ひよこの目
山田詠美
教材観
一
中学三年の秋、季節外れの転校生相沢幹夫が転校してくる。挨拶の時、幹生は、うわのそらで、落ち着いて、全く動じず、ただ立ち尽くして、教室を見下ろし、何か空気中にある彼自身にしか見えないものを見ている。担任は無視をされたと思い不快になって、顔を赤らめて咳払いをする。亜紀は初対面のはずなのになぜか懐かしい気持ちに包まれ、その感情について考え、もどかしく思っている。
二
亜紀は好奇心からでなく、心の中のもどかしさを取り去るために、一日中幹生を盗み見する。幹生の目はやはり実在しないが彼にとって重大な何かを、うっすらと涙の膜を張りながら真剣に見つめていた。そんな亜紀を、クラスの生徒は恋をしていると噂する。受験を控えた生徒にとって格好の気分転換であった。亜紀は必死で否定しようとすればするほど、かえって意識してしまう。
三
文化祭のクラス委員にさせられる。幹生はあっさり引き受ける。これ以上注目されたくないし、亜紀が自分のことを見ていることを確かめたかったからだろう。亜紀は懐かしさを思い出すために見ていたとありのままを伝える。幹生はすべて承知していた。物事を正確に見つめられる人だった。亜紀は、味方を得たようで気持ちが楽になった。思い切って心の中に棲んでいる疑問、あの懐かしい感情、何かを見つめているように見えることを話した。幹生は否定するが、その時もあの目をしていた。さらに問い詰めるが逃げられてしまう。そこで、話題が変わり、亜紀が幹夫が女子に人気があると言うと、幹夫はほんの一瞬唇をかんでしまったという表情を見せ、全然たいしたことじゃないと投げやりに言った。幹生は注目されたくないのである。そんな幹生を亜紀は、自分などに及びもつかないことを隠し持っている、自分たちの年齢の人間が許容できる以上の大きさの何かを背負っていると感じる。亜紀と必要以上に親しくなることを拒否しているように見え、遠い存在のように思えて不意に悲しい気持ちになった。
四
二人の交際は深まり、亜紀は幹生が自分に気を許しはじめたように感じた。うわのそらの様子が亜紀と一緒にいる時に影を潜めるようになったからである。亜紀も懐かしい気分を忘れて、知り合ったばかりの男子生徒と女子生徒として付き合う。亜紀が楽しい気分になるために幹生を悲しい場所に置きたくないと考えるようになった。それは恋だった。しかし、亜紀が父親の仕事を聞いた時、幹生は一瞬不意をつかれたようなうろたえた表情をみせた。触れられたくない部分だったのだろう。きわめて明るい調子で、不幸な家庭の打ち明け話をするが、すぐに冗談だと否定する。本当なのか嘘なのか私には分からず不安になるが、幹生の手が触れると気持ちが楽になる。幹生が目の前で笑っていると気分が落ち着くが、亜紀の目の届かない所でつらい目に会っていたらと考えると、よけいに怖くなる。
五
幹夫が突然、「亜紀は、おれのこと好きなの?」と問う。亜紀は顔が真っ赤になり慌てるが、思い切って「好きだから。心配だから」と告白する。幹生は「おれも、亜紀のこと、好きだな」と言う。そして、今でも懐かしいかと問われて、なんだか怖いから「思いたくない」と答える。そんな二人を亜紀は、肩を寄せ合う以外に好きだということを確かめられない、せつない、鯉をカタルには幼すぎると思う。幹生は、昔は冬は寂しくて嫌いだったが、今は体の中の温かさが確かめられて好きになったと言う。それは亜紀と知り合ったことによる大きな変化だろう。家が貧しくて高校に行けないことについても、前向きに解決策を考えているような口ぶりだった。二人は、ジャケットのポケットのなかで手を握りあった。狭い世界だったが、二人はその中では幸せだった。
六
家に帰って、妹と母親との会話の中で、祭りで買ってきて死なせてしまったひよこのことが話題になった。その時、私の幹夫に対する懐かしさはひよこの目であったことに気づく。ひよこは、自分の死を予期しているかのように澄んだ瞳を見開いていた。何もかも映し出しているようで、何も見ていない目に、なぜか恐怖を感じた。それは「最初っから、生きる気なんかなかった」「諦観」を感じさせた。幹生も同じ目をしていた。そして、恐ろしさを払拭するために、恋をしてしまったのだ。
