現代文は感受性や勘では読解できない。論理的な思考力が必要である。現代文にも、数学のような公式がある。それをまとめたのが「現代文ミニマム」である。ただし、数学のように簡単に使うことはできない。一つのガイドラインとして意識することによって、何もないよりは読解しやすくなるはずである。 1.読解編 段落の設定 要約の仕方 2.構成編 文章構成 接続の言葉 指示語 3.論法編 演繹と帰納 論証と解説 三段論法と弁証法 4.修辞編 比喩表現 暗示・象徴・飛躍・省略 逆説・皮肉・否定表現 倒置法・漸層法・誇張法・強調 語感 反復法 5.ジャンル編 小説の読み方 評論の読み方 随筆の読み方 |
段落の設定 段落とは、意味のひとまとまり。一つ目のまとまりから、もう一つのまとまりへの変わり目で、段落を設定する。 1.段落の種類 1)形式段落 改行から改行までの一まとまり。 2)意味段落 形式段落をいくつか集めた(一つだけのこともある)、意味内容で分けた一まとまり。 2.意味段落の切り方 1)話題の変わり目 2)発想の変わり目 @疑問を表す文は、問題提起の段落を作ることか多い。 A形式段落の初めに、転換(さて、そもそも)や逆接(しかし、だが)などを示す接続の言葉があれば新しい段落に入ることが多い。 3)論法の変わり目 実例から意見に変わる所や、否定的な意見から肯定的な意見に変わる所で、新しい段落に入る。 4)時や場所や事件の変わり目(小説の場合) |
要約の仕方 評論や論説文の読解は、文章を意味段落に切り、その段意、大意、要旨、主題をとらえ、筆者が何を言おうとしているかを、明確に把握することが大切である。 1.段意のまとめ方 段意とは、各意味段落で、筆者が最も言いたいことである。 1)文と文の関係を考え、主要部分と従属部分に分ける。 @主要部分 ・筆者の肯定的な意見 ・キーワード(繰り返される重要語句) ・キーセンテンス(○○とは□□である) A従属部分 ・実例、否定的な意見、引用や比喩、前置きやエピソード、比較や対照、説明や詳述、理由や原因 2)主要部分をつなぐ。 2.大意のまとめ方 大意とは、文章全体のあらすじである。 1)文章全体の論旨や展開をとらえる。 2)一貫した脈絡があるように、各段意をつなぐ。 3)50〜200字でまとめる。 3.要旨のまとめ方 要旨とは、文章全体で、筆者が最も言いたいことである。 1)文章全体の構成を考えて、結論に当たる意味段落を探す。 ・問題提起、前提、引用、説明などの意味段落をカットする。 2)結論に当たる意味段落の段意を、論旨に沿って、脈絡があるように補足しながら、一つの文にする。 3)20〜50字程度でまとめる。 4.主題のまとめ方 主題とは、題目、テーマ、筆者の中心思想である。 1)要旨をさらに短くする。 2)頻出語、反復語の中で、名詞や連語に注目する。 3)単語、連語、短文の形で表現する。 ・○○について、○○の□□、○○と□□ 5.表題のつけ方 1)文章中の語句を探す。 2)広い範囲、深い意味を含んでいることが多い。 3)文章の内容や文体に即して考える。 4)主題と一致しないこともある。 |
文章構成 文章構成とは、序論、本論、結論の組み合わせである。特に、評論や論説の場合、文章構成を考えると、要約がしやすくなる。 1.頭括型 最初に結論で言いたいことを述べ、次に本論で説明や実例を述べる。演繹型とも言う。 2.尾括型 最初に本論で説明や実例を述べ、次に結論で最も言いたいことをまとめる。最初に序論を置くこともある。帰納型とも言う。 3.双括型 最初に結論で最も言いたいことを述べ、次に本論で説明や実例を述べ、最期にもう一度結論でまとめる。 4.起承転結型 最初に序論を置き、次に本論が2つに分かれ、その間に屈折がある。最後に結論でまとめる。 5.列叙型 いくつかの事柄を並列的に述べる。結論はない。 |
