19.カウンセリング総合 10月25日(月)
〜カウンセリング実習6〜
いよいよカウンセリング実習の最終回。マンネリだとの批難の中、ようやくここまで引っ張ってきました。
今回は、カウンセリング総合、いままで学習してきた「かかわり技法」「繰り返し技法」「言い換え技法」「質問技法」を駆使してロールプレイをします。しかし、たった1回ずつの実習で技法をマスターできているはずはありません。でも、カウンセリングってどんなものか、普通の会話とどこが違うのか、それが日常生活で、例えば友だちの話を親身になって聴いてあげるのにどのように生きるのかあたりの感触をつかんでもらえれば大成功と言えるでしょう。
今回は場所を変えて会議室。教室では、机が邪魔になるし、狭いので他のグループのロールプレイが気になって集中できません。広いスペースの確保できる会議室に移動します。
まず、今までの技法について復習をします。
ロールプレイに先立って、グループの信頼関係を作るために、トラストホールドをします。紙から入るのでなく、身体から入って行って、雰囲気をつくります。
そして、グループ分かれてロールプレイをします。3〜5人のグループがあるので、早い所は2回分あまります。もう1回やってくれればいいのですが、早く終わっても仕方ないでしょう。できれば、他のグループが許してくれれば観察してもいいです。カウンセラー役とクライエント役と観察者に分かれてしますが、1人1回はカウンセラー役とクライエント役を体験するようにします。クライエント役は自分の問題を話してもいいし、自分の問題ではないが気になっている問題を話してもいいし、10個のシナリオの中から選んでもいいです。ただ、シナリオはケースの概要と初めのセリフしかないので、後はアドリブでクライエントになった気持ちで続けてもらいます。3分間を計画していますが、3分間は案外長い。そして、ロールプレイの後、シェアリングをします。時間は2分間みています。真剣になれば2分では短過ぎるのですが、そうでないと持て余します。時間については状況を見ながら判断しましょう。
最後に振り返りをして、カウンセリング実習全6回の終了です。
時間 | 学習項目 | 活 動 内 容(★留意点 ▼生徒の反応) |
50 | 意見文を書く7 | 1)前回の作文を返却する。高得点の作品は裏面に印刷してある。 2)「意見文を書く7」を配布する。 3)書き方を説明して、45分で書かせる。 ・第7回は、今までのパターンを参考にして、自由に題を選んで意見文を書かせる。字数は、600字以内。 4)次の時間、会議室に移動しておくように指示する。 |
10 |
トラストホールド |
1)グループの信頼関係を作るために、ウォーミングアップをしてもらうことを伝える。 2)グループ内で2人組を作らせる。 3)トラストホールドについて説明する。 1)1人が真っ直ぐ立ち、その後ろにもう1人が立つ。 2)前の人は、膝を伸ばしたまま後ろに倒れる。 3)後ろの人は、それを両手で支える。 4)大きく倒れられるほど信頼が厚いことになる。 5)ただし、安全には注意し、あまり無理はさせない。 4)教師がデモンストレーションをする。 5)生徒同士でさせる。 |
5 | カウンセリングの技法 | 1)「ワークシート6カウンセリング総合」を配布する。 2)「1.カウンセリングの技法」を復習する。 ・今まで学習した「かかわり技法」「繰り返し技法」「言い換え技法」「質問技法」について、復習する。 |
30 |
ロールプレイ習1 |
1)ロールプレイについて説明する。 ・ロールプレイは役割演技である。 ・カウンセリングの場合、カウンセラー役とクライエント役に分かれてする。 ・カウンセラー役は、さまざまな技法を試して、クライエントの話を傾聴する練習をする。 ・クライエント役は、クライエントの気持ちを理解する。 ・観察役は、ロールプレイを観察し、「カウンセリング評価票」 に記入する。 2)進め方を説明する。 1)グループに分かれて座る。 2)1人1回、カウンセラー役とクライエント役を体験する。それ以外は観察役になる。 3)順番を決める。 4)クライエント役は、自分の問題か、自分の興味のある問題か、 「ロールプレイ・シナリオ1〜10」の中から事例を選ぶかする。 3)ロールプレイをする。 ・1回のロールは3分間。 ・ロール終了後のシェアリングは2分間。 ・全員が終わるまで繰り返す。 |
