現代日本の開化

夏目漱石


 現代というのは明治四十四年である。文明開化も一段落し、日露戦争にも勝利して、日本が列強の仲間入りをしようかというときである。「舞姫」の豊太郎のような人物が築き上げた日本社会を漱石が批評しているのである。
 一般に、開化、人知が発達して、文化が発展していくのは、人間の活力が発揮される道筋である。この経路は歴史的に見て根本的に二つに分けられる。一つは、活動のエネルギーを消耗する積極的なもので、それによって適度の刺激を求めて快楽を得ようとする「活力消耗の趣向」である。もう一つは、消極的なもので、活動を制限節約してエネルギーの消耗を防ごうとする「活力節約の行動」である。
 「活力節約の行動」は、義務と名のつく刺激に対して起こる。義務は果たさねば成らず、
果たすと気持のよいものではあるが、反面、できるだけ束縛を免れて自由になりたいという気持から起こる。「活力消耗の趣向」は、道楽と名のつく刺激に対して起こる。強制されないのに、自分から進んでエネルギーを消耗しようとする。
 「活力節約の行動」は、できるだけ労働を少なくしてわずかな時間に多くの働きをしようと工夫する。面倒を避けたい横着心の発達した便法である。汽車・汽船・電信・電話・自動車などが発明された。「活力消耗の趣向」は、好んで身体を使って疲労を求める。散歩などは贅沢な行動である。
 人間は義務的な行動を余儀なくされるのだから、好きでないことに対してどこまでも労力を最小限に切り詰めようとする。一方で、自己本意に、自然と好きな刺激に対して精神や身体を消耗しようとする。
 つまり、「活力節約の行動」から発明や器械力の方面が発達し、「活力消耗の趣向」から娯楽の方面が発達した。これらが縦糸になり横糸になって、現在の混乱した開化という不思議な現象が出来上がった。
 そこに、奇妙なパラドックスが生じる。これらの傾向は人間が生まれながらに持っているものであり、古来から現在まで順々に発展してきたはずである。当然、昔より生活が楽になっていなければならないとはずなのに、現在の生活は苦しい。開化が進むほど、生活の程度は高くなったが、生存競争が激しくなり、生活は困難になる。昔は死ぬか生きるかのために競争していたが、今はAの状態で生きるかBの状態で生きるかという競争になっている。
 少しでも労力を節約できる優勢なものが現れると、それに近づこうと動揺する。娯楽の面でより贅沢なものが現れると、それに移ろうと競争する。
 このような競争はいつの時代でも繰り返され、心理的苦痛はいつの時代も変わらない。労力節約や娯楽の拡大のありがたさが分からない。
 次に、日本の開化の特殊性について述べている。日本の開化は一般の開化、つまり西洋の開化と違っている。その理由を述べるのが講演の主旨である。
 西洋の開化は内発的であるが、日本の開化は外発的である。内発というのは自然に内から発展するものである。外発というのは外から無理やりに発展させられるのである。日本も江戸時代までは外国の影響を受けながらも内発的の開化を進んできた。
 しかし、明治になって西洋の文化に触れて、自己本位の能力を失って、押され続ける。数字で表現すると、十の程度の開化に、二〜三十の程度の開化が襲いかかってきた。すると地道な所は十分の一程度であとは通らないのと同じである。
 外発的な開化が与える心理的な影響は変なものになる。例えば、講演を聞いている人の意識は絶えず動いていて、上がって頂点に達すると下がる。本を読んでいる人の言葉も順番に移っていく。これは個人だけでなく集団意識にも通用する。日露戦争から日英同盟へと、一波一波順々に伝わっていく。つまり内発的である。
 日本の開化は、自然の波動のように内発的ではない。活力節約、活力消耗の二大方面に二十ほど進んだところに、突然三十程度の力が働いた。一つの波を十分に体験するまもなく次の波が来て、その波に乗らなければならない。西洋の波に乗る日本人は気兼ねをしているような気持ちになる。前の波の特質や真相をわきまえない内に次の波がくる。
 こういう開化の影響を受ける国民は、空虚の感、不満や不安の念を抱かねばならない。それを内発的であるかのごとく得意になっているのは虚偽であり軽薄であり悲惨である。西洋人との社交でも強い西洋の習慣に従わざるを得ない。自然に発展してきた風俗を急に変えられないから、機械的に覚えることになる。つまり、日本の開化は皮相上滑りの開化である。しかし、涙を飲んで上滑りに滑っていくしかない。
 それでは、これから内発的に進むことはできないか。不可能ではないが、西洋が百年かかって発展した開化を十年で、しかも内発的にやろうとすれば、年限が十分の一に縮まった分活力は十倍必要で、ゆゆしき結果になる。学問を例に考えると、神経衰弱になる。開化から受ける安心は微弱なもので、競争などから生じる心配を勘定に入れると、幸福の度合いは変わらない。このように現代日本が置かれた特殊な状況は、気の毒というか哀れというか、言語道断の窮状に陥っている。しかし、どうすることもできないと悲観的な結論を出すしかない。日本の開化の真相は分からないから研究したいが、分かってみると分からなかった昔の方が幸福であることもある。できるだけ神経衰弱にかからない程度に、内発的に変化していくのがよいというしか仕方がない。