七
そして、実際相沢君は、父親が病気を苦にした自殺の道連れになって死んでしまった。私は、中三にして、「人間は思う通りにいかないことがある」のを知ってしまい、すっかり気落ちしてしまった。彼は、あの公園で、「確かに生きようとしていた」。人生に対して礼儀正しい人」だった。
それから、街の雑踏や電車の中で、ひよこの目に出会った。その時、「もはや、あなたは、死というものを見つめているのではありませんか」と尋ねて見たい衝動にかられる。
読解の中心の一つは、懐かしさの原因である。結論としては、死を見つめていたひよこの眼だった。伏線として、幹生の見つめている何か、幹生が人の目を避けようとしていること、家庭環境がある。
もう一つは、亜紀の気持ちの変化である。懐かしい気持ちが、その原因が何となく恐ろしいもののように思われ、自分が楽しい気分になるために、幹生も幸せであって欲しいと願い、不安の原因である懐かしい気持ちを忘れようとする。「恋」とは何か。
最後に大きな問題提起として、読者もひよこの眼をしていないかと問いかける。
1.【指】幹生が死ぬ前までのテキストを配布する。
2.【説】一人称小説の特質をおさえた読み方。
・一人称小説では「私」という視点を通して一元的にでき事や登場人物が描かれる。
「私」の内面を直接語ることができるので、この小説のように主人公の心の揺れを描こうとする場合に都合のよい手法である。
・ただし、この手法には「私」の心情が独善的に語られやすいという短所もある。
・したがって、この小説の場合、「私」の心理を細かく読み解くとともに、「私」を取り巻く他の登場人物との関係にも注意させることが大切である。それによって「私」という人物をより客観的に把握することができるのである。
3.教師が範読する。
4.感想を書かせる。
第一段落(はじめ〜もどかしく思った。)「幹生の転校」
1.漢字の書き取りを確認する。
1)ナツ(懐 )かしい 2)タン(端 )を発する 3)胸をオオ(覆 )う 4)キョウダン(教壇 )に立つ 5)ナイショ(内緒 )話 6)ウナガ(促 )す 7)セキ(咳 )払い 8)ケゲン(怪訝 )な表情 9)メクバ(目配 )せを交わす 10)ソウグウ(遭遇 )する 11)ト(解 )けない問題
2.語句の意味を確認する。
1)端を発する(それがきっかけになって物事が始まる
2)立ち尽くす(感激したり呆然となったりして、いつまでもじっと立っている。
3)うわのそら(他の事に心が奪われて、そのことに注意が向かないこと。
4)怪訝(納得がいかず、不思議に思うこと。
5)ひょうひょうと(考えや行動が世間ばなれしていて、つかまえどころのないさま。
6)遭遇(不意に出あうこと。偶然にめぐりあうこと。
3.内容の読解
1)【L2】話の発端は、いつ・だれが・どこに・何をしたのか。
・中学3年の秋に相沢幹生が亜紀のクラスに転校してきた。
1)幹生について
2)【L1】相沢幹生の様子は。
・澄んだ瞳で、教室を見下ろしていた。
・全く動じない様子。
・ただ立ち尽くす。
・落ち着いていた。
・何かを見ている。
3)【L3】それぞれの語のニュアンスの違いは。
・「見下ろしていた」は、同級生より大人びていることを暗示している。
・「動じない」と「落ち着いている」は、安定している。
・「立ち尽くす」は、緊張している。
4)【L3】幹生が見ている何かとは。
・空気中にある彼自身にしか見えないもの。
【説】今後何回か出てくるので、徐々に理解を深めていく。
5)【L1】幹生の様子を一言で言えば。
・うわのそら。
2)教師について
6)【L2】「教師は、顔を赤らめて、咳払いをした」理由は。
・無視されたと思って腹が立った。
7)【L2】幹夫が「怪訝な表情」をした理由は。
・教師を無視するつもりがなかったから。
3)クラスについて
8)【L2】幹生がクラスの一員になった理由は。
・担任教師を嫌っていたので気に入った。
