ひよこの目 08

山田詠美 


 私は幹夫を見た瞬間、初対面なのに「懐かしい」と感じる。その理由は幹夫の「目」だった。担任に紹介された時「何かをみている」「空気中にある彼自身にしか見えないもの」を見ている気がした。
 私は好奇心からでなく、懐かしい感情が気になって幹夫を見ていた。彼の目はやはり「真剣に何か」を見ていてそれは「実在するものではない」が「彼にとって重大なもの」を見ていた。その目は「うっすらと涙の膜が張っている」ようで、何か悲しいもののようであった。
 そんな亜紀を見て、クラスの生徒は恋をしていると噂する。受験を控えた生徒にとって格好の気分転換であった。私は必死で否定しようとすればするほど、かえって意識してしまう。

 そして、文化祭のクラス委員にさせられそうになる。しかし、相沢君は「もういいんでしょう。帰ろう」とみんなの見ている前で大胆にも私を誘った。話は私が彼を見ている話になったが、幹夫は私が「初恋とか、そのような甘い気持ち」ではないことを理解している「物事を正確に見つめることができる人」であった。私は、味方を得たようで、気持ちが楽になった。私は思い切って「ずっと心の中に棲んでいる疑問」、あの懐かしい感情、何かを見つめているように見えることを話した。しかし、「たとえば」と問い返されて返答に詰まってしまう。それが分からないのだ。
 そこで、彼は二人の仲のことに話題を変えてしまう。私が幹夫が女子に人気があると言うと、幹夫は「ほんの一瞬唇をかんで」、「全然たいしたことじゃない」と「投げやり」に言った。何か迷惑そうな様子である。彼は「私などに及びもつかないことを隠し持っている」ように見えた。彼は「私と必要以上に親しくなることを拒否している」ように見え、私はそのことに「同情」していたので、二人の距離を考えると「不意に悲しい気持ち」になった。

 二人の交際は深まり、彼も「気を許しはじめ」、私も懐かしい気分を忘れて、「知り合ったばかりの男子生徒」と女子生徒として付き合う「楽しさ以外の何もなくなった」。私は幹夫に恋をしたのだった。彼が何かを見つめていて「幸福でない」のだと思う時、「私の心を傷つけた」。それは私が「好きな男には、のんきな幸せを授けたいと願うほど大人」になっていたので、「彼を悲しい場所には置きたくない」と思っていた。自分の力で彼を幸福にできないことは、「自分自身がやるせない」ことであり、「自分が楽しい気分になるためには、彼も相でなければならなかった」。
 私が父親の仕事を聞いた時、彼は「一瞬、不意をつかれたようなうろたえた表情をみせた」が、「きわめて明るい調子で言った」。そして「もう、逃げる必要もないみたい」と言う。これは彼の死に結びつく言葉になる。さらに、母が男と逃げた話をした後で、すべて冗談だと否定する。本当なのか嘘なのか私には分からず不安になるが、彼が私の背中を叩くと、「触れられているというだけで、気持ちが楽になる」。彼が「目の前で笑っている」というだけで「気分が落ち着く」のだか、「私の目の届かない所で、彼が、つらい目に会っていたらと考える」と「よけいに怖くなる」。
 幹夫が突然、「亜紀は、おれのこと好きなの?」と問う。いつも自分を、特にぼんやりかした自分を見つめているのが気になったからと付け加える。私は、恥ずかしさのあまり顔が真っ赤になり慌てるが、「好きだから。心配だから」と告白する。そして、今でも懐かしいかと問われて、「思わない」ではなく「思いたくない」と答える。その理由を「なんだか怖いから」と言う。亜紀と幹夫の間にはまだ根底に大きな不安があり、今は敢えて触れないようにしているのである。
 肩を寄せ合う以外に好きだということを確かめられない二人は「せつない」と思う。彼は、寒くなっていく季節について、昔は寂しくて嫌いだったが、今は体の中の温かさが確かめられて好きになったと言う。それは亜紀と知り合ったことによる大きな変化だった。家が貧しくて高校に行けないことについても、前向きに解決策を考えているような口ぶりだった。二人は、ジャケットのポケットのなかで手を握りあった。狭い世界だったが、二人はその中では幸せだった。

 家に帰って、妹と母親との会話の中で、祭りで買ってきて死なせてしまったひよこのことが話題になった。その時、私の幹夫に対する懐かしさは「ひよこの目」であったことに気づく。ひよこは、「自分の死を予期しているかのように澄んだ瞳」を見開いていた。「何もかも映し出しているようで、何も見ていない目」に、「なぜか恐怖」を感じた。それは「最初っから、生きる気なんかなかった」「諦観」を感じさせた。幹夫も同じ目をしていた。そして、ひよこに感じた恐怖を払拭するために「恐ろしさのあまりに、恋をしてしまった」のだ。
 そして、実際相沢君は、父親が病気を苦にした自殺の道連れになって死んでしまった。私は、中三にして、「人間は思う通りにいかないことがある」のを知ってしまい、すっかり気落ちしてしまった。彼は、あの公園で、「確かに生きようとしていた」。人生に対して礼儀正しい人」だった。
 それから、街の雑踏や電車の中で、ひよこの目に出会った。その時、「もはや、あなたは、死というものを見つめているのではありませんか」と尋ねて見たい衝動にかられる。

ひよこの眼  学習プリント 

点検   月   日
学習の準備
1.次の漢字の読み方を書きなさい。
 懐かしい 覆い 教壇 促す 咳払い 怪訝 目配せ 遭遇 呆然 平静 装う 募る
 憮然 肘 支度 棲む 慌てた 些細 砕いて 潜める 授ける 甘酸っぱい 術
 憑かれる 諦観 黙祷
2.次の語句の意味を国語辞典で調べて書きなさい。
  端を発する 立ち尽くす うわのそら 怪訝 ひょうひょうと 遭遇 つたない 呆然 平静 憮然 些細 周知 気のおけない だだをこねる 諦観     
学習のポイント
1.亜紀が懐かしい気持ちになった理由を理解する。
2.幹生の目の特徴と、見ていたものを理解する。
3.幹生がクラスに受け入れられた理由を理解する。
4.亜紀と幹生の関係の変化を理解する。
5.亜紀が悲しい気持ちになった理由を理解する。
6.幹生の亜紀に気を許し始めた気持ちを理解する。
7.亜紀の初恋の気持ちを理解する。
8.幹生の語る家庭環境を理解する。
9.亜紀の好きで心配で恐いという複雑な気持ちを理解する。
10.公園での二人の気持ちを理解する。
【指】指示。【説】説明。【注】注釈。【交】交流。【確】確認。【W】グループワークや心理テストなど。
【L1】抜き出す。【L2】縮めたり組み合わせたり言い換えたりする。【L3】解釈や想像。【L4】体験や知識。

1.【指】「学習プリント」を配布し、漢字の読みと語句の意味を調べさせる。
2.【確】漢字の読みを確認する。
 懐かしい 覆い 教壇 促す 咳払い 怪訝 目配せ 遭遇 呆然 平静 装う 募る
 憮然 肘 支度 棲む 慌てた 些細 砕いて 潜める 授ける 甘酸っぱい 術
 憑かれる 諦観 黙祷
3.【確】語句の意味を確認する。
 ・端を発する=それがきっかけになって物事が始まる
 ・立ち尽くす=感激したり呆然となったりして、いつまでもじっと立っている。
 ・うわのそら=他の事に心が奪われて、そのことに注意が向かないこと。
 ・怪訝=納得がいかず、不思議に思うこと。
 ・ひょうひょうと=えや行動が世間ばなれしていて、つかまえどころのないさま。
 ・遭遇=不意に出あうこと。偶然にめぐりあうこと。
 ・つたない=事を行うのに巧みでない。へたである。
 ・呆然=あっけにとられているさま。
 ・平静=態度・気持ちが落ち着いていること。
 ・憮然=失望・落胆してどうすることもできないでいるさま。また、意外なことに驚きあきれているさま。
 ・些細=あまり重要ではないさま。取るに足らないさま。
 ・周知=世間一般に広く知れ渡っていること。
 ・気のおけない=遠慮したり気をつかったりする必要がなく、心から打ち解けることができる。
 ・だだをこねる=子供などが甘えて無理やわがままを言う。
 ・諦観=本質をはっきりと見きわめること。あきらめ、悟って超然とすること。
4.【指】幹生が死ぬ前までのテキストを配布する。
5.教師が範読する。
6.感想を書かせる。

