長恨歌


白居易


長恨歌 学習プリント

第一段落 はじめ〜
第二段落 春寒賜浴華清池(5)〜
第三段落 九重城闕煙塵生(17)〜
第四段落 黄埃散漫風蕭索(22)〜
第五段落 天旋地転回竜馭(26)〜
第六段落 臨卭道士鴻都客(38)〜
第七段落 中有一人字玉真(44)〜
第八段落 含情凝睇謝君王(51)〜

学習の準備
1.読み方を書きなさい。
 御宇  六宮  春宵  苦ダ  罷ミテ  遂ニ  尽日  九重  六軍  奈何 行宮  如何  梨園  青娥  悄然  耿耿  鴛鴦  翡翠  魂魄  曾テ 慇懃  忽チ  
徧シ  字  聞道  飄々  猶ホ  寂寞  唯ダ  但ダ
2.書き下し文にしなさい。
 1)
養在深閨人未識
 
2)遂令天下父母心 不重生男重生女
 3)
芙蓉如面柳如眉 対此如何不涙垂
 
4)孤灯挑尽未成眠
 
5)遂教方士殷勤覓
 6)
転教小玉報双成
 
7)但令心似金鈿堅
3.語句の意味を書きなさい。
 傾国  重色  御宇  一朝  嬌  始是  早朝  列土  可憐  尽日  千乗万騎  六軍  腸断  悄然  回竜馭  青娥  悄然  慇懃  忽チ  黄泉   比翼鳥  連理枝  綿綿
4.現代語訳しなさい。
 1)
可憐光彩生門戸
 
2)遂令天下父母心 不重生男重生女
 
3)対此如何不涙垂
 4)
魂魄不曾来入夢
 5)遂教方士殷勤覓
 
6)転教小玉報双成
 
7)但令心似金鈿堅
5.指示内容を答えなさい。
 1)従此〔8下〕(                     )
 2)到此〔26下〕(      )
 3)対此〔30下〕(      )
 4)求此〔40下〕(      )
 5)両處〔41下〕(      )
 6)両〔51下〕(       )
 7)両心〔57下〕(      )
6.対句を10箇所抜き出しなさい。

読解のポイント
1.漢皇と楊貴妃が出会う経過を理解する。(第一)
2.楊貴妃の美しさを鑑賞する。(第二)
3.漢皇の楊貴妃に対する領愛ぶりを理解する。
4.当時の社会に与えた風潮を理解する。
5.反乱と都から落ちのびていく様子を理解する。
6.楊貴妃の最期と漢皇の悲しみを理解する。(第三)
7.蜀の地での漢皇の思いを理解する。(第四)
8.反乱が収束し、再び都に帰る時の様子を理解する。(第五)
9.再び都に帰った漢皇の思いを理解する。
10.道士や方士が仙山を探す様子を理解する。(第六)
11.玉真の美しさを鑑賞する。(第七)
12.漢皇と玉真の思い出の品物について理解する。(第八)
13.漢皇と玉真の誓いを理解する。

第一段落(楊貴妃が召された経緯と楊貴妃の魅力)
 
 漢皇重色思傾国 御宇多年求不得 楊家有女初長成 養在深閨人未識
 天生麗質難自棄 一朝選在君王側 回頭一笑百媚生 六宮粉黛無顔色
 1)【読み】
  ・御宇(ギョウ)
  ・六宮(リクキュウ)
 2)【書き下し】
  ・養在深閨人未識
 3)【語】
  ・傾国=絶世の美女。
  ・御宇=治世
  ・一朝=ある日
 4)【訳】
   漢の天子は女性を好み、絶世の美人を得たいと思いながら、
   治世の長い間求めたが得られなかった。
   楊家に娘がいて、まさにその時、年ごろになっていた。奥深い女の部屋で養われ、世の中の人はまだ知らなかった。
   天性の麗しい素質は、そのままうち捨ててはおかれなかった。
   ある日、選ばれて天子の側に仕えるようになった。
   瞳をめぐらせにっこり笑うと様々な艶めかしさが生じた。
   六つの後宮の美しい女官たちは美しいと感じられなくなった。
 5)【説】「漢皇」とは誰か。
  ・=漢の天子。唐の玄宗皇帝。同時代の皇帝なので、漢の皇帝になぞらえた。
 6)【L1】「天生麗質」の具体的な表現は。
  ・回頭一笑百媚生
 7)【L1】「君主」とは。
  ・漢皇。
 8)【説】「一朝選在君王側」の経緯について
  ・はじめ彼女は玄宗の十八番目の皇子寿王の妃であったものを、玄宗の側近の力子が見つけて、寿王と離縁させるのに一度出家させて「玉真」と名乗らせ、宮中に入れた。この時、玄宗五十五歳、楊貴妃二十二歳。
 9)【説】「無顔色」の意味。
  ・日本語では面目がなくなることだが、中国では美しさが感じられなくなること。