「1 人間活力の発現としての開化」

1.講演について説明する。
 ・評論文と同じく、物の考え方や意見を述べる。
 ・しかし、評論文は繰り返し読むことができるが、講演は一度耳で聞いただけで理解されなければならない。
 ・そのためには、わかりやすい話し言葉を使うこと、内容の主要な柱を絞ること、わかりやすい例をあげること、大切なことは繰り返すことが大切である。
 
2.教科書を閉じさせて、「1」の部分だけを、教師が音読し、生徒にメモをとらせて、150字で要旨をまとめさせる。
 ・生徒の理解力と漱石の説得力が問われる。
 ・この後、授業で講演の技術などにも触れて、内容を理解していく。
 1)開化は人間活力の発現の経路である。2)活力節約の行動」は、3)義務に対して4)消極的に5)勢力の消耗を防ごうとし、6)発明や器械力の方面が発達した。7)活力消耗の趣向は、8)道楽に対して9)積極的に10)勢力を消耗し、11)娯楽の方面が発達した。しかし、12)開化が進むほど、13)競争が激しく、14)生活は困難になるという奇妙な15)パラドックスが生じる。(148字)
 
3.「学習プリント1」読み方を確認する。
 22 消耗 反り 23 千差万別 便宜 冠して 始終 免れて 圧搾 奮闘 一半 24 担いで 強いられ 生息 横着 便法 25 贅沢 余儀 仕儀 千変万化 錯綜 26 懐手 甚だ 27 和らげ 腐心 渡世 28 波瀾 趨勢 29 凝らし 存外
 
4.語句の意味を確認する。
 開化=人知が発達して文化が進歩すること。
 反りが合わない=気心が合わない。
 千差万別=種々さまざまの違いがあること。
 便宜=都合のよいこと。
 冠する=そのものを限定する言葉や、名称・称号・文字などを、上につける。
 圧搾=強くおしつけてしぼること
 取りも直さず=それがただちに。そのまま。
 任意=その人の自由意志にまかせること。
 随所=いたるところ。
 一半=半分。なかば。
 生息=生活すること。
 便法=物事をするのに便利な方法。一時しのぎの便宜上の手段。
 二六時中=一日中。
 経=織物の縦糸。
 緯=織物の横糸。
 千変万化=さまざまに変化すること。
 錯綜=物事が複雑に入り組んでいること。
 パラドックス=逆説。一見すると真理に反しているようで、よく考えると真理を突いている事柄や見方。
 懐手=自分では何もしないこと。
 腐心=ある事を成し遂げようと心をくだくこと。
 渡世=この世で生きていくこと。生活すること。世渡り。
 波瀾=激しい変化や曲折のあること。
 趨勢=ある方向へと動く勢い。社会などの、全体の流れ。
 存外=予想と異なること。
 切な=悲しさや恋しさで、胸がしめつけられるようである。
 かたじけない=もったいない。恐れ多い。
 
