I 総合的な学習の時間の趣旨(新学習指導要領より)
  1.総合的な学習の時間のねらい
  2.学習活動の例
  3.学習活動の配慮事項
  4.授業時数など

U各教科・科目や特別活動等との相違点
  1.各教科・科目との相違点
  2.特別活動との相違点
V 「総合的な学習の時間」の編
  1.学習プログラム編成上の留意点
  2.分野・課題
  3.活動・学習方法
  4.担当者
  5.学習の展開
  6.時間設定
  7.学習集団単位
  8.活動場所・施設
W 「総合的な学習の時間」実施までの流れ
V さまざまな学習のタイプ
VI さまざまなプログラム(作成中)




















I 総合的な学習の時間の趣旨(新学習指導要領より)

1 総合的な学習の時間のねらい
(1) 自ら課題を見付け、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育てること。
(2) 学び方やものの考え方を身に付け、問題の解決や探究活動に主体的、創造的に取り組む態度を育て、自己の在り方生き方を考えることができるようにすること。

2 学習活動の例
(1) 国際理解、情報、環境、福祉・健康などの横断的・総合的な課題についての学習活動
(2) 生徒が興味・関心、進路等に応じて設定した課題について、知識や技能の深化、総合化を図る学習活動
(3) 自己の在り方生き方や進路について考察する学習活動

3 学習活動の配慮事項
(1) 自然体験やボランティア活動、就業体験などの社会体験、観察・実験・実習、調査研究、発表や討論、ものづくりや生産活動など体験的な学習、問題解決的な学習を積極的に取り入れること。
(2) グループ学習や個人研究などの多様な学習形態、地域の人々の協力も得つつ全教師が一体となって指導に当たるなどの指導体制、地域の教材や学習環境の積極的な活用などについて工夫すること。

4 授業時数
(1) 総合的な学習の時間の授業時数については、卒業までに105〜210単位時間を標準とし、各学校において、学校や生徒の実態に応じて適切に配当するものとする。
(2) 学校においては、あらかじめ計画して、各教科・科目の内容及び総合的な学習の時間における学習活動を学期の区分に応じて単位ごとに分割して指導することができる。

 要するに、生徒には主体性や創造性を身につけさせる、教師には体験的や問題解決的な生徒参加型の授業をすることによって授業改善を求めているのでしょう。
 ただでさえ週単位数が減る上に「総合的な学習の時間」だの「情報」だのが入ってくるとさらに授業時数が減り、進学指導に支障をきたす。目先のことを考えると、 「総合」の時間は進路学習や進学補習にしたいと考える学校が多いだろう。また、学校行事やホームルームに読み替えて浮いた時間を進学補習に当てたいと考える学校もあるだろう。
 しかし、長い目で見ると、特に教師の活力が低下している学校では、授業改善による教師の意識改革の絶好のチャンスでもある。それに、これからの社会で生きる力を生徒に身につけさせる意味でも、ここは真正面から受け止めるべきだろう。






U 各教科・科目や特別活動等との相違点

「総合的な学習の時間」は、その設置趣旨から、ひとつの領域内に留まる性格のものではなく、教科や特別活動等の各領域の活動を総合化したものとして展開されるべきものと考えられる。
他の領域との相違点を簡潔に整理すると、次のようになる。

1 各教科・科目との相違点
各教科・科目の学習と「総合的な学習の時間」の学習との関連については、次のような傾向があると考えられる。

     各教科・科目          総合的な学習の時間    
内容知(教科・科目の内容を学習)  方法知(学び方を学習)       
内容は指導要領に規定(教科書で学ぶ) 内容は規定しない(教科書なし)    
系統的な学習            体験的・問題解決的な学習      
基礎的・基本的な内容の徹底     発展的な内容、個に応じた内容    
知識・理解、技能も重視       体験・経験・学び方の重視      
数値的な評定を行う         数値的な評定は行わない       

2 特別活動との相違点
「総合的な学習の時間」と特別活動は、相互に関連し合い、それぞれの活動を深めていく関係にあるが、活動内容を明確に区別できるものではなく、相互の関連に配慮しつつ、柔軟で弾力的な運用が必要となるのではないか。
今回の改訂における特別活動の内容の変更には、「総合的な学習の時間」の新設との関連が深いと考えられるが、現行指導要領の表記との比較により、その変更点を整理すると次のようになる。

  項  目       現   行           新      
ホームルーム 授業時数   週1単位時間以上(クラブ活動と合わせて2単位以上)  年間35単位時間以上に縮小
活動内容   ホームルームに限定した表現 多様な集団生活の向上を強調
在り方生き方 個人生活及び社会生活の充実学業生活の充実      将来の生き方と進路の適切な選択決定          内容構成の変更
自己責任、コミュニケーション能力、ボランティア活動、生命尊重等を付加     
指導計画の 作成     授業時数の3分の2を在り方生き方、進路指導で実施   授業時数の配当制限なし  
内容の取扱い 内容相互の関連を図る    指導内容の重点化
内容相互の関連の記述削除 
クラブ活動    必履修           廃止           
学校行事 活動内容   体験的な活動重視      勤労生産・奉仕的行事について体験を強調   
内容の取扱い 行事及び内容の精選     行事及び内容の重点化
異年齢者等との交流
自然体験、社会体験充実  


 「総合的な学習の時間」と教科授業とのボーダーはやや明確である。つまり、参加体験型の授業で、学び方を重視する。従来の講義型の授業とは一線を画している。しかも、教科書がない。となれば、新しい授業の形態を模索しなければならない。教師の意識改革、授業改革が必要になってくる。また、単位認定はするが評定はしなくていいのだから、取り組みも柔軟になってくる。
 一方、特別活動、とくにLHRとのボーダーはきわめて曖昧である。LHRの内容を移行して実施する場合、その割り振りがややこしくなるだろう。






V 「総合的な学習の時間」の編

1 学習プログラム編成上の留意点

(1) 何を課題として設定するか
課題の設定とその提示の仕方が重要である。何をどう提示するかで、生徒の活動は異なってくる。生徒が興味や関心をもって取り組め、課題解決に向けて意欲がわくような、生活と実態に即した課題を設定する必要がある。生徒と教師等が一緒に考えることが大切である。
(2) ねらいを明確にする
学習のねらいがあいまいなままだと、学習は一過性の効果の薄いものとなってしまう。ねらいとは、学習の結果の定着をはかるようなものではなく、生徒が進んでいく大きな方向性を示すものである。これも生徒と教師等が一緒に考えることが大切である。
(3) 課題とねらいに即した学習プログラムを考える
学習活動の主な内容や流れ、発表の仕方、準備などを含めた全体のプログラムを考える。厳密なものではなく、方向性を示し、生徒が選んでいける柔軟性のあるものが望ましい。
(4) 適切な活動や参加型の方法を活用する
課題とねらいに即して学習を進めるためには、学習活動の内容や方法が課題解決やねらいにあったものでなければならない。

2 分野・課題

(1) 例示されているものとして、国際理解、情報、環境、福祉・健康がある。
(2) 従来ホームルームの時間に実施していたものとして、同和人権問題、性教育、進路学習などがある。
(3) そのほか、人間関係、消費者教育などがある。

3 活動・学習方法

レベル1・・・教師などによる知識・理解を重視した従来の教科授業に近いレベル。

(1) 講演
1学年を体育館なりホールなりに集めて、外部講師や専門の教師が講演をする。

(2) 講義
講演を受けて、各クラスや講座に分かれて、担当の教師が具体的な講義をする。

(3) 視聴覚教材
講義の際に、ビデオやスライドなどを活用する。

レベル2・・・取り組みへの準備、学び方の重視の学習のレベル。

(4) 情報収集
生徒に学び方を教え、実際にやってみる。スキルとして、インタビュー、アンケート、フィールドワーク、ブレンストーミング、KJ法、図書館の活用、インターネット等がある。

レベル3・・・実際の参加・体験型の学習のレベル

(5) グループワーク
教室内でできる参加体験型学習。スキルとして、構成的エンカウンターグループ、集団ゲーム、シミュレーション、ロールプレイ、ランキング等などがある。

(6) 観察・実験・実習
学校内の施設を利用した体験学習。

(7) 見学・自然体験・社会体験
学校外の施設を利用した体験学習。

レベル4・・・取り組みをまとめ・表現する学習のレベル

(8) 話し合い
取り組みについてまとめるための話し合い。話し合いと言っても、ディベート、バズ・セッション、フィッシュ・ボール、パネル・ディスカッション、シンポジウム等など様々な形式がある。

(9) 発表
学習したことをまとめて発表させる。レポート、作文、スピーチ、プレゼンテーション、クイズ等

4 担当者

(1) 希望・関係する教科の教師が担当する。
(2) 全教職員が分野別に分かれたり生徒の課題に応じて担当する。
(3) ホームルーム担任と副担任が担当する。
(4) 外部講師が担当する。

5 学習の展開

(1) 通年で1つの分野・課題を学習する。
ア 同じ分野・課題を、全生徒が一斉に学習する。
イ いくつかの分野・課題の中から、個々の生徒が1つ選択する。

(2) 1年をいくつかの期に分けて学習する。
ア 1つの期に、同じ分野・課題を、全生徒が一斉に学習する。

   情 報       環 境       国 際   

イ 1つの期に、いくつかの分野・課題の中から、個々の生徒が1つ選択する。(生徒によって、学習する分野・課題と学習しない分野・課題がある)

