3.私を知るワーク 5月10日(月)
第3回目も、しつこく自分について考えます。今回は、心理学的にアプローチしてみます。自己理解のために比較的やさしく使える交流分析のエゴグラムを活用します。エゴグラムを使ったワークはよくありますが、この授業では、ワークシートを使えば専門的な知識のない先生でもかなり深い所まで考えさせることの出来るプログラムを作成してみました。エゴグラムを書かせ、それをいろいろな角度から分析し、それを使って自分を変えるところまでやってみたいと思います。また、自分について考えるだけでなく、交流分析の自我構造分析も理解させ、次の時間には、やりとり分析を使って、気持ちのよいコミュニケーションの作り方の学習につなげます。
後半は、普通の国語表現の時間。前回に引き続き、いきなり文章を書かせるのでなく、主題と材料が整った段階からどのように書けばいいかを練習します。主題文と材料になる文を与え、それらを並べ替え、少し言葉を補足して、短い意見文を制限字数内で書かせます。
時間 | 学 習 項 目 | 活 動 内 容(★留意点 ▼生徒の反応) |
10 |
エゴグラムをする |
1)「エゴグラム質問用紙」を配布する。 ★質問項目がランダムに並んだものを使用する。 2)分かりにくい語句を解説しながら、質問項目を読み上げる。 ★各自のペースでやらせるのがよいかもしれないが、ワークシートの場合、個々人の速さの違いが、どんどん開いていくので、出だしはできるだけ揃えたかった。 ▼早い生徒は先先をやっていく。「劣等感」などの言葉の意味が分からない生徒がいる。 |
5 | 交流分析の自我構造を説明する | 1)5つの自我状態について、板書しながら説明する。 ・[CP]は、親から行動に制限を加えられ、批判され忠告されて育てられてきた間に身についた、父親的な部分。社会的習慣や文化や伝統を保持し伝えたり、良心の役割を果たし、自己中心的な行動をコントロールする。 ・[NP]は、親から愛され保護され、育てられてきた間に身についた母親的な部分。人を愛し、思いやりを持ち、世話をしたり、激励したりする。 ・[A]は、幼児期に、自分の意識ですることができることに気づき、次第に思考力が増すにつれて身についてくる部分。人間の中のコンピュータに当たる部分で、冷静に現実を見つめ、比較検討し、見通しや計画を立て、意志決定をした り、主体的に問題解決をはかる。 ・[FC]は、自由で腕白な状態。幼児期に、親の影響を受けず に、自然のまま伸び伸びと育った部分。生き生きとしていて、エネルギーにあふれ、衝動的に本能のおもむくままに行動する。 ・ [AC]は、幼児期に親の影響を強く受けて、親の愛情を失わ ず期待に沿ってイイ子になるために、子どもが本来持っている本能的な欲求や衝動を抑制して、順応した行動をとろうとする部分。対人関係において適切な対応がとれ、従順で素直な態度や行動をと る。しかし、内心で反抗したり、引きこもってしまったり、敵意や反抗心を外に爆発させることもある。 2)「エゴグラム」の裏面に印刷してある、自我状態別に質問項目を並べ替えたエゴグラムで、自我構造を確認する。 |
30 | 自分の自我構造の特徴を知る | 1)「私を知るワークシート」を配布する。 2)エゴクラムを点数化し、グラフを書かせる。 3)21〜30を「a」、11〜20を「b」、0〜10を「c」とランク付けする。 ★後で、『自分がわかる心理テスト Part2』を回覧し、自分のパターンを知る。 4)点数の高い自我状態と低い自我状態に注目させる。 5)「早見表」を配布する。 ★「TEG研究会編『TEG活用マニュアル事例集』金子書房」のものを使用。 6)得点が高い低い場合の、プラスとマイナス面の中で、自分に当てはまるものを○で囲ませる。 ★すべての自我状態について見ることによって、自分について知るだけでなく、それぞれの自我状態の特徴も理解させる。 7)自分のエゴグラムを見て、「私の自我構造」を短い文章でまとめる。 ★様々な情報をもとにして、グラフを文章化する練習と称することで「国語表現」にこじつけた。 ▼このあたりになると、早い生徒と遅い生徒の差が顕著になり、早い生徒は手持ち無沙汰の様子を見せる。 8)隣の人とエゴグラムを見せ合い、自分のエゴグラムを説明し、相手のエゴグラムを分析する。 ★このあたり、エンカウンターの雰囲気をだそうとした。 ▼しかし、生徒の交流があまりなく成功しなかった。全体的に沈んだムード。導入が悪かったのか、個人のワークシートの作業が続くことがまずかったのか。 ★ここで1時間目が終わる。時間配分の難しさを痛感。 |
15 | 自分の自我構造を変える | 1)自分の理想のエゴグラムを自分のエゴグラムに重ねて書かせる。2)「自己改造シート」を配布する。 3)自己改造計画を書かせる。 ★シートの改善項目を参考にして、「私は○○を上げたい。そのためには〜」という形で書かせる。 ★机間巡視をして、何人かの生徒のエゴグラムと理想のエゴグラムについて、短い問いかけをする。 ▼このあたりから、生徒の反応が活発になりつつあった。未来のありたい自分を描くことは、興味があるのかもしれない。どの自我状態も高い状態を望む生徒が目立ったが、高いからプラスだとは限らないことを指摘してやる。 ★ここで、『心のワーク』は終了。 |
