唐詩の世界
  

春暁  江雪  江南春  静夜思  除夜作  登高  黄鶴楼送孟浩然之広陵  送元二使安西  春望  


1.「漢詩のきまり」プリントを配布し、教科書を見ながら記入させる。
2.漢詩の決まりを説明する。
 1)詩形
  1)一首が4句=絶句
      8句=律詩
  2)一句が5字=五言
      7字=七言
  3)五言絶句、五言律詩、七言絶句、七言律詩
 2)一首の構成
  1)絶句
   ・起句=歌い起こす。
   ・承句=起句を受けて展開する。
   ・転句=内容を一転する。
   ・結句=全体をまとめて結ぶ。
  2)律詩
   ・首聨=第一、二句。
   ・頷聨=第三、四句。
   ・頸聨=第五、六句。
   ・尾聨=第七、八句。
 3)一句の構成
  1)五言=○○−○○○
  2)七言=○○−○○−○○○
 4)押韻
  ・句末の字を同じ韻にして、朗詠の響きを美しくする。
  ・五言詩では、原則として偶数句末。
   七言詩では、第一句末と偶数句末。
 5)対句
  ・二句の間の語が、文法的、意味的に対応している。
  ・律詩の頷聨と頸聨は必ず。その他も用いてよい。

3.教科書の漢詩の「詩形・押印・対句一覧表」を配布し、記入させる。
4.漢詩をノートに書写させ、訳プリントを配布して記入させる。
 ★生徒が訳をするのは無理であり、時間の短縮を図る。授業では鑑賞に重点を置く。


春暁
 
1.教師が範読する。
2.生徒と繰り返し音読する。
3.押韻を確認する。
 ・暁、鳥、少
 ・起句の「暁」も押韻している。
4.教師が訳をつける。
 1)春の眠りは、夜明けに気がつかない。
 2)あちらこちらで鳥が鳴いているのが聞こえる。
  ・「聞く」=聞こうと思ったわけではないのに自然に耳にはいってくる。
   「聴く」=気をつけて聞こうとする。
  ・「啼く」=鳥の声。
   「鳴く」=鳥獣や、音をたてるものすべて。
  ・「鳥が啼いている」ならば「鳥啼」だが、押韻の関係で「啼鳥」としている。
 3)昨夜、風雨の音がした。
 4)花が落ちているのはどれぐらいだろうか。
  ・「花」=桃や李。
  ・「知多少」=どれほどであろうか。
5.春の眠りが明け方に気づかない理由は。
 ・春の暖かさの中で眠るのは心地よいから。
6.目が覚めた理由は。
 ・鳥の声が聞こえたから。
7.作者が働かせている感覚は。
 ・聴覚。
 ・鳥が啼くのを聞いている
 ・夜来の風雨の音を聞いている。
8.夜来の風雨の音から何を想像しているか。
 ・花が落ちたこと。
9.作者はどこにいるか。
 ・花が落ちたのを見たのではなく、想像している。
 ・蒲団の中。
 ・目覚めたが起き上がってはいない。
10.春のいつごろか。
 ・晩春
 ・花が落ちるから。
11.作者の心情を想像する。
 ・春の朝の心地よい眠りを楽しんでいる。
 ・宮仕えを拒否し、自然のなかで悠々自適に生活している人の、こんなのんびりした生  活もいいという気持ち。
 ・花が散ることにも神経質になっていない。
12.井伏鱒二の訳を紹介する。
 ハルノネザメノウツツデ聞ケバ
 トリノナクネデ目ガサメマシタ
 ヨルノアラシニ雨マジリ
 散ッタ木イカホドバカリ

