かぐや姫のおひたち


 古文入門を受けて、現代語訳の仕方をていねいに教えていく。
 宿題として、本文写しと古語調べを課す。古語調べは予め「学習プリント」で調べる古語を指定しておく。その際、原文のまま表記し、品詞名を示して適当な形に直して辞書を引くようにしてある。
 前半、後半に分けて、訳と内容を問うていく。
 音読をし、単語に分ける。これは繰り返しやって勘を養う。
 現代語訳では、助動詞の意味を指摘し、主語を示す助詞を補わせたり、主語を補わせたりする。調べた古語はその都度聞く。
 前半の内容は、登場人物とその仕事や名前の確認、かぐや姫発見の様子、翁がこの子を自分の子供だと思った理由、養育方法などを取り上げる。
 後半の内容は、かぐや姫の霊力、成人の儀式、名づけ、宴会の様子などを取り上げる。


1.【指】本文写しを宿題にする。
2.【指】宿題の点検をする。

●前半(今は昔、〜豊かになり行く)
3.【指】歴史的仮名遣いを○で囲む。15カ所。
 ・個人作業→隣の生徒と確認する。
4.【指】スライドで確認する。
 ・場合によっては配信する。
5.【指】音読する。
 ・範読→追読→一斉読
6【L1】あらすじを確認する。
 1)いつの話か。
  ・今は昔
 2)翁の仕事は。
  ・竹取り
 3)翁の名前は。
  ・讃岐の造
 4)翁は竹の中に何を発見したか。
  ・もと光る竹の中の三寸ばかりなる人。
 5)翁は誰に何に入れて育てさせたか。
  ・妻の嫗に、籠に入れて
 6)翁は竹の中に何を見つけることが多くなったか。
  ・黄金ある竹。
 
7.今は昔、竹取の翁といふありけり。野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり。名をば、讃岐の造となむいひける。
 1)【指】単語に分けさせる。
 2)【法】用言を指摘して、行と活用の種類、できれば活用形を答えさせる。
 3)【語】語句のチェックをする。
  ・今は昔=今となってはと昔のこと。
  ・翁=老人。
  ●よろづ=多く。いろいろ。
 4)【訳】生徒に訳させる。
  ・今となってはと昔のことだが、竹取の老人という人がいた。野山に入って竹を取りながら、いろいろなことに使っていた。名前を讃岐の造と言った。
 5)Q1竹を何に使ったか。
  ・籠、ざる、ほうき。
  ・籠は後で出てくる。
8.その竹の中に、もと光る竹なむ一筋ありけるあやしがり寄り見るに、筒の中光りたり。それを見れば、三寸ばかりなる人、いとうつくしうゐたり
 1)【指】単語に分けさせる。
 2)【法】用言を指摘して、行と活用の種類、できれば活用形を答えさせる。
 3)【語】語句のチェックをする。
  ・あやしがる=不思議に思う。
  ・うつくし=(肉親や恋人、あるいは目下の者に対する愛情)かわいらしい。
  ・ゐる=座っている。
 4)【訳】生徒に訳させる。
  ・その竹の中に、根本が光る竹が一筋あった。不思議に思って近寄って見ると、竹の中が光っている。それを見ると、三寸ぐらいの人が、たいへんかわいらしい様子で   座っていた。
 5)【L1】なぜ不思議に思ったのか。
  ・根本が光っていたから。
 6)【L1】「それ」の指示内容は。
  ・筒の中。
 7)【L1】「三寸」とは何cm。
  ・9cm。
 8)Q2竹はどのような状態になっていたか。
  ・根本の部分で斜めに切られていた。
  ・根本の部分に穴があいていた。
9.翁言ふやう、「わが朝ごと夕ごとに見る竹の中におはするにて、知りぬ。子になりたまふべきなめり。」とて、手にうち入れて、家へ持ち来ぬ。妻の預け養はす。 うつくしきこと限りなし。いとをさなければ、籠に入れて養ふ。
 1)【指】単語に分けさせる。
 2)【法】用言を指摘して、行と活用の種類、できれば活用形を答えさせる。
 3)【語】語句のチェックをする。
  ・おはす=「いる」の尊敬語。いらっしゃる。
  ・たまふ=尊敬の補助動詞。
  ・嫗=老婆。
  ・をさなし=小さい。
 4)【訳】主語を補って、生徒に訳させる。
  ・老人が言うには、「私が毎朝毎夕見る竹の中に(この子が)いらっしゃるので、(私は)知った。私の子どもにおなりになるはずの人であろう」と言って、手に入れて、家へ持ち帰った。妻の老婆に預けて育てさせる。(この子が)かわいらしいことはこの上ない。たいそう小さいので、(嫗は)かごに入れて育てる。