第二段落(漢皇と楊貴妃の愛の生活と楊氏一族の繁栄と安禄山の乱)
 
 春寒賜浴華清池 温泉水滑洗凝脂 侍児扶起嬌無力 始是新承恩沢時
 雲鬢花顔金歩揺 芙蓉帳暖度春宵 春宵苦短日高起 従此君王不早朝
 承歓侍宴無間暇 春従春遊夜専夜 後宮佳麗三千人 三千寵愛在一身
 金屋粧成嬌侍夜 玉楼宴罷酔和春 姉妹弟兄皆列土 可憐光彩生門戸
 遂令天下父母心 不重生男重生女 驪宮高処入青雲 仙楽風飄処処聞
 緩歌慢舞凝糸竹 尽日君王看不足 漁陽鼙鼓動地来 驚破霓裳羽衣曲
 1)【読み】
  ・春宵(シュンショウ)
  ・苦(ハナハ)ダ
  ・罷(ヤ)ミテ
  ・遂(ツイ)ニ
  ・尽日(ジンジツ)
 2)【書き下し】
  ・遂令天下父母心 不重生男重生女
 3)【語】
  ・嬌=なよなよと
  ・始是=まさに
  ・早朝=朝早くから政治をする
  ・列土=領地を所有する
  ・可憐=ああ
  ・尽日=一日中
 4)【訳】
  春なお寒く、(天子は)華清の池の入浴をお許しになった。
  温泉の水は滑らかで、(楊貴妃の)むっちりした体に注ぎかかる。侍女たちが助け起こそうとしてもなよなよとして力がなかった。(楊貴妃が)今まさに天子の愛情を受けようとする時、
  雲のような豊かな美しい髪、花のような美しい顔、歩くと揺れる黄金作りのかんざし、
  蓮の花の縫い取りの帳の中は暖かで、春の夜は過ぎていく。
  春の夜は大変短く、(天子は)日が高くなってからお起きになる。この時から天子は朝早くから政治をしなくなった。
  (楊貴妃は)(天子の)楽しみを求める気持ちを受け入れ、宴の席には同席し、天子の側につきっきりになった。
  春は春の遊びを共にし、夜は夜を共にした。
  後宮の美しい女官たち三千人もいたが、
  三千人の愛情は(楊貴妃)一人に集まった。
  立派な部屋で、化粧をしては、なよなよと夜を共にした。
  立派な高殿での宴が終わると、その酔い心地は春の気分に溶け込むようである。
  姉妹や兄弟は皆諸侯となって領地を所有した。
  羨ましいことよ、(彼らの)門口に光がさしかけていることは。(感嘆)
  遂に、世の中の父母の心を、
  男を生むことを重んぜず、女を生むことを重んじるようにさせた。(使役の句法)
  華清宮の高い所は雲の中に入り、
  仙人の音楽は、風のひるがえって、あちこちで聞こえた。
  静かでゆったりとした歌や舞、管弦の音を見事に響かせ、
  一日中、天子は(楊貴妃を)見ていても飽きることはなかった。漁陽の攻め太鼓が、大地をゆり動かしてやって来て、
  霓裳羽衣の曲を楽しんでいる(天子や楊貴妃)を驚かせた。
 5)【対句】
  ・金屋粧成嬌侍夜
   玉楼宴罷酔和春
 6)【説】「華清池」について
 ・温泉地。皇帝の避寒地として、毎年十月から翌年二、三月まで滞在し、好きな女性に温泉に入ることを許可した。
 7)【説】「夜専夜」とは。
 ・玄宗の夜の相手を独り占めした。
 8)【L2】「遂令天下父母心 不重生男重生女」理由は。
 ・女を産めば、皇帝の妃になり、一族も恩恵を受けて栄えるから。
 9)【説】「漁陽鼙鼓動地来」は何のことか。
 ・七五五年、漁陽に赴任していた安禄山が、十五万人の兵を率いて長安に向かい、長安を征服した。


第三段落(逃走と楊貴妃の死)
 