35 | 組み合わせ要約 |
1)前回提出させ添削した、材料作文「あいさつ」を返却する。 2)評価のポイントを説明する。 3)組み合わせ要約「顔の話」(「日本文章能力検定3級問題集」より)配布し、やり方の解説をする。 ★4段落からなる文章に、要約文の選択肢が10個ほどあり、その中から適当なものを段落の数だけ選び、それらを適当な接続詞などを使ったり、削ったり付け加えたりして、制限字数ないで要約文を書かせる。要約文を作る前段階の学習。 4)組み合わせ要約「からくりの話」を配布し、15分間で要約さ せ、回収する。 |
資料
エ ゴ グ ラ ム |
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29 | 「〜しなくてはいけない」という言い方をします。 | ||||||
30 | 遠慮がちで消極的な方です。 | ||||||
31 | 親の機嫌をとることがあります。 | ||||||
32 | 嬉しいときや悲しい時に、顔や動作に自由に表せます。 | ||||||
33 | 何かわからないことがあると、人に聞いたりします。 | ||||||
34 | 欲しいものは手に入れないと気がすまない方です。 | ||||||
35 | 内心では不満だが、表面では満足しているふりをします。 | ||||||
36 | 体の調子が悪い時に、無理をしないようにします。 | ||||||
37 | 異性の友人に自由に話しかけることができます。 | ||||||
38 | 人に冗談を言ったりからかったりするのが好きです。 | ||||||
39 | 時間やお金にルーズなことは嫌いです。 | ||||||
40 | 親とよく冷静に話し合います。 | ||||||
41 | 勉強や仕事をテキパキと片づけていく方です。 | ||||||
42 | 人に何かを買ってあげるのが好きです。 | ||||||
43 | 助けを求められると、私に任せなさいと引き受けます。 | ||||||
44 | 自分が親になった時、子どもを厳しく育てると思います。 | ||||||
45 | 絵を描いたり歌を歌ったりするのが好きです。 | ||||||
46 | 誰かが失敗した時、責めないで許してあげます。 | ||||||
47 | 嫌なことを嫌だと言えます。 | ||||||
48 | 弟や妹や年下の子どもを可愛がる方です。 | ||||||
49 | 迷信や占いなどは、絶対に信じない方です。 | ||||||
50 | 食べ物や着る物がない人がいれば、助けてあげます。 | ||||||
合計 |
私を知るワークシート 組 番 氏名 1.私のエゴグラム・理想のエゴグラム 30┌──┬────┬────┬────┬────┬──┐ 28├──┼────┼────┼────┼────┼──┤ 26├──┼────┼────┼────┼────┼──┤ 24├──┼────┼────┼────┼────┼──┤ 22├──┼────┼────┼────┼────┼──┤ 20├──┼────┼────┼────┼────┼──┤ 18├──┼────┼────┼────┼────┼──┤ 16├──┼────┼────┼────┼────┼──┤ 14├──┼────┼────┼────┼────┼──┤ 12├──┼────┼────┼────┼────┼──┤ 10├──┼────┼────┼────┼────┼──┤ 8├──┼────┼────┼────┼────┼──┤ 6├──┼────┼────┼────┼────┼──┤ 4├──┼────┼────┼────┼────┼──┤ 2├──┼────┼────┼────┼────┼──┤ 0└──┴────┴────┴────┴────┴──┘ 2.私の自我構造 3.自己改造計画 |
自己改造シート |
CPの上げ方 | NPの上げ方 | Aの上げ方 | FCの上げ方 | ACの上げ方 |
●軽はずみな冗談や意見はなるべぐ慎む。 ●できるだけ無駄口をきかない努力をする。●自分の意見を引っ込めない。 ●時間やお金に厳格になる。 ●約束の時間を守り、相手がそれを破った ら、そのまま許さずに理由を問いただす。 ●お金の貸し借りもはっきり断る。 ●生活の時間割りを立てて、可能な限り、それを守る。 ●きちんと物事を処 理する。 ●怒りの対象を枕に見たてて、批判や非難のことばを口にしながらたたく。 ●「私は〜と思う」とはっきり自分の考えを述べる。 ●自分の意見をもち、それを主張する。 ●決めたことを最後まできちんとやる。 ●これで本当に満足していいだろうかと、要求水準を少し上げてみる。 ●これは私の立場や年齢にふさわしい姿だろうかと考え、自分に厳しくなる。 ●何かひとつ最後までゆずらずにがんばってみる。 ●相手のまちがいを、努めてその場で叱る。●まあいいや、なんとかなるという態度をやめ、責任をもつようにする。 ●どっちでもいいと考えるのではなく、自分の責任でどちらかに決める。 ●好き嫌いをはっきり言う練習をする。 |
