別役 実


 飛行船の魅力は《大きい》ことである。巨大、グロテスク、無器用、寂寥感が同居する。人間の《大きさ》への緊張感がいきなり失われ、量だけが形骸化したようなものである。ただ大きいだけの存在である。
 その《大きさ》は恐怖であった。神様の考えになかった《大きさ》である。たとえば、子どもははしゃぎすぎるのを恐れて、親の制止を期待する。飛行船は人間がはしゃぎすぎ、神が制止しなかった産物である。飛行船の恐怖は、神が制止し得なかった所に発生する。 
 世界史の「発明発見物語」は二つの時代に分けられる。発明発見が「幻想領域」の内にあった時代と外にはみ出した時代である。「第一の時代」は「幻想領域」の内の時代で、ヒンデンブルク号の爆破で終焉を迎える。
 この時代は、神に反逆する悪魔の邪悪さ、詐欺師のうさんくささ、手品師の巧妙さ、魔術師の不気味さ、どこかいかがわしさのある時代である。「地上に新しいものを創り出す」ことが「神のみが創りたもう」という制止によって、正当性を持っていないゆえのいかがわしさである。あるいは、敢えて正当性を持たないようにしていたのである。この時代に重要であったのは、「神のみが創りたもう」という制止に抵抗するための「発明する精神」「幻想」であった。神に反逆すると言う点において、詐欺師も手品師も魔術師も発明家も同一である。
 彼らの「邪悪な精神」は、「幻想領域」をより確固たるものにするために、「幻想領域」を合理精神と科学によって体系化した。「第二の時代」は、合理精神と科学の体系を発明発見のために実用面に応用し始めたときに始まる。 
 巨大な飛行船を見上げて感動するのは、そこまで《大きく》仕立て上げた幻想のまがまがしさを見るからである。《大きさ》への限度を超えて量として形骸化されてしまった寂寥感を見るからである。
 飛行船の特徴は、四つある。第一は《大きさ》。第二は構造の内包する《危険性》。第三は機能の《素朴さ》。第四は姿態の《グロテスクさ》《優雅さ》。
 第一の《大きさ》は搭乗部分の《小ささ》によって目立つ。《大きさ》は「むだ」、巨大なる「からっぽ」である。さらに《大きく》なるのではないかという恐怖の予感を抱かせる。
 第二の《危険性》は、飛行船は引火すれば即座に爆発するという危険なガスを「むだ」な《大きさ》の中に充満させていることだ。当時の人々にとって空を飛ぶことは罪深い行為であり、その戒めとして《危険性》を同居させた。飛行船はあってはならないものを発明した幻想と決意の現れである。
 第三の《素朴さ》は、飛行船が「浮力」と「推進力」を別々の機能として持っていることである。普通、空を飛ぶものは「浮力」と「推進力」を同一のメカニズムの中に持っている。飛行船は、「飛翔」しているのではなく、「浮いて」かつ「動いて」いるにすぎないのである。にもかかわらず飛んでいるつもりになっているところに一種の感動を覚える。 
 第四の《グロテスクさ》と《優雅さ》という対立するのもが同居している理由は、「流線形」をどう見るかにある。「流線形」を不気味な奇形と見るか、人工的るに作り出された美しさと見るのか。「第二の時代」では「流線形」は機能美として定着し《優雅さ》のみを表現している。《優雅》に裏にある邪悪さを見失うと、飛行船そのものを見失うことになる。
 《優雅》に変装させた精神の《グロテスクさ》は隠せない。それゆえ、「流線形」からは一種のまがまがしさを感じる。我々が感動するのは、「地上に新しいものを創り上げる」幻想と「神のみが創りたもう」という自然界の法則との角逐がある。
 飛行船以後、発明発見は「幻想領域」の作業からはみ出した。にもかかわらず、飛行船への憧憬を抱くのは、「幻想領域」内の作業であったこと、「悪夢」にすぎなかったことに、ある種の優しさを感ずることによってしか、文明を許せなくなっている。
 一方で日常空間は「幻想領域」を駆逐し始めている。「現実領域」と「幻想領域」の境界が不明確になって互いに領域を侵し始めている。「神のみが創りたもう」という制止に抗するためにグロテスクな奇形を余儀なくされたことに気づかなくなっていることは、飛行船のためにも発明を支えたロマンのためにも残念である。


