7.やりとりを理解するワーク3  6月7日(月)

今回こそ、いよいよ生徒の作成した交流パターンの例を実演します。前回、提出してくれるかやや不安でしたが、全グループが出揃い、感涙に耐えません。いい生徒達です。今回、いい実演をしてくれればと願っています。見ているグループは、実演しているグループの採点をさせます。やりとりの流れ、やりとり分析の妥当性、実演の演技などを採点基準にしようと思います。そのあと、ストローク、時間の構造化、ゲーム分析、基本的態度についてシートを使いながら説明して、交流分析の概要を理解してもらいます。そして、エゴグラムから始まった交流分析の授業全体を振り返って、気づいたことや分かったこと、感想や要望などを書かせます。

時間 学習項目      活 動 内 容(★留意点 ▼生徒の反応)     
40 組み合わせ要約
1)前回提出させたものを添削して返却。ポイントを説明する。
★どこがポイントになるかを説明するので、組み合わせ作文の解説よりもう少し時間がかかる
2)要約第2弾「原発を考える」を配布して、30分間で要約させ、回収する。
実演する 1)3つの椅子を2列並べ、[P][A][C]の札を張り、実演ステージを作る。
2)各グループが作った「交流例のプリント」と、「やりとり分析採点シート」を配布する。
3)実演の仕方を説明する。
a.Xは自分の自我状態の椅子に座り、やりとりをしようとするYの自我状態の椅子にぬいぐるみを置く。
b.Yも同じようにする。
c.裏面交流の場合は、裏面の自分の自我状態の椅子と、やりとりをしようとする相手の自我状態の椅子に別のぬいぐるみを置く。
d.座っている椅子とぬいぐるみが置いてある椅子でやりとりのパターンを確認する。
4)採点の仕方を説明する。
・各グループの例の、やりとりの流れ、やりとり分析の妥当性、演技について、それぞれ5点満点で採点させ、コメントを書かせる。自分のグループの例についても、採点と感想を書く。
5)実演と採点をさせる。
交流分析の講義
1)「ストローク、時間の構造化、ゲーム分析、基本的態度シート」を配布する。
2)ストロークについて、交流が起こる源泉であることを説明する。ストロークには、肯定的なものだけでなく、否定的なものや、逆のディスカウントもあることも説明する。
3)時間の構造化の6段階について説明し、各グループの例がどれに当たるのかを解説する。
4)ゲーム分析について、どのような種類があるのか、各グループの例で当てはまるものがあれば解説する。
4)基本的態度について、4つのパターンを説明し、自分がどのパターンにあるのか、どのパターンが望ましいのかを説明する。
振り返りをする  1)「振り返りシート」を配布する。
2)エゴグラムから始まって基本的態度まで、交流分析を勉強して、人の心の仕組みについてわかったこと、自分ついてに気づいたこ と、授業の感想や要望を振り返りをさせる。
3)「やりとり分析採点シート」「振り返りシート」を回収する。



資料

交流パターン例(最も得票の多かった生徒作品)
グループ(D)
バターン:相補=S 交差=K 裏面=R

パターン
X1 あっ!お久しぶりです。S先生。 A
S
Y1 あっ、こんにちは、Sさんのお母さん。 A
S
X2 うちの子はまじめにやってますか? A
R
Y2 そうですねー。・・・頑張ってますよ。 A(P) A(C)
R
X3 この間のテストの結果はまだなんですか? A A
S
Y3 えっ!?もう返したはずなんですけど。 A A
R
X4 知りませんよ!まさかうちの子・・・。 A(P) A(C)
R
Y4 ああ、結果なら今ありますけど。 A(C) A(P)
R
X5 できれば教えてください。 A A
S
Y5 ええ、いいですけど・・・。Sさんでしたね。 A A
K
X6 赤点!?これ本当なんですか。 P A
K
Y6 残念ながら事実です。 A A
K
X7 あんなにガンバルって言ってたのに。 P C
R
Y7 授業は真面目に聞いてるんですけどね。いつも眠そうにはしてますが。 A(C) A(P)
R
X8 これで、うちの子は進級できますか。 P P
S
Y8 非常に厳しいんですけど、期末を頑張れば何とか・・・。 P P
K
X9 そうですか。よろしくお願いします。 A A
S
Y9 では失礼します。 A A
X10
Y10
やりとり・パターンには多々間違いがあります。


やりとり分析採点シート

組  番  氏名

Aグループについて
やりとりの展開(  )点   やりとりの分析(  )点   実演(  )点
────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────
Bグループについて

やりとりの展開(  )点   やりとりの分析(  )点   実演(  )点
────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────────
以下Fグループまで同様


ストロークシート

他の人の存在を認めるためにする行動や働きかけをストロークと言います。逆に、他の人の存在を認めない行動や働きかけをディスカウントと言います。肯定的なストロークは、人の心のバランスと健康を保ちますが、否定的なストロークはディスカウント以上に相手を傷つけることになります。 