5.「1」の小段落に、1〜9の番号を付ける。
 1.活力節約の行動と活力消耗の趣向について
 1)開化とは何かを確認する。【説明】
  ・人知が発達して、文化が進歩すること。
 2)開化とは人間活力の発現の経路であることを確認する。【説明】
 3)二種類の活動があることを確認する。【説明】
 4)第一〜第六段を黙読して、記述を2つに分けて表を作らせる。【抜粋】
  ・項目ごとに対応するようにする。
  ・文中の語は適当にまとめる。
  ・重複するものは省略する。
 5)隣同士で確認させる。【協同】
 6)ポイントを確認する。【説明】
   活力節約の行動            │活力消耗の趣向
  ────────────── ─┼──────────────────
   1)消極的                │1)積極的
   2)義務を手軽に済ませたい      │2)道楽を進んでしたい。
   3)汽車・汽船・電信・電話・自動車 │3)散歩
   4)発明・器械力の方面        │4)娯楽の方面
 7)義務とは何か。【深化】
  ・人から強いられてやむを得ずする仕事。
 8)日本国憲法の三大義務とは。【発展】
  ・教育の義務・勤労の義務・納税の義務
 9)道楽とは何か。【深化】
  ・快を取るもの。
  ・娯楽や趣味。
 10)どんな道楽があるか。【発展】
  ・釣り、玉突き、碁、狩猟ほか
 11)義務と道楽の発現の違い。【抜粋】
  ・義務は、できるだけ切り詰める。労力を省く。
  ・道楽は、自由わがまま、天然自然、自我本位
 12)自我本位とは。【深化】
  ・自己本位。反対は、他人本位。
  ・漱石のキーワード。
  ・自己の固有性や主体性を捨てず、独自の価値判断に従って、行動や思考を行うという、自己を中心とする立場。
 
2.パラドックスについて
 1)パラドックスの意味を確認する。【抜粋】
  ・ちょっと聞くとおかしいが、実は誰しも認めなければならない現象。
 2)第七〜第九を黙読して、この場合のパラドックスとは何かをまとめさせる。【深化】
 3)隣の人と交流する。【協同】
  1)二人組になる。
  2)ジャンケンして、勝った方が一分間で説明する。
  3)負けた方は、一分間質問する。
  4)何組か、負けた人に発表させる。
 4)ちょっと聞くとおかしいこととは。【深化】
  ・開化が進めば生活が楽になるはずなのに、生活はいよいよ困難になる。
 5)なぜ、生活が困難になるのか。【抜粋】
  ・競争がますます激しくなるから。
 6)小学生の学問の競争と、大学生の学問の競争の相違点と共通点は。【深化】
  ・学問のレベルは違う。
  ・競争から受ける苦痛は同じ。
 6)どんな競争をしているか。【抜粋】
  ・生きるか生きるかという競争。
  ・Aの状態で生きるかBの状態で生きるか。
 7)昔の、生きるか死ぬかの競争とは。【抜粋】
  ・努力をしなければ死んでしまう。
  ・やむを得ないからやる。
 8)生きるか生きるかの競争とは。【深化】
  ・どれだけ生活の程度を上げるか。
 9)活力節減で言うと、どういう競争か。【抜粋】
  ・少しでも労力を節減できる優勢なものを手に入れようと競争する。
 10)一種の低気圧と同じ現象とは。
  ・気圧の低い方へ空気が流れるのと同じで、より労力を節減できる優勢な方へ生活が移っていく。
 11)積極的活力の発現から見ると、どんな競争か。【抜粋】
  ・より贅沢なものを求めて競争する。
 
3.もう一度、百五十字で要約する。


「2 現代日本の開化の特徴」
 
1.教科書を閉じさせて、「2」の部分だけを、教師が音読し、生徒にメモをとらせて、150字で要旨をまとめさせる。
 ・生徒の理解力と漱石の説得力が問われる。
 ・この後、授業で講演の技術などにも触れて、内容を理解していく。
1)西洋の開化は内発的、2)日本の開化は外発的である。3)内発は内から発展し、4)外発は外から発展させられる。5)本来開化は内発的なものである。6)外発的な開化の影響を受ける国民は、空虚になり、7)皮相上滑りの開化になる。8)無理に内発的にやると神経衰弱になる。9)できるだけ神経衰弱にかからないで内発的に変化していくしかない。(一四六字)
 
2.「学習プリント2」の読み方を確認する。
 29 済んで 30 蕾 行雲流水 一瞥 麻酔 31 向後 無論 具備 粗末 俄然 32 縫って 33 頓着 弧線 砕いて 34 解剖 難儀 行住坐臥 検して 35 炳乎 消長 36 催し 37 天狗 無我夢中 酸い 毫も 世間体 繕って
 38 気兼ね 脱却 御馳走 生意気 39 発酵 醸された 些細 慎む 40 首肯 41 陋態 殊更 41 旺盛 先駆 気息奄々 呻吟 語弊 賜 42 言語道断 窮状 嘆息 高慢 体裁 臆面
 