0.学習プリントを配布し、宿題にする。
1.飛行船を見たことがあるか質問する。
2.飛行船と空を飛ぶ歴史について説明する。
 ・一七八三年に、フランスのモンゴルフェル兄弟が熱気球で空を飛んだ。
 ・一九〇〇年に、ドイツのレッドツェッペリン型飛行船が開発された。
  ・観光や郵便郵送や軍事目的で利用される。
 ・一九三七年、ヒンデンブルク号の爆発事件が起こる。
 ・一九〇三年、ライト兄弟が航空機を発明する。
 ・一九一三年、
2.小段落1〜13に番号を付ける。
3.漢字の読みを確認する。
 寂寥感  形骸  抑え  錬金術  遂げ  終焉  彩られ  漂わせ  露呈 遊弋  搭乗  戒め  担わせ  装う  図る  覆い  角逐  駆逐  侵し
4.語句の意味を確認する。
グロテスク 不気味で異様な様子。
寂寥 心が満ち足りず、もの寂しいこと。                   
形骸 外形だけを残して、実質的な意味を失っているもの。           
おぼしめし 相手を敬って、その考えや気持ちをいう語。お考え。ご意向。    
かまける あることに気を取られて、他のことをなおざりにする。        
露呈 隠れていた事柄が表面に現れ出ること。また、さらけ出すこと。      
遊弋 軍艦などが海上を動きながら待機すること。               
まがまがしい 悪いことが起こりそうである。不吉である。好ましくない     
抽出 多くの中からある特定のものを抜き出すこと。              
角逐 互いに争うこと。せりあい。                      
駆逐 追い払うこと。                            


第一段落  板書
 
1.音読させる。
2.飛行船の《大きい》ことについて
 1)飛行船が我々を感動させる理由を読み取る。
  ・われわれの想像を越えて大きいから。
 2)飛行船の大きさを説明する。
  ・全長二四五メートル、直径四一メートル。
  ・ジャンボジェットは、長さ七〇メートル。
 3)飛行船はどんな産物かを読み取る。
  ・最も巨大な
   最もグロテスクな
   最も不器用な
   最も寂寥感あふれる
  ・これらの特徴については第三、四段落でふれる。
 4)スタインベックの大男について説明する。
  ・大きすぎるゆえに、小さな二十日鼠を扱いきれずに殺してしまう。
 5)バベルの塔について説明する。
  ・大洪水の後バビロニアに移住した人々が、レンガで天にも届く塔を建てようとしたが、怒った神が一つだった言語を乱したので、人々は意思疎通ができなくなり、各地に帰ったため工事が中断した。
 6)飛行船と大男とバベルの塔の共通点を読み取る。
  ・人間の《大きさ》への緊張感が、ある限度を超えたところでいきなり失われ、量だけが形骸化されて残った。
 7)「《大きさ》への緊張感」とは何かを考える。
  ・人間が想像できる範囲の大きさ。

3.《大きさ》への恐怖について
 1)人間が飛行船の《大きさ》に恐怖を覚えた理由を読み取る。
  ・ありえてはいけてないほどの《大きさ》だったから。
  ・神様のおぼしめしにない《大きさ》だったから。
 2)ここでいう「神」とは何かを考える。
  ・創造主としての神。
  ・自然界。