5 | 振り返り | 1)「振り返りシート」を書かせる。 2)次の時間に、カウンセリングのテストをすることを予告する。 |
資料
カウンセリング実習ワークシート6 カウンセリング総合 1.カウンセリングの技法
ロールプレイ・シナリオ 1 中学3年の女子生徒。近所に引っ越してきたA子と仲良くなったが、3年になってから疎遠になり、他の友だち関係も壊れてきた。 ヌ2年生の2学期に、A子が家の近くに引っ越してきました。 ロールプレイ・シナリオ 2 高校1年生の生徒。もう3か月も学校を休んでいて、悩んでいる。母は口うるさく言うが、やる気になれず、落ち込んでいる。 ヌ僕(私)は、もう3ヶ月も学校を休んでいるんです。自分でもどうしていいかわからなくて困っているんです。 ロールプレイ・シナリオ 3 高校2年生の生徒。自己主張ができず、何でも引き受けてしまう。この前も試験前にノートを貸して返してもらえなかった。何とかしようと思うが、できない。 ヌ僕(私)は自分のしたいことや思っていることそれが言えないんです。イヤって言えないものだから、結局、色々なことを引き受けてしまうんです。 ロールプレイ・シナリオ 4 高校2年生の女子生徒。先日、友だちの看病をして夜遅く帰ってきたら、母にひどく叱られた。母がしつこく言うので、きつい言葉で言い返した。 ヌ私が先日、夜遅く帰ったら、母が突然大声で怒鳴るんです。 ロールプレイ・シナリオ 5 高校3年の生徒。両親が教育熱心で、彼も一生懸命勉強しきたけれど、最近成績が落ちてきた。両親に叱られ、ますますやる気がなくなってきた。 ヌ僕(私)はいくら勉強しても全然だめなんです。 ロールプレイ・シナリオ 6 高校3年生の生徒。両親とも教師で、子どもには大学に行かせたいと思っている。しかし、彼女は美容師になりたいと思っている。それで、親子喧嘩をしてしまった。 ヌ両親とも教師をしているんです。 ロールプレイ・シナリオ 7 19歳の学生。人前に出ると何も言えなくなる。そういう自分に腹が立ち、他人にまで当たり散らしたくなる。 ヌ私(僕)が今一番悩んでいるのは、人前に出ると、何も言えないことなんです。 ロールプレイ・シナリオ 8 大学2年生の学生。今の学部の勉強に興味が持てない。大学を辞めたいとまで思うけれども、親のことを考えるとそうもできない。 ヌ僕(私)はこの学部に入るべきではなかったんです。 ロールプレイ・シナリオ 9 20歳の女子社員。課長から嫌がらせを受けて困っている。この前はセクハラもさ れ、会社を辞めてしまおうかとも思うが、父の縁故で入社したので辞められない。 ヌ課長から色々な嫌がらせを受けて困っているんです。 ロールプレイ・シナリオ 10 21歳の社員。高卒で入社して3年になるが、会社の将来に展望が持てなく、自分の将来も不安である。大学へ行かなかったことを後悔し、やる気を失っている。 ヌ私(僕)は、今の会社に入って3年ほど経ったところです。
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生徒の感想
理解度 5− 12 4−7 3−7 2−0 1−0
興味度 5− 12 4−6 3−5 2−1 1−0
▼自分がカウンセラーになってみると、かなり返す言葉に困って難しいことが分かった。▼カウンセラーという仕事をしている人は、すごい人だなぁと思った。私には多分一生できないだろうと思った。▼カウンセリングは難しい。カウンセラーには、なれないと思った。▼楽しかった。▼カウンセラーがとっても大事な役割だと思った。▼カウンセリングは難しい。ちょっと説明されