「である」ことと「する」こと
 
丸山真男


「権利の上に眠る者」
 「である」ではなく「する」ことの重要性を、「時効」「主権」「自由」について述べている。「する」ことをしないで「である」ことに満足していると、それは失われてしまう。
近代社会における制度の考え方
 「自由」であると信じている人が偏見から自由でなかったり、「とらわれている」と意識している人が相対的に自由にありうるという逆説も成立する。民主主義においても、「する」ことによって「である」というロジックは生きている。
 もちろん、「である」組織はなくならないし、「する」ことが全ての領域に及ぶことも好ましくない。しかし、「てある」ことと「する」ことという二つの図式は現代日本を考える一つの基準になる。
「である」社会と「である」道徳
 江戸時代は何か「である」価値が基準であった。「らしく」ふるまい、「分」に安んじることが社会の秩序維持に重要であった。未知の人と多様な関係を結ぶことはなかった。コミュニケーションは相手が何者「である」かが第一要件になる。「である」道徳がかなめの「である」社会であった。
「する」社会と「する」論理
 明治になって、生産力が高まり、交通機関が発達して、社会関係が複雑多様になるにしたがって、分業、分化していく。同じ人間が状況によって違った役割を演じるようになり、「まるごとの人間関係」から「役割関係」に変わっていく。「偉さ」は上役「である」ことから発するのでなく、「する」業績から生じる。
制度についての判断基準
 政治の指導者に「する」原理を適用すると、人民と社会にサービスを提供し、人民は指導者を監視し、業績をテストすることになる。これが民主化の基準になる。民主化という制度を建前から判断する考え方は「である」原理にすぎない。勧善懲悪は「である」社会の産物だから、善い人「である」と悪い人「である」という基準だが、「する」社会では、良い行動を「する」か悪い行動「する」かという基準になる。しかし、制度についてはまだそれ自体「である」ことを良いとか悪いとか決めてしまう。
 身分や家柄や素質という「状態」は「である」論理で判断する。サービスや効用という「過程」は「する」論理で判断する。民主主義と言う良い制度からは良い働きが出てくるはずだと考えのは、「である」論理ある。日本の民主主義は「状態」であり、それを変えようとするものは破壊者と見なされる。それは制度が出来上がったものとして持ち込まれていたからである。具体的政策→法の施行→国会の多数決→国民多数の意思という還元論法という「である」論理によって、測定や検証という「する」原理は省かれる。
日本の急激な「近代化」
 近代日本の混乱は、「する」価値が急激に浸透しながら、「である」価値が強靱に根を張り、その上に「する」原理を建前とする組織が、「である」モラルによってセメント化されている。「である」社会が崩壊しながらも、「する」論理が発達せず、組織の外ではどう振る舞えばいいかわからず、組織の中は「である」中にさまざまな「する」が入っているので振る舞い方を使い分けねばならないというノイローゼ状態にある。



第一段落  板書
 
1.学習プリントを配布し、学習の準備を宿題にする。
2.漢字の読みを確認する。
 1 催促 不心得者 値しない 趣旨 債権者 喪失 潜む 2 不断 著しく 若干 怠って 威嚇 空疎 掌握 道程 3 易しい 擁護 惰性 荷厄介 代物 4 吟味 巣食う 偏向 5 辛うじて 内奥 8 謳歌 甚だしく
3.語句の意味を確認する。
1時効 長期間続いた事実を尊重し、それが道徳上は不当であっても、法律上は違法とは認めないこと。一定期間が経過して効力のなくなること。      
 催促 物事を早くするようにうながすこと。                 
 不心得 心がけの悪いこと。わきまえのないこと。              
 債権 金銭を貸した者が借り手に対して、その返還を請求する権利など。債務。 
 ロジック 論法。論理。
2不断 とだえないで続くこと。                       
 プロセス 過程。経過。                          
 投射 光線や影などを投げかけること。                   
 行使 権利・権力を実際に使うこと。「                   
 威嚇 威力をもっておどすこと。                      
 空疎 見せかけだけでしっかりした内容や実質がないこと。          
 掌握 全面的に自分の支配下に置くこと。                  
 道程 ある地点に着くまでの距離。                     
3荷厄介 物事が負担になること。                      
 代物 人や物を、価値を認めたり、あるいは卑しめたり皮肉ったりするなど、評価をまじえていう語。
4吟味 物事を念入りに調べること。
 偏見 かたよった見方・考え方。
 偏向 考え方がかたよっていること。
5物神 呪力があるとして崇拝の対象とされる物。               
6モラル 道徳。倫理。                           
7属性 ある事物に属する性質・特徴。                    
 ドグマ 各宗教・宗派独自の教理・教義。独断。教条。            
8謳歌 恵まれた幸せを、みんなで大いに楽しみ喜び合うこと。         
 
4.時効について(1)
 1)時効とは何かを質問する。
  ・一定の時の経過により権利が消滅したり(消滅時効)、逆に権利を取得できる(取得時効)制度。
 2)さまざまな時効について説明する。
  ・1年 タクシー料金、飲食店の飲食料、ホテルの宿泊料金、娯楽施設の使用料金
   2年 学習塾等の月謝、小売店の売掛金、給料
   3年 病院の治療費、交通事故等による損害賠償請求権、工事等代金等
   5年 消費者金融、サラ金等への返済
   10年 友人からの借金、落とし物
   20年 居住権
 3)時効の不人情的な面を読み取る。
  ・気の弱い善人が損をして、不心得者が得をする。
  ・ねこばば=猫が自分の糞に砂をかけて隠す。
 4)時効の中の「する」と「である」を読み取る。
  ・請求する。
  ・債権者である。
 5)「請求しない」ならば「債権者でなくなる」ことを確認する。
 6)」請求しない」理由を読み取る。
  ・債権者であるという位置に安住する。
  ・権利の上に眠る。
 7)時効のロジックを確認する。
  ・「する」ことによって「である」ことになる。「しない」なら「でなくなる」。
  ★この論理は後々まで一貫している。
 