江雪
 
1.教師が範読する。
2.生徒と繰り返し音読する。
3.押韻を確認する。
 ・絶、滅、雪
 ・起句の「絶」も押韻している。
4.起句と承句の対句を説明する。
 ・数字の対応(千と万、孤と独)
 ・動詞の対応(絶と滅)
5.教師が訳をつける。
 1)あらゆる山で鳥が飛ぶ姿が絶えてなくなり、
  ・千、万=数ではなく、数の多いことを表す。
 2)あらゆる小道で人の足跡がなくなり、
  ・径=小道。
  ・人蹤=人の足跡。
 3)一つの舟に蓑と笠をつけた老人が、
   ・蓑と笠の説明。
 4)一人で、雪の中、寒々とした冬の川で釣りをしている。
  ・倒置法に注意。
6.視点の移動に注意する。
 ・千山(遠景)→万径(中景)→孤舟と老人(近景)
7.翁の気持ちは。
 ・孤独、頑固、偏屈。
 ・清貧、脱俗、自由。
 ・政争に巻き込まれ左遷された。才能があっただけに失意も深い。
 ・しかし、世俗から離れて、自由の境地にある。

江南春
 
1.教師が範読する。
2.生徒と繰り返し音読する。
3.押韻を確認する。
 ・紅、風、中
 ・起句の「紅」も押韻している。
4.教師が訳をつける。
  ・江南は南朝の都であった。
 1)千里四方、鶯が鳴いて、草木の緑が花の紅に映えて美しく、
  ・緑=草木の色。
  ・紅=花の色。
 2)水辺の村、山辺の村にも、酒屋の旗が風に翻っている。
 3)その昔、南朝には、四百八十の寺があったが、
 4)今も、たくさんの寺の高い建物が、雨の中にけぶって見える。
5.季節は。
 ・春。
6.構成は。
 ・起句は、現在の、自然の美しさ。
 ・承句は、現在の、人々の暮らしののどかさ。
 ・転句は、昔の、南朝時代の華やかな風景。
 ・結句は、現在の、心象風景。懐古の情。煙雨が昔と今をつなぐ。
 ・今と昔、自然と人、晴と雨、実際の風景と心象風景の対比。
7.色の対比は。
8.天候は。
 ・起句と承句は、晴れ。
 ・結句は、雨。
 ・草木の緑と花の紅。
9.この詩の趣旨は。
 ・懐旧の念。

静夜思
 
1.教師が範読する。
2.生徒と繰り返し音読する。
3.押韻を確認する。
 ・光、霜、郷
4.教師が訳をつける。
 1)寝台の前に月の光を見つめている。
  ・牀=寝台。
  ・看=じっと見つめる。視線を定めて長時間見る。
     目の上に手をかざしいている象形文字。
 2)疑うことには、これは地上の霜かと。
 3)頭を上げて、山の上の月を眺め、
  ・山月=山上高くかかる月。
 4)頭を下げて、故郷のことを思う。
5.作者はどこにいるか。
 ・寝室にいる。
 ・深夜まで眠らずに物思いに耽っている。
6.作者の目の動きと心の動きは。
 ・牀前→挙頭→低頭。
 ・月光→山月→故郷。
7.月光を見た感想は。
 ・地上の霜と思った。
 ・明るく、地面が白く光って見えるから。
8.季節は。
 ・秋。
9.頭を上げた理由は。
 ・霜か月光か、光源を確かめるため。
10.頭を下げた理由は。
 ・月を見て故郷を思い出したから。
 ・月はどこにいても同じく見える。
11.作者の境遇は。
 ・生涯旅をしていて、いつも故郷を懐かしんでいる。

除夜作
 
1.教師が範読する。
2.生徒と繰り返し音読する。
3.押韻を確認する。
 ・眠、然、年
4.教師が訳をつける。
 1)旅館の寒々とした灯の下でひとり眠れない。
 2)旅人の思いは、どうしてますます悲しいのか。
  ・何事ゾ=疑問の句法。どうして〜か。
 3)故郷では今夜、千里の遠くを思うだろうか。
 4)白髪頭は明朝になれば、さらにまた一年加えることになる。
5.何月何日か。
 ・大晦日。
 ・明朝になれば年が変わる。
6.旅人とは誰で、どこにいるのか。
 ・作者自身。
 ・故郷から千里も離れた遠い所。
7.作者の気持ちは。
 ・正月は故郷に帰り家族と過ごしたいのに、できない寂しさ。
8.「思千里」の主語と気持ちは。
 ・故郷の家族。
 ・家族のために正月も帰らず頑張っているんだという感謝の気持ち。
9.「又」に込められた作者の気持ちは。
 ・作者は30年間科挙の試験を受け続け、50歳ごろに合格して役人になった。
 ・その間、詩作を披露して、名声を高め、有力者の推薦を得るために活動した。
10.作者の気持ちは。
 ・志を遂げられずに、また一年過ぎていく悲しさ。