4)亜紀について
9)【L1】亜紀の気持ちは。
・懐かしい気持ち。
・せつない感情。
・驚き、混乱した。
10)【L3】「懐かしい」と「せつない」の違いは。
・懐かしい
・昔のことが思い出されて、心がひかれる。
・せつない
・寂しさや悲しさなどで、胸がしめつけられるような気持ち。
・つらくやるせない。
11)【L2】「驚き、混乱した」理由は。
・人生経験の少ない中学3年の自分に、懐かしがるようなものは存在しないから。
・懐かしいのに、悲しいから。
5)幹生の評判について
12)【L1】生徒の様子は。
・季節外れの転校生の秘密を知りたがった。
・転校生の季節は春。この小説は秋。
・大人っぽい。
13)【L1】幹生の対応は。
・個人的な事情などは、うまいぐあいに避けてことばを選びながら会話を交わしてい る。
14)【L1】亜紀の様子は。
・懐かしい感情について考えていた。
・自分自身をもどかしく思った。
・懐かしい理由がわからない。
第一段落(幹生の転校)
1.幹生=転校生、中学3年生
・澄んだ瞳で、教室を見下ろしていた=大人びている
・全く動じない様子=安定
・落ち着いていた=安定
・ただ立ち尽くす=緊張
・何かを見ている。
・空気中にある彼自身にしか見えないもの。
↓
・うわのそら。
2.教師=顔を赤らめて、咳払いをした
・無視されたと思って腹が立った。
幹生=怪訝な表情で教師を見る
・なぜ怒られるのかわからない。
・無視をしたわけではない。
3.クラス=幹生をクラスの一員に認める
・担任教師を嫌っていたので気に入った。
4.亜紀の様子
・懐かしい気持ち=心が引かれる
⇔驚き、混乱
・せつない感情=悲しい、寂しい
5.幹生の評判
・生徒=季節外れの転校生の秘密を知りたがった。
・幹生=大人っぽい
個人的な事情などは避ける。
・亜紀=懐かしい感情⇔理由がわからない
↓
もどかしく思った。
第二段落(その日以来〜転換法だったのだ。)「二人の噂」
1.漢字の書き取りを確認する。
1)目にウツ(映 )る 2)ボウゼン(呆然 )とする 3)フホンイ(不本意 ) なうわさ 4)ケハイ(気配 )を感じる 5)ヘイセイ(平静 )を装う
2.語句の意味を確認する。
1)つたない(事を行うのに巧みでない。へたである。
2)呆然(あっけにとられているさま。
3)平静(態度・気持ちが落ち着いていること。
4)舌打ちする(いらだちを表すしぐさ。
3.内容を読解する。
1)亜紀について
1)【L1】亜紀の様子は。
・一日じゅう幹生を盗み見ていた。
2)【L1】その理由は。
×好奇心からではなかった。
・もどかしさを取り除きたかった。
・懐かしいと思う理由を知りたかった。
3)【L1】気持ちは。
・いらだっている。
2)幹生について
4)【L1】幹生の様子は。
・いつも真剣に何かを見つめている。
・うっすらと涙の膜が張っている。
5)【L1】何かとはどのように書かれているか。
・実在するものではない。
・彼にとっては重大なもの。
6)【L3】何かとはどんな感じのものか。
・重要だが、悲しいもの。
3)クラスの噂について
7)【L2】どんな噂が流れていていたか。
・亜紀が相沢を好きなこと。
8)【L1】その根拠は。
・亜紀がいつも相沢をぼおっと見ているから。
9)【L2】亜紀が幹生を見ている理由は。
×甘い気分でいるのではない。
・恋愛感情ではない。
・懐かしい気持ちの原因を探すため。
10)【L1】亜紀の気持ちは。
・泣きたい気分。
・無防備だったことに舌打ちしたい気分。
11)【L1】クラスメイトが噂をする理由は。
・受験を控えた中三にとって手ごろな気分転換であった。
・よくある学園もののパターンである。
・ここまでは、安物の学園青春ドラマである。第二段落「二人の噂」
第二段落
1.亜紀について
・一日じゅう幹生を盗み見ていた。
×好奇心
○懐かしさの理由を知りたい。
↓
・いらだっている。
2.幹生について
・いつも真剣に何かを見つめている。
実在しない
彼にとって重大