 九重城闕煙塵生 千乗万騎西南行 翠華揺揺行復止 西出都門百余里
 六軍不発無奈何 宛転蛾眉馬前死 花鈿委地無人収 翠翹金雀玉掻頭
 君王掩面救不得 回首血涙相和流
 1)【読み】
  ・九重(キュウチョウ)
  ・六軍(リクグン)
  ・奈何(イカン)
 3)【語】
  ・千乗万騎=天子の一行。
  ・六軍=天子の軍隊。
 4)【訳】
  宮中に煙がたてこめ、
  天子の一行は西南(の蜀)へ落ちのびていった。
  天子の旗はゆらゆらと、進んでは、また、止まった。
  西の方へ都門を出ること百里余りの所で、
  天子の軍は出発しようともせず、どうしようもなかった。
  すんなりとわん曲した美しい眉(の楊貴妃)は、(天子の)馬前で殺された。
  額の飾りも、地面に捨てられたまま、人が拾い上げることもなく、様々な美しい髪飾りも(捨てられたまま)。
  天子は顔を覆ったまま、救うこともできない。
  振り返えると、血と涙が流れていた。
 6)【L2】「行復止」とはどんな様子か。
  ・なかなか進まない様子。
 7)【説】「六軍不発」の理由。
  ・兵士は国がこんなになったのは楊貴妃のせいであり、楊貴妃を殺さなければ動かな   いと言い出したから。
 8)【L1】「宛転蛾眉」とは誰のことか。
  ・楊貴妃。
 9)【説】「血涙相和流」の気持ち。
  ・悲痛の極みに達すると涙に血がまじると言われていた。


第四段落(蜀の地での漢皇の傷心)
 
 黄埃散漫風蕭索 雲桟縈紆登剣閣 峨嵋山下少人行 旌旗無光日色薄
 蜀江水碧蜀山青 聖主朝朝暮暮情 行宮見月傷心色 夜雨聞鈴腸断声
 1)【読み】
  ・行宮(アングウ)
 3)【語】
  ・腸断=腸が千切れるぐらい激しい悲しみ。
 4)【訳】
  黄色い砂塵が舞い上がり、風はものさびしげに吹く。
  雲まで届くかけ橋やうねうねと曲がった道を通って、剱閣山を登っていく。
  峨嵋山の麓は人が道行くことも少なく、
  旗は色あせて光なく、太陽の光線まで薄れて見える。
  蜀の川は水が深緑色で、蜀の山は青々としている。
  天子は毎朝毎晩心が晴れない。
  行宮で月を見ると、心を傷つける風情があり、
  雨の夜に鈴の音を聞くと、腸を断つような悲しい音がする。
 5)【対句】
  ・行宮見月傷心色
   夜雨聞鈴腸断声


第五段落(帰国の様子と都での漢皇の傷心)
 