   前  期       後  期   
情  報
環  境
国  際
福  祉
人  権
人間関係

ウ 1つの期に、期の数だけある分野・課題を同時に実施し、それを年間でローテーションする。(同じ分野・課題を、全生徒がローテーションで学習する)

   1 期       2 期       3 期   
   情 報       環 境       国 際   
   環 境       国 際       情 報   
   国 際       情 報       環 境   

6 時間設定

(1)  週時程に組み込む。
ア 全クラス・講座一斉
イ クラスによって異なる
(2)  ある時期に集中する。
(3)  集中と週時程の併用

7 学習集団単位

(1) 全校   (2) 学年   (3) クラス   (4) 選択者   (5) 個別

8 活動場所・施設

(1) 普通教室
(2) 校内施設
コンピュータルーム、LL教室、図書館、視聴覚教室、理科実験室、食物調理室、被服室等
(3) 校外施設

 「2分野・課題」が「総合的な学習の時間」のタテ糸だとすると、「3活動・学習方法」はヨコ糸になる。
 分野・課題は新学習指導要領に4分野が例示されているが、これはあくまで例示に過ぎず、拘束されることはない。しかし、巷に流布している書物はこの4分野で分類されている感が強い。学校(生徒)の現状にあった分野を学校(生徒)が決めればいいのである。僕は、人間関係学習を勧めたい。
 活動・学習方法は、学年を体育館に集めて講演→クラスで視聴覚教材などを使用して講義→情報収集→取り組み(グループワーク・体験・見学など)→話し合い→発表という流れを作れば、どの分野や課題でも、参加体験型のプログラムが成立する。教師は、そのためのいくつかのスキルを習得しておかなければならない。
 






W 「総合的な学習の時間」実施までの流れ

年度   目   標        具体的な業務      主管 
11
新指導要領告示
移行措置告示  
概要の把握と共通理解 @既実践校の調査・研究
A資料作成
B教育課程上の検討課題整理(部内)
C職員研修
D検討会議発足準備        
教務部
教務部
教務部
教務部
教務部   
12
移行措置開始       
基本方針の検討    @学校の基本方針の検討
A指導体制、学習内容の検討
B教育課程上の調整検討
C必要な施設・設備の調査
D職員研修            
検討会議
検討会議
教務部
検討会議
検討会議  
13 3年間を見通した教育課程原案の作成    @学校の基本方針原案の決定
A指導体制、学習内容の原案作成
B教育課程上の原案作成
C担当者会議発足
D必要な施設・設備の整備
E評価・認定方法の原案作成
F職員研修            
検討会議
検討会議
教務部
検討会議
担当者会議
担当者会議
検討会議
14
小中学校新課程スタート
完全週5日制スタート   
実施に向けた調整   @年間指導計画・シラバスの作成
A指導マニュアルの作成
B職員研修による共通認識 
C保護者・生徒用説明文書の作成
D実施にむけた最終点検      
担当者会議
担当会議
検討会議
教務部
全職員   
15  実施

※留意点
@ 「検討会議」の構成は、11年度段階を必要最小限の構成とし、以後拡大を図るなど、各校の取組内容に応じて検討する必要がある。
A 施設・設備の検討は、外部施設の利用も含め可能な限り早期に検討する必要がある。
B 中・高の整合性の観点から、校区の中学校の実施状況を十分に把握する必要がある。

 これは最も遅い流れで、このペースでいくと、15年度にようやくその年度のプログラムの半分が完成する程度で、自転車操業どころか、一輪車操業になってしまい、下手をするとこけてしまう(こけるわけにはいかない)。
 しかし、11年度の段階ではこの表の段階の学校が多く、12年度に13年度の分をどれだけ前倒しできるかに成否がかかっている。現実は非常に厳しい。オチオチしてはいられない。