・うっすらと涙の膜が張っている。
↓
・重要だが、悲しいもの。
3.クラスの噂について
・亜紀が相沢を好き
・亜紀がいつも相沢を見ているから。
×甘い気分でいるのではない。
恋愛感情
○懐かしい気持ちの理由を知りたい
↓
・泣きたい気分。
・無防備だったことに舌打ちしたい気分。
いらだつ
↑
・受験を控えた中三にとって手ごろな気分転換であった。
第三段落(それは、秋の学園祭〜そういう人に見えた。)「幹生との交際」
1.漢字の書き取りを確認する。
1)ツノ(募 )る 2)ブゼン(憮然 )とした表情 3)ヒジ(肘 )をつく 4)帰りシタク(支度 ) 5)ホホ(頬 )に血がのぼる 6)心の中にス(棲 )む 7)アワ(慌 )てる 8)ササイ(些細 )事柄 9)心をクダ(砕 )く
2.語句の意味を確認する。
1)憮然(失望や落胆してどうすることもできないでいるさま。
2)首をかしげる(疑問に思う。
3)些細(あまり重要ではないさま。
3.内容を読解する。
1)クラスについて
○【説】委員を決める時の様子。
・男子生徒=無責任にはやしたてる。
・女子生徒=亜紀に同情して反対しようとする。しかし、賛成に手を挙げる。
・仲のよい女子生徒=憮然としている。
・クラス委員=少し困るが多数決をとる。
・多数決を採れば賛成多数になることはわかっているが、自分の責任ではなくなる。
・多くの生徒=他人事であり無責任である。
2)幹生について
1)【L3】幹生が実行委員を引き受けた理由は。
・早く解決したかった。
・拒否すれば話し合いが長引き、悪意にさらされる時間が長くなるだけ。
・亜紀を救おうとした。
・亜紀が自分を見つめる理由を聞く機会を作ろうとした。
【説】他にもいろいろな意見が予想される。
2)【L1】亜紀の気持ちは。
・うつむいて涙をこらえていた。
・どうにでもなれという気分。
・開き直り。
3)二人の会話について
3)【L1】亜紀がどぎまぎしていた理由は。
・男子生徒と連れ立って歩いた経験がなかったから。
4)【L2】亜紀が伝えておかねばならない自分の気持ちとは。
・好きで見つめていたのではないこと。
5)【L3】幹生がちらりと亜紀を横目で見て笑った理由は。
・私の言いたいことがわかっていたから。
6)【L3】亜紀の頬に血がのぼるのを感じた理由は。
・私が見ていたことを、幹生が気づいていたので、恥ずかしいから。
7)【L3】亜紀がため息をついた気持ちは。
・幹生が本当のことを知っていてくれて、安心した。
8)【L2】本当のこととは何か。
・亜紀には甘い気持ちがないこと。
恋
9)【L1】亜紀の幹生への評価はどう変わったか。
・味方を得たような気分
・物事を正確に見つめることのできる人。
10)【L1】亜紀の心の中にずっと棲んでいる疑問とは。
・会ったことがないのに、幹生の目に懐かしさを感じる理由。
11)【L3】幹生が再びあの目をしている理由は。
・亜紀と向き合っていない。
・うわのそら
12)【L1】亜紀の幹生に対する印象は。
・大人っぽい。
・自分たちより、ずっと先を行っている。
13)【L3】幹生がほんの一瞬、唇をかんで、投げやりに言った理由は。
・人に注目されることに、まずいと思った。
14)【L1】亜紀が不意に悲しい気持ちになった理由は。
・私などが及びもつかないことを隠し持っていると思ったから。
・私たちの年齢の人間が許容できない何かを背負っている。
第三段落「幹生との交際」
1.クラスについて
・男子生徒=無責任にはやしたてる。
・女子生徒=亜紀に同情して反対しようとする。しかし、賛成に手を挙げる。
・仲のよい女子生徒=憮然としている。
・クラス委員=少し困るが多数決をとる。
2.幹生が実行委員を引き受ける
・早く解決したかった。
・亜紀を救おうとした。
・亜紀が自分を見つめる理由を聞く機会を作ろうとした。
3.亜紀の気持ち
・うつむいて涙をこらえていた。
・どうにでもなれという気分。
4.二人の会話
亜どぎまぎしていた
・男子生徒と連れ立って歩いた経験がなかったから。
亜伝えておかねばならない気持ち