 天旋地転回竜馭 到此躊躇不能去 馬嵬坡下泥土中 不見玉顔空死処
 君臣相顧尽沾衣 東望都門信馬帰 帰来池苑皆依旧 太液芙蓉未央柳
 芙蓉如面柳如眉 対此如何不涙垂 春風桃李花開夜 秋雨梧桐葉落時
 西宮南苑多秋草 宮葉満階紅不掃 梨園弟子白髪新 椒房阿監青娥老
 夕殿蛍飛思悄然 孤灯挑尽未成眠 遅遅鐘鼓初長夜 耿耿星河欲曙天 
 鴛鴦瓦冷霜華重 翡翠衾寒誰与共 悠悠生死別経年 魂魄不曾来入夢 
 1)【読み】
  ・梨園(リエン)
  ・青娥(セイガ)
  ・悄然(ショウゼン)
  ・鴛鴦(エンオウ)
  ・翡翠(ヒスイ)
  ・魂魄(コンパク)
  ・曾(カツ)テ
 2)【書き下し】
  ・芙蓉如面柳如眉
  ・孤灯挑尽未成眠
 3)【語】
  ・悄然=じょんぼりする。
 4)【訳】
  天下の情勢が一変して、天子は車を都に返すことになった。
  ここまで来ると、ためらって去ることができなくなった。
  馬嵬の坂道の辺りの泥土の中、
  かつての玉のような美しい顔は見ることはできず、むなしく(楊貴妃)が殺された場所が見えるだけ。
  天子も家来も、互いに顔を見合わせ、皆涙で衣を濡らし、
  東の方へ都門を目指して、馬が進むままに帰っていった。
  帰って来ると、池も庭も昔のままで、
  太液池の蓮の花や未央宮の柳、
  蓮の花は(楊貴妃の)顔のようだし、柳は眉のようだ。
  これらに向かって、どうして涙が流れないだろうか、いや流れる。(反語の句法)
  春風が吹いて、桃や李の花の開く夜、
  秋雨が降って、梧桐の派が葉が落ちる時、(悲しみはさらに深く)西の御殿も南の宮殿も、秋草がおいしげり、
  落ち葉が階段に満ちても、掃除されない。
  かつて梨園の教習生たちは、めっきり白髪になり、
  皇后の部屋の女たちを取り締まっていた女官たちの黒い眉も老いてしまった。
  夜の宮殿の辺りに蛍が飛ぶのを見て、思いは沈み、
  一つの燈火をかかげ、芯が尽きても、まだ寝つかれない。
  時刻を知らせる鐘や太鼓の音も遅々として、いよいよ夜長を迎えようとしている初秋の夜、
  かすかに輝く天の川、そろそろ明けようとする空、
  おしどりの形の瓦は冷えて、霜が重く降り、
  かわせみの模様の掛け布団も寒く、誰と共に寝ようというのか、誰もいない。
  はるか隔たった生と死、別れて年が久しいが、
  (楊貴妃の)魂は、その後、夢にも現れない。(部分否定)
 5)【対句】
  ・梨園弟子白髪新
   椒房阿監青娥老
  ・遅遅鐘鼓初長夜
   耿耿星河欲曙天
  ・鴛鴦瓦冷霜華重
   翡翠衾寒誰与共
 6)【説】「天旋地転」とは何が起こったのか。
  ・安禄山の乱が平定された。
 7)【L2】「到此」の指示内容。
  ・馬嵬
 8)【説】「君臣相顧尽沾衣」の気持ち。
  ・漢皇も部下も、楊貴妃の死を悲しんでいる。
 9)【L2】「対此」の指示内容。
  ・芙蓉や柳。


第六段落(楊貴妃の魂を仙山に捜し当てる)
 
 臨卭道士鴻都客 能以精神致魂魄 為感君王展転思 遂教方士殷勤覓
 排風馭気奔如電 升天入地求之徧 上窮碧落下黄泉 両処茫茫皆不見
 忽聞海上有仙山 山在虚無縹緲間 楼殿玲瓏五雲起 其中綽約多仙子 
 中有一人字玉真 雪膚花貌参差是 
 1)【読み】
  ・慇懃(インギン)
  ・忽(タチマ)チ
  ・徧(アマネ)シ
  ・字(アザナ)
 2)【書き下し】
  ・遂教方士殷勤覓
 3)【語】
  ・慇懃=心を込めて。
  ・黄泉=地下の世界。あの世。
  ・忽チ=ふと。
 4)【訳】
  臨卭出身の道士で長安の客人になっている人が、
  まごごろを凝らした精神力で、死者の魂を招き寄せることができるという。
  (道士は)天子が眠れずにいる(楊貴妃への)思いに感じ、
  ついに、部下の方士に心をこめて(楊貴妃を)捜させた。(使役の句法)
  (方士は)空を押し開くようにしながら、大気に乗り、稲妻のように走り、
  天に昇り、地に潜り、隅々までこれを捜した。
  上は青空の果てまで、下は黄泉の国まで。
  どちらもただ広いだけで、何も見えない。
  ふと、こんなことを耳にした、海上に仙人の住む山があると。
  山は俗世間を離れた、広々とはるかな世界にあり、
  高殿は透き通るように美しく、五色の雲がわきおこり、
  その中に、しとやかで美しい様子で仙人がたくさんいる。
  中に一人、字を太真という人がいて、
  雪のような白い肌、花のような美しい顔、楊貴妃にそっくり。と。
 5)【対句】
  ・排風馭気奔如電 
   升天入地求之徧
 6)【L1】「求之」の指示内容。
  ・楊貴妃の魂。
 7)【L1】「両処」の指示内容。
  ・窮碧と黄泉。
 8)【L2】「聞」の範囲。
  ・海上有仙山〜参差是
 9)【L1】「参差是」の指示内容。
  ・楊貴妃。


第七段落(仙山の楊貴妃の様子)
 