接続の言葉 1.転換 新しい話題を持ち出して、今までの話題を変える働きをする。多くの場合、改行する。 さて・では・ところで・話は変わるが 2.逆接 前の内容を打ち消したり、前と反対の内容を述べる。 しかし・けれども・ところが・だが・が・しかるに・とはいうものの・しかしながら・ もっとも 3.対比 前後の2つの言葉や文を対比させて、違いを際立たせる。 それに対して・〜と比べて・一方〜他方〜・それとも・あるいは 4.追加 前の内容にもう一つ情報を付け加える働きをする。 また・そして・それに・あるいは・〜も・ともに・と同時に・さらに・そのうえ・しか も・のみならず・それに加えて・まして・もう一つ 5.順接 前の内容を前提・原因として受けて、結論・結果を述べる働きをする。 したがって・だから・ゆえに・それゆえ・〜すれば・すると・そこで・結局 6.補足 前でいい足りなかった事を補う働きをする。 なぜなら・〜から・というのは・ただし・なお・もちろん・むろん・確かに 7.換言 前の内容を要約したり、別の言葉で言い換える。 つまり・すなわち・要するに・たとえば・言い換えれば・いわば・というよりも・むしろ・いずれにしても |
指示語 同じ語句や文の繰り返しを避け、表現を簡潔にするために、前に使われた語句や文を受けて置き換えた語を指示語と言う。論理的な文章には非常に多く用いられるので、指示内容を明らかにすることは、読解の要点と言える。 1.指示語の種類 1)代名詞 これ・それ・あれ・ここ・そこ・こちら・あちら・彼・彼女 2)連体詞 この・その 3)副詞 こう・そう 4)形容動詞の語幹 こんな・そんな・あんな・どんな 5)名詞 前者・後者・両者・前述・後述・左・右・以上・以下・先・次 6)連語 こういう・そうした・ああいった・こんなわけで・そうだとすれば・あのような 2.指示内容の範囲 1)指示内容は、原則として指示語の前にある。しかし、後で詳述するものを、前もって受 けて述べる場合は、指示語の後にある。(予告の指示語)こんな・こういう・後述・次 ・以下) 2)単語や語句だけでなく、文や段落全体を指示することもある。 3)文中の語句だけで不十分であったり、余分な部分を含んでいる場合は、補足や要約をする。 4)指示内容が文中になく、文章から推測しなければならないこともある。 5)時には、何も指示していないこともある。 3.解答上の注意 1)「文中の語句で」「文中から抜き出せ」という設問は、文中からそのまま抜き出す。 2)「文中の語句を用いて」という設問は、文中の語句を中心にして多少変えてもよい。 3)代名詞や名詞の場合は、必要に応じて「〜こと」を補って答える。 4)解答の中に指示語がある場合は、その指示内容を明らかにする。 5)指示内容に該当する部分が2つ以上ある場合は、原則として指示語に最も近いものを答えにする。 |
演繹と帰納 1.演繹 1)演繹とは、一般的な原理から、特殊な事実を推論する方法である。 2)一般的な原理は、文章の最初にある。以下に述べられる特殊な事実は、一般的な原理によって判断される。 3)一般的な原理と特殊な事実が、どういう点で重なるかを抑え、特殊な事実の中に現れた一般的な原理を読み取る。 4)一般的な原理と特殊な事実の間は、「ゆえに・だから」などで結ぶことができる。 2.帰納 1)帰納とは、個々の特殊な事実から、一般的な原理を導き出す方法である。 2)まず、いくつかの具体的な事実が述べられる。そして最後にそれらに共通する一般的な原理(結論的な意見)が示される。 3)具体的な事実と結論的な意見の、どこがどのように対応しているかを読み取る。 |
論証と解説 1.論証 1)意見と論拠を読み分ける。 2)論証型の文章では、まず最初に書き手の結論的意見が出され、次にそれが、具体的事例によって証明されていく。 ・結論的意見は、命題的表現によって言い表されることが多い。命題的表現とは、「○○とは□□である」という形で表される。 ・結論的意見は、問題提起に答える形で言い表されることがある。問題提起による結論的意見の表現には、「○○は□□であろうか。→いや、そうではない。「○○とは何 か。→それは□□である。」「○○なのはなぜか。→それは□□だからである。」の形で表される。 3)まず、結論的意見の意味することを正確に理解する。 4)具体的事例のどのような点が、結論的意見と結びつくのかを読み取る。 2.解説 1)主要部分と従属部分を読み分ける。 2)解説型の文章では、最初に結論的意見が出され、次にそれをさらに詳しく説明していく。 @詳述 さらに詳しく説明する。抽象的な言葉の解説などがされる。 A換言 同じ内容のことを、言葉を変えて繰り返す。立場を変えて言う場合もある。 B引用 例を挙げて分かりやすくする。 3)何について解説や換言しているかをつかむため、常に問題とされている話題を念頭に置 く。 4)具体的事例のどのような点が、話題とイコールで結びつくのかを読み取る。 |