・好きで見つめていたのではないこと。
幹ちらりと亜紀を横目で見て笑った
・私の言いたいことがわかっていたから。
幹亜紀が見ていたことを知っていた。
亜頬に血がのぼる
・恥ずかしい
亜ため息をついた
・本当のことを知っていてくれて、安心した。
甘い気持ち(恋)でないこと
亜幹生の評価
・味方を得た
・物事を正確に見つめることのできる人。
亜心の中の疑問を話す
・会ったことがないのに、懐かしい
幹再びあの目をしている
・亜紀と向き合っていない。
・うわのそら
亜幹生の印象
・大人っぽい。
・自分たちより、ずっと先を行っている。
幹ほんの一瞬、唇をかんで、投げやりに言った
・人に注目されることに、まずいと思った。
亜不意に悲しい気持ちになった
・私などが及びもつかないことを隠し持っていると思ったから。
・私たちの年齢の人間が許容できない何かを背負っている。
第四段落(その日から、私たちは〜暗い影が差す。)「二人の恋(1)」
1.漢字の書き取りを確認する。
1)シュウチ(周知 )のこと 2)幸せをサズ(授 )ける 3)アマズ(甘酸 )っぱい
2.語句の意味を確認する。
1)周知(世間一般に広く知れ渡っていること。
2)やるせない(思いを晴らすすべがない
3)気のおけない(気をつかったりする必要がなく、心から打ち解けることができる。
3.内容を読解する。
1)二人の変化
1)【L1】幹生の変化は。
・亜紀に気を許し始めている。
2)【L1】その根拠は。
・私と一緒の時は、うわのそらの様子が影を潜めるようになったから。
・よく笑った。
3)【L1】亜紀の変化は。
・懐かしい気分を忘れた。
・楽しさ以外には何もなかった。
4)【L1】その理由は。
・好意を持ち過ぎていたから。
5)【L2】好意を持ちすぎると懐かしいと思わなくなる理由は。
・好きな男には、のんきな幸せを授けたい。
・自分が楽しい気分になるためには、相手もそうでなくてはならない。
・彼を悲しい場所に置きたくない。
・彼が幸福でないことは、自分の心を傷つける。
6)【L1】この今までに味わったことのない甘酸っぱい感情をひと言で言えば。
・恋
7)【L1】実際の二人の関係は。
・気のおけない友人
2)幹生の家庭について。
8)【L1】幹生の家庭環境は。
・父が病気で仕事ができない。
・借金取りたてから逃げてきた。
・母は小さい頃に男と逃げた。
9)【L3】亜紀が転校の理由を聞いた時、一瞬うろたえた理由は。
・触れられたくない話題だったから。
10)【L3】きわめて明るい調子で言った理由は。
・自虐的ではあるが、思い切って本当のことを言ってすっきりしたかった。
・うそを言って誤魔化そうとした。
11)【L3】幹生は言い終わって「冗談」と言っているが、真相は。
・嘘なら、亜紀をからかったことになる。
・本当なら、冗談にして誤魔化し、亜紀のショックを和らげるため。
12)【L3】本当だったとしたら、なぜ本当のことを言ったのか。
・亜紀を信用していた。
・亜紀になら弱みを見せてもいいと思った。気を許していた。
13)【L3】逃げる必要がないとはどういう意味か。
・借金が返せるから。
・自殺するから。
3)亜紀の気持ちについて
14)【L1】気持ちが楽になる理由は。
・目の前に好きな人がいるから。
・目の前で笑っているから。
15)【L1】同時に、怖くなる理由は。
・目の届かない所で、彼がつらい目にあっているかもしれないから。
第四段落「二人の恋(1)」
1.幹生の変化
・亜紀と一緒の時は、うわのそらの様子が影を潜める
・よく笑った。
↓
・亜紀に気を許し始めている。
2.亜紀の変化
・懐かしい気分を忘れた。
・楽しさ以外には何もなかった。
↓
・幹生に好意を持ち過ぎた。
3.亜紀の恋愛観
・「好きな男には、のんきな幸せを授けたい」
・亜紀が楽しい=幹生も楽しくなくてはならない
悲しい場所に置きたくない
懐かしいと思いたくない
4.二人の距離
・幹生=自分の領域を守り続けている
↓
気のおけない友人
5.幹生の家庭事情
・一瞬うろたえた=触れられたく
↓
・明るい調子で言った=ショックを和らげる
・父が病気で仕事ができない。
・借金取りたてから逃げてきた。
・母は小さい頃に男と逃げた。
・逃げる必要がない
・借金が返せるから。
・自殺するから。
↓
・嘘だと言う
・嘘=亜紀をからかった
・本当=亜紀を信用した
第五段落(「亜紀は、おれのこと〜笑い続けていた。)「二人の恋(2)」
1.漢字の書き取りを確認する。
1)アワ(慌 )てさせる 2)フル(震 )える声 3)フユカイ(不愉快 )にする
2.内容を読解する。
1)二人の会話
1)【L1】「おれのこと好きなの」と幹生に尋ねられて、亜紀はどうなったか。
・体じゅうの熱が顔の方に 上がっていくような気になった。
2)【L2】それはどんな気持ちか。
×怒りの感情がたかぶる。
○冷静さを失う。
・あまりにストレートだから。
3)【L1】言うべきこととは何か。
・好きだから、心配だから。
4)【L1】何が心配なのか。
・私と話している時は笑わせてあげられるが、一人の時はそうではないから。
・第四段落の亜紀の恋愛観。
5)【L3】幹生が困った表情を浮かべて黙った理由は。
・これほどまで自分のことを心配してくれる人に出会ったことがないから。
6)【L3】「おれも、亜紀のいこと好きだな」と言った理由は。
・変な奴だから。
・同情とかでなく自分を見ているから。
7)【L2】懐かしいと「思いたくない」と「思わない」の違いは。
・思いたくない=意識して思わないようにしている。
・思わない=自然と思わなくなった。
8)【L3】「思いたくない」理由は。
・懐かしいと思うことが怖いから。
・懐かしさの理由が恐ろしいことのような感じがするから。
9)【L3】公園の恋人たちの中で一番「せつない」理由は。
・恋を語り合うには幼すぎる。
・肩を寄せ合うこと以外どうしていいかわからない。
・お互いに好きだということしか分からない。
★好きだという感情が言葉にならない。
10)【L1】寒くなることについて、二人の気持ちは。
・亜紀=夕方の空がきれいだから、嫌いでない。
・幹生は=淋しいから嫌いだった。
体の中が温かいことがわかるから、平気になる。
11)【L3】幹生の変化の理由は。
・今までの生活は父にも母にも愛されずに寂しかった。
・今は自分を心配してくれる亜紀にめぐり合えて温かくなった。
12)【L2】幹生の涙の理由は。
・以前は、上のそらの涙。
・今は、亜紀が傍にいるうれし涙。
13)【L1】幹生の将来への気持ちの変化は。
・高校はあきらめていた。
・なんとかなるかもしれない。
14)【L3】ポケットの中で手を握りあった意味は。
・二人だけ狭い世界での幸福。
第五段落「二人の恋(2)」
1.二人の会話
幹「おれのこと好きなの」
亜体じゅうの熱が顔の方に 上がっていくような気になった。
↓
言うべきことを震える声で伝える。
「好きだから、心配だから。」
・好き=相手を幸せにする
・心配=相手が一人の時は幸せではない
幹困った表情を浮かべて黙る。
「おれも、亜紀のいこと好きだな」
・変な奴だから。
おれの目を懐かしいと言う
‖
自分のことを真剣に心配してくれる
亜懐かしいと思いたくない
相手が不幸である→怖い
二人「せつない」
・恋を語り合うには幼すぎる。
・肩を寄せ合うこと以外どうしていいかわからない。
・お互いに好きだということしか分からない。
★好きだという感情が言葉にならない。
幹夕暮れ
以前=淋しいから、嫌い
今=体の中が温かいから、平気
涙
以前=上のそらの涙。
今=亜紀が傍にいる=幸せ
将来
以前=高校をあきらめていた。
今=なんとかなるかもしれない。
↑
自分を心配してくれる亜紀の存在
二人ポケットの中で手を握りあう。
・二人だけ小さな幸福
第六・七段落(私が家に帰ると〜終わり)「幹生の死」
1.漢字の書き取りを確認する。
1)テイカン(諦観 )する 2)ショウゲキ(衝撃 )を受ける
3)自殺をハカ(図 )る 4)モクトウ(黙祷 )をする
