1.「選択国T」とは何か 
                           

 「国語T」は2年生に3単位で設置されている選択科目です。今年度は86人が選択し、2講座が開講され、西村と笹川の2名が担当しました。 
 題目は「国語T」となっていますが、内容は1年の復習や継続ではなく、「日本語を総合的な立場からとらえ、『国語』という教科の本質を追究しよう」という崇高なタテマエのもと、面白可笑しく興味をもって学習しながら『国語』の魅力を味わってもらおうという精神に則って展開してきました。 
 選択している生徒は、国語が好きで勉強したいとか、国語の力をつけたいという生徒も勿論多数いますが、消去法によって流入してきた生徒も少なからずいます。特に、Y講座は「バイオレンス講座」と命名したほど2年生の強者どもが集まりました。 
 そんな生徒を相手にするのですから、毎時間が真剣勝負でした。生徒がやって面白かった為になったと思ってくれる内容や方法を工夫したり、それができない時は成績ですかしたりおどしたり、2人の教師が作戦を練りに練って生徒に挑みました。それに、教育課程の改定で、「選択国T」が今年度限りなので少々の無茶もできました。 
 また、普通の国語とは違う能力が要求するし、作業や提出物を重視するので、頑張れば頑張る程よい成績がつく、「5も夢ではない」と公言し、姑息な手段ですが生徒の意欲をかき立てました。 
 最後の授業で「選択国Tを振り返って」というプリントに感想を書いてもらいました。それぞれの教材を5段階評価させ、ベスト3を選んでその理由を書かせ、全体の感想も書かせました。その中から少し抄録します。またベスト1を3ポイント、2を2ポイント、3を1ポイントとして合計も出してみました。 
 

 
 
@ 漢字のなりたち
 

 従来、漢字の勉強というのは、ドリルなどを使って書き取りという方法でなされてきました。アイウエオ順とか、意味別とか、頻出順とか、習った順とか、さまざま工夫はされてきましたし、数を覚えるには有効な方法でした。しかし、その反面、漢字の持つ意味や面白さは二の次三の次となり、漢字嫌いの生徒を増やしてきたことも事実です。 
 そこで、「選択国T」では失われた漢字の意味や面白さを生徒に伝えることを考えました。書き取りを否定するなどという大それたことを考えているのでなく、書き取りと併用すれば効果を倍増させることに役立つと思います。 
 漢字は、知恵をもった人間がコミュニケーションの必要から作られた絵文字が一定の形になって象形文字が生まれ、絵では表現しにくいものを表すために指事文字が生まれ、それらの文字の意味を組み合わせて会意文字が生まれ、意味と音を組み合わせて形声文字が生まれました。 
 このようなことは、おそらく小学校で習っているはずですが、ドリル学習などで効率的に量を覚えることを強いられているうちに、忘れてしまった生徒が多いでしょう。こうしたことを思い出すと、あんなに憎たらしく見えていた漢字にも少しは親しみも沸いてくるでしょうし、形声文字をしっかりマスターすれば、漢字の音読みやだいたいの意味ぐらいは類推できるようになり、漢字の力も伸びるでしょう。 
 プリントは、以前作成した『ことばの学習漢字編』から特選したものに新しいものを加えました。 
 「漢字のなりたち1」では、ちょっとひねったナゾナゾ風の絵文字日記を導入にして、象形文字について、絵文字から漢字を想像させたり、成立の過程から国字を考えさせたりしました。「漢字のなりたち2」では、会意文字と形声文字について、ゲーム感覚でさまざまなパターンの組み合わせを考えました。「部首を調べよう」はオーソドックスなもので、宿題にしました。       2 やり方は、一問ずつ生徒に当てたり、何問かを教師がやって見せた後で生徒にさせたり、臨機応変にやってきました。授業が乗れば前者の方が盛り上がって面白いけれど、飽きてきたり受け身になられると苦しかったです。  生徒の感想 (「A漢字あそび」と同じ) 


A 漢字あそび

 「漢字のなりたち」でも十分楽しんでもらえると思いますが、さらに駄目を押すのが「漢字あそび」です。 
 「漢字プラス1」は指事文字、「漢字なぞなぞ」は国字、「創作漢字」は会意文字、「漢字式」は形声文字の素養が必要です。「あそび」とはなっていますが、想像力や柔軟性が要求され、普通の勉強より却って難しいと思います。「案外、昔の人もこんなノリで漢字を作ったのかもしれないと思うと楽しさが4倍になるね」と言いながら、生徒にも作らせました。結構面白い漢字が出来ました。 
生徒の感想  
a)色々な漢字を作ったりして楽しかった。b)クイズとか色々あって面白かった。国Tの最初の授業でいきなりこんなのをやって嬉しかった。 
 
 
B 国T検定

 学年末試験の代わりに、国T検定をしました。 
 文学史・故事・敬語・漢字・言葉・古典常識の6つのジャンルで、松・竹・梅のグレード別に34種類の問題プリントを作りました。合格ライン以上正解すれば一定の点数が与えられ、全問正解すればその倍の点数が与えられます。生徒は、好きなものを選んで解答し、200点とれば認定となります。それ以上はやっただけ点数になり、34枚完全解答すれば1520点になります。 
 メニューは次のようなものでした。 
 @古典文学史1 梅 作品の作者を選ぶ 
 A古典文学史2 竹 冒頭文の作品を選ぶ 
 B古典文学史3 竹 短歌・俳句の下の句を選ぶ 
 C現代文学史1 梅 作品の作者を選ぶ 
 D現代文学史2 竹 作品の作者を選ぶ 
 E現代文学史3 松 冒頭文の作品を選ぶ 
 F現代文学史4 竹 短歌・俳句の下の句を選ぶ 
 G外国文学史1 梅 作品の作者を選ぶ 
 H外国文学史2 松 作品の作者を選ぶ 
 I故事1      竹 動物名を入れ諺を完成する 
 J故事2       竹 同じ意味の諺を選ぶ 
 K故事3       竹 四字熟語を完成する 
 L故事4       梅 漢数字のある四字熟語 
 M故事5       竹 目の慣用句の意味を選ぶ 
 N故事6       松 慣用句を完成する 
 O故事7       竹 金言の作者を選ぶ 
 P敬語1       梅 正しい敬語を選ぶ 
 Q敬語2       竹 正しい敬語を選ぶ 
 R敬語3       松 正しい秘書の対応を選ぶ 
 S漢字1       梅 同音異義語を選ぶ 
 21漢字2       竹 難読漢字の読みを書く 
 22漢字3       竹 誤字を訂正する 
 23言葉1       竹 隠語・俗語の意味を選ぶ 
 24言葉2       梅 反対語を選ぶ 
 25言葉3       松 食べ物の京言葉の意味 
 26言葉4       松 人間の京言葉の意味 
 27言葉5       松 感情の京言葉の意味 
 28言葉6       松 行為の京言葉の意味 
 29言葉7       松 名詞の京言葉の意味 
 30古典常識1   竹 月・十二支を答える 
 31古典常識2   松 名数を答える 
 32古典常識3   竹 古典の漢字の読みを書く 
  33古典常識4    竹  基本古語の意味を選ぶ 
 34古典常識5     松  基本文法に答える 
 一発逆転のチャンスです。何を調べてもよいし、相談してもよいし、生徒は家に持って帰ったりして必死でやっていました。おかげで採点が山のように溜まり、嬉しい悲鳴でした。 
生徒の感想  
a)国Tの総仕上げということで国語の名に恥じない立派なものだったと思う。b)初めはプリントの多さにうんざりしたが、やってみると必死になってしまった。c)京言葉なんかは家でお母さんやお姉ちゃんがとても楽しんでやったはった。d)いろいろな本を調べてて楽しかった。 
 
D 演歌を作る

 樺島忠夫氏の『日本語のスタイルブック』(大修館書店)の付録「歌謡曲語彙表」を使って、歌謡曲(といっても年代的に演歌になってしまう)を作らせました。「  8歌謡曲語彙表」というのは、機械的に文章が書けないかという大胆な動機によって、昭和43年から44年に流行した歌謡曲について、連続する2文節をとり、前の文節の自立語を見出し語として、これに続く後の文節を五十音順に並べて作られたものです。三段組にしてもB4で6枚になる量です。 
 作業は、各見出し語に続く文節の中から、自分の意志を排除するために乱数表を使って1つの文節を選びます。次に、選んだ文節の自立語を見出し語にして、それに続く文節の中から同じようにして1つの文節を選びます。この作業を30回繰り返します。そうして30の文節を選び、順序を変えたり、語尾を変えたりしてつなげて、8行からなる歌詞を作り、題を付け、演歌の心を書かせます。このようにして3つ演歌を作らせました。 
  たいへん面倒臭い作業で初めはブーイングも起こりましたが、作業が進むにつれて面白さが浸透してきて、なかなか凝った作品も現れました。 
生徒の感想  
a)意味がわからないままやったが、変な言葉が出てきて、次は何やろと段々楽しみになってきた。b)自分には似合わない言葉を文章にしていく過程が楽しかった。c)こんな授業は初めてで新鮮だった。さすが国Tという感じで力を入れて作ってしまった。d)つなげそうもない言葉をいっぱい使って予想以上の演歌ができた時はすごく嬉しかった。 
 
@ 「浦島太郎」 

  「国語」と名の付いている限りは、「選択国T」と言えども古文の読解もやってみたいと思いました。かといって、難しいものはできません。そこで、昔話なら誰もがストーリーぐらいは知っているだろうということで、『御伽草子』の「浦島太郎」を取り上げました。 
 逐語訳をするのでなく、だいたいのあらすじがとれるような設問を用意して、各自が次から次へとやっていく方法を採用しました。その後で、「昔ばなし」と「御伽草子」の内容の違いを考えさせました。さらに、「うらしまの謎」と銘打って、鎌倉時代の「浦島子口伝記」、日本書紀、古事記と浦島に関する記述を遡り、大和朝廷とは別系統の神話があって、それが揉み消されて「海幸山幸説話」になったことを突き止めました。 
 文章が優しかったので、古典の苦手な生徒もスラスラ問題を解いていたようです。ただ、発展的な探究の部分の講義になると寝てしまう生徒が多いようでした。 



  
A 「一寸法師」
  

 同じく第二弾として「一寸法師」を取り上げました。  12やり方は「浦島太郎」と同じです。「一寸法師」も神功皇后の新羅征伐と関係があるらしいのですが、同じことをやるのでは芸がありません。別冊宝島『珍国語』の中に「浦島太郎」のパロディがあったので、それを参考にして、「一寸法師」のストーリーのポイントを押さえてパロディを作らせました。 
 本文の読解は「浦島太郎」で慣れているのでよりスピードアップしました。パロディ作りも面白がってやりました。おかげで、多くの名作(迷作)が誕生しました。生徒の中の創作欲求もうまく掘り起こしてやれば、かなりの威力があると思いました。 
生徒の感想  
a)パロディを作ったのが楽しかった。自分が作者になったみたいで少し自分がすごいなぁと思った。b)よく知っている話なのに最後がちょっと違って面白かった。 
 
 
@ グレード別書き下し文


 書き下し文も1年でやってますが、全然わかっていない生徒もいます。それに、だいたいできるけれど細かい所でミスもする生徒が多いものです。そこで、「選択国T」では書き下し文を徹底的にやろうということになりました。 
 しかし、ありきたりの方法では「選択国T」の名が泣くので、グレード別にプリントを作りました。初級・中級・上級までは返り点と送り仮名を見て書き下し文にする問題、特級・別級・超級は書き下し文を見て白文に返り点と送り仮名を付ける問題です。順番にプリントを完成させ、全問正解すれば次のグレードに行けるというシステムでやりました。 
 生徒はゲーム感覚とネーミングが気に入ったのか、先を争うように次から次へと完成させていきました。最初はその場で採点をしていたのですが、長蛇の列ができてしまいました。超級は非常に難しいのですがここまで完成させた生徒が8人もいました。 
生徒の感想  
a)どんどん難しくなっていくのも楽しかった。 
 
C イメージ・ゲーム 

  「おしゃべり用心理ゲーム」の中から面白そうなゲームをしました。生徒には、答えを記入できるプリントを配り、問題を読みました。 
  「川を渡る女」は、「Lさんは川のこっち側にいる。恋人のM君は川向こうにいる。LさんはM君の所に行きたいのだが、橋が流されて渡ることができない。舟を持っているB君に頼むと、百万円出さないといやだと言う。Lさんはあきらめて、同じく舟を持っているS君に頼む。S君はからだを要求する。どうしてもM君に会いたいLさんはS君の要求を通りにし、川を渡る。ところがM君はLさんのしたことに怒って、Lさんを捨ててしまう。悲嘆にくれるLさんの前にH君がやって来る。H君は、一部始終を見ていたといってM君を非難し、よかったら僕と暮らしましょう、と言って家に連れて帰った。さて、Lさん、M君、B君、S君、H君の5人を悪いと思う方から順番をつけるとどうなるか」という問題です。それぞれ、愛・倫理・ビジネス・セックス・家庭を表し、順番をつけることによって自分の中の価値観がわかるようになっています。 
  「3つの動物」は、「3種類の動物を思い浮かべて下さい。それぞれについて、3つずつその特徴をあげて見て下さい」という問題です。1番目にあげた動物とその特徴は、自分がこうなりたいと思う人物。2番目が、人からどう見られているか。3番目は、本当の自分を表しています。 
  「海、砂漠、コップ」は、「海があなたの目の前にあります。あなたの気持ちを言って下さい?あなたは砂漠にいます。回りにどうしても越えられない壁があります。どうしますか?ガラスのコップがあります。思い浮かぶことを言って下さい?」という問題です。海は人生、砂漠は死に対する気持ち、コップは結婚を象徴しています。 
  「もう森へなんか行かない」は、「あなたは森を抜けて歩いて来ました。それはどんな森でしたか?森を抜けると川が流れています。どんな様子の川ですか?川を渡ると家があります。どんな家ですか?あなたは家に近づきました。ドアは、どのようなドアでしょう?家の中に入ります。窓があります。窓からどんな景色が見えます  16か?」という問題です。森は過去の人生、川はパートナーに対する愛情関係、家は仕事、ドアはパートナーに求めるもの、窓は未来を象徴しています。 
 普段喧しい授業も、教師が読み上げる問題を聞こうとして静まり返っていました。答えの意味を解説すると大騒ぎになります。そして、次の問題を読み始めるとまた静まり返ります。これは、生徒の自分の内面を知りたいという意欲の現れですし、聞きたい授業(?)は必死で聞くという現れだと思いました。 
生徒の感想  
a)今まで知らなかった自分の心や友達の心がわかって面白かった。b)こんなこと授業でやっていいんかいなと思いました。でもすごく楽しく、こんなこと授業でないとできないなと思いました。 
 
 
@ 「夢」の授業

 古文・漢文・現代文を一つのテーマにそって読み、それぞれの時代や地域での考え方を理解させようとしました。 
 テーマは「夢」を選びました。古文は『宇治拾遺物語』から「夢を買う人」を訳させ、中世の日本人の夢の考え方をまとめさせました。漢文は『説郛』の「奇夢」を書き下し文にさせ、古代の中国人の夢についての考えさせました。現代文は夏目漱石の「夢十夜」をとりあげようと計画しましたが、実際はできませんでした。 
 そして、それだけでは退屈なので、自分の見た夢を分析してみることにしました。夢分析の概念や方法を説明した後、いくつかの夢を分析して見せ、あらかじめ書かせておいた自分の夢の記録を、夢辞典を使って分析させました。 
 古文、漢文とやったところで生徒が退屈し始め、寝ている生徒が増えてきたり、はっきり面白くないと言う生徒も出てきたので、現代文の「夢十夜」は断念しました。そして、夢分析の話をし始めたのですが、抽象的すぎたのか、あまり聞いてもらえませんでした。夢辞典に使ったテキストもちょっと偏ったもので、ほとんどの夢が同じような意味になってしまいました。でも、最後の感想では、意外と人気のある教材だったようです。自分の無意識の部分がわかってよかったと書いていました。 
生徒の感想  
a)心の中の無意識の部分を見つけるのが楽しかった。b)自分への警告がわかってよかった。 
 
 
10.1年間の授業展開 


一学期   
@ 「私の洋服ダンス」(心理) 〔1〕 
A 漢字のなりたち(漢字)〔6〕 
B エゴグラム(心理)〔1〕 
C 自由作文(表現)〔7〕 
D 課題「名前のルーツ」の説明(漢字)〔1〕 
E 「浦島太郎」(古文)〔4〕 
F 「一寸法師」(古文)〔4〕 
G 「NASA問題」(心理)〔2〕 
H グレード別書き下し(漢文)〔3〕 
I 故事成語(漢文)〔2〕 
J 期末試験(聞き取り・漢字・古文・漢文) 