三段論法と弁証法 1.三段論法 1)A=Bと、B=Cの2つの前提から、A=Cという結論を導き出す。 2)A=B(大前提)→シカルニB=C(小前提)→ユエニA=C(結論)という形で表される。 2.弁証法 1)2つの対立、矛盾するものごとや考え方を、総合(止揚)して、より高い次元の正しい結論を導き出す。 2)逆接の接続語に着目し、それがどの部分とどの部分をつないでいるかを読み取る。 3)結論は2つのものの対比の後にくる。その場合筆者は、どちらか一方を否定して結論を述べるか、両者を総合して結論づけを行なうかのどちらかを方法をとる。 |
比喩表現 あるものの様子や性質を、類似点をもった他のものによって表現すること。 1.直喩 「たとえば・ちょうど・ような・ごとく」などの語句を用いて、他のものと比べる。 2.隠喩 直喩のような比較語を用いないで、直接結合している。 3.諷諭 言おうとすることをわざと隠し、言葉の表面の意味によって真意を悟らせる。諺・寓話。 4.声喩 遁世や動作や状態を感覚的に表現する。擬声語や擬態語。 5.活喩 無生物を生物に、人間以外のものを人間にたとえる。擬人法。 6.提喩 特殊なものや一部分によって、全体を表す。 |
暗示・象徴・飛躍・省略 1.暗示 1)わざとはっきり書かず、それとなくほのめかす方法。表現の意味する所は読者の想像にまかせて、余情的効果を生かす。 2)疑問文の型の形にして読者に問題を投げかけると言う質問法によってなされることが多い。 2.象徴 1)直接には表現しにくい抽象的なことや精神的な内容などを、具体的な事物を借りて表現する方法。 2)象徴は、観念的象徴と、気分的象徴に分けられる。 3.飛躍 普通のものの考え方や言い回しでは考えられないような、突飛なもののつなげ方や言葉の結びつけ方。 4.省略 不必要な繰り返しや、くどい部分を省略し、簡潔で力強く余情を含んだ表現をする。 1)体言止め 文末を体言や連体形で止め、印象を強め余情を残す。 2)連用中止法 文末を連用形で止め、なめらかで美しい表現をする。 |
逆説・皮肉・否定表現 1.逆説(パラドックス) 1)一見、不合理で常識に反するようでいて、よく考えてみると、真理を含んでいる意見。 ・「○○は□□である。」という命題的表現をとることが多い。 2)判断に比重がかかり、理知的な批判の鋭さがある。 3)常識的、通俗的なものの考え方を批判したり、揶揄(からかう)する目的がある。 [例]自分の美しさを意識している女性は、もはや美しくない。 2.皮肉 1)わざと真意と反対のことを言う表現。 2)表現、言い回しに比重がかかり、情緒的な批判も含んでいる。 3)あることを特に嘲笑したり、揶揄する目的がある。 [例]あの寺の僧は観光宣伝精神に富むことで有名である。 3.否定表現 1)単純な否定の他、2)除外して他のものを暗示し、3)否定によって逆に印象づけ、さらに二重の否定によって、4)強い肯定や、5)婉曲表現をとり、条件否定によって、6)一部否定や、7)累加強調がある。 [例]1)この作品の意図が全くわからない。 2)そんなつもりで書いたのではない。 3)君を三流作家だとは思わない。 4)私はなんとしても書かずにはいられない。 5)傑作だと言う人もいないわけではない。 6)作品のすべてが傑作なのではない。 7)単に彼だけがそう評価したのではない。 |
倒置法・漸層法・誇張法・強調 1.倒置法 1)文法上や論理上の普通の順序を置き換えて語句を配置し、印象を強め余情を残す表現。 2)「………」が使われることが多い。 2.漸層法 1)段落を追って畳みかけていき、読み手を一段一段高潮した気分に引きずり込み、最後にクライマックスに持っていく方法。 2)反復法と併用されることが多い。 3.誇張法 1)物事を実際より極端に述べる方法。 2)滑稽を表現する場合に用いられる事が多い。 [例]コンパスで描いたようにまん丸い顔だった。 4.強調 1)似た内容が、単純に2つ並べば後の方、3つ以上なら初めか終わりに比重がかかる。 2)特別な言い回し。「○○だけでなく、□□なのである。」「たしかに○○だ。しかし、「□□」「これが○○」「○○とは□□である。」「○○こそ□□である。」 3)記号を使う。「 」、( )、 ───。 4)太字、傍線、傍点をつける。 |