3.語句の意味を確認する。
 行雲流水=物事に執着せず淡々として自然の成り行きに任せて行動することのたとえ
 一瞥=ちらっと見ること。
 向後=これからのち。今後。
 具備=必要な物や事柄を十分に備えていること。
 俄然=にわかなさま。
 頓着=深く気にかけてこだわること。執着すること。
 弧線=弓なりの線。
 識域=意識と無意識の境界。
 難儀=面倒なこと。迷惑なこと。
 行住坐臥=人の起居動作の根本である、行くこと・とどまること・座ること・寝ることの四つ。
 検する=調べる。検査する。
 炳乎=明らかな様。
 消長=勢いが衰えたり盛んになったりすること。
 我を張る=自分の考えを押し通して譲らない。
 毫も=少しも。ちっとも。あとに打消しの語を伴って用いる。
 気兼ね=他人の思わくなどに気をつかうこと。遠慮。
 脱却=古い考え方や欠点などを捨て去ること。
 ハイカラ=西洋風を気取り、新しがって得意になること。
 些細=あまり重要ではないさま。取るに足らないさま。
 そしり=他人を悪く言うこと。
 ゆゆし=忌まわしい。不吉である。
 首肯=うなずくこと。納得し、賛成すること。
 陋態=見苦しい様。醜態。
 先駆=他に先がけて物事をすること。
 明々地=はっきりと、疑う余地のない形で。
 気息奄々=息も絶え絶えで、今にも死にそうな様。
 呻吟=苦しみうめくこと。
 語弊=言葉の使い方が適切でないために誤解を招きやすい言い方。
 言語道断=言葉で言い表せないほどひどいこと。とんでもないこと。
 窮状=貧困などのために困り果てているようす。
 臆面=気後れした顔つき。
 
4.小段落の番号を10〜29まで打つ。
 
5.次の箇所に線を引かせる。
 ・11三三〇02 現代の日本の開化は一般の開化とどこが違うか
 ・15三三二07 そういう外発的の開化が、心理的にはどんな影響を吾人に与えるか
 ・19三三五12 開化の推移はどうしても内発的でなければうそになる
 ・25三三九12 現代日本の開化は皮相上滑りの開化であるということに帰着する
 ・26三四〇03 地道に発展の順序を尽くして進むには進むことはどうしてもできまいか
 ・28三四二02 実に困ったと嘆息するだけで極めて悲観的の結論であります
 
6.現代の日本の開化は一般の開化とどこが違うかについて
 1)10〜14を音読させる。
 2)一般の開化と日本の開化の違いは。【抜粋】
  ・一般の開化=内発的。
  ・日本の開化=外発的。
 3)内発、外発の違いは。【抜粋】
  ・内発=内から自然に出て発展する。
      【説明】開花の比喩を説明する。
  ・外発=外からおっかぶさった他の力でやむを得ず一種の形式を取る。
 4)日本の江戸時代までの内発的な開化を説明する。【説明】
 5)「あのとき」とはいつか。【深化】
  ・ペリーが来航した時。
 6)「自己本位」について
  1)「1」ではなんと表現していたか。【抜粋】
   ・自我本位
  2)どういう意味か。【深化】
   ・自分の価値判断に基づいて主体的に思考し行動する。
  3)一言で言うと。【抜粋】
   ・内発的。
 7)永久に押されていなければ日本として存在できないとは。【深化】
  ・植民地になってしまう。
 8)今でも押され続けているか。【発展】
  ・外国の影響を強く受すぎて、日本独自のものが失われていないか。
 9)「前詳しく申し上げた開化の定義」とは。【深化】
  ・開化は人間活力の発現の経路で、活力節約の行動と活力消耗の趣向の二種類の行動から成立する。
 10)その定義に従うと、西洋の開化はどの程度のものか。【抜粋】
  ・活力節約の機関が数十倍ある。
  ・娯楽道楽の方面に積極的に活力を使用する方法を数十倍具備している。
 11)この状況を数字で説明する。【説明】
  ・日本の開化が、内発的に十進んだ時、
  ・西洋の開化が、外発的に二十、三十の力で打ってかかってきた。
  ・二〜三倍の力が襲いかかってきた。
 12)日本の開化が外発的である様子の比喩を説明する。【説明】
  ・やっと気合いをかけてぴょいぴょい飛んでいく。
  ・できるだけ大きな針でぽつぽつ縫って過ぎる。
  ・地面に触れるところは十尺の内一尺で、他の九尺は通らない。
 
