの目につくように、元のとおり机の上に置きました」
   (二七一下14)の理由は。
  ・私がKの自殺と無関係であることを証明してくれるから。
 2)【L3】「そうして振り返って、襖にほとばしっている血潮を初めて見た」(二七一下15)から何がわかるか。
  ・Kの自殺の状況よりも、自分の立場を優先した。
5.Kの自殺の原因について
 1)【L4】Kの自殺の原因は。
  ・失恋した。
  ・私に裏切られた。
  ・道を踏み外した自分が許せない。
  【注】他にもいろいろな意見が予想される。
 2)【L3】Kの自殺の原因を考えるポイントは。
  1)Kの覚悟とは何だったのか。
  2)上野公園から帰った晩に、なぜ襖を開けたのか。
  3)私の婚約をなぜ落ち着いた驚きて受け止めたのか。
  4)自殺した晩に、なぜ襖を開けたのか。
  5)薄志弱行とは何に対する意志の弱さか。
  6)なぜお嬢さんの名前を書かなかったのか。
  7)もっと早く死ぬべきだったとはいつか。
 3)【L3】以上のことをすべて説明できるようにKの自殺の原因を考える。
  ・抜けているところがあってもかまわない。
 4)【W】KP法で説明する。
  ・1チーム4分×7〜10チーム。


九.その後の「こころ」(プリント) テキスト 協同学習プリントO /板書@ A
 
1.【指】テキスト『その後の「こころ」』を配布する。
 
2.【説】自殺からプリントまでの経緯を説明する。
 1)自殺の直後、みんなからKの自殺の原因を聞かれる。
  ・私が親友であるからだが、私が殺したことを白状しろというように聞こえる。
 2)新聞には、親から勘当されたからだとか、気が狂ったからだとか書いてあった。
  ・私は、お嬢さんが引き合いに出されることを恐れていた。
 3)まもなく引っ越し、二カ月後に大学を卒業、半年後に結婚する。
 4)表面的にはいかにも幸福らしく見えるが、その裏に「黒い影」があり、悲しい運命に連れて行く導火線のように感じる。
 ・私の自殺の予感。
 5)結婚すれば、心機一転してKを忘れられると思っていたが、妻を見るとKを思い出す。
 6)その結果、妻を遠ざけ、妻から詰問や怨言を言われ、苦しむ。
 7)私が妻にありのままを打ち明けられない理由は、妻の記憶に暗黒な一点を印するに忍びな  かった。
  ・お嬢さんがKの自殺に関係していたことを知らせたくない。
3.Kの自殺と私の自殺について
11)【L1】私の気持ちは。15
  ・Kを忘れられずたえず不安だった。
 2)【L1】「私は猛烈な勢いでもって勉強し始めた」理由は。9
  ・不安を駆逐するため
 3)【L3】「腕組みをして世の中を眺めだした」とはどうすること。
  ・何もしないで、何かを考えて生きているだけの生活。
24)【L1】「腕組みをして世の中を眺めだした」ことを、妻はどう思っていたか。20
  ・今日の生活に困らないから心にたるみが出る(から)
 5)【L2】「私が動かなくなった原因の主なもの」は何か。80以内
  ・叔父に欺かれ、人は頼みにならないことを感じ、自分は立派な人間だという信念があったが、Kのために破壊され、自分も叔父と同じ人間だと意識し、人に愛想を尽かしたから。
36)【L1】「私は寂寞でした」の理由は。42
  ・世の中で自分が最も信愛しているたった一人の人間すら、自分を理解してくれないのかと思う(から)
 7)【L3】「たった一人の人間」とは誰か。
  ・妻
48)【L1】「Kの死因」を私はどう考えていたか。2・8・21
  ・失恋
  ・現実と理想の衝突
  ・たった一人で寂しくって仕方がなくなった結果
 9)【L1】「ぞっとした」理由は。25
  ・私もKの歩いた道を、Kと同じようにたどっているのだ(と思ったから)
510)【L1】「私の内面には、常にこうした苦しい戦争があった」結果から脱出するためにどう感じるようになったのか。25
  ・一番楽な努力で遂行できるものは自殺よりほかにはない
611)「妻の知らない間に、こっそりこの世からいなくなるようにします」理由は。19
  ・妻に残酷な恐怖を与えることを好みません(から)
712)【L1】「妻にはなんにも知らせたくない」理由は。32
  ・己の過去に対して持つ記憶を、なるべく純白に保存しておいてやりたい(から)