5)レイギ(礼儀 )正しい 6)ショウドウ(衝動 )にカ(駆 )られる
2.語句の意味を確認する。
1)だだをこねる(甘えて無理やわがままを言う。
2)たしなめる(よくない点に対して注意を与える。いましめる。
3)諦観(本質をはっきりと見きわめること。あきらめ、悟って超然とすること。
3.内容を読解する。
1)ひよこの眼の正体
1)【L1】お祭りでひよこを買ってきて死なせたひよこの目の様子は。
・自分の死を予期しているように澄んだ目を見開いていた。
・ただ一点を見つめている。
・何もかも映しているようで、何も見ていない。
・最後の力をふりしぼり、目を見開いている
★幹生の目との共通点。
2)【L1】一言で言い換えると。
・諦観(ていかん)
・最初から生きる気がない。
3)【L1】亜紀の様子と、【L3】その時の感情は。
・口を開きかけたが、声が出ない。→激しい驚き
・心の中に詰まっていたものが、急激に溶けて流れて言った。→脱力感
4)【L2】心の中に詰まっていたものとは何か。
・幹生の目を懐かしく思う理由
・手のひらに爪が食い込むほど握りしめた。→緊張
5)【L1】ひよこが死ぬ時の亜紀の行動は。
・ひよこを見守り続けた。
6)【L1】亜紀の幹生への思いは。
・最初からあの目に引かれていた。
・恐ろしさのあまり恋をした
7)【L3】「恐ろしさのあまり恋をした」とはどういう意味か。
・恐ろしさを打ち消すために恋をした。
・死を予感している幹生に、何かしてあげたかった。
・ひよこには何もできなかった。
2)幹生の死について
8)【L1】幹生の死因は。
・父親が病気を苦に自殺を図り、道連れにされた。
9)【L3】この結果が予告されていた部分は。
・「もう逃げる必要もないみたい」(4)529)
10)【L1】亜紀が衝撃を受けなかった理由は。
・出会った時から、死ぬことを知っていたような気がする。
11)【L1】黙祷の間も、こっそり目を見開いて、何を考えていたか。
・人間の思う通りにいかないことがあることを知って気落ちしていた。
・幹生は人生に対して礼儀正しい人である。
★ひよこの死と同じ。
12)【L3】「人間の思う通りにいかないこと」とは何か。
・幹生は最後まで生きようとしていたのに、死ななければならなかった。
13)【L3】「人生に対して礼儀正しい人」とは。
・自分の不幸な境遇の中で、最後まで生きようとする人。
★その他、いろいろな考えを出させる。
14)【L1】幹生の死に対する亜紀の気持ちは。
・悔しくて、泣けてきた。
・死ぬなんて憎らしいことだ。
15)【L2】悔しい理由は。
・生きたいのに、親の都合で死ななければならなかったこと。
・自分には何もしてあげられなかったこと。
5)その後の亜紀について
16)【L3】街でひよこの目に出会うとは。
・死を見つめ、生きることをあきらめている人に出会う。
第六・七段落「幹生の死」
1.ひよこの眼=幹生の目
・自分の死を予期しているように澄んだ目を見開いていた。
・ただ一点を見つめている。
・何もかも映しているようで、何も見ていない。
・最後の力をふりしぼり、眼を見開いている。
‖
・諦観=最初から生きる気がない。
↓
・亜紀は見守り続ける
・何もしてやれない
2.亜紀の様子
・口を開きかけたが声が出ない→激しい驚き
・心の中に詰まっていたものが、急激に溶けて流れて行った→脱力感
幹生の目を懐かしく思う理由
・手のひらに爪が食い込むほど握りしめた→緊張
3.亜紀の幹生への思い
・幹生の目にひかれていた
恐ろしい
↓何かしてあげたい
恋をした
4.幹生の死
・父親が病気を苦に自殺を図り、道連れにされた。
逃げる必要がない
5.亜紀の気持ち
・黙祷の間も目を開けていた=ひよこ
・人間の思う通りにいかない
・最後まで生きようとしていたのに、死んでしまった
・幹生は人生に対して礼儀正しい人である。
・最後まで生きようとする人。
・悔しくて、泣けてきた。
・自分には何もしてあげられなかったこと。
6.その後の亜紀
・街の中でひよこの目に出会う
死を見つめている