5.憲法について(2)
 1)第十二条を確認する。
  ・国民に保障する自由や権利は、不断の努力によって保持しなければならない。
 2)この段落の「時効」に代わるテーマを読み取る。
  ・主権。
 3)主権の中の「する」と「である」を読み取る。
  ・権利を行使する。
  ・主権者である。
 4)「権利を行使しない」ならば「主権者でなくなる」ことを確認する。
 5)ここにも時効のロジックがあることを確認する。
 6)ナポレオン三世のクーデターについて説明する。
  ・大統領選挙に勝利し、秩序党と組んで共和派を抑えたあと、クーデターによって秩序党を弾圧し、君主となって帝政を開いた。
 7)ヒットラーの権力掌握るついて説明する。
  ・ナチス党の党首として、国会第一党になり、首相になると左翼党や労働組合を弾圧し、大統領を兼ねて総統に就任し独裁政治をした。
 8)ナポレオン三世とヒットラーの共通点を考える。
  ・民主的に国民から選ばれた後、独裁者になった。
 9)なぜ独裁者になったのかを考える。
  ・ナポレオン三世やヒットラーも悪いが、国民が選び、独裁を許した。
 
6.自由人について(3)
 1)この段落のテーマを読み取る。
  ・自由。
 2)主権の中の「する」と「である」について
  1)「である」ことを読み取る。
   ・自由である。
  2)「する」ことを読み取る。
   ・自由を祝福する。
   ・自由を擁護する。
   ・自由を行使する。
   ・自由になろうとする。
  3)初めの3つの中で、「自由になろうとする」に近いものを考える。
   ・自由を行使する。
  4)「祝福」「擁護」「行使」の違いを考える。
   ・祝福=言葉だけで褒めたたえること。
    擁護=味方になってかばうこと。
    行使=自分で実践する。
 3)「自由になろうとしない」「自由を行使しない」ならば「自由でなくなる」ことを確認する。
 4)「自由を行使しない」人々を読み取る。
  ・生活の惰性を好む者。
  ・物事の判断を人に預けてもいいと思っている人。
  ・アームチェアに深々と寄り掛かっていたい気性の持ち主。


第二段落
  板書
 
1.自由人について(4)
 1)自分は自由人であると思っている生徒に手を挙げさせる。
 2)「自由であると信じている人が自由でない」理由を読み取る。
  ・自分の思考や行動を点検したり吟味したりしないから。
  ・自分自身の偏見から自由でない。
  ★「する」ことをしない。
 3)逆に、「不自由だと思っている人が自由になれる」理由を読み取る。
  ・自由に認識し判断したいと努力するから。
  ★「する」ことをするから。
 4)「相対的」とは何が何に比べてかを考える。
  ・不自由だと思っている人が、自由であると信じている人に対して、相対的に自由である。
  ★「絶対的」なら「である」ことになる。
 4)ロジックを当てはめて考える。
  ・自由になろうと努力することによって、自由人である。
 
2.民主主義について(5)
 1)民主主義とは何か、生徒に質問する。
  ・人民が権力を所有し行使する政治形態。
  ・リンカーン「人民の、人民による、人民のための政治」
 2)民主主義の中の「する」ことと「である」ことを読み取る。
  1)すること
   ・不断に警戒する
   ・監視し批判する
   ・不断の民主化
   ・プロセス
  2)であること
   ・制度の自己目的化
   ・制度の物神化
   ・民主主義である
   ・定義や結論
  3)「制度の自己目的化」とは何か考える。
   ・制度の目的が忘れられ、制度の存続自体が目的になっていること。
   ・制度のための制度。
  4)「物神化」の意味を考える。
   ・人間が作った物が、至上の価値を持つ神のような存在になり、人間を支配するこ。
  5)民主主義のプロセスとは何かを考える。
   ・人々の議論を尽くすこと。
   ・単に多数決で結論を出すことではない。
 3)民主主義にロジックを当てはめて考える。
  ・不断に民主化することによって、民主主義である。
 
3.二つの極について(6〜8)
 1)時効、憲法、自由、自由人、民主主義のロジックを確認する。
  ・「する」ことによって、「である」ことになる。
 2)このロジックの応用範囲を読み取る。
  ・近代社会の制度、モラル、哲学
 3)プディングについて
  1)「する」と「である」を読み取る。
   ・する=食べるという現実の行為によって、美味かどうかを検証する。
   ・である=属性としての味が内在している。
  2)この英語の諺に対する日本語のことわざを考える。
   ・論より証拠。物は試し。
 4)プディングの考え方と同じく、社会組織や人間関係や制度の価値を判定する「二つの  極」とは何かを読み取る。
  ・「である」論理や価値と、「する」論理や価値。
 5)「である」論理や価値で重視されるものを読み取る。
  ・先天的に通用していた権威。
 6)「する」論理や価値で重視されるものを読み取る。
  ・現実的な機能と効用。
 7)社会の流れを読み取る。
  ・「である」ことから「する」ことに、相対的に重点を移動している。
  ★一気に変化するのでなく、比較の上でウエイトが変わってきた。
 8)その変化を英語の表現で考える。
  ・「である」は、to be or not to be。
   「生きるべきか死ぬべきか」(福田恆存訳)
  ・「する」は、to do or not to do。
 9)二つの図式を想定する意味を読み取る。
  ・「民主化」の実質的な進展の程度。
  ・制度と思考習慣のギャップを測定する。
  ・現代日本の非近代的な面と、過近代的な面のバランスを考える。
 10)現代日本の「である」ことに基づく非近代的な面を読み取る。
  ・血縁関係。人種団体。
 11)「過近代的な面」とは何かを考える。
  ・「する」ことの原則が、あらゆる領域で無差別に謳歌される面。
 12)「もちろんA、しかしB。」の表現に注意する。
  ・Aという留保条件をつけながらも、Bを強く肯定する。
  ・「もちろん、みんなの言うことはわかる。しかし、私はこうしたい。」


第三段落  板書
 
1.学習プリントを配布し、学習の準備を宿題にする。
2.漢字の読みを確認する。
 9 明瞭 出生 担って 譜代 家元 11 軌道 12 朋友 13 済む 14 素性 15 行住坐臥 事理
3.語句の意味を確認する。
9出生 ある土地・境遇・家柄の生まれであること。              
 家元 技芸の道で、その流派の本家として正統を受け継ぎ、流派を統率する家筋。
10分に安んじる その人の持っている身分や能力に満足する。          
 識別 物事の種類や性質などを見分けること。
 軌道 物事の経過していく道筋。
11パブリック 公共的。                           
 五倫 君臣の道。父子の親。夫婦間の別。長幼間の序。朋友間の信。      
 人倫 人と人との間柄。秩序。                       
 かなめ ある物事の最も大切な部分。
14素性 血筋。家柄。また、生まれ育った境遇。
 職能 物事がその機構の中で果たす役割。
15行住坐臥 日常の起居動作。                        
 事理 事柄の生じた理由・原因。                      

 
4.徳川時代について(9〜10)
 1)徳川時代のイメージを質問する。
 2)徳川時代を取り上げる意義を読み取る。
  ・右のような典型の対照を明らかにするため。
  ・二つの図式を想定することによって、相反する価値観に基づく社会の対照的なあり方を明確にする。
 3)筆者の徳川時代に対する定義を読み取る。
  ・出生、家柄、年齢が決定的な役割を担っている社会。
  ・身分制度。
 4)それらの特徴を読み取る。
  ・私たちの現実の行動によって変えることができない。
  ・「する」ことによって変えることができない。
  ・何をするかよりも、何であるかが重要な基準になる。
 5)大名や武士が百姓や町人を支配する根拠を読み取る。
  ×何かをサービスをする=後天的
  ○身分的な「属性」=先天的
 6)人々の振る舞い方は何から出てくるかを読み取る。
  ・何であるかということ。
 7)そこでの基本的なモラルを読み取る。
  ・「〜らしく」「〜にふさわしく」
  ・武士や町人とは何かという概念がしっかりある。
  ★「高校生らしく」というのはその名残である。
 8)言い換えを読み取る。
  ・「分」に安んじる。
  ・与えられた役割や身分を守ることに専念し、余分なことはしない。
  ・不満があっても、諦めて、我慢する。
  ★支配者にとっては都合のよい社会。
  ★被支配者ににとっても、多少不満はあるが、大きな変化がないので安心して暮らせる。
  ★格差社会の典型である。
 9)そこでの人間関係を読み取る。
  ○同郷、同族、同身分=既定の間柄。
   ‖
  「である」人間関係。
  ×仕事や目的を通じた未知の人との関係は起こらない。
   ‖
  「する」人間関係。
 
5.徳川時代について2(11〜12)
 1)コミュニケーションが成立する要件を読み取る。
  ・相手が何者であるかが、外部的に識別されること。
 2)外部的なものとは何かを読み取る。
  ・服装、身なり、言葉づかい。
  ★時代劇を思い出して、実際の服装や言葉づかいを考える。
  ★ちょんまげや着物や帯刀。
 3)その理由を読み取る。
  ・一見して相手の身分がわからなければどういう作法で相手に対していいか見当がつかないから。
  ★水戸黄門や遠山の金さんは、一見してわからないから悪人が間違った振る舞いをする。
 4)そのことを逆に言うとどうなるかを読み取る。
  ・相手が何者であるかが分かれば、ルールを作らなくても、話し合いは軌道に乗る。
  ★これは利点になる。
  ★共通の仲間意識があるので安心感がある。
  ★東京で関西弁を話す人と出会うと安心する。
  ★暗黙の了解がある。世間の常識がある。以心伝心。阿吽の呼吸。
 5)このことの言い換えを読み取る。
  ・あかの他人の間のモラルは発達する必要がない。
 6)「あかの他人の間のモラル」とは何か読み取る。
  ・公共道徳、パブリックな道徳。
 7)「あかの他人の間のモラルは発達する必要がない」ことを説明するために、挙げられている「五倫」について説明する。
  ・君臣、父子、夫婦、兄弟、朋友。
  ・君臣、父子、夫婦、兄弟は、縦の上下関係。「である」道徳。
   朋友は、横の関係。「する」道徳。
 8)この例から、儒教道徳は「である」モラルであり、儒教が生んだ社会や人間関係は「である」社会になることを確認する。