登高
 
1.教師が範読する。
2.生徒と繰り返し音読する。
3.押韻を確認する。
 ・哀、廻、来、台、杯
4.教師が訳をつける。
 ・登高=陰暦九月九日、重陽の節句に、小高い場所に登り、菊を浮かべた酒を飲んで、厄を払うならわしがった。
 1)風は激しく、天は高く、猿の鳴き声は悲しい。
  ・嘯=声を伸ばして鳴く。
  ・天高=青く晴れ渡っている。
 2)長江の渚は清く、砂は白く、鳥が飛び回る。
 3)果てしなく落葉はものさびしく落ち、
  ・無辺=はてしないこと。
  ・蕭々=ものさびしい様子。
 4)尽きることのない長江は勢いよく流れてくる。
  ・滾々=勢いよく流れる様子。
 5)万里も故郷を離れて、悲しげな秋、いつも旅人になり、
 6)一生病気がちで一人で高台に登る。
  ・百年=一生。
 7)苦しみが甚だしく、霜が降りたように白くなった髪を恨めしく思う。
  ・繁霜鬢=霜が降りたように白くなった髪。
 8)落胆して、濁り酒の杯を手にすることさえやめてしまったばかりである。
  ・新=〜したばかり。
  ・停=手にすることをやめる。
5.対句を説明する。
 ・4連とも対句になっているのは珍しい。
6.詩の構成を説明する。
 ・前半=自然。
 ・後半=自分の境遇。
7.自然の様子は。
 1)風が激しく空が晴れて猿が鳴く→哀しい。
 2)渚が清く砂が白く鳥が飛び回る→澄みきって寂しい。
 3)果てしなく落ちる落ち葉─┬→永遠の循環。
 4)長江が勢いよく流れる──┘
9.作者の気持ちは。
 5)長く故郷を離れて孤独である。
 6)長年肺の病気がちである。
 7)苦労を重ねて年をとった。
 8)好きな酒が飲めなくなった。

黄鶴楼送孟浩然之広陵
 
1.教師が範読する。
2.生徒と繰り返し音読する。
3.押韻を確認する。
 ・楼、洲、流
4.教師が訳をつける。
 ・之=目指すところを意識して行く。
 1)我が友は西の方にある黄鶴楼で別れを告げ、
  ・故人=友。ここでは孟浩然。
  ・辞=別れを告げる。
 2)春霞の中に花の咲く三月、揚州へ下っていく。
  ・煙=霞。
  ・花=桃の花。
  ・揚州=中国最大の港町。
 3)一そうの船の遠ざかる姿が、青空のかなたに消え、
 4)後は、長江が天の果てに流れていくのが見えるだけだ。
5.位置関係を確認する。
 ・黄鶴楼は西にあり、東にある揚州へ行く。
 ・裏表紙裏の地図で確認する。
6.黄鶴楼の伝説を説明する。
 ・辛氏はいう居酒屋の主人がいた。ある時、ボロをまとった老人が現れ、酒を飲ましてくれと言う。辛氏は嫌な顔をせず飲ませてやった。半年後も老人が鮭を飲みに来たが、また飲ませてやった。老人はお礼にみかんの皮で壁に鶴の絵を描いて去った。壁の鶴は手を叩いて歌うと、それに合わせて舞う。その噂で店は繁盛し、大金持ちになった。ある日、再び老人が来て、手にした笛を吹くと、鶴が壁から抜けだし、老人はその鶴にまたがり、空から降りてきた白雲に乗って去って行った。辛氏はその地に楼を黄鶴楼と名付けた。
7.構成について
 ・起句と承句は、人事。人、方位、場所、時。華やいだイメージ。
 ・転句と結句は、自然。
8.色彩の対比は。
 ・黄鶴楼=黄。─┬─暖色
  花  =紅。─┘
  帆  =白。─┬─寒色
  空と水=青。─┘
8.作者の別離の気持ちは。
 ・帆が遠ざかり、空の果てに見えなくなるまで見送っている。
 ・時間の長さが友情の深さを表している。
 ・残された者の寂しさや羨ましさを表している。

送元二使安西
 
1.教師が範読する。
2.生徒と繰り返し音読する。
3.押韻を確認する。
 ・塵、新、人
4.教師が訳をつける。
 1)渭城に朝方降った雨は、細かな土埃を濡らし、
 2)旅館の柳は青々と鮮やかである。
 3)君に勧めよう、もう一杯飲み尽くせ、この酒を。
 4)西の方、陽関を出たならば、親しい友もいないだろう。
 ・故人=親しい友人。ここでは、王維。
5.地図で場所を確認する。
 ・安西は、西の果ての砂漠の中にある。
 ・陽関は、西域との境の関所。
 ・とてつもなく辺境の地へ旅立つ。
 ・無事帰って来るという保証はない。
6.起句と承句の情景は。
 ・土埃も洗われ、さわやかな希望に満ちた空気に包まれている。
 ・旅立ちにとって幸先が良い。
7.柳の意味を説明する。
 ・別れに際して送る人は、柳の一枝を折って、旅立つ人に手渡す習慣がある。
 ・長く伸びて根元が垂れ下がるように、再び帰って来てほしいという気持ち。
 ・枝を丸く輪にして、元の所へ帰ってくるようにという気持ち。
8.作者の気持ちは。
 ・友との別離に堪えきれなくなり、言葉ではなくて、行動で示している。
 ・「別離」の言葉を用いずに心情を表現している。

春望
 
1.教師が範読する。
2.生徒と繰り返し音読する。
3.押韻を確認する。
 ・在、深、心、金、簪
4.教師が訳をつける。
 1)国都長安は戦乱によって破壊されたが、山や川だけが残っている。
  ・国=国都長安。
  ・破=破壊された。
  ・単純接続や順接でなく、逆接である。
 2)長安の街は春がやって来たが、草や木だけが生えている。
  ・城=(城壁に囲まれた)町。
  ・逆接である。草木以外何もない。
 3)時に感じて、花を見ても涙を流し、
 4)別れを恨んで、鳥の声に心を驚かす。
  ・鳥の何に心を驚かすのか。
 5)戦いののろしは何ヵ月も続き、
  ・烽火=戦争や戦乱。
  ・「三月」は三ヵ月や三月ではなく、長い間。漢詩の音の決まりで数字は「三」か「千」しか使えない。
 6)家族からの手紙は万金に値する。
  ・家書=家族からの手紙。
 7)白髪頭は、掻くとさらに短くなり、
 8)すっかり髪止めにたえられない。
  ・簪=冠を止めるために髪にさすピン。
5.時代背景を説明する。
 ・長年の政治に飽きた唐の玄宗は、楊貴妃を寵愛し、政治をおろそかにした。そこで、安禄山が反乱を起こし、長安の町が破壊された。
6.町と自然の対比を説明する。
 ・町は破壊されたが、自然は以前の通り存在している。
 ・不変の自然である花や鳥と対比して、破壊された町を見ると悲しい。
 ・花や鳥は、本来は楽しむものであるが、楽しめないほどの不安がある。
7.対句について考える。
 ・「春望」では首聨も対句になっている。
8.簪をさせないことの意味は。
 ・当時は、成人の男子は必ず冠をつける習慣があった。
 ・一人前の男子として失格である。
 ・再興のために国家や家族の役に立てない。