語感 1.和語と漢語と外来語 1)和語 素直で平明。何となく柔らかで懐かしい。優雅な印象も受ける。 2)漢語 簡潔ではあるが難解なものが多く、何となく形式ばっていて、硬く重々しい。威圧的 な印象を受けることもある。 3)外来語 近代的、知性的で、新鮮な感じがするが、何となく専門的で権威があるような印象も 受ける。 2.口語と文語 1)口語 素直で平明。 2)文語 荘重で、厳めしく、素朴だったり古くさかったり、あるいは、典雅(整っていて上品)で格調高く、流麗な感じがする。 3.漢字と平仮名と片仮名 1)漢字 荘重、簡潔、率直であるが、難解なものが多く、硬い感じがする。 2)平仮名 優雅、平明、素直、柔らかな感じがする。伸びやかな反面、歯切れが悪く、間延びがする。 3)片仮名 一字一字が強く印象づけられ、歯切れがよく簡明だが、ぎこちない感じがする。 @擬声語や擬態語を表記する。 Aその言葉を強調して、読み手の注意を引きつける。 B自嘲とか皮肉とか、揶揄、諷刺などの意を表す。 C外来語を表記する。 |
反復法 同じ語句や言い回しを繰り返し、文意を強調したり、リズム感を生み出したり、初めの意味を変化させていく。 1.同文型反復 同じ文型で繰り返す。 [例]智にはたらけば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。 2.同文反復 同じ文で繰り返す。 [例]歌謡曲のサビの部分。 3.首句反復 文の初めの語句を繰り返す。 [例]愛は空、愛は海、愛は鳥、愛は花、愛は星、愛は風、愛は僕、愛は君。 4.結句反復 文の終わりの語句を繰り返す。 [例]これも愛、あれも愛、たぶん愛、きっと愛。 5.前辞反復 前の文の最後の語句、最も重要な語句を受けて繰り返す。尻取り法。 [例]とかく人の世は住みにくい。住みにくさが高じると 6.畳語法 同じ語句を2、3回繰り返す。 [例]帰れ帰れ。もっともっと。 |
小説の読み方 1.文章を全体としてつかむ。 1)5W1H(いつ、どこで、だれが、なにを、なぜ、どのように)を明らかにする。 ・時と場所を作者のねらいに結びつけて読む。 ・登場人物の性別、年齢、身分、職業、健康、性格、心情、人間間の相互関係、登場人物が小説の中で占めている重さ、誰が主人公かなどを明らかにする。 2)作者は誰の側からものを見ているかつかむ。 2.文章構成をつかむ。 1)段落を区切る。 ・時間の移り変わり、場面の転換、人物の出入り、事件の展開などに注目する。 2)文章の構成をつかむ。 ・小説の場合、発端、展開、山場(クライマックス)、結末で構成されている事が多い。 3.登場人物の心情や心理をつかむ。 1)会話の流れで、人物の行為をつかむ。 ・会話以外の、人物の心中で思っている部分にも注目する。 2)人物の会話や行為から、心情や心理をつかむ。 ・人物の会話や行為には、その裏付けとして必ず心情が反映している。 ・情景描写にも、人物の心情や心理が表現されている。 4.主題を明らかにする。 5.表現や文体の特色を味わう。 6.原作や作者の他の作品も読む。 |
評論の読み方 1.文章を全体としてつかむ。 1)何について、それがどうだと言っているかつかむ。 ・文章の題、書き出し、および結びの部分の主語に注意する。 2)繰り返されている語句(キーワード)に着目する。 ・特に頻出する抽象語で、体言あるいは体言型の語句に注目する。 3)命題的表現(キーセンテンス)を抑える。 ・命題的表現とは、論理的な判断を、主語述語のはっきりした短いセンテンスで明快に言い表したもの。 ・「○○は□□である」という形で表現される。 2.部分をとらえる。 1)接続語や指示語を抑えて読む。 ・接続語では、特に順接と逆接に着目する。 2)論と例とを区別し、論の部分をつなげて読む。 ・論とは筆者の考えを述べた部分であり、例とはそれを分かりやすく説明するために、具体的な事実を述べた部分である。 3.文章の論理的構成を整理する。 1)段落を区切る。 2)段落ごとの内容をつかむ。 3)段落と段落の関係をつかむ。 4)文章の構成をつかむ。 4.論法の特徴を理解する。 5.要旨をまとめる。 |
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