第四段落
  板書
 
1.近代化について(13・14)
 1)明治になり、近代化によって社会はどのように変わってきたかを読み取る。
  ・あかの他人同士の関係を結ぶ必要が増大した。
 2)その理由を14段落から読み取る。
  ・生産力が高まり、交通が発展して社会関係が複雑多様になったから。
  ★江戸時代から明治時代へ、近代化について説明する。
  ★昔はある地域で、すべての分野を生産し消費していたが、生産力が高まるとその地域の消費ではおさまらなくなる。
   また、交通が発達するので、余剰分を他の地域に売りにいくことができる。
   従って、違う地域の人々との交流も増えてくる。
 3)組織や制度の性格や道徳はどう変わっていくか14段落から読み取る。
  ・素性に基づく関係から、何かをする目的で取り結ぶ関係へ。
 4)何かをする目的で取り結ぶ関係の例を14段落から読み取る。
  ・職能集団。
  ・会社、政党、組合、教育団体。
  ・これらの集団は「する」原理に基づいていることを確認する。
 5)政治や経済や教育の中で何が起こるか13段落から読み取る。
  ・いろいろの作用の間に分業を生む。
  ・各分野の内部が活動に応じて分化する。
  ★小学校では、一人の先生がすべての科目を教え、担任もしていた。
   中学校や高校になると、教科によって先生が代わり、担任も授業を持たないこともある。
   これらも、学習量が増大し専門的になるからである。
 6)すると、人間関係はどう変化するかを13段落から読み取る。
  ・状況によって違った役割を演じなければならない。
  ・まるごとの関係から、役割関係へ。
  ★クラスの担任であり、教科の担当であり、クラブの顧問であり、忘年会の幹事であり、夫であり、父親である。
 7)リーダーの価値判定の基準とどう変化するかを14段落から読み取る。
  ×上役であること=「である」こと。
  ○業績=「する」こと。
 
2.リーダーについて(15)
 1)武士と課長の違いを読み取る。
  ・武士=常に上下関係にある。
  ・課長=仕事の面だけの上下関係である。
  ★アメリカ映画の例を確認する。
 2)日本社会の問題点を読み取る。
  ・仕事以外まで上下関係がつきまとう。
  ・職能関係が「身分」的になっている。
  ★アフター5の過ごし方を問う。
   ・会社が終わって上司と付き合うか。
   ・教師は聖職といわれるが。
   ・タレントのプライバシーは。
   ・政治かのスキャンダルは。
 3)例えば「学校」について
  1)学校の目的は。
   ・次の時代を担う人材を育成する。
  2)学校の職能の分化は。
   ・担任、進路指導部、生徒指導部、教務部、保健部、図書部、企画部、事務部。
  3)教師の価値判定の基準は。
   ・教師であることではなく、
   ・どれだけ生徒の自己実現を援助し、立派な人間に育てられたか。そこには、学力も入るし、性格や物の考え方も入る。


第五段落  板書
 
1.学習プリントを配布し、学習の準備を宿題にする。
2.漢字の読みを確認する。
 17 歌舞伎  読本  勧善懲悪  18 逸脱  19 静態  青写真  20 氾濫 21 攪乱  22 練り歯磨き  23 施行  還元 24 賤しき  貴き  公卿  正味  25 強靱  26 妨げ  浸潤
3.語句の意味を確認する。
17バリエーション
 勧善懲悪 善事を勧め、悪事を懲らすこと。特に、小説・芝居などで、善玉が最後には栄え、悪玉は滅びるという筋書きによって示される、道徳的な見解にいう。勧懲。

 イデオロギー 歴史的、社会的立場に制約された考え方。           
18アクセント 強調したい部分や人目を引きつけようとする点、変化をつける点。
 青写真 おおよその計画。                         
 逸脱 本筋や決められた枠から外れること。                 
 事を好む 事件が起こるのを好む。変わったことが起こるのを待ち望む。
 やから 同類の者たち。仲間。連中。ともがら。特に、よくない連中。     
19氾濫 事物があたりいっぱいに出回ること。あまり好ましくない状態にいう。  
20攪乱 かき乱すこと。混乱が起きるようにすること。             
21周知 世間一般に広く知れ渡っていること。                 
 官僚 役人。官吏。特に、政策決定に影響力をもつ中・上級の公務員。
 拍車をかける 物事の進行を一段とはやめる。                
22施行 実際に行うこと。政策・計画などを実行すること。           
 首尾一貫 方針や考え方などが始めから終わりまで変わらないで、筋が通っていること。                             
 還元 物事をもとの形・性質・状態などに戻すこと。             
23正味 余分なものを取り除いた、物の本当の中身
24強靱 しなやかで丈夫であるようす。ねばり強く、困難などによくたえるようす。
25浸潤 水がしみ込むように、思想・勢力・雰囲気などが広がっていくこと。   

 
4.政治の民主化について(16〜18)
 1)政治や制度を判断する二つの基準を読み取る。
  ・「する」原理を適用する。
  ・建前だけから判断する。
 2)政治を「する」原理で判断すると、指導者側と人民側ではどうなるか読み取る。
  ・指導者=人民と社会に不断にサービスを提供する。
  ・人民 =指導者の権力乱用を常に監視し、業績を点検する。
 3)政治を制度の建て前だけで判断する考え方について
  1)それは何の原理である読み取る。
   ・「である」原理
  2)その例としての勧善懲悪イデオロギーを読み取る。
   ・善人は善事だけを行い、悪人は悪事だけを行う。
   ・善人からは善事が必然的に流れだし、悪人からは悪事が流れだす。
   ・善い人、悪い人かという基準。
   ★白か黒かの単純な考え方である。
  3)それが生まれた理由を読み取る。
   ・意識的な「主義」の産物ではない。
   ・社会の隅々まで「である」原理に基づいて組織化されているから。
   ・個人の問題ではなく、組織や社会の問題である。
 4)社会関係が複雑化し人間関係が役割関係になると、判断の基準はどうなるか読み取る。
  ・よい行動、悪い行動という基準。
 5)判断する時に必要なことを考える。
  ・人で判断するのでなく、行動で判断する。
  ・具体的状況での具体的な行動を見る必要がある。
  ★よい人はよい行動もするが悪い行動もする。
   悪い人も悪い行動だけでなくよい行動もする。
 6)このことがを西宇治高校に当てはめて考える。
  ・西宇治高校の生徒は、真面目である。
  ・西宇治高校の六百人は、全員まじめであることになる。
  ・しかし、実際は、真面目な生徒もいるし、不真面目な生徒もいる。
 7)人を判断する場合では変化してきたが、制度を判断する場合はどうか読み取る。
  ・現実的な働きで判断しない。
  ・それ自体として善悪を決める。
 8)政治の民主化を建て前だけで判断する考え方とは。
  ・制度の現実的な働きを点検しないで、それ自体の善悪を決める。
 