●ファッショナブルに装ってみる。 ●なるべく小さな幼児の世話をする。 ●他人へのサービスと親切を心がける。 ●人の失敗や欠点を責めない。 ●相手に対して個人的な関心を示すように努める。 ●世話役などをすすんで引き受ける。 ●相手の気持や感情を理解するように心がける。 ●自分からすすんであいさつをする。 ●困っている人を見たら、すすんで手を貸す●減点主義ではなく加点主義をとる。 ●良い面を中心に相手を見る。 ●相手の否定的な言葉や態度には応じない。●機会をとらえて、小さな贈り物をしたりやさしい言葉をかけたりする。 ●弱い立場にある人の世話をしたり援助をしたりする。 ●細かいことにはこだわらず、相手のためになるような行動をする●小動物や草花などを心をこめて育てる。 |
●テレビでNHKのニュースとか科学番組などを見る。 ●新聞の社説を読んで考える。 ●出納簿や日記をきちっとつける。 ●チェスや囲碁などの論理的なゲームを覚える。 ●物事を分析し、その中になんらかの法則性がみられないかを調べる。 ●言いたいことやしたいことを文章にする。●同じ状況で、他の人ならどう判断し行動するかを考える。 ●相手の話の内容を 「〜ということです か」と確かめる。 ●かたい内容の本を読む。 ●1年間、1ケ月、1週間、1日の計画を立てて、それに沿って行動する。 ●筋道をたてて論理的に考える。 ●人の話をうのみにするのではなく、自分で納得いくまで確かめる●自分の行動にムダなところがないか、反省する。 ●あたりまえと思わずに、なぜだろうと考 え、いろいろ調べる。●問題全体を分析し、事前に結末を予測してみる。 ●新しいものごとに関心をもち、自分で調べる。 |
●マンガやユーモア小説を読む。 ●人の顔を見て、どんな動物に似ているかを想像する。 ●頭を左右どちらかに傾けてものを見る。 ●トランプ占いをしたり、星座占いなどに興味をもつ。 ●積極的に娯楽を楽しむ。 ●芸術を楽しむ。 ●不快感に多くの時間を費やさず、気分転換して楽しいことを考える。 ●心から楽しめるような趣味をもつ。 ●今までやったことのない新しいことに積極的に取り組んでみる。●自分からすすんでみんなの仲間に入っていく。 ●おいしい、うれしいというような気持を素直に表現する。 ●短く楽しい空想をときどき楽しむ。 ●ユーモアや冗談を言って人を笑わせる。 ●童心にかえって子供といっしょに遊ぶ。 ●生活の中に自分が楽しめる遊びの時間をふやす。 ●鏡を見ていろいろおもしろい顔をする。 |
●友人や家族の選んだ映画やテレビ番組におとなしく従う。 ●相手の話を聞いている最中には、判断的な口をはさむことをこらえて、相づちを打つ。●テレビを見ながら、主人公に合わせて喜び・悲しみ・当惑・怒りなどをまったく同じように表現する。 ●小鳥や熱帯魚などの小動物を飼育する。 ●相手をたて、相手の立場を優先するよう心がける。 ●自分がしゃべるよりも、相手の話を聞くことを中心にする。 ●相手がどう感じたかを確かめ、相手の気を悪くさせない配慮をする。 ●相手に遠慮し、妥協するよう心がけ る。●相手に反論せず、相手の言うことに従う。●相手の気持を気づかう。 ●相手の顔色をうかがって行動してみる。 ●「すみません」こいう言葉を多く使う。 ●言いたいことがあっても、三つに一つは言わずにがまんする。 ●何かするとき、相手の許可を得てからする●子供の言うことに従ってみる。 ●批判せずに言われたとおりに行動してみる |
教師の感想
個人用のワークシートで作業させる授業は、枠組みのしっかりした授業になるが、全体での交流がなくて、雰囲気的に盛り上がらない。また、生徒の性格や意欲によって、進み方に大きな差が出てくるので、遅い生徒を待とうとすると、早い生徒がだれてしまう。
前回の反省で、時間をゆっくり使おうとしたのだが、やや冗漫になってしまった。私が性急な性格のせいもあるかもしれないが、自己改造計画までを1時間でやってしまった方がよかったかもしれない。
「国語表現」の2時間の使い方が、私の中でも曖昧なせいもあって、ペースがつかめない。「心のワーク」と「作文」の2本立てという概観は見えてきたが、生徒に提示するところまで固まっていないのが現状である。時間が解決してくれるのだろうか。
時間配分のまずさから、大切な振り返りの時間がとれなかったのが最大の失敗か。
反省の多い3回目であった。ワークシートに頼り過ぎた。
参考文献
・杉田峰康ほか『交流分析とエゴグラム』(チーム医療)
・芦原睦『エゴグラム』(扶桑社)
・芦原睦『自分がわかる心理テスト Part2』(講談社ブルーブックス)
・窪内節子『楽しく学ぶこころのワークブック』(学術図書出版社)
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