二学期  
K 漢字グランプリ(漢字)〔2〕 
L 美しい発声(表現)〔2〕 
M スピーチ(表現)〔3〕 
N 文語文法(古文)〔4〕 
O 中間試験(古文)〔1〕 
P クロスワード・パズル作成(常識)〔3〕 
Q マイ・ライフ(表現)〔11〕 
R 「破壊者ウルトラマン」(現代文)〔5〕 
S 期末試験(現代文)〔1〕 

三学期  
21 クロスワード・パズル解答(常識)〔2〕 
22 「夢」の授業(総合)〔6〕 
23 演歌を作る(表現)〔3〕 
24 短歌を作る(表現)〔3〕 
25 十代たちの「マイ・リボリューション」(現代文) 
26 国T検定(常識)〔3〕         〔2〕  
 

 
11.評価について


 主な評価の対象は、3回の試験の点数と必修の課題です。特に課題は1つでも未提出ならば他がどんなによくても「1」を付けるという約束にしました。その他の小さな提出物もすべて加算していきました。 
 試験は、1学期期末、2学期中間、期末に実施しました。1学期期末は、手塚治虫の「アトムの哀しみ」というエッセイを読んで聞き取りテストと、漢文の書き下し文と故事成語の問題を出しました。2学期中間は、文語文法の持ち込みテストを、また、2学期期末は「ウルトラマン」のビデオを見て設問に答えるという形式のテストをしました。 
 必修の課題は、1学期は「名前のルーツを調べる」、2学期は「クロスワードパズル」「マイ・ライフ」、3学期は「演歌を作る」と「国T検定」を課しました。 
 学期ごとの総合計を100点満点に換算し、平均を60点に想定して評価をつけました。その結果、「5」がクラスの半数近く出ましたが、努力した分だけの評価を与えました。本来、提出物については、本来はコメントを付けて返したり、面白い作品をプリントにして配ったり、みんなの前で読み上げたりすべきなのですが、ほとんど出来ず、検印を押したり、評価だけ書いて返したりしたものが多かったのが残念です。 
     
 
12.生徒の感想 〜全体〜 
 


a)初めて授業した時、こんなふざけた事して大丈夫かなと不安でした。他のクラスはちゃんと「勉強」みたいなのをしてるのにと思ったけど、漢字や古文や作文をしててやっぱり、この教科を選択して良かったと思いました。b)自分のことを見つめる時間がつくれたことは良かったと思う。国語の知識も友達に教えてもらったりしながら少しは身についたと思う。国Tを選択していなかったら、本当に何も考えないで過ごしていただろうと思う。c)毎時間楽しいことをたくさんできて、知らず知らずのうちに国語力がついてるんだろうなと思った。d)他の教科にはないリラックスした雰囲気の授業だったと思います。楽な授業だと思っていたが、提出物が多く大変だった。e)嫌いな漢文や古文も楽しんでできました。f)他のクラスの人とも話すことができるようになったのは私にとって嬉しいことです。g)頭を柔らかくするのが多く、結構楽しめた。h)普通の勉強ではなく、目標をその回そ  19の回に分けて別々のことをしているので飽きなかった。i)授業自体が遊びみたいで、他の選択科目をとった奴から羨ましがられていたけど、実際は自分で考えたり、考えたことを書き表す力を付ける授業のように思えた。j)今になって振り返ると、自分にこんな力があったんだなと、11年間授業を受けてきて、初めて経験させてくれたのは国Tだと思った。k)飽きる間がない程、次から次へ新しいことをやっていって感心させられたし、驚いたし、こんなことやれないなぁと思いました。この1年間で感じとったり考えたりしたことはとても大きなおもだったと思います。l)最初の授業で漢字の成り立ちを勉強した時、変わった授業だなぁと思った。今までの国語の授業のように教科書中心とは違い、型にとらわれない自由な授業で、とても楽しく勉強できました。m)初めてこんな授業を受けて感動した。時々退屈な時もあったけど、楽しかった。他の授業よりもやりがいがあった。n)私は面倒臭いのがあまり好きくないので嫌やなと思う時もあったけど、やってみたら結構面白かった。o)次何するんだろうと期待ばかりだった。でも、予想を上回ることばかりで、えっ、こんなこと!というものばかりだった。でも、その中にもちゃんと国語の問題もあって、普通ではできないような体験ができて、いい物を得られた。くつろぎのようなものの中ででき、押しつけられてやるというのではなかったと思う。q)すごい集中する時もあるし気が緩んでもいい授業もあってよかった。のびのび楽しくできた。r)小学校の時の国語の授業って、なぜか楽しくて役立って、それでいて考えさせられてという感じだっかのを、中学・高校に来て受験のための、試験のためのになっている。その小学校の時の楽しさを、一般にも通じるようなレベルで高校生がやることは本当に良いことだと思う。 