 

第一段(はじめ〜手ごろな気分転換法だった。)「幹生との出会い」

1.【説】一人称小説の特質をおさえた読み方。
・一人称小説では「私」という視点を通して一元的にでき事や登場人物が描かれる。
「私」の内面を直接語ることができるので、この小説のように主人公の心の揺れを描こうとする場合に都合のよい手法である。
・ただし、この手法には「私」の心情が独善的に語られやすいという短所もある。
・したがって、この小説の場合、「私」の心理を細かく読み解くとともに、「私」を取り巻く他の登場人物との関係にも注意させることが大切である。それによって「私」という人物をより客観的に把握することができるのである。

2.【W】「はじめ〜自分自身をもどかしく思った」をペアリーディングさせる。

3.幹生の登場について
 1)【説】亜紀の幹夫の第一印象。
 ・懐かしい気持ち。
 2)【L1】言い換えは。
  ・せつない感情。
 3)【L3】「懐かしい」と「せつない」の違いは。
  ・懐かしい
   ・昔のことが思い出されて、心がひかれる。
   ・久しぶりに見たり会ったりして、昔のことが思い出される状態だ。
   ・過去のことが思い出されて、いつまでも離れたくない。したわしい。
   ・心がひかれて手放したくない。かわいらしい。
  ・切ない
   ・(寂しさ・悲しさ・恋しさなどで)胸がしめつけられるような気持ちだ。つらくやるせない。
   ・大切に思っている。深く心を寄せている。
   ・苦しい。肉体的に苦痛だ。
   ・せっぱ詰まった状態である。
   ・生活が苦しい。
 4)【L1】亜紀が驚き、混乱した理由は。
  ・人生経験の少ない中学3年の自分に、懐かしがるようなものは存在しないから。
 5)【L1】幹生の態度は。
・全く動じない様子。
 ・ただ立ち尽くす。
 ・落ち着いていた。
 ・うわのそら。
6)【L3】それぞれの語のニュアンスの違いは。
 ・「動じない」と「落ち着いている」は、安定している。
 ・「立ち尽くす」は、緊張している。
 ・「うわのそら」は、ぼんやりしている。
7)【L1】幹夫が見ているもの1)は。
 ・何か。
 ・空気中にある彼自身にしか見えないもの。
 【説】今後何回か出てくるので、徐々に理解を深めていく。
8)【L2】教師が顔を赤らめて咳払いをした理由は。
 ・無視されたと思って腹が立った。
 ・存在を示そうと、わざと咳をする。
9)【L2】幹夫が怪訝な表情をした理由は。
 ・教師を無視するつもりがなかったから。
10)【L2】私達がいっせいに吹き出した理由は。
 ・同じ年齢なのに超然としているから。
11)【L2】私達が目配せをした意味は。
 ・クラスの一員として認めた。
 ・担任教師を嫌っていたので気に入った。

4.幹夫の評判について
 1)【説】男子生徒は、直接質問責めにする。女子生徒は会話に耳を傾ける。
 2)【L1】幹夫に対するクラス全員の興味は。
  ・季節外れの転校生の秘密を知りたかった。
 3)【L4】転校生の季節は。
  ・春。
  【説】この小説は春ではない。
 4)【L1】女子の評価は。
  ・大人っぽい。
 5)【L2】その評価の根拠は。
  ・登場の場面の超然とした態度。
6)【L1】幹夫の対応は。
 ・積極的に言葉を交わさない。
 ・ひょうひょうとしている。
 【説】ひょうひょうとしているので余計に知りたくなる。
 ・個人的な事情は避けて言葉を選びながら会話をしている。
 【説】ますます秘密めいたものを感じる。
7)【L1】亜紀が幹生を見つめていた理由は。
  ・懐かしさの原因を追求するため。
 8)【L4】解けない問題を抱えているような、もどかしい気分を体験したことがあるか。

5.【W】「その日以来〜手ごろな気分転換法だった」をペアリーディングさせる。

6.亜紀と幹夫の見ているものについて
 1)【L2】亜紀の「もどかしさ」の言い換えは。
  ・いらだち。
  ・腹立たしい。
  ・歯がみをしたい気持ち。
 2)【L1】幹夫の「うわのそら」を正確に言い換えると。
  ・真剣に何かを見つめている。
 3)【L1】「真剣に」の言い換えは。
  ・一点を見つめている。
 4)【L1】「何か」とは。
  ・実在するものでない。
  ・彼にとっての重要なもの。
 5)【説】亜紀の「もどかしさ」と幹夫の「何か」が関係している。
 6)【L3】「うっすら涙の膜が張っている」から、何かの正体は。
  ・悲しいもの。
  ・つらいもの。
  【説】「懐かしい」より「せつない」に近い。
 7)【L2】亜紀が首をかしげる理由は。
  ・幹夫が見ているものがわからないから。

7.恋の噂について
 1)【L1】他の生徒は、亜紀が幹夫をどのように見ていると思っているか。
  ・心を引かれた。
  ・甘い気分。
 2)【説】亜紀が幹夫を見ている理由。
  ・懐かしい気持ちの原因を探すため。
 3)【L4】意識すればするほどぎこちなくなる体験は。
 4)【説】恋の噂は、受験を控えた中三にとって手ごろな気分転換であった。
  ・よくある学園もののパターンである。
  ・ここまでは、安物の学園青春ドラマである。
第二段(それは、秋の学園祭〜そういう人に見えた。)「幹生との交際」

1.【W】「それは、学園祭〜背後から追いかけてきた」をペアリーディングさせる。

2.実行委員の選出について
 1)【L1】亜紀と幹生を推薦する男子生徒の様子は。
  ・無責任にはやしたてる。
 2)【L2】女子生徒の様子は。
  ・亜紀に同情して、反対しようとする。
  ・しかし、賛成に手を挙げる。
  ・仲のよい女子生徒だけが憮然としている。
  【説】多くの女子生徒も、結局は他人事であり無責任である。
 3)【L2】クラス委員の様子は。
  ・少し困るが、多数決をとる。
  ・多数決を採れば賛成多数になることはわかっている。
  ・自分の責任ではなくなる。
 4)【L3】幹生が実行委員を引き受け、私を誘った理由は。
  ・早く解決したかった。
  ・拒否すれば話し合いが長引き、悪意にさらされる時間が長くなるだけ。
  ・亜紀を救おうとした。
  ・亜紀が自分を見つめる理由を聞く機会を作ろうとした。
  【説】他にもいろいろな意見が予想される。
 5)【L1】亜紀の気持ちは。
  ・うつむいて涙をこらえていた。
  ・どうにでもなれという気分。
  ・開き直り。