肯定的ストローク  否定的ストローク  ディスカウント  
     温かい心がふれあう、肉体的にも気持ちのよい刺激。
 相手に幸福感と喜びを与え、存在に意義を感じさせ、心の糧になり成長を促す
 心の中では認められている感じがありながら、心の痛みや肉体的な痛みを感じる刺激。
 相手を不愉快で憂鬱な気持ちにさせ、やる気や自信を失わせる。対人関係のトラブルを起こしやすくなる。     
 相手を無視したり軽視したりするような心のからくりや行動。
 無意識のうちにしてしまうことがあ る。例えば、ある子をひいきすることは他の子をディスカウントすることにな る。
なでる・さする・愛撫する・抱擁する・おぶう・キッスする・握手する  
叩く        殴る・蹴る・つき飛ばす・殺す    

ほめる・励ます・微笑む・頷く・挨拶する・よく聴く・信頼する・まかせる   叱る・怒る     皮肉・けなす・無視・無関心・仲間はずれ        


時間の構造化シート

人間には人とかかわる時間を有意義に使いたいという基本的な欲求があります。自分の望むふれあいを求めて自分の時間をどのように使うか、親密さと気持ちよさの度合いに応じて6つの段階に構造化されます。

自 閉  物理的にも心理的にも自分の殻にひきこもってしまう状態です。他の人とのストロークのない状態ですが、その代わりに、人との関わりの中で生じるかもしれない心理的な感情の危険もない状態です。
儀 式     挨拶や形式的な会議なども含まれます。積極的な方法ではないが、ストロークのやりとりのウォーミングアップとしては重要な意味があります。心理的な危険を感じないでストロークのやりとりができるが、本当の自分を投入できないので空しさを伴います。
社 交  俗にいうおしゃべりです。人との本当に深いやりとりへの出発点ですが、これだけでは本当の人間的な触れ合いは持てません。
活 動  何かを達成するために〔A〕の自我状態を使ってする活動です。仕事・家事・雑用・趣味もこの中に入ります。かなり中身の濃いストロークのやりとりが期待できるが、成果が上がらなかったりした場合は、それだけ心理的な危機も含まれます。

ゲーム  ゲームを始めるのはストロークが欲しいからですが、ゲームのストロークは否定的ストロークで、かなり中身の濃いものです。ゲームを繰り返していると、時間が非生産的に過ぎていくので、楽しい時間が失われます。

親 密  お互いに相手に共感が持てる状態です。本当の自分と向かい合う関係なので傷つく危険が背中合わせにあるが、最高のストロークのやりとりが行われる場合は、「私もあなたもOK」という人間関係がつくりあげられ、真に自由な自己への変革の道を歩み出すことも可能です。


ゲーム分析シート

はっきりと結末が見えながら、繰り返し人間関係をこじらせたり、後味の悪い結果を招いたりする行動のパターンをゲームと言います。表面的には相補交流だが、内面では裏面交流があり、否定的なストロークをやりとりしています。誰もがそれぞれの十八番を持っています。

救援者     生徒が勉強をしない→教師はやればできるはずだと補充をする→進歩を遂げず感謝もしない→絶望感にかられる
キック・ミー  生徒が遅刻・欠席を重ねる→教師が呼び出して注意する→遅刻・欠席を繰り返す→駄目な生徒だと決めつける
仲間割れ    生徒が問題行動を繰り返す→職員会議でとりあげる→意見が対立する→延々と水掛け論を繰り返す
一喜一憂 子どもが不登校がちになる→親は一喜一憂する→親が混乱した態度をとる→子どもはさらに不安になる    
あなたのせいだ  子供が親を責める→親は教師の責任を追求する→教師も親を責める→親が無力感に襲われる
法廷      母親が父親の無理解を責める→父親が母親の過干渉を責める→教師に解決を求める→一方の誤りを指摘する→争いに巻き込まれる
大騒ぎ     生徒が校内でわざと喫煙する→教師が指導する→自分だけではない、不公平だと騒ぎたてる
警官と泥棒   生徒が喫煙する→教師が発見する→証拠を隠す。先生も高校時代に煙草ぐらい吸ったことがあるだろうから見逃せと迫る→教師が判断に迷う
評論家     いじめ事件か起こる→教師が両方の親を呼び出す→双方に反省を求める→親は混乱し気落ちしたり怒ったりする 
暗黙の了解   教師が特定の生徒を感情的に叱る→クラスにその生徒の否定的イメージが広がる→いじめが生じる

ゲームをやめ方

1)ゲームの存在に気づく。
2)〔A〕を活用して事実を確かめ、自分の役割を必要以上に演じない。
3)〔A〕から質問をして相手を〔A〕の自我状態にさせたり、相手の期待とは違った反応をしてみたり、相手が役割を演じるのを中止させる援助をする。
4)否定的ストロークを肯定的ストロークに代える。
5)自分自身や他人を無視したり、軽視したりするのをやめる。
6)ゲームについて相手とよく話し合う。
7)最悪の事態の時は逃げ出す。


自己肯定(私はOKである)
   自信過剰で傲慢、あるいはそこから逃げ出していく態度。自分に合わないものを傷つけたり、排除してしまいたい。また、押しつけがましく援助の手を差し延べたり、責任を他に転嫁したりする。 人とうまくやっていく態度。主体的、創造的に生きようとする。自分を信じ、相手を信頼して、相手と協力的に人生を歩む。  あ
排他主義・強い自己愛・野心家・独善・妨害・非行・犯罪 自他の共存・基本的信頼感・真の人間尊重・協力関係・真の自己実現
不信感・虚無主義・放棄・絶望・精神病・自殺・拒絶・閉鎖 自己軽視・対人恐怖・劣等感・うつ反応・交流の回避
行き詰まってどうしようもないという態度。他人の愛情を確かめたり、愛情を得ようとして、却って、他人との触れ合いを拒絶し、自閉的になる。 相手をやっつけて追い払ってしまう態度。他人に比べて自分が無力で劣っているという感じを抱き、その人や問題から逃げようとす る。逆に、権威的で支配的な人を求めることもある。また、相手に自分がOKでないことを認めさせようとする。
自己否定(私はOKでない)


生徒の感想

▼普段何気なく行われている「会話」にもいろいろな「交流」があるのだなと感心しました。▼自分の無意識の内に裏面交流が行われていることが分かった。自分は結構裏表のある人間だと思った。人の心理的なことをするのは難しい。だから、あまり深くやりたくない。▼何をしようとしているのか分かりませんでした。▼こんなふうに日常の会話を分析すると、相手の気持ちが客観的にわかったような気がした。こんなふうに自分を見ることも面白いのでもっと他の事もしたい。発表とかの実演があると見てても面白いし、自分がする方になったら必死で理解しようとするし、いいと思った。▼意味がわからんし、面白くなかった。このCとかPがなぜ国語表現に関係があるのかいまいち理解できない。▼ゲーム分析シートは何となく意味が分かりなるほどと思った。ゲーム分析シートを試してみたら面白いと思った。1つ1つの会話にちゃっと意味があってそれを分析するのは結構面白い。それを知った上で会話するともっと意味のある会話ができそうです。▼自分はディスカウントをよく行っているのかもしれない。それが肯定的ストロークになればいいと思う。▼裏の気持ちとかには気づかない方が幸せだと思う。素直に人の言っている事を受け止めようと思う。▼最近、だんだん授業の内容がわからなくなってきた。いったんわからなくなるとやる気がなくなってくるので、気をつけたい。▼普通に会話するにはAからAにいくということは分かったつもりです。▼自分らは気がつかへん内に相手の内をうかがうようなやりとりをしてるんだなあと思った。あまり写真を撮らないでほしい。班で話し合っている時はいいけど、実演中は恥ずかし過ぎます。▼いろいろとこの3つのパターンを考えてみると日常会話がおもしろい。やる前はなんでこんな交流パターンとか考えなあかんのと思っていたけど、実演してみると面白い。▼ぬいぐるみ使ったら訳がわからなくなった。▼人と人の会話にはいろいろなパターンや心の状態が激しく交わっており、裏面交流なども多く混じっているということを改めて知った。


教師の感想

またまた反省しきりのワークでした。
やりとり分析シリーズの最終回。3回もやる気はなかったのです。自己理解の次は自分の対人関係を理解することが中心になるはずなのに、エゴグラムで交流分析を勉強したのだからやりとり分析もやりたい、それなら椅子を使って実演をさせたい、ぬいぐるみを利用すると盛り上がるだろう、という方向で発想が展開してしまい、結果的には交流分析を理解することに終始してしまったようです。ぬいぐるみも却ってワークを煩雑にしただけで理解には結びつきませんでした。
ですから、生徒が、「何をやっているのか分からない」「国語表現でなぜこんなことをするのか分からない」というのは当然です。でも、生徒は優しいので、好意的な感想が多かったようです。なんとか何かを学びとりたい問よくしてくれた生徒も多くいました。しかし、優しさの上に胡座をかいているとすぐにこけてしまうと自戒しています。
にもかかわらず、生徒の作った例はどれも努力跡がうかがえる力作ばかりでした。やりとり分析に間違いはあるものの、果敢に裏面交流に挑んでみたり、意欲が感じられました。
次回から、気を取り直して気合を入れて、やや新展開。
              


参考文献

・柳原 光監修『Creative O.D. 第2集』(行動科学実践研究所)
・杉田峰康ほか『交流分析入門』(チーム医療)
・杉田峰康『人生ドラマの自己分析』(創元社)



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