 3)恐怖の正体を考える。
  ・自然界にないものを人間が創っていいのかという恐れ。
 4)子どもの例を考える。
  1)子どもがはしゃぎすぎない理由を読み取る。
   ・子どもははしゃぐ。
   ・しかし、はしゃぎすぎ、えたいの知れない領域に踏み込むことを恐れる。
   ・そして、親の制止を期待する。
   ・したがって、親の制止を予定しないところでははしゃがない。
  2)飛行船に当てはめる。
   ・子ども=当時の人々。
   ・はしゃぐ=飛行船を発明する。
   ・親=神様。
   ・当時の人々は、飛行船を作ろうとしたが、えたいの知れない領域に踏み込むことを恐れ、神の制止を期待していた。
  3)飛行船が発明された理由を考える。
   ・親たちがほかの仕事にかまけて、目をそらしていた。
   ・神が見逃した。



第二段落  板書
 
1.音読させる。
2.二つの時代について(3)
 1)二つの時代の区分の基準を読み取る。
  ・第一の時代=「幻想領域」における作業であった時代。
         「錬金術の時代」から「飛行船の時代」まで。
  ・第二の時代=「幻想領域」からはみ出た時代。
 2)「錬金術」とは何かを読み取る。
  ・鉄や鉛などの卑金属から金や銀などの貴金属を製造しようとした、原始的な科学技術。
  ・神が金や銀を造ったように、人間が同じ原理を実験器具の中で再現しようとした。
  ・飛行船のように大きくないが、神の領域に侵入しようとした点で共通している。
 3)「飛行船の時代」の終わりを読み取る。
  ・一九三七年のヒンデンブルグ号の爆発。
 4)「幻想領域」とはどのような領域かを考える。
  ・神の領域に達しようとしている領域。

3.第一の時代について(4)
 1)第一の時代の「発明発見物語」の奇妙なニュアンスとは何かを読み取る。
  ・神に反逆する悪魔の邪悪さ。
  ・詐欺師のうさんくささ。
  ・手品師の巧妙さ。
  ・魔術師の不気味さ。
 2)それらに共通する特徴を読み取る。
  ・正当な場を得ていない。
 3)正当な場を得るとはどういうことかを考える。
  ・神に承認されること。
  ・悪魔も詐欺師も手品師も魔術師も、神に逆らうものである。
 4)「正当な場を得ていない」と「正当な場を得ることを用心していた」の違いを考える。
  ・前者は、得ようとしたが得ていない。積極的に得ようとした。
  ・後者は、得ようとすることに慎重で得ていない。消極的に得ようとした。
 5)当時の発明家にとって重要なものを読み取る。
  ・発明されたもの自体ではない。
  ・発明する精神。幻想。
 6)「発明する精神」とは何かを読み取る。
  ・神の制止に対抗すること。
  ・神に反抗する意味で、悪魔も詐欺師も手品師も魔術師も同一である。
 7)「神の制止に対抗する」とはどういうことか考える。
  ・「神のみが創りたもう」ことを、人間が「地上に新しいものを創り出す」こと。
 8)「幻想」である意味を考える。
  ・神に反抗するが、神を越えることはあってはならないことである。

4.合理主義と科学について(5)
 1)第一と第二の時代の「合理主義と科学」の違いを読み取る。
  ・第一の時代=「幻想領域」を確固たる「幻想領域」にするための道具。
  ・第二の時代=実用面に応用しようとした。
 2)「「幻想領域」を確固たる「幻想領域」にする」とはどういうことかを考える。
  ・本来、合理主義と科学は、神の領域を越えるためのものである。
  ・その合理主義と科学の力をもってしても神の領域を越えられないことを証明する。
 3)「合理主義と科学」が「最もどぎつい詐欺、手品、魔術の一つ」なのかを考える。
  ・神を越えないことを前提にして、神に反抗しようとしている点で同じであるから。
 4)第二の時代の人々の合理主義と科学に対する考え方が間違っている理由を考える。
  ・合理主義と科学を神を越えることのできる万能のものであると考えたから。



第三段落  板書
 
1.音読させる。
2.飛行船に感動することについて(6〜7)
 1)われわれが飛行船に見るものを読み取る。
  ・機能や効力でなく、
  ・そうさせた(飛行船を作った)精神。
 2)感動する理由を読み取る。
  ・発明した当時の人々の幻想のまがまがしさを見るから。
  ・大きさの限界を超えて、量として形骸化されてしまった寂寥感を見るから。
 3)飛行船の4つの特徴を読み取る。
  1)大きさ
  2)危険性
  3)素朴さ
  4)グロテスクさ、優雅さ。