5.政治や制度の判断について(19)
 1)「する」原理の判断と「である」原理の判断の重視するものの違いを読み取る。
  ・「する」原理の判断=運動や過程。
  ・「である」原理の判断=状態。物の静態的なたたずまい。
 2)それぞれに該当する具体的なものを読み取る。
  ・「する」=サービスや効用の検証
  ・「である」=身分、家柄、人間の素養。
 3)「である」原理の制度判断を読み取る。
  ・「良い」制度からはよい働きが、「悪い」制度からは悪い作用が流れ出る。
 4)その見方の背後にあるものを読み取る。
  ・理想的な社会や制度が「模範的」な状態として制止的に想定されている。
  ・無条件に絶対的に正しいものが存在する。
 5)比喩的に例えられている語句を読み取る。
  ・美しい花園。
  ★「美しい国」も同じ。
 6)「良い」制度なら良い働きしか出ないはずなのに、「悪事」が生まれる理由を読み取る。
  ・偶然的、一時的、「事を好む」やからが生む。
 
6.現代日本の民主主義について(20〜23)
 1)現代日本の民主主義に氾濫している思考を読み取る。
  ・「状態」的思考
  ・「今は民主主義の世の中だから……」
  ・「日本は民主主義の国である以上、この秩序を破壊する行動は……」
 2)「……」に入る言葉を考える。
  ・そこで行われることはすべて民主主義である。
  ・すべて反民主主義である。
 3)この民主主義の考え方を読み取る。
  ・民主主義は日々作られるのではない。
  ・既存の「状態」が民主主義である。
  ・既存の「状態」の攪乱は反民主主義である。
 4)現代日本がこのような状況になった理由を読み取る。
  ・近代的な制度(民主主義も)があらかじめ出来上がったものとして持ち込まれ、その枠に従って生活が規制されてきたから。
  (法律や制度(民主主義)の建て前があって生活の上に降りてくるという実感があるから。)
  (生活と経験を通じて一定の法や制度の設立を要求し改めていく発想がないから。)
  ・本来の官僚的思考様式があるから。
 5)官僚的思考様式とは。
  ・法律や制度の建前や前例に忠実に従う形式主義的な考え方。上の権威に従い、下に権限を振るう発想。
  ・与えられた仕事を完璧にこなしミスをしない。そのため新しいものを作ると言う冒険はしない。
  ・上で決められたことに対して疑問を持たずにひたすら正確に実行する。
  ・お役所仕事。
 6)その比喩表現を読み取る。
  ・チューブから練り歯磨きが出るように、条文の既定から具体的な政策が押し出されてくる。
  ・すでに出来上がったものがあって、それが自動的に出てくるだけ。
 7)建て前の論理の展開の仕方を読み取る。
  ・具体的政策→法の施行→国会の多数決→国民多数の意思。
  ・還元論法。
  ・国民の多数の意思で選んだ国会議員が、国会の場で多数決で決定した法律が、生み出した具体的な政策が、実施されることが民主主義である。
  ★形式的には国民の意志が政策に反映されていることになる。
 8)本来の民主主義がなすべきことを読み取る。
  ・具体的な効果を測定し検証すること。
 
7.政治の民主化について(16〜18)
 1)政治や制度を判断する二つの基準を読み取る。
  ・「する」原理を適用する。
  ・建前だけから判断する。
 2)政治を「する」原理で判断すると、指導者側と人民側ではどうなるか読み取る。
  ・指導者=人民と社会に不断にサービスを提供する。
  ・人民 =指導者の権力乱用を常に監視し、業績を点検する。
 3)政治を制度の建て前だけで判断する考え方について
  1)それは何の原理である読み取る。
   ・「である」原理
  2)その例としての勧善懲悪イデオロギーを読み取る。
   ・善人は善事だけを行い、悪人は悪事だけを行う。
   ・善人からは善事が必然的に流れだし、悪人からは悪事が流れだす。
   ・善い人、悪い人かという基準。
   ★白か黒かの単純な考え方である。
  3)それが生まれた理由を読み取る。
   ・意識的な「主義」の産物ではない。
   ・社会の隅々まで「である」原理に基づいて組織化されているから。
   ・個人の問題ではなく、組織や社会の問題である。
 4)社会関係が複雑化し人間関係が役割関係になると、判断の基準はどうなるか読み取る。
  ・よい行動、悪い行動という基準。
 5)判断する時に必要なことを考える。
  ・人で判断するのでなく、行動で判断する。
  ・具体的状況での具体的な行動を見る必要がある。
  ★よい人はよい行動もするが悪い行動もする。
   悪い人も悪い行動だけでなくよい行動もする。
 6)このことがを西宇治高校に当てはめて考える。
  ・西宇治高校の生徒は、真面目である。
  ・西宇治高校の六百人は、全員まじめであることになる。
  ・しかし、実際は、真面目な生徒もいるし、不真面目な生徒もいる。
 7)人を判断する場合では変化してきたが、制度を判断する場合はどうか読み取る。
  ・現実的な働きで判断しない。
  ・それ自体として善悪を決める。
 8)政治の民主化を建て前だけで判断する考え方とは。
  ・制度の現実的な働きを点検しないで、それ自体の善悪を決める。
 
