古文の入門教材。例によって、本文の横に赤字で訳が書いてある。今までなら、それが邪魔だったけど、今回はそれを大いに利用してみる。
歴史的仮名遣いの読み方、現代語訳の仕方、内容のとらえ方、古典常識の必要性、現代文との接点を考える。


1.宿題で、本文を写させ、右一行、左二行空けさせる。
 ★進学コースは左に対応するように現代語訳も写させる。気づいたことをメモさせる。

2.教師が二回音読する。
 ・一読後、現代と違う読み方の仮名を○で囲ませる。
 ・確認しながら、再読する。

3.個々の事例から、歴史的仮名遣いの基本的な法則を見つけさせ、説明する。
 1)語頭以外の「は・ひ・ふ・へ・ほ」は「ワ・イ・ウ・エ・オ」と読む。
  ★反証として、「ひしめき」「ひしひし」に注目させ、「語頭以外」という条件を発   見させる。
 2)「ゐ・ゑ・を」は「イ・エ・オ」と読む。

4.日本語の発音の変化を説明する。(一八三頁参照)
 (1)五十音図を説明する。
   ・母音と子音の組み合わせの仕組みを説明する。
 (2)ヤ行について、
   ・イ段とア行の「い」との一致を確認する。
   ・エ段の「イェ」の存在に気づかせる。
   ・奈良時代は、ヤ行は子音「y」に母音をつけて発音していたが、「イェ」が平安時代の初め七五〇年頃になくなった。
 (3)ワ行について
   ・ウ段とア行の「う」の一致を確認する。
   ・ワ行は子音「w」に母音をつけて発音していたが、平安時代後期に「ウィ・ウェ・ウォ」がなくなった。
 (4)その他の音の変化について
   ・室町時代まで、濁音は前に鼻にかかる音がついていた。現代でも、東北で残っている。
   ・室町時代まで、サ行の「セ」を「シェ」と発音していた。現代でも、関東では「先生」を「シェンシェイ」と言う。
   ・江戸の元禄時代までは、ハ行は子音「f」に母音をつけて、上唇と下唇を近づけてフーッと息を出すような音を子音としていて、「鼻」を「ファナ」、「人」を「フィト」、「骨」を    「フォネ」と発音していた。しかし、唇を合わせる力が弱くなって、子音「h」の発音に変わった。
   ・「父には一度も会わないか、母には二度会った」という言葉もある。
 (5)五〇音図といろは歌を比較して、無くなった音を確認させる。
   ・ヤ行の「い・え」、ワ行の「う」。

5.生徒が音読する。
  ・全員、男女別、地の文と会話文などに分けて読ませる。

6.写してきた本文の左に、単語が対応するように現代語訳を書かせる。
  ・気づいたことをメモさせる。

7.現代語訳の仕方について
 (1)現代語にはない助動詞の働きを考える。
   1)ありけり(一八〇02)、言ひける(03)、聞きけり(03)、待ちけるに(05)の訳を確認する。
    ・「〜タ」と訳し過去の意味があることを確認する。
    ・「けり、ける」と変化しても同じ単語であることを確認する。
    ★古文の学習の重要なポイントの一つに助動詞があることを説明する。
   2)第二段落から「けり」とその活用したものを探し、訳を確認させる。
 (2)主語を示す助詞(は・が)を補うことを考える。
   1)児ありけり(一八〇02)、僧たち宵のつれづれに(02)、この児心寄せに聞きけり(03)の現代語訳を確認する。
    ・主語を示す「ガ、ハ」を補う。
   2)古文では主語そのものが省略されることが多く、主語を考えることも重要なポイントになることを説明する。
   3)第二段落から主語の「ガ」が補われている部分を探させる。
 (3)古語の意味を調べる。
   1)おどろかさ(07)、念じ(一八一02)、わびし(04)の現代語訳を確認させる。
    ・現代語の意味と、古語の意味が違うことを確認する。
    ・古語辞典を引かせる。
    ・「おどろかさ・念じ」は動詞でウ段、「わびし」は形容詞で「し」で終わることを説明する。
   2)つれづれ(一八〇02)、いらへ(一八一01)の現代語訳を確認させる。
    ・現代語にはない古語であることを確認する。
   ・古語辞典を引かせる。
   ・「いらへ」は動詞でウ段で「し」で終わることを説明する。
  3)古語の種類を整理する。
   ・現代語と全く同じ古語
   ・現代語にもあるが意味の違う古語
   ・現代語にはない古語
  4)古語辞典で引くには基本形にしなければならず、動詞はウ段、形容詞は「し」で終わることを確認する。

8.単語に分ける。
 (1)解釈のために2「単語と文節」(一八七)を参照し、単語と文節の定義を確認する。
 (2)第一段落を、教師が単語に分けて読み、ノートに写した文に区切りの線を入れさせ、例を示す。
 (3)第二段落を、生徒に単語に分けさせ、指名して確認する。
  ★この段階での単語分けは、理屈ではなく、勘を磨くことを説明する。

9.内容について考える。
 (1)いつ、どこで、だれが、何をしたかを確認する。
   ・いつ 今は昔
   ・どこ 比叡の山(延暦寺)
   ★比叡と言えば延暦寺を指すことを説明する。
   ・だれが 僧=かいもちひせむ(ぼた餅を作る)
         児=ぼた餅ができるまでの心理の変化
 (2)児の心理の変化を考える。
   1)僧がかいもちひを作ると聞いて、どう思ったか。
    ・期待して聞いていたが、出来上がるのを待って寝ないのもみっともない。
    ★子供らしさと、プライド
   2)一度起こされた時にどう思ったか。
    ・うれしいと思ったが、一度で返事すると待っていたように思われて困る。
    ★子供らしさと、プライド
   3)二度と起こされないのでどうしたか。
    ・長い時間の後に、返事をした。
    ★子供らしさ。
 (3)児のプライドが高い理由を考える。
   ・身分の高い人の子供だから。
   ・当時は、貴族の子弟が寺で教育を受けていた。今の学校。
   ・従って、僧が敬語を使っている。
   ★古典常識を知っていると、古典がおもしろくなる。
 (4)僧たちは児のそら寝にいつから気づいていたか、なぜ意地悪をしたのか。
   ・「や、な起こしたてまつりそ」から。
   ・プライドの高い児をからかってやろうと思ったから。
   ★このあたりは、現代にも通じる心理である。古典と現代文の接点。

10.意味を確認しながら、生徒と音読する。



コメント

ホーム