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漢詩(近代詩)のきまり
一.詩形
  1)一首が(  )句=(      )
      (  )句=(      )
  2)一句が(  )字=(      )
      (  )字=(      )
  3)組み合わせると、(          )(          )
           (          )(          )
二.一首の構成
  1)絶句 ・起句=(                            )
      ・承句=(                            )
      ・転句=(                            )
      ・結句=(                            )
  2)律詩 ・第一、二句=(      )
       第三、四句=(      )
       第五、六句=(      )
       第七、八句=(      )
三.一句の構成
  1)五言=○ ○ ○ ○ ○
  2)七言=○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
四.押韻
  ・押韻とは(                               )
  ・五言詩では、(                    )
   七言詩では、(                    )
五.対句
  ・対句とは(                               )
  ・律詩では(                               )
  ・絶句では(                               )






詩形    押韻        対句              
春暁                   
江雪                
江南                
静夜思                
除夜作                
登高                
黄鶴楼送猛浩然之広陵                
送元二使安西                
春望                 






春暁
 1)春の眠りは、夜明けに気がつかない。
 2)あちらこちらで鳥が鳴いているのが聞こえる。
 3)昨夜、風雨の音がした。
 4)花が落ちているのはどれぐらいだろうか。                   
江雪
 1)あらゆる山で鳥が飛ぶ姿が絶えてなくなり、
 2)あらゆる小道で人の足跡がなくなり、
 3)一つの舟に蓑と笠をつけた老人が、
 4)一人で、雪の中、寒々とした冬の川で釣りをしている。
江南春
 1)千里四方、鶯が鳴いて、草木の緑が花の紅に映えて美しく、
 2)水辺の村、山辺の村にも、酒屋の旗が風に翻っている。
 3)その昔、南朝には、四百八十の寺があったが、
 4)今も、たくさんの寺の高い建物が、雨の中にけぶって見える。
静夜思
 1)寝台の前に月の光を見つめている。
 2)疑うことには、これは地上の霜かと。
 3)頭を上げて、山の上の月を眺め、
 4)頭を下げて、故郷のことを思う。
除夜作
 1)旅館の寒々とした灯の下でひとり眠れない。
 2)旅人の思いは、どうしてますます悲しいのか。
 3)故郷では今夜、千里の遠くを思うだろうか。
 4)白髪頭は明朝になれば、さらにまた一年加えることになる。
登高
 1)風は激しく、天は高く、猿の鳴き声は悲しい。
 2)長江の渚は清く、砂は白く、鳥が飛び回る。
 3)果てしなく落葉はものさびしく落ち、
 4)尽きることのない長江は勢いよく流れてくる。
 5)万里も故郷を離れて、悲しげな秋、いつも旅人になり、
 6)一生病気がちで一人で高台に登る。
 7)苦しみが甚だしく、霜が降りたように白くなった髪を恨めしく思う。
 8)落胆して、濁り酒の杯を手にすることさえやめてしまったばかりである。
黄鶴楼送孟浩然之広陵
 1)我が友は西の方にある黄鶴楼で別れを告げ、
 2)春霞の中に花の咲く三月、揚州へ下っていく。
 3)一そうの船の遠ざかる姿が、青空のかなたに消え、
 4)後は、長江が天の果てに流れていくのが見えるだけだ。
送元二使安西
 1)渭城に朝方降った雨は、細かな土埃を濡らし、
 2)旅館の柳は青々と鮮やかである。
 3)君に勧めよう、もう一杯飲み尽くせ、この酒を。
 4)西の方、陽関を出たならば、親しい友もいないだろう。
春望
 1)国都長安は戦乱によって破壊されたが、山や川だけが残っている。
 2)長安の街は春がやって来たが、草や木だけが生えている。
 3)時に感じて、花を見ても涙を流し、
 4)別れを恨んで、鳥の声に心を驚かす。
 5)戦いののろしは何ヵ月も続き、
 6)家族からの手紙は万金に値する。
 7)白髪頭は、掻くとさらに短くなり、
 8)すっかり髪止めにたえられない。