3.【W】「「私と幹生は、しばらく無言で〜そういう人に見えた。」を4人組で、亜紀 役と幹夫役と地の文を読む役2人に分けてチームリーディングさせる。

4.初めての会話について
 1)【L1】亜紀の気持ちは。
  ・どぎまぎしていた。
  ・男子生徒と連れ立って歩いた経験がなかったから。
 2)【L1】亜紀がようやく口を開いた時の気持ちは。
  ・自分の気持ちを伝えておかなければならないと思った。
  ・重大な決意。
 3)【L1】亜紀の気持ちとは。
  ・好きで見つめていたのではないこと。
 4)【L1】みんなの言うようなこととは。
  ・相沢を好きで見ている。
 3)【L2】幹生がちらりと私を横目で見て笑った理由は。
  ・私の言いたいことがわかっていたから。
  ・予想通りだった。
  【説】自分を見ている理由を知りたかった。
     他の生徒とは違うものを感じていた。
 4)【L2】亜紀の頬に血がのぼるのを感じた理由は。
  ・恥ずかしい。
  ・私が見ていたことを、幹生が気づいていたから。
 5)【L2】亜紀がため息をついた理由は。
  ・安心した。
  ・幹夫が私に初恋の気持ちがないことを気づいていたから。
 6)【L1】亜紀の幹生に対する評価は。
  ・味方を得たような気分になった。
  ・物事を正確に見つめることのできる人だと思った。
 7)【L1】ずっと心の中に棲んでいる疑問とは。
  ・なぜ幹夫の目に懐かしさを感じるのか。
 8)【L1】「再びあの目をしている」時の状況は。
  ・亜紀と向き合っていない。
  ・無意識の内にしている。
 9)【L1】亜紀が首を横に振った理由は。
  ・幹生が何を見ているか、具体的に言えないから。
 10)【L2】幹生が、笑って、私の肩をたたいた気持ちは。
  ・亜紀を励ます。
 11)【L2】幹生は亜紀の言う「何か」をどのように理解しているのか。
  ・みんなの言うことを気にしている。
 12)【L1】亜紀を含めたみんなの幹生の評価は。
  ・自分たちより、ずっと先を行っている。
  ・ファンが多い。
 13)【L2】幹生がほんの一瞬、唇をかんだ理由は。
  ・まずい。しまった。
 14)【L2】何に対してまずいと思ったのか。
  ・人に注目されること。
 15)【L2】幹生が投げやりに言って再び口をつぐんだ理由は。
  ・必要以上に親しくなることを拒否している。
 16)【L3】亜紀が不意に悲しい気持ちになった理由は。
  1)【L1】何に同情していたか。
   ・私と必要以上に親しくなることを拒否している。
   ・私たちに興味を示さないほど何かに心を砕いている。
  2)【L2】同情とは。
   ・なんとかしてあげたい。
  3)【L1】しかし、できない理由は。
   ・しかし、私などには及びもつかないことを隠し持っている。
   ・私たちの年齢の人間が許容できない何かを背負っている。
   
第三段(その日から、私たちは〜笑い続けていた。)「幹生との恋」

1.「その日から、私たちは、〜術をもたなかった」をペアリーディングさせる。

2.二人の交際について。
 1)【L1】幹生の変化は。
  ・気を許し始めている。
 2)【L1】そう感じた理由は。
  ・私と一緒の時は、うわのそらの様子が影を潜めるようになった。
  ・よく笑った。
 3)【L1】私の変化は。
  ・懐かしい気分を忘れた。
  ・楽しさ以外には何もなかった。
  【説】恋人になった。
 4)【L1】幹生がまだ何かを見ていることについては。
  ・懐かしいとは思わなくなった。
 5)【L1】その理由は。
  ・好意を持ち過ぎていた。
 6)【L3】好意を持ちすぎると懐かしいと思わなくなる理由は。
  ・自然と思わなくなったのでなく、意識的に懐かしいと思わないようにする。
 7)【L1】その理由は。
  ・彼が幸福でないことは、自分の心を傷つけるから。
 8)【L2】私の恋愛論は。
  ・好きな男には、のんきな幸せを授けたい。
 9)【L1】そう考える理由は。
  ・自分が楽しい気分になるためには、相手もそうでなくてはならない。
  【説】私の恋愛論は、自分が楽しくなるためのもの。
     自分が不安でなくなるために、無理矢理思い込むもの。
 10)【説】だから、幹生は亜紀以上には変わらず、自分の領域を守り続けていた。

4.「ねぇ、相沢くん〜笑い続けていた」を4人組で、亜紀役と幹夫役と地の文を読む役 2人に分けてチームリーディングさせる。
5.幹生の家庭について。
 1)【説】亜紀が季節外れの転校の理由を聞く。
  ・幹生が転校してきた時、生徒が抱いた疑問。                
 2)【L2】幹生が一瞬うろたえた理由は。
  ・亜紀からそんな質問が出るとは思っていなかった。
  ・亜紀は他の生徒とは違うと思っていた。
  ・幹生が言葉を選んではぐらかしてきたこと。
 3)【説】幹生の答えの内容を確認する。
  ・父が病気で仕事ができない。
  ・借金取りたてから逃げてきた。
  ・もう、逃げる必要もない。
  ・母は小さい頃に男と逃げた。
 4)【L3】逃げる必要がない理由は。
  ・借金が返せるから。
  ・自殺するから。
 5)【L1】亜紀が慌てた理由は。
  ・そういう不幸は小説やテレビドラマの中にしかないものだと思っていた。
 6)【L3】幹生は言い終わって嘘、冗談と言っているが、真相は。
  ・嘘なのか、本当なのか。
  ・嘘なら、亜紀をからかったことになる。
  ・本当なら、亜紀のショックを和らげるため。
 7)【L3】幹生がきわめて明るい調子で言った理由は。
  ・思い切って本当のことを言ってすっきりしたかった。
  ・うそを言って誤魔化そうとした。
 8)【L3】私の背中をたたいて吹き出した理由は。
  ・冗談を言って私をからかった。
  ・本当のことを言ったが、冗談にして誤魔化そうとした。
 9)【L3】本当だったとしたら、なぜ本当のことを言った理由は。
  ・亜紀を信用していた。
  ・亜紀になら弱みを見せてもいいと思った。
  ・亜紀に気を許していた。