 金闕西廂叩玉扃 転教小玉報双成 聞道漢家天子使 九華帳裏夢魂驚
 攬衣推枕起徘徊 珠箔銀屏邐迤開 雲鬢半偏新睡覚 花冠不整下堂来 
 風吹仙袂飄飄挙 猶似霓裳羽衣舞 玉容寂寞涙欄干 梨花一枝春帯雨
 1)【読み】
  ・聞道(キクナラク)
  ・飄飄(ヒョウヒョウ)
  ・猶(ナ)ホ
  ・寂寞(セキバク)
 2)【書き下し】
  ・転教小玉報双成
 4)【訳】
  黄金で飾った御殿の西の部屋に行き、玉で飾ったかんぬきを叩いて案内をこい、
  侍女の小玉に、さらに双成へと次々に取り次がせた。(使役の句法)
  漢の天子の使いだと聞き、
  たくさんの花模様の帳の中、夢を見ていた楊貴妃の魂ははっと目覚め、
  衣を取り、枕を押し退け、立ち上がり、部屋の中を歩き回った。玉の簾、銀の屏風、次々と開く。
  雲のような美しい髪は半ば傾き、たった今眠りから覚めたばかり。花の冠も整えず、奥の部屋から下りてきた。
  風は仙女の着ている上着の袂を吹き、ひらひらと舞い上がり、
  ちょうど霓裳羽衣の舞に似ている。
  玉のように美しい顔は寂しげで、涙が盛んに流れる。
  梨の花が一枝、春雨に濡れているようだ。
 6)【説】「起徘徊」「雲鬢半偏新睡覚」の楊貴妃の気持ち。
  ・早く方士に会いたいと落ち着かない様子。
 7)【L2】「梨花一枝春帯雨」の比喩は。
  ・「梨花一枝」が楊貴妃で、「春帯雨」は涙を流している様子。


第八段落(楊貴妃の述懐)
 
 含情凝睇謝君王 一別音容両渺茫 昭陽殿裏恩愛絶 蓬莱宮中日月長
 回頭下望人寰処 不見長安見塵霧 唯将旧物表深情 鈿合金釵寄将去
 釵留一股合一扇 釵擘黄金合分鈿 但令心似金鈿堅 天上人間会相見
 臨別殷勤重寄詞 詞中有誓両心知 七月七日長生殿 夜半無人私語時
 在天願作比翼鳥 在地願為連理枝 天長地久有時尽 此恨綿綿無絶期
 1)【読み】
  ・唯(タ)ダ
  ・但(タ)ダ
 2)【書き下し】
  ・但令心似金鈿堅
 3)【語】
  ・比翼鳥=雌雄二羽が一体となって飛ぶという鳥。
  ・連理枝=二本の木の枝が一つに会している木。
  ・綿綿=いつまでも続く様子。
 4)【訳】
  思いを込め、瞳を凝らして、天子にお礼を申し上げた。
  一度別れて以来、声も姿も、共に遥かなものになりました。
  (生前)昭陽殿で受けた愛情も絶え、
  (今は)蓬莱宮の中での月日が長くなりました。
  振り返って、下の方、人間社会を見ると、
  長安は見えず、塵と霞が見えるだけです。
  ただ思い出の品で深い心を表すために、
  青貝の飾りの箱と金のかんざしを持って行って下さい。
  かんざしは一方の足を残し、箱はふたを残し、
  かんざしは黄金を引き裂き、箱は貝を分かちましょう。
  ひたすら心を金や貝のように堅くさせれば、(使役の句法)
  天上か人間世界で、必ず会えるでしょう。
  別れに臨んで、丁寧に伝言した。
  言葉の中に誓いがあり、二人の心だけが知るものであった。
  かつて、七月七日、長生殿で、
  夜半、人もなく二人でささやき合った時の言葉、
  天上にあっては、比翼の鳥になりたいものだ、
  地上にあっては、連理の枝になりたいものだ、と。
  たとえ天地は永遠であるといっても、時が来れば尽きてしまう。
  しかし、この満たされない恋心だけは、いつまでも続いて絶える時がないでしょう。
 5)【対句】
  ・昭陽殿裏恩愛絶
   蓬莱宮中日月長
  ・在天願作比翼鳥
   在地願為連理枝
 6)【L2】「謝」の範囲。
  ・一別音容〜天上人間会相見
 7)【L1】「両」の指示内容。
  ・音(声)と容(姿)。
 8)【L2】「旧物」の指示内容。
  ・鈿合と金釵。
 9)【L2】「誓」の範囲。
  ・七月七日〜此恨綿綿無絶期
 10)【L1】「両心」の指示内容。
  ・漢皇と楊貴妃。
 11)【L2】「私語」の範囲。
  ・在天願作比翼鳥 在地願為連理枝



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