 5)【L1】何知ったのか。
  ・自分の子どもになること。
 6)Q4なぜ翁はこの子を自分の子だと思ったのか。
  ・私が毎朝毎夕取っている竹の中にいたから。
10.竹取の翁、竹を取るに、この子を見つけてのちに竹取るに、節を隔てごとに黄金ある竹を見つくること重なりぬかくて、翁やうやう豊かになりゆく。
 1)【指】単語に分けさせる。
 2)【法】用言を指摘して、行と活用の種類、できれば活用形を答えさせる。
 3)【語】語句のチェックをする。
  ・やうやう=次第に。
 4)【訳】生徒に訳させる。
  ・竹取の老人が、この子を見つけて後に竹を取るのに、節を隔ててよごとに黄金がある竹を見つけることが重なった。こうして、老人は次第に豊かになっていく。
 5)Q5なぜ竹の中から金が出てきたのか。
  ・この子を見つけたから。
  ・この子は月の世界の姫様で、その養育費。
11.この児、養ふほどに、すくすくと大きになりまさる。三月ばかりになるほどに、よきほどなる人になりぬれば、髪上げなどさうして、髪上げさせ裳着す
 1)【指】単語に分けさせる。
 2)【法】用言を指摘して、行と活用の種類、できれば活用形を答えさせる。
 3)【語】語句のチェックをする。
  ・さうす=あれこれ手配する。
  ・髪上げ=振り分け髪の前髪を結い上げて後ろへ垂らす。成人の儀式。
  ・裳=袴の後ろだけのもの。成人の儀式。
 4)【訳】主語を補って、生徒に訳させる。
  ・(翁が)この子を、養っている内に、(この子は)すくすくと大きくなった。3カ月ほどになると、(この子が)ちょうどよい身長になったので、(翁は)髪上げなどあれこれ手配して、髪を上げさせ、裳を着せた。
 5)【L2】「よきほどなる人」とは何がよいのか。
  ・大人の身長。
  ・当時の大人の慎重は一四〇cm程度。
 6)【説】成人式の儀式。
  ・男子は十五歳前後、女子は十三歳前後。
  ・男子は、元服で、冠をかぶる。
  ・女子は、今まで振り分け髪であったものを、前髪を結い上げて後ろへ垂らし
   たり、裳を着せたりする。
  ・他に、歯を黒く染める「歯黒め」、眉毛を抜いて眉墨で描く「引き眉」の風習もあった。
 7)Q6なぜ、成人の儀式をしたのか。
  ・卑しい竹取から、貴族の仲間入りをした。
  ・結婚の資格を得る。
11.の内よりも出ださずいつき養ふ。この児のかたちけうらなること世になく、屋の内は暗き所なく光満ちたり。翁心地あしく苦しきときも、この子を見れば、苦しき こともやみぬ腹立たしきことも慰みけり
 1)【指】単語に分けさせる。
 2)【法】用言を指摘して、行と活用の種類、できれば活用形を答えさせる。
 3)【語】語句のチェックをする。
  ・帳=垂れ絹。ネットで調べる。
  ・いくつ=大切にする。
  ・けうらなる=気品があって美しい。最高の美しさを表す語。
 4)【訳】主語を補って、生徒に訳させる。
  ・(翁は)帳の中からも出さず、大切に養う。この子の顔だちは、気品があって美しいこと世の中になく、家の中は暗い所がなく光が満ちていた。翁が気分が悪く苦し   い時も、この子を見ると、苦しいことも止まった。腹立たしいことも慰んだ。
 5)【L3】こうした育て方を何というか。
  ・箱入り娘。
  ・深窓の令嬢。
  ・籠の鳥。
  【注】籠に入れて養うと重なる。
 6)【L3】かぐや姫の美しさを表現する語のこ変化は。
   ・うつくし(可愛らしい)→けうら(気品があって美しい)
 7)【L2】ここまでの部分で、不思議なことはないか。
  ・竹の中が光っていた。
  ・その竹の中にいた。
  ・身長が三寸だった。
  ・この子を見つけてから、竹の中から金が出てきた。
  ・三カ月で、大人の背丈になった。
  ・家の中が光に満ちる。
  ・この子を見れば気分もよくなり怒りも納まる。
 8)【L3】不思議さの共通点は。
  ・光に関係がある。
  ・竹や成長のイメージ。
12.翁、竹を取ること久しくなり。勢ひ猛の者になりにけり。この子いと大きになりば、名を、三室戸斎部の秋田を呼びつけさす。秋田、なよ竹のかぐや姫とつけ
 1)【指】単語に分けさせる。
 2)【法】用言を指摘して、行と活用の種類、できれば活用形を答えさせる。