6.恋の告白について
 1)【L1】亜紀の気持ちが楽になる理由は。
  ・目の前に好きな人がいるから。
 2)【L1】同時に、怖くなる理由は。
  ・目の届かない所で、彼がつらい目にあっているかもしれないから。
 3)【L1】幹生に「おれのこと好きなの」と質問されて、亜紀の体じゅうの熱が顔の方に上がっていくような気になった理由は。
  ・いきなり核心を突く質問だったから。
 4)【L1】幹生が質問の理由は。
  ・いつも自分のこと見ているから、好きなのかと思ったから。
 5)【L3】この質問における幹生の矛盾は。
  ・初めて会話を交わした時、恋ではないと分かっていたはず。
 6)【L3】にもかかわらず、こんな質問をした理由は。
  ・幹生も亜紀が好きになったから、確かめたかった。
 7)【L1】向かい合っている時より、一人でぼんやりしている時に真剣に見つめている理  由は。
  ・好きだから。心配だから。
 8)【L1】好きだから見つめるのは分かるが、心配だから見つめる理由は。
  ・一人の時は笑わせてあげられないから。
  【説】笑うことが幸せであると考えている。
 9)【L3】幹生が困った表情を浮かべて黙った理由は。
  ・自分の内面に入ってきて余計なお世話ではない。
  ・これほどまで自分のことを心配してもらえるのは初めてだから。
 10)【L2】幹生が恋の告白をした時の気持ちは。
  ・初めて自分の気持ちを素直に表現した。
 11)【L1】幹生が亜紀を好きな理由は。
  ・変な奴だから。
  【説】今までの人のように同情とかでなく自分を見ているから。?
 12)【L2】「懐かしい」と、「思いたくない」と「思わない」の違いは。
  ・思いたくない=意識して思わないようにしている。
  ・思わない=自然と思わなくなった。
 13)【L1】思いたくない理由は。
  ・懐かしいと思うことが怖いから。
 14)【L3】怖い理由は。
  ・幹生を失ってしまうことにつながりそうだから。
 15)【L1】公園の恋人たちの中で一番せつない理由は。
  ・肩を寄せ合うこと以外どうしていいかわからない。
  ・お互いに好きだということしか分からない。
 16)【L3】それ以外何が必要なのか。
  ・はっきりした理由はないのに好きになることもある。
  ・しかし、ここでは何か純粋な恋ではない感じがした。

7.寒くなることについて
 1)【L1】亜紀の評価は。
  ・嫌いでない。
  ・夕方の空がきれいだから。
 2)【L1】幹生は。
  ・今までは嫌いだった。
   ・寂しいから。
  ・これからは平気かもしれない。
   ・体の中が温かいことがわかるから。
 3)【L3】変化の理由は。
  ・今までの生活は父にも母にも愛されずに寂しかった。
  ・今は自分を心配してくれる亜紀にめぐり合えて温かくなった。
 4)【L3】幹生の眼に涙の膜が張っていることについての亜紀の解釈の変化は。
  ・以前は、不幸なものを見ていたから。上のそらの涙。
  ・今は、亜紀が傍にいるから。嬉しい涙。
 5)【L1】幹生の将来への気持ちの変化は。
  ・高校はあきらめていた。
  ・なんとかなるかもしれない。
  【説】亜紀といることで希望が沸いてきた。
 6)【L3】ポケットの中で手を握りあったことの意味は。
  ・二人だけ狭い世界での幸福。
第四段「幹生の死」

1.【指】第四段落のテキストを配布する。
2.ペアリーディングさせる。

3.【説】亜紀が家に帰って時の気持ち。
 ・幹生の手の感触が、甘い毒のように前進に回る。
 ・日常的なことがすべてくだらなく思えていた。
 ・思考が麻痺していた。
 ・高揚感。

4.ひよこの眼について
 1)【説】母の「あの時のひよこの顔、覚えていないの」「死ぬ前のかわいそうなこと」  がきっかけになる。                            
 2)【L1】ひよこの目の様子は。
  ・自分の死を予期しているように澄んだ目。
  ・ただ一点を見つめている。
  ・何もかも映しているようで、何も見ていない。
  ・死をとらえている。
 3)【L1】一言で言い換えると。
  ・諦観
 4)【L1】わかりやすく言い換えると。
  ・最初から生きる気がない。
 5)【L1】亜紀の様子は。
  ・口を開きかけたが、声が出ない。
  ・心の中に詰まっていたものが、急激に溶けて流れて言った。
  ・手のひらに爪が食い込むほど握りしめた。
 6)【L3】その時の気持ちは。
  ・恐ろしいことに気づいた。
 7)【L1】ひよこが死ぬ時の亜紀の態度は。
  ・ひよこを見守り続けた。

5.幹生への態度
 1)【L1】幹生への第一印象は。
  ・懐かしいなんてうそだ。
  ・最初からあの目に引かれていた。
 2)【L3】懐かしい、引かれていたの背後の感情は。
  ・甘い言葉で誤魔化す。
  ・死を予感していた。
 3)【L1】恋をした理由は。
  ・恐ろしさを誤魔化すため。
 4)【L1】幹生への想いは。
  ・死を予感している幹生に、何かしてあげたかった。
   ・ひよこには何もできなかった。

6.【説】幹生の死について
 ・その日から学校に来ない。
 ・病気を苦に自殺した父親の道連れになった。
 【説】「逃げる必要もない」の意味につながる。

7.幹生の死に対する亜紀の態度について
 1)【L1】衝撃を受けていなかった理由は。
  ・出会った時から、死ぬことを知っていたような気がする。
 2)【L3】黙祷の間も、こっそり目を見開いていた理由は。
  【説】ひよこの死の時と同じ反応である。
 ・幹生の死を悲しむのでなく、死について考えていた。
3)【L1】考えていた内容は
 ・人間の思う通りにいかないことがあることを知って気落ちしていた。
  ・幹生は人生に対して礼儀正しい人である。
 4)【L2】「人間の思う通りにいかないこと」とは何か。
  ・幹生は最後まで生きようとしていたのに、死ななければならなかった。
 5)「人生に対して礼儀正しい人」とは。
 ・自分の不幸な境遇に耐えて、最後まで希望を見失わない人。
  ★その他、いろいろな考えを出させる。
 6)【L1】亜紀の気持ちは。
  ・悔しくて、泣けてきた。
  ・死ぬなんて憎らしいことだ。
 7)【L2】悔しい理由は。
  ・生きたいのに、親の都合で死ななければならなかったこと。
  ・自分には何もしてあげられなかったこと。
8.【L3】その後、私がひよこの目に出会う意味は。
・ひよこの目は、自分の死を見つめている目である。
・生きる希望を失ってしまっている目である。
・私には、人の死に対する異常な興味がある。
・私は、生きるということに異常な興味がある。
 【注】その他、いろいろな考えを出させる。
【説】恋愛小説ではなく、死(生)をテーマにした小説であることを確認する。

9.死を見つめるワークをする。
 1)センタリングをする。
 2)イメージワーク〜小川の散歩〜をする。
 3)死を見つめるワークシートを配布してやらせる。
 4)ふりかえりの感想を書かせる。
10.「堤防」を読む。
 1)教師が音読し、感想を書かせる。
 2)3〜4人のグループに分ける。
 3)「堤防」を読んで、幹生の死の意味、私がひよこの目に出会う意味を考えさせる。
  ・キーワードは「運命」「自殺」
 4)「ひよこの眼」について、終末感想文を書かせる。
 



コメント

ホーム