8.政治や制度の判断について(19)
 1)「する」原理の判断と「である」原理の判断の重視するものの違いを読み取る。
  ・「する」原理の判断=運動や過程。
  ・「である」原理の判断=状態。物の静態的なたたずまい。
 2)それぞれに該当する具体的なものを読み取る。
  ・「する」=サービスや効用の検証
  ・「である」=身分、家柄、人間の素養。
 3)「である」原理の制度判断を読み取る。
  ・「良い」制度からはよい働きが、「悪い」制度からは悪い作用が流れ出る。
 4)その見方の背後にあるものを読み取る。
  ・理想的な社会や制度が「模範的」な状態として制止的に想定されている。
  ・無条件に絶対的に正しいものが存在する。
 5)比喩的に例えられている語句を読み取る。
  ・美しい花園。
  ★「美しい国」も同じ。
 6)「良い」制度なら良い働きしか出ないはずなのに、「悪事」が生まれる理由を読み取る。
  ・偶然的、一時的、「事を好む」やからが生む。
 
9.現代日本の民主主義について(20〜23)
 1)現代日本の民主主義に氾濫している思考を読み取る。
  ・「状態」的思考
  ・「今は民主主義の世の中だから……」
  ・「日本は民主主義の国である以上、この秩序を破壊する行動は……」
 2)「……」に入る言葉を考える。
  ・そこで行われることはすべて民主主義である。
  ・すべて反民主主義である。
 3)この民主主義の考え方を読み取る。
  ・民主主義は日々作られるのではない。
  ・既存の「状態」が民主主義である。
  ・既存の「状態」の攪乱は反民主主義である。
 4)現代日本がこのような状況になった理由を読み取る。
  ・近代的な制度(民主主義も)があらかじめ出来上がったものとして持ち込まれ、その枠に従って生活が規制されてきたから。
  (法律や制度(民主主義)の建て前があって生活の上に降りてくるという実感があるから。)
  (生活と経験を通じて一定の法や制度の設立を要求し改めていく発想がないから。)
  ・本来の官僚的思考様式があるから。
 5)官僚的思考様式とは。
  ・法律や制度の建前や前例に忠実に従う形式主義的な考え方。上の権威に従い、下に権限を振るう発想。
  ・与えられた仕事を完璧にこなしミスをしない。そのため新しいものを作ると言う冒険はしない。
  ・上で決められたことに対して疑問を持たずにひたすら正確に実行する。
  ・お役所仕事。
 6)その比喩表現を読み取る。
  ・チューブから練り歯磨きが出るように、条文の既定から具体的な政策が押し出されてくる。
  ・すでに出来上がったものがあって、それが自動的に出てくるだけ。
 7)建て前の論理の展開の仕方を読み取る。
  ・具体的政策→法の施行→国会の多数決→国民多数の意思。
  ・還元論法。
  ・国民の多数の意思で選んだ国会議員が、国会の場で多数決で決定した法律が、生み出した具体的な政策が、実施されることが民主主義である。
  ★形式的には国民の意志が政策に反映されていることになる。
 8)本来の民主主義がなすべきことを読み取る。
  ・具体的な効果を測定し検証すること。                                



第六段落  板書
 
1.福沢諭吉の「日々のおしえ」について(24)
 1)貴き人と賤しき人の判断を読み取る。
  ・貴き人=むつかしきことする
  ・賤しき人=やすきことする。
 2)「むつかしきこと」とは何か読み取る。
  ・物事を考えて世間のために役に立つことをする。
 3)大名や公卿や侍はどうか読み取る。
  ・賤しき人。
 4)その理由を読み取る。
  ・先祖代々の財産が有るだけで、立派にしているだけだから。
 5)この文章の意味を読み取る。
  ・家柄や資産などの「である」価値から「する」価値への歴史的な変革。
 
2.近代日本の宿命について(25〜26)
 1)近代日本に起こった宿命的な混乱の原因を読み取る。
  ・「する」価値の猛烈な勢いで浸透する。
  ・「である」価値が強靱に根を張る。
  ・「する」原理を建て前とする組織が「である」社会のモラルによってセメント化
   (固定化)されてきた。
 2)どんな混乱が起きているか読み取る。
  ・伝統的な「身分」が急激に崩壊。
  ・自発的な集団形成と自主的なコミュニケーションの発達の妨害。
  ・会議と討論の社会的基礎の未成熟。
 3)その結果どうなるか読み取る。
  ・近代的組織や制度の閉鎖的な「村」の形成。
  ・「うち」のメンバー意識と「うちらしく」の道徳の通用。
  ・外では、あかの他人との接触。
 4)どんな問題が発生するか読み取る。
  ・同じ人間が「場所柄」に応じて振る舞い方を使い分けなければならない。
 5)場所柄とは。
  ・内は、「である」社会。
  ・外は、「する」社会。
  ・内は、「する」価値の浸潤の程度がさまざま。
 6)こんな状況の中で生活するとどうなるか。
  ・ノイローゼになる。
  ・漱石の明治の時代からそうだった。



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「である」ことと「する」こと
「権利の上に眠る者」 近代社会における制度の考え方 学習プリント

点検日  月  日

                  組  番 氏名
学習の準備
1.読み方を書きなさい。
 1 催促 不心得者 値しない 趣旨 債権者 喪失 潜む 2 不断 著しく 若干 怠って 威嚇 空疎 掌握 道程 3 易しい 擁護 惰性 荷厄介 代物 4 吟味 巣食う 偏向 5 辛うじて 内奥 8 謳歌 甚だしく
2.語句の意味を調べなさい。

1時効
 催促
 不心得
 債権
 ロジック
2不断
 プロセス
 投射
 行使
 威嚇
 空疎
 掌握
 道程
3荷厄介
 代物
4吟味
 偏見
 偏向
5物神
6モラル
7属性
 ドグマ
8謳歌


3.次の問題の答えにあたる部分に線を引き、番号をつけなさい。
 11)時効の根拠のある趣旨は。
  2)時効のロジックは。
 23)憲法の規定を時効のロジックで読み替えると。
 34)自由を時効の発想で考えると。
  5)その言い換えは。
 46)自分は自由であると信じている者はどうなるか。
  7)自分が自由でないと意識している者はどうなるか。
 58)民主主義の自由と同じような本質的な性格は。
 79)時効のロジックは何にまで広げて考えられるか。
 810)二つの図式とは何と何か。
  11)二つの図式を想定することによって何を得ることができるか。2つ。

学習のポイント
1.時効のロジックを理解する。
2.憲法における、「である」ことと「する」ことを理解する。
3.自由における、「である」ことと「する」ことを理解する。
4.自由人が却って不自由であること、またその逆の論理を理解する。
5.民主主義の本質的な性格を理解する。
6.「である」ことと「する」ことを想定する意義を理解する。










「である」ことと「する」こと
「である」社会と「である」道徳 「する」社会と「する」論理 学習プリント

点検日  月  日

                   組  番 氏名
学習の準備
1.読み方を書きなさい。
 9 明瞭 出生 担って 譜代 家元 11 軌道 12 朋友 13 済む 14 素性 15 行住坐臥 事理
2.語句の意味を調べなさい。

9出生
 家元
11分に安んじる
 識別
 軌道
12パブリック
 五倫
 人倫
 かなめ
14素性
 職能
15行住坐臥
 事理


3.次の問題の答えにあたる部分に線を引き、番号をつけなさい。
 91)徳川時代の社会関係の決定的な役割を担う要素は。
  2)価値判断の重要な基準は何か。
  3)大名や武士が百姓や町人を支配する建て前は何か。
 104)基本的なモラルは。
  5)秩序維持の要求は。
 116)コミュニケーションが成り立つための第一要件は。
 127)発達する必要のないものは。
 138)あかの他人同士の間に関係を取り結ぶ必要が増大すると、組織や制度の性格はどの   ように変わるか。2つ。
  9)また、人間関係はどのように変わるか。
 1410)「である」論理から「する」論理への推移の原因は。
  11)すると、どんな関係や制度の比重が増していくか。
  12)例えばどんな職能集団か。
  13)リーダーの偉さの根拠は。
 1514)娯楽や家庭の交際まで会社の「間柄」がつきまとう原因は。

学習のポイント
1.徳川時代の価値判断の基準の特徴と具体例を理解する。
2.人間関係や社会の秩序を維持するのに必要なものと具体例を理解する。
3.コミュニケーションの成立に必要なものと具体例を理解する。
4.公共道徳の価値について理解する。
5.儒教社会について理解する。
6.近代化によって組織や制度や人間関係がどのように変化するかを理解する。
7.「である」論理から「する」論理へ推移する原因と過程を理解する。
8.リーダーの役割の変化を理解する。










「である」ことと「する」こと
制度についての判断基準 日本の急激な「近代化」 学習プリント

点検日  月  日

                   組  番 氏名
学習の準備
1.読み方を書きなさい。
 17 歌舞伎  読本  勧善懲悪  18 逸脱  19 静態  青写真  20 氾濫 21 攪乱  22 練り歯磨き  23 施行  還元 24 賤しき  貴き  公卿  正味  25 強靱  26 妨げ  浸潤
2.語句の意味を調べなさい。

17バリエーション
 勧善懲悪
 イデオロギー
19アクセント
 青写真
 逸脱
 事を好む
 やから
20氾濫
21攪乱
22周知
 官僚
 拍車を掛ける
23施行
 首尾一貫
 還元
24正味
25強靱
26浸潤


3.次の問題の答えにあたる部分に線を引き、番号をつけなさい。
 161)政治において「する」原理を指導者側に適用すると。
  2)人民側に適用すると。
 173)勧善懲悪のイデオロギーとは。
 184)社会関係が複雑化すると善悪の基準はどのように変わるか。
 195)よい制度からよい働きが出るという見方の背後には、何が想定されているか。
 216)民主主義とは何であるか。
 227)日本の制度には、どのような実感が強く根を張っているか。
  8)どのような発想が広がらないか。
 239)制度の建前の論理の還元論法とは。
  10)制度の建前の論理は何を飛び越しているか。
 2511)福沢諭吉の「日々のおしへ」は何を表現していたか。
  12)日本の近代の混乱はどういうところに発しているか。
 2613)こうした混乱の結果、近代的組織や制度はどういうことになるか。
  14)「そと」に出れば何が待ち構えているか。
  15)その状況の中で、人々は何をしなければならないか。

学習のポイント
1.政治における「する」原理を理解する。
2.勧善懲悪的なイデオロギーを理解する。
3.民主主義の神聖化について理解する。
4.日本人と制度の関係を理解する。
5.福沢諭吉の先進性を理解する。
6.近代日本の混乱を理解する。
7.近代日本の組織や制度の矛盾を理解する。
0.形式段落に1〜26の番号を付ける。










第一段落 板書

する                 である             
時効 請求する               債権者である
安住する
 ↓権利の上に眠る
権利を行使しない
 ↓
債権者でなくなる        
主権 権利を行使する            主権者である
 ↓
権利を行使しない
 ↓
主権者でなくなる
自由 ×自由を祝福する
△自由を擁護する
○自由を行使する
 自由になろうとする
自由である
 ↓
自由を行使しない
 ↓
自由でなくなる



第二段落の板書

「である」論理・価値        「する」論理・価値
自由人 ・自由であると信じている人
  ↓
・点検や吟味を怠る
  ↓
・自分の中の偏見から自由でない。。
・不自由だと思っている人
  ↓
・自由に認識し判断したいと努力する
  ↓
・相対的に自由になり得る。
民主主義 ・制度の自己目的化
・制度の物神化
・民主主義である
・定義や結論           
・不断に警戒する
・監視し批判する
・不断の民主化
・プロセス
プリン ・属性としての味が内在している   ・食べるという現実の行為によって、 美味かどうかを検証する。
現代社会 ・先天的に通用していた権威。    ・現実的な機能と効用。      

・to be or not to be
・to do or not to do     

・非近代的な面
・血縁関係。人種団体。
・過近代的な面
・あらゆる領域で無差別に謳歌される
                      ↓
               ・「民主化」の実質的な進展の程度。
               ・制度と思考習慣のギャップを測定する。
               ・現代日本の非近代的な面と、過近代的な面のバランス



第三段落の板書

・徳川時代
 ・出生、家柄、年齢が決定的な役割を担っている社会=である
  ・身分制度。
  ・私たちの現実の行動によって変えることができない。
 ・大名や武士→百姓や町人
  ×何かをサービスをする=後天的
  ○身分的な「属性」=先天的
 ・人々の振る舞い方
  ・何であるかということ。
  ・「〜らしく」「〜にふさわしく」
  ・「分」に安んじる。
   ↓
   ○同郷、同族、同身分=である
   ×仕事や目的を通じた未知の人との関係=する
 ・コミュニケーション
  ・相手が何者であるかが、外部的に識別されること。
              服装、身なり、言葉づかい。
   ↑理由
  ・一見して相手の身分がわからなければどういう作法で相手に対していいか見当がつかない。
   ↓↑
  ・相手が何者であるかが分かれば、ルールを作らなくても、話し合いは軌道に乗る。
   ↓
  ・あかの他人の間のモラルは発達する必要がない。
   ・公共道徳、パブリックな道徳。
   ↓
  ・儒教道徳=「である」モラル
   ↓
  ・江戸時代=「である」社会



第四段落の板書

・近代化
 ・生産力の高まり
 ・交通の発展
 ・社会関係の複雑多様化
  ↓
 ・あかの他人同士の関係の増大した。
  ↓
 ・素性に基づく関係→何かをする目的で取り結ぶ関係
  家柄、同族     職能集団
              ・会社、政党、組合、教育団体
  ↓
 ・分業、分化
  ↓状況によって違った人間関係
 ・まるごとの関係→役割関係
  「である」論理 「する」論理
  ↓
 ・リーダーの偉さ
  ・上役であること→業績
   武士      課長
   ・常に上下関係  ・仕事の面だけの上下関係
    │       │
    └────→┤                         
            ↓
          ・職能関係が「身分」的



第五段落の板書

1.政治の民主化の判断
「する」原理による判断
建て前による判断=「である」原理
・指導者=人民と社会に不断にサービス     する。
・人民 =権力乱用を監視する。
     業績を点検する
・制度の現実的な働きによってテストし ない。
・それ自体の善悪を決める。

・近代的イデオロギー
 ・よい行動か悪い行動か。
   ↑
 ・具体的状況での具体的な行動を見る
   ↑
 ・社会関係が複雑化
 ・人間関係が役割関係
・勧善懲悪イデオロギー。
 ・よい人=善事だけを行う。
  悪い人=悪事だけを行う。
 ・善い人か悪い人か。
   ↑
 ・「である」原理に基づいて組織化さ  れた社会
・運動や過程。
・状態。静態的なたたずまい。
  ↓
・理想的な社会や制度の模範的な状態
 ・美しい花園
 ・神聖化
 ・すべてが善事
  ↓↑
 ・悪
  ・偶然的
  ・一時的
  ・特定の個人          
2.現代日本の民主主義
 ・「状態」的思考
  「今は民主主義の世の中だから(そこで行われることはすべて民主的である)」
  「日本は民主主義の国である以上、この秩序を破壊する行動は、(反民主主義である)」
   
 ・民主主義があらかじめ出来上がったものとして持ち込まれた
   +
 ・官僚的思考様式。
   ‖
 ・建て前の民主主義
  還元論法
  ・具体的政策→法の施行→国会の多数決→国民多数の意思
   ↓↑
 ・本来の民主主義
  ・具体的な効果を測定し検証する。



第六段落の板書
 
1.福沢諭吉の「日々のおしえ」
 ・貴き人=むつかしきことする
      ・物事を考えて世間のために役に立つこと
 ・賤しき人=やすきことする。
   ↓
 ・大名や公卿や侍
  ・先祖代々の財産が有るだけ。
   ‖
  ・賤しき人。
   ↓
 ・家柄や資産などの「である」価値→「する」価値への歴史的な変革。

2.近代日本の宿命
 近代日本の混乱
 ・「する」価値 =猛烈な浸透。
 ・「である」価値=強靱に根を張る。
   ↓
 ・「する」原理を建て前とする組織←「である」社会のモラル
   ↓                 セメント化(固定化)
 ・伝統的な「身分」の急激な崩壊。
 ・自発的な集団形成と自主的なコミュニケーションの発達の妨害。
 ・会議と討論の社会的基礎の未成熟。
   ↓
 ・近代的組織や制度=閉鎖的な「村」の形成。
              ・「うち」のメンバー意識
              ・「うちらしく」の道徳
 ・あかの他人との接触。
   ↓
 ・同じ人間が「場所柄」に応じて振る舞い方を使い分けなければならない。
        ・内=「である」社会。
           「する」価値の浸潤の程度がさまざま
        ・外=「する」社会。
   ↓
 ・ノイローゼになる。