7.開化の推移はどうしても内発的でなければうそになることについて
 1)15〜20を音読させる。
 2)意識の動きについて
  1)意識とは何か。【抜粋】
   ・心の動きやはたらき。
  2)意識の特徴は。
   ・絶えず動いている。
  3)どんな動き方をしているか。【抜粋】
   ・弧線、波形で動いている。
   ・明るい所と暗い所ができる。
   ・下から頂点に上がりはっきりする。
    ぼんやりし始めて下を向いて暗くなる。
 3)本を読む時の動きについて説明する。【説明】
  ・Aの言葉が頭に写る時はBを意識していない。
   Bが意識にのぼるとAはぼんやりするが、Cは意識にない。
 4)講演の例で説明する。【説明】
  ・初期=講演にくる前に経験したことを意識している。
  ・中期=講演に心が奪われる。
  ・終了後=講演のことを忘れてしまう。
  ★授業中の意識を考える。
 5)学生時代の思い出について説明する。【説明】
  ・過去を思い出す時の単位を考える。
  ★幼稚園、小学校,中学校単位で思い出してみる。
 6)当時の日本の事件について説明する。【説明】
  ・日露戦争から、日英同盟へ。
  ★巻末の年表を見て、当時や最近の事件で考える。
 7)再度、講演会の例について
  1)講演の進行と聴衆の心理をまとめる。【説明】
  ・十分=主眼がわからない
  ・二十分=筋道がつく
  ・三十分=油がのりおもしろくなる
  ・四十分=ぼんやりしだす
  ・五十分=退屈になる
  ・六十分=あくびがでる
  2)その後二、三時間もしゃべればどうなるか。【抜粋】
  ・成功しない
  3)その理由は。【抜粋】
  ・自然に逆らった外発的なものだから。
  ・内発的ならば茶菓子や酒や氷水が欲しくなる。
 8)これらの例は何の例だったか。【深化】
  ・内発的な開化の自然さ。
  ・外発的な開化の無謀さ。
 
8.そういう外発的の開化が、心理的にはどんな影響を吾人に与えるかについて
 1)21〜25を音読させる。
 2)どんな影響を与えるか。【抜粋】
 ・空虚の感がなければいけない。
 ・不満と不安の念を抱かねばならない。
 3)しかし、現実にはどのようであるのか。【抜粋】
  ・開化が内発的であるかのように得意になっている。
 4)それに対して漱石はどのように思っているか。【抜粋】
  ・ハイカラ、虚偽、軽薄、悲惨。
 5)何にたとえているか。
  ・煙草を吸う子ども。
 6)日本の開化が外発的であったことを確認する。【説明】
  ・内発の説明の波の比喩。
  ・活力の数値化。(先程と数字が違っている)
  ・天狗にさらわれた男の比喩。
 7)内発的な開化を波で説明する。【説明】
  ・甲の波に飽きて、内部欲求の必要上、乙の波に移る。
  ・甲の波の好所も悪所も、酸いも甘いもなめ尽くして、乙の波に移る。
  ・衣を脱いだ蛇の比喩。
 8)日本の開化の比喩は。【抜粋】
  ・食客して気兼ねをしているような気持ち。
  ・食膳に向かって皿の数を味わい尽くすどころか、元来どんな御馳走が出たかをハッキリと目に映じない前にもう膳を引いて新しいのを並べられた。
 9)なぜ、西洋との交際で日本本位ではうまくいかないのか。【抜粋】
  ・強いものと交際すれば、己を捨てて先方の習慣に従わなければならないから。
  ・フォークの持ち方の例。
 10)西洋の真似をすればどうなるか。【抜粋】
  ・機械的。
  ・取ってつけたようで甚だ見苦しい。
 11)日本の開化を一口で言うと。【抜粋】
  ・皮相上滑りの開化
 12)どうすればいいのか。【抜粋】
  ・涙をのんで上滑りに滑って行かなければならない。
 
