先従隗始


 燕は新しい王を迎え、国威を取り戻そうとしていた。小国である燕を再建するには優秀な人材を揃えることが急務であった。
 そこで、賢者の隗が昭王に進言した。昔の王の話を持ち出す。雑役夫に大金を与えて名馬を求めさせた。雑役夫は大金の半分の金で死んだ馬の、しかも骨を買って帰ってきた。当然王は怒った。雑役夫は言った。『死んだ馬でさえ大金で買うという噂を聞けば、まして生きた馬ならもっと大金手買ってくれると思い、今に多くの売り手がやってくるでしょう。』一年もしないうちに名馬を三頭も売りに来た。この話から考えると、今、王が堅陣を招き寄せようと思うなら、まず、私を重用することから始めなさい。そうすれば、私より賢い者が、千里を遠いとしないで集まって来るでしょう。」そこで、昭王は隗のために宮殿を改築し、師事した。そこで、賢人が争って燕にやってきた。
 雑役夫の話の死馬を自分に、名馬を賢人に例えて、その集め方を説得している。


1.「学習プリント」の点検。
2.教師が音読する。
3.生徒と音読する。
4.注意すべき書き下し文を板書させる。
5.状況を確認する。
 ・燕王の噲が無能で国内が混乱した。建て直すために昭王がなんとか賢者を招こうとした。そこでその旨を、隗に伝えて意見を求めた。
6.
隗曰、古之君、[有以千金使涓人求千里馬者。]
 1)「使ムAヲシテBセ」が使役の句形であることを確認し訳させる。
  ・Aに(命じて)Bさせる。
  ・A=涓人 B=求千里馬
  ・涓人に千里の馬を求めさせた。
 2)涓人の身分を確認する。
  ・君主の側に仕えて、雑用や掃除をする身分の低い人。
  ・なぜこんな人物に大金を与えたのか疑問である。
7.
買死馬骨五百金而返。君怒。
 1)五百金は大金であることを確認する。
  ・しかも、買ってきたのは、死んだ馬ではなく、その骨である。
 2)君が怒った理由を考える。
  ・千里の馬を買ってこいと命令したのに、死んだ馬の骨を五百金の大金で買ってきたから。
  ・身分の低い愚かと思われる人物に重要な役割を頼んだ王が悪い。
8.
涓人曰、[死馬且買之。況生者乎。]馬今至矣。
 1)「Aスラ且ツB。況ンヤCヲヤ」が抑揚の句形であることを確認して訳させる。
  ・AでさえもBである。ましてCならなおさら(B)である。
  ・AとCを、Bという基準で比較する。CはAより価値があるもの。
  ・A=死馬 B=買う C=生者
  ・死んだ馬でさえ買うのだから、まして生きている馬はなおさらだ(買う)。
 2)「買之」の指示内容。
  ・死馬。
 3)「馬今至」と考えた理由。
  ・死んだ馬にさえ大金を出すという噂を聞いて、千里の馬ならもっと高く買ってくれると思って売りに来るから。
9.
不期年、千里馬至者三。
 1)「期年」の意味。
  ・まる一年。
10.[
今、王必欲致士]、先従隗始。[況賢於隗者、豈遠千里哉。]
 1)「今Aセバ」が仮定の句形であることを確認して訳させる。
  ・もしAならば
  ・もし王が賢者を求めようと思うのならば、
 2)「始」の具体的な内容は。
  ・優遇する。
 3)「況ンヤ」が抑揚の句形であることを確認する。
  ・隗と賢於隗者を比較している。
 4)「於」の役割を説明する。
  ・下の字に「ヨリ」という送り仮名がついて、比較を表す。
  ・「ニ」を送れば、場所、対象、原因、受け身。
  ・「ヲ」を送れば、目的語。
  ・「ヨリ」を送れば、起点。
 5)「豈ニAン哉」が反語の句形であることを確認する。
  ・どうしてAだろうか、いやAでない。
  ・どうして千里を遠いと思うだろうか、いや思わない。
11.
於是昭王為隗改築宮、師−事之。於是士争趨燕。
 1)「於是」の意味を確認する。
  ・そこで
 2)「師事之」の意味と指示内容は。
  ・師として尊敬し、教えを受けること。
  ・隗。
 3)士が争って燕に来た理由。
・隗のような平凡な人物でさえ優遇されるのだから、もっと優秀な人材ならもっと優遇してもらえると思って集まってくる。
12.比喩を考える。
 ・千里馬=賢者 死馬=隗。
 ・賢者を招くには、無能な自分を雇うことから始めると、より優秀な者が活躍の場を求めて集まってくるでしょう。
13.「先従隗始」の意味。
 ・言い出したものから実行せよ。



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先従隗始 (隗曰、「古之君〜) 学習プリント

点検  月  日
学習の準備
1.次の漢字の読み方を書け。
 古 使ムル 且ツ 況ンヤ 先ヅ 豈ニ 於イテ 是 燕
2.原文を写しなさい。
3.原文の右に書き下し文を書きなさい。特に、次の部分に注意しなさい。
 1)古之君有以千金使涓人求千里馬者。
 2)死馬且買之。況生者乎。
 3)不期年、千里馬至者三。
 4)先従隗始。
 4)況賢於隗者、豈遠千里哉。
 5)於是昭王為隗改築宮、師事之。
4.原文の左に現代語訳を書きなさい。

学習のポイント
1.使役の句形を理解する。
2.抑揚の句形を理解する。
3.比較の句形を理解する。
4.反語の句形を理解する。
5.「君怒」の理由を理解する。
6.千里馬がやって来た理由を理解する。
7.涓人が死馬骨を五百金で買ってきた理由を理解する。
8.隗がまず自分から雇えと言った理由を理解する。
9.昭王が隗に師事した理由を理解する。
10.「千里馬」「死馬骨」は何を例えているか。
11.「先従隗始」は現在ではどのような意味で使われているかを理解する。