3.1)大きさについて(8)
 1)飛行船の大きさを感じさせる理由を読み取る。
  ・搭乗部分の《小ささ》と対比するから。
  ・「むだ」だから。
  ・巨大なる「からっぽ」だから。
 2)搭乗部分の《小ささ》と、「むだ」「からっぽ」の関係を読み取る。
  ・「むだ」「からっぽ」が搭乗部分の《小ささ》を嘲笑し、復讐している。
 3)嘲笑や復讐は誰の何に対するものかを考える。
  ・搭乗部分に乗るのは人間である。
  ・嘲笑されているのは人間である。
  ・そこまで大きくしなければ浮上できない人間の無力さ。
 4)逆の見方を読み取る。
  ・小さな搭乗部分を浮上させる罪を許してもらうために、「むだ」「からっぽ」を罰として課している。
 5)何に許してもらうのかを考える。
  ・神。
 6)なぜ許してもらわなければならないのかを考える。
  ・神の領域を侵そうとしているから。
  ・神が作ったものを超えて人間が空を飛ぼうとしているから。
 7)飛行船の大きさから受ける恐怖の理由を読み取る。
  ・いきなりむくむく大きくなるのではないかと予感するから。
 8)なぜそのような予感がするのか。
  ・飛行船がさらに大きくなることは、神が許してくれずさらに罰を与えることになるから。

4.2)危険性について(9)
 1)飛行船が危険である理由を読み取る。
  ・引火すれば爆発する危険なガスを充満させているから。
 2)危険なガスを充満させていた理由を読み取る。
  ・大空を飛ぶことが罪深い行為であることを知っていて、自らを戒めるため。
 3)したがって、飛行船に空を飛ぶ手段ではなく、決意をみるとはどういうことか考える。
  ・爆発する危険性を罰として覚悟しながら、あえて飛ぼうとしていること。

5.3)素朴さについて
 1)飛行船に素朴さを感じている点を読み取る。
  ・「浮力」と「推進力」を切り離して、別々の要因を担わせている点。
 2)これが特異である理由を読み取る。
  ・自然界の飛ぶものは、「浮力」と「推進力」を同一のメカニズムのうちにとらえているから。
  ・「浮力」とは、制止している物体にかかる力。
  ・運動している物体にかかる力は「揚力」。
  ・鳥などは、前に進む「推進力」によって「揚力」を得て飛ぶ。
 3)素朴さが飛行船らしい理由を読み取る。
  ・用心深いから。
  ・神の罰を恐れながら飛んでいる。
 4)料理の例で説明する。
  ・「匂い」と「味」を別々にして、合わせれば料理ができると信じている。
 5)人間の例で説明する。
  ・人間の中には「神」と「悪魔」がある。
   「神」と「悪魔」を合体させると人間になる。
 6)飛行船の場合を説明する。
  ・「浮いて」「動いて」いる。
 7)われわれが飛行船に感動する点を読み取る。
  ・「浮いて」「動いている」ことで「飛んでいる」つもりになっている点。