9.地道に発展の順序を尽くして進むには進むことはどうしてもできまいかについて
 1)26〜おわりを音読させる。
 2)「子供の背に負われて大人といっしょに歩くようなまね」は何の比喩が。
  ・外発的
  ・子供=日本、大人=西洋。
 3)「地道に発展の順序を尽くして進む」を一言で言い換えると。【抜粋】
  ・内発的。
 4)具体的には。【抜粋】
  ・西洋が百年かかって発展した開化を、日本が十年でする。
  ・空虚でなくする。
 5)学問の例で説明する。
  ・体力、脳力が旺盛な西洋人が百年費やした学問を、日本人が半分の歳月で獲得する。
  ・驚くべき知識の収穫を誇りうる。
  ・神経衰弱にかかって死にそうになる。
 6)ゆゆしき結果とは。【抜粋】
  ・我々の受ける安心の度は微弱なものである。
  ・機械的に変化を余儀なくされるので上滑りになる。
  ・滑るまいと踏ん張れば神経衰弱になる。
  ・気の毒、哀れ。
 7)「おれの国には富士山がある」とはどういう意味か。【深化】
  ・富士山は自然にあるもので、日本人が開化によって作ったものではない。
 8)戦争以後一等国になったとは。
  ・日露戦争で列強の1つであるロシアに勝って、列強の仲間入りができた。
  ・実際は、ロシア革命などが起こって、ロシアが日本と戦えない状況になった。
 9)どのようにしてこの急場を切り抜けるか。【抜粋】
  ・できるだけ神経衰弱にならない程度において、内発的に変化していくのがよい。
 10)そのようなことは可能なのか。【発展】
  ・開化の速度を遅くして、内発的になれば日本が日本として存在しなくなる。
  ・速度を速くするために、外発的になれば上滑りになる。
  ・速度を速くしながら内発的にやろうとすれば、無理があって神経衰弱になる。



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現代日本の開化 1  学習プリント          点検日  月  日
                  組  番 氏名
学習の準備
1.読み方を書きなさい。
 22 消耗 反り 23 千差万別 便宜 冠して 始終 免れて 圧搾 奮闘 一半 24 担いで 強いられ 生息 横着 便法 25 贅沢 余儀 仕儀 千変万化 錯綜 26 懐手 甚だ 27 和らげ 腐心 渡世 28 波瀾 趨勢 29 凝らし 存外
2.語句の意味を調べなさい。
 開化 反りが合わない 千差万別 便宜 冠する 圧搾 取りも直さず 任意 随所 一半 生息 便法 二六時中 経 緯 千変万化 錯綜 パラドックス 懐手 腐心 渡世 波瀾 趨勢 存外 切な かたじけない

学習のポイント
1.開化はどんなものかを理解する。
2.開化を形造る二種類の活動を理解する。
3.活力節約の行動を理解する。
4.活力消耗の趣向を理解する。
5.一種妙なパラドックスを理解する。
6.人間が開化の流れの中で二種の活力の発現に及んだ理由を理解する。
7.開化が進めば競争が激しく生活が困難になる理由を理解する。
8.生きるか生きるかという競争を理解する。
















現代日本の開化 2  学習プリント          点検日  月  日
                  組  番 氏名
学習の準備
1.読み方を書きなさい。
 29 済んで 30 蕾 行雲流水 一瞥 麻酔 31 向後 無論 具備 粗末 俄然 32 縫って 33 頓着 弧線 砕いて 34 解剖 難儀 行住坐臥 検して 35 炳乎 消長 36 催し 37 天狗 無我夢中 酸い 毫も 世間体 繕って 38 気兼ね 脱却 御馳走 生意気 39 発酵 醸された 些細 慎む 40 首肯 41 陋態 殊更 41 旺盛 先駆 気息奄々 呻吟 語弊 賜 42 言語道断 窮状 嘆息 高慢 体裁 臆面
2.語句の意味を調べなさい。
 行雲流水 一瞥 向後 具備 俄然 頓着 弧線 識域 難儀 行住坐臥 検する 炳乎 消長 我を張る 毫も 気兼ね 脱却 ハイカラ 些細 そしり ゆゆし 首肯 陋態 先駆 明々地 気息奄々 呻吟 語弊 言語道断 窮状 臆面

学習のポイント
1.現代日本の開化と一般の開化(西洋の開化)の違いを理解する。
2.内発的と外発的の違いを理解する。
3.外発的な開化が心理的に与える影響を理解する。
4.開化が内発的でなければならない理由を理解する。
5.西洋人と日本人の社交の関係を理解する。
6.現代日本の開化が皮相上滑りの開化である理由を理解する。
7.地道に発展の順序を尽くして進む場合のゆゆしき結果を理解する。