 3)【語】語句のチェックをする。
  ・猛=勢いが盛んな様。
  ・三室戸斎部の秋田=三室戸は宇治の地名。斎部は氏。秋田は名前。三室戸に住む斎部秋田さん。
 4)【訳】主語を補って、生徒に訳させる。
  ・翁は竹を取ることが長くなった。勢いの盛んな者になった。この子が大きくなったので、名前を、三室戸に住む斎部秋田を呼んで付けさせる。秋田はなよ竹のかぐや姫と名付けた。
 5)【説】「なよ竹のかぐや姫」の意味は。
  ・「なよ竹」は、細くしなやかにたわむ若竹。
  ・「かぐ」は、光り輝く。
  ・「や」は、詠嘆。
  【注】今まで名前がなかった。
  【L4】生徒の名前の意味は。
 7)Q7なぜここで名付けたのか。
  ・翁の物語から、かぐや姫の物語へ変わる。
  ・名前が付くことからその人を中心にした物語になる。
13.このほど三日うちあげ遊ぶ。よろづの遊びをぞける。男はうけきらはず呼び集へて、いとかしこく遊ぶ。世界のをのこ貴なるいやしきも、いかでこのかぐや姫を得てし がな、見てしがなと、に聞き、めで惑ふ
 1)【指】単語に分けさせる。
 2)【法】用言を指摘して、行と活用の種類、できれば活用形を答えさせる。
 3)【語】語句をアイパッドで調べる。
・遊ぶ=音楽の演奏を楽しむ。
・かしこし=盛大に。自然界の霊力や威力のあるものに対して、古代人が描いた恐れおののく気持ちを表す。
・あてなる=身分が高い。
・いやし=身分が低い。
・いかで=なんとかして。願望。
  ・見る=会う。女性に会うことは結婚を意味する。
   ・音=噂。
・めづ=愛する。
・惑ふ=乱れる。
 4)【訳】主語を補って、生徒に訳させる。
  ・この間三日ほど宴会をして音楽の演奏を楽しんだ。男は分け隔てせず、呼び集めて盛大に楽しんだ。世の中の男は、身分の高い人も低い人も、なんとかしてこのかぐ   や姫を手に入れたいものだ、見たいものだと、噂に聞き、愛し思い乱れる。
 5)【L3】対句的表現は。
  ・あてなるもいやしきも
  ・得てしがな見てしがな
 6)Q8なぜ翁は三日間も盛大な宴会をしたのか。
  ・結婚相手を選ぶため。
  ・翁の身分が低いので、宣伝しなければ人は集まらない。
  ・身分の低い男はダミーで、身分の高い人とを結婚相手にしようとした。
  ・最終目標は、天皇。
 7)【L3】全体を通じて、基本になる数字は。
  ・三
14.その後の物語の概略を説明する。
 1)五人の貴公子の求婚譚。
  1)石作(いしづくり)皇子には、天竺(インド)「仏の御石の鉢」を命じた。
   皇子は天竺まで取りに向かっても無駄であるとして、偽の石の鉢を山寺から盗み取って、これをもってかぐや姫に届けた。
   しかし、鉢の中が光るはずなのに光らず偽   物とばれる。
  2)車持(くらもち)皇子には、根が銀、茎が金、実が真珠の木の枝でできた「蓬莱の玉の枝」を命じた。
   皇子は、工匠(たくみ)らと共に工房に隠れ、偽の玉の枝を完成させ、難波の港から旅の姿のまま寄りました、と言ってかくや姫の館の門を叩く。
   しかし、工匠らが給料の支払いを求めてかくや姫の館に押し寄せ、一切が露見する。
  3)阿倍右大臣には、燃えないとされる「火鼠の裘(かわごろも)」を要求した。
   大臣は、唐の国にを買いに行かせるが、唐の商人騙されて偽の皮衣をつかまされる。
   しかし、燃えるはずはないと火を掛けられ、すると皮衣の大層めらめらと燃える。
  4)大伴大納言には、「竜(たつ)の頸(くび)の玉」を要求する。
   大納言は、部下に探させるが、海上で暴風雨にあって死にそうになって逃げ帰る。
  5)石上(いそのかみ)中納言には、「燕(つばくらめ)子安(こやす)の貝」を要求する。
   中納言は役所の屋根に巣くう燕の巣より、自ら子安貝を取り出だそうとして、転落して腰を折って死んでしまう。
 2)かぐや姫の昇天
  ・最後は帝から求婚される。
  ・八月十五日、月から迎えが来る。かぐや姫は月の世界で罪を犯して罰として地球に流されていたのだった。
  ・帝軍は必死で防戦するが、魔力によって戦う気力を喪失してしまう。
  ・かぐや姫は、形見の品と手紙を翁と帝に残して月へ帰る。
  ・翁は、形見の不死の薬を天に一番近い山で焼かせる。以来、その山を富士(不死)山という。