第四段落
  板書
 
1.音読させる。
2.《グロテスクさ》《優雅さ》について(11〜12)
 1)《グロテスクさ》と《優雅さ》の違いを考える。
  ・自然界に存在するかどうか。
  ・神の創ったものかどうか。
 2)確かめる手だてを読み取る。
  ・「流線形」をどう見るか。
 3)「流線形」の二面性を読み取る。
  ・自然界の生み出した奇形としての不気味さ。
  ・人工的に作り出された機能としての美しさ。
 4)時代によるとらえ方の変化を読み取る。
  ・第二の時代=機能美、《優雅》。
  ・第一の時代=《優雅》たらしめている邪悪さ。
 5)《優雅》たらしめている邪悪さに気づかざるを得ない理由を読み取る。
  ・《優雅》を装っているから。
 6)《優雅》を装っている理由を読み取る。
  ・自然界(神)にできるだけ調和させるため。
 7)女装の例を考える。
  ・女装とは、男性が女性を装うことである。
  ・女性は《優雅》である。
  ・男性は女性でない。
  ・男性が女性の《優雅》を装おうとすることは《グロテスク》である。
  ・女装が見事であればあるほど《グロテスク》である。
 8)「流線形」と「自然界」の間の微妙な緊張感とは何かを読み取る。
  ・地上に新しいものを創り上げる幻想と神が創りたもうて自然界の法則との角逐。
 9)新幹線の流線形には何も感じないが、飛行船の流線形にまがまがしさを感じる理由を考える。
  ・新幹線は機能として独立しているが、飛行船は独立していない。
  ・神を存在を意識しているかどうか。


第五段落
  板書
 
1.音読させる。
2.4つの条件を確認する。
 ・大きさ、危険性、素朴さ、グロテスクさ(優雅さ)
3.悪夢について(13)
 1)飛行船はどのような時代の産物かを読み取る。
  ・「発明発見物語」が人類の「悪夢」であった時代の最後の産物。
 2)「悪夢」である理由を考える。
  ・悪夢とは、夢を持ちながら、それが悪いものである。
  ・「神のみが創りたまう」という「幻想領域」に反逆しようする「夢」(幻想)を持とうとしながら、
  ・恐怖や罪の意識などの「悪」を感じているから。
 3)ヒンデンブルグ号の爆発で「悪夢」の幕を閉じるとはどういうことか考える。
  ・神の領域を超えることを諦める。
  ・神の領域を超えることに恐怖や罪を意識を感じないことではない。
  ・夢自体を諦めるのである。
 4)飛行船に憧憬を抱く理由を読み取る。
  ・飛行船が「幻想領域」内の作業であった。
  ・「悪夢」にすぎなかったことに優しさを感じるから。
  ★文明は「幻想領域」を超えてはならないと考えている。
 5)一方で、どんなことが起こっているか読み取る。
  ・日常空間と「幻想領域」の境界が不明瞭になっている。
  ・恐怖や罪の意識がなくなった。
  ・幻想領域が幻想でなくなった。
  ・平気で神の領域に踏み入れる。
  ・人間が神に代わって自然界を支配する。
 6)その結果どのようなことが起こっているか読み取る。
  ・混乱と喜劇が起こっている。
 7)どんな問題が起こっているか考える。
  ・原子力、遺伝子組み替え、臓器移植など。



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飛行船 
学習プリント

点検日  月  日
                  組  番 氏名
学習の準備
1.読み方を書きなさい。
 寂寥感  形骸  抑え  錬金術  遂げ  終焉  彩られ  漂わせ  露呈 遊弋  搭乗  戒め  担わせ  装う  図る  覆い  角逐  駆逐  侵し
2.語句の意味を調べなさい。
グロテスク
寂寥
形骸
おぼしめし
かまける
露呈
遊弋
まがまがしい
抽出
角逐
駆逐

学習のポイント
1.飛行船とはどんな産物であったかを理解する。
2.当時の人々が飛行船の大きさに恐怖した理由を理解する。
3.世界史における「発明発見物語」の二つの時代の区分を理解する。
4.第一の時代の「発明する精神」、合理精神と科学の特徴を理解する。
5.飛行船の四つの特徴を理解する。
6.大きな飛行船と小さな搭乗部分を対比の意味を理解する。
7.飛行船が危険性を内包している理由を理解する。
8.飛行船の素朴さとその意義を理解する。
9.飛行船のグロテスクさと優雅さの関係を理解する。
10.現代における現実領域と幻想領域の境界を理解する。  






                                                                            