V さまざまな学習のタイプ

「分野」とは、環境・情報・国際理解・福祉なとを指す。「課題」とは、「分野」の中の個々の問題を指す。 

学習タイプ     ゼミ型       教科横断型     ホームルーム型   集団課題学習型    個別課題研究型 
イメージ  大学のゼミ      複数教師によるクラス授業         LHR        複数教師によるクラス授業又は選択科目授業        卒業論文      
例示    アジアの料理(地理++英語+家庭)、醍醐研究(国語+地歴+理科)、カウンセリング(その他)
環境問題について現代社会・地理・国語・理科・家庭などの関連する単元を系統的に学習する。        「産業社会と人間」、進路学習、人権学習、性教育、健康教育などを学習する。     1年を4期に分け、1期は環境、2期は国際理解、3期は福祉、4期は情報を3クラスずつローテーションで学習する。
課題内容 設置教科又はその他科目の、専門的な課題  従来の教科内容の中で他教科と共通する課題 従来LHRで扱っていた課題など 分野内の課題 生徒が選択した課題
課題設定    担当教師の希望又は生徒の要望で      学校が、年間学習指導計画などを参考に共通の内容を抽出する   学校が、従来のLHRや「産業社会と人間」を参考に       学校が、学校目標や生徒の実態に応じて 生徒の希望で    
担当 希望教師(全教師とは限らない) 該当教科担当(全教師とは限らない) 担任および副担任(全教師) 分野別に分かれた全教師 生徒の課題に応じた教師(全教師とは限らない)
対象生徒 選択した生徒集団   クラス単位
クラス単位      クラス単位又は選択した生徒集団    生徒個人      
生徒選択可 設定課題数だけ    なし         なし         なし又は分野数だけ 生徒数だけ     
年間の展開 通年又は2〜3期に1課題         通年。何クラスかを該当教科担当がローテーション        通年。全クラス同一課題          通年で1分野、又は2〜4期で1分野のローテーション   通年又は2期に1課題
週時程 少なくとも学年全クラス一斉        クラス毎どこでも可  全校全クラス一斉   少なくとも学年全クラス一斉。生徒選択なしの場合はクラス毎どこでも可  少なくとも学年全クラス一斉       
集中授業 難しい        難しい        可能         難しい。全クラス一斉の場合は可能   可能        
準備                     前年度又は年度当初に開講講座を決定し調整し、生徒に選択させる全体プロジェクトチームが必要。      各教科から内容を抽出し、指導計画を作成する全体プロジェクトチームと、該当教科間で調整する教科プロジェクトチームが必要。  従来のLHRや「産業社会と人間」をもとに指導計画を作成する全体又は学年別プロジェクトチームが必要。  分野を決定し全教師をいずれかの分野に配分する全体プロジェクトチームと、課題と指導計画を作成する分野別プロジェクトチームが必  要。生徒に分野を選択させる場合は、前年度か年度当初に登録と調整が必要。  前年度か年度当初に生徒に課題を決定させ、指導できる教師を調整する全体プロジェクトチームが必要。   
利点 専門的な内容を深く学習できる。教師や生徒の積極的な意欲が生きるユニークな授業ができる。 単位数減少に対して教科時間内で扱うべき内容を扱える。 モデルがあるので課題設定がしやすい。 ホームルーム型より授業らしくなる。総合の主旨に最も近い。 生徒一人一人の希望に応じた研究ができる。
欠点 前年度に決定した場合に担当教師の転勤の恐れがある。講座数が揃わない恐れがある。希望する講座がない、店員の関係で受講できない恐れがある。進路補習や増加単位になる恐れがある。 共通する内容を抽出するのが難しい。授業の補完になる恐れがあ る。         LHRと大きな違いがないので混同又は形骸化する恐れがある。画一的になる。     専門外の内容を、できるだけ同一内容で指導しなければならないので教師の研修と協力体制が必要。画一的になる。   すべての課題に教師が対応できない恐れがある。教師の負担が非常に大きい。     


 どのタイプにも一長一短がある。
 ゼミ型は、やる気と力量のある教師の興味をそそるが、生徒分のコマを揃えようとすると、それだけやる気と力量のある教師が少なくとも全教師の3分の1いないと成立しない。また、公立の場合は転勤があるので、あまり専門的なことはしにくい。
 教科横断型は、授業時間が減る分を補うには妙手であるが、ただでさえ個人企業で見通しの立たない高校教師の、年間学習指導計画から洗い出そうというのは至難の技である。
 LHR型は、経験知からおおよその目途が立つので実施する学校が多いだろう。総合学科の「産業社会と人間」をそのまま移行しても成立する。ただ、これを担任がやるとなると、担任の負担の増加と、生徒からすればLHRとどこが違うのか分からなくなり埋没してしまう恐れ大である。
 集団課題学習型は、最も趣旨に近いであろう。現代社会に応じたテーマを設定して、全教師が取り組む。教師負担の公平性や教師の意識改革から言っても価値がある。準備も初年度はしんどいが蓄積していけばいいものが出来上がる。
 個人課題研究型は、生徒の主体性というのにぴったりしているように見えるが、もともと主体性を持っている生徒は少なく、下手をすると中途半端な取り組みになってしまう。また、教師の負担は非常に大きい。さらに、進路補習に最も読み替えられやすい。
 ただ、3学年とも同じタイプですることはない。
 1年は、LHR型で、情報収集や話し合いの仕方や自己理解や人間関係などを学習すればいいだろう。
 2年は、集団課題学習型で、3期にわけて3つの分野をローテーションで学習すればいいだろう。
 3年は、ゼミ型と個人課題研究型を併用して、専門的な深い学習をすればいいだろう。



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