 また、ほとんど全ていってよい程、「選択国T」をなくすのは惜しい、来年もあれば取りたいと書いていました。 
 

 
13.「選択国T」を終えて 
 


  明けない夜はない−−−−という言葉通り、スリリングな1年間が終わりました。自転車操業、いや、一輪車操業でなんとかこけずに終わったのも、一人でなく二人で相談  20しながらやってきたことと、生徒の「面白いことを勉強したい」というストレートな欲求のおかげだと思います。 
 40人も寄れば、興味はマチマチで、こちらがウケルだろうと自信を持って挑んだ授業が無残にも打ち砕かれたり、思わぬ所で興味を示してくれたり、それはそれは毎時間が戦いでした。面白いだけでいいのではなく、為になるもの、考えさせるものを、しっかりとしたテーマの流れの中でやっていきたいという教師の思惑と、いくら面白くて興味を示してくれても3時間は続かないという生徒の実態が交錯して、戦いの様相は一層複雑です。 
 でも、生徒の感想を見て、まずまず成功だったかなと、安堵の胸をなでおろしています。授業で使った教材で、家族や友達とのコミュニケーションが広がったという感想は思わぬ副産物でした。 
 だからといって、来年もやれ!と言われれば、それは御免こうむりたい。今年は、ピーンとはりつめた緊張感の中で必死でやってきたからこそ、こんな結果が出たのであって、味をしめて来年もやれば、きっと気の緩みで失敗するでしょう。それほどの緊張感を久々に味わわせてもらったことは僕にとって凄く幸運だったと思います。 
 こうして、振り返ってみると、「選択国T」の実践は、他の国語の科目、特に今度の改定で始まる「現代語」の授業にも生かせるものが多いと思います。その意味でも、この1年間、よい財産を築かせてもらったと感謝しています。 ただ、欲を言うならば、もっと深くじっくり考える力をつけるような授業がしてみたかった、それが心残り、これからの課題です。(西村) 
 
14.参考文献 
 


漢字の分野 
 「漢字を食べる本」 永野賢 大陸書房 
 「漢字遊びハンドブック」 馬場雄二 仮説社 
 「ことばあそびカタログ」 ことばの会 現代出版 
 「漢字パズル」 楢岡完治 教学研究社 
 「漢字遊び」 山本昌弘 講談社新書 

国語常識の分野  
 国語便覧 
 「テスト式就職国語」 中部日本教育文化会 
 「必携新国語常識」 京都書房 
 「敬語」 大石初太郎 筑摩書房 
 「秘書検定試験」 高橋書店 
 「分類京都語辞典」 東京堂出版 
 「インゴ事典」 深沢光太郎 KKベスブック 

国語表現の分野  
 「国語表現の演習」 明治書院 
 「人生ドラマの自己分析」 杉田峰康 創元社 
 「日本語のスタイルブック」 樺島忠夫 大修館書店 

現代文の分野 
 「ウルトラマンのできるまで」 実相寺昭雄 筑摩書房 「なんてったってウルトラマン」 竹内義和 勁文社 
 「学校が消える日」 保坂展人 晶文社 

古文の分野 
 「『お伽草子』謎解き紀行」 神一行 ワニの本 
 「目で見る日本昔ばなし集」 鳥越信 文春文庫 
 別冊宝島31「珍国語」 JICC出版 

心理ゲーム 
 「ニュー・カウンセリング」 伊東博 誠信書房 
 「おしゃべり用心理ゲーム」 パラキハウスTBSブリタリカ 

総合の分野 
 別冊宝島15「夢の本」 JICC出版 
 

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