第一段落板書

1.飛行船=最も巨大な
  │   最もグロテスクな
  │   最も不器用な
  │   最も寂寥感あふれる
  │人間の《大きさ》への緊張感が、ある限度を超えたところでいきなり失われ、人間が想像できる範囲の大きさ量だけが形骸化されて残った。
 スタインベックの大男・バベルの塔

2.飛行船の《大きさ》→恐怖
 ・ありえてはいけてない
 ・神様のおぼしめしにない
  創造主としての神
  自然界
  ‖
 ・子どもは、はしゃぎすぎてえたいの知れない領域に踏み込む→恐れ
  当時の人々 飛行船を発明する              ↓
                              親の制止を期待する
                              神様

第二段落板書

1.第一の時代=「幻想領域」における作業であった時代。
        「錬金術の時代」から「飛行船の時代」まで。
                   一九三七年のヒンデンブルグ号の爆発
  第二の時代=「幻想領域」からはみ出た時代。
        神の領域に達しようとしている領域。
2.第一の時代=奇妙なニュアンス
        ・神に反逆する悪魔の邪悪さ。
        ・詐欺師のうさんくささ。
        ・手品師の巧妙さ。
        ・魔術師の不気味さ。
          ‖
        ・正当な場を得ていない=積極的に得ようとした。
        ・正当な場を得ることを用心していた=消極的に得ようとした
  当時の発明家
  ×発明されたもの自体ではない。
  ○発明する精神。幻想。
   ・神の制止に対抗する
  ・合理主義と科学=神の領域を越えるためのものの一つ。
   ・第一の時代=「幻想領域」を確固たる「幻想領域」にするための道具。
                 神の領域を越えられないことを証明
   ・第二の時代=実用面に応用しようとした=万能

第三段落板書

・飛行船
 ×機能や効力でなく
 ○そうさせた精神
 ↑
 感動する
 ・当時の人々の幻想のまがまがしさ
 ・量として形骸化されてしまった寂寥感
・飛行船の4つの特徴
 1)大きさ
 2)危険性
 3)素朴さ
 4)グロテスクさ、優雅さ。

1.1)大きさ←恐怖
       ・さらに大きくなる予感
 ・搭乗部分の《小ささ》=1)人間
  ↑嘲笑、復讐      ・神の領域を侵そうとしている
 ・「むだ」、巨大なる「からっぽ」=1)人間の無力さ
  ↑               2)罰
 ・神。
 
2.危険性=決意
 ・引火すれば爆発する危険なガスを充満させている。
   ↑
 ・大空を飛ぶことが罪深い行為を戒める

3素朴さ
 ・浮力+推進力=飛ぶ→感動
  制止している物体にかかる力
  ↓↑
 ・浮力=推進力→揚力
  ↓
 ・用心深い←神の罰を恐れながら飛んでいる。

第四段落板書

第一の時代 第二の時代
《グロテスクさ》
「流線形」
 自然界の生み出した奇形としての不気味
 《優雅》たらしめている邪悪さ
   ↑
《優雅》を装っている
   ↑
自然界(神)にできるだけ調和させる
 「流線形」=地上に新しいものを創り上げる幻想          
 「自然界」=神が創りたもうた自然界の法則 
飛行船=まがまがしさ
 神を存在を意識している
《優雅さ》
「流線形」
 人工的に作り出された機能としての美しさ







新幹線=何も感じない
 機能として独立している

第五段落の板書

・第一の時代
 ・飛行船=優しさ
  ‖
 ・悪夢
  ・夢=「地上に新しいものを創り上げる」
  ・悪=「神のみが創りたまう」→恐怖と罪の意識
 ・「幻想領域」内の作業
  ↑
 ・憧憬
・ヒンデンブルグ号の爆発
 ・「悪夢」の幕を閉じる=神の領域を超えることを諦める。
・第二の時代
 ・混乱と喜劇=原子力、遺伝子組み替え、臓器移植
 ・日常空間が「幻想領域」を駆逐
 ・「現実領域」と「幻想領域」の境界が不明瞭
  ・恐怖や罪の意識がなくなった。
  ・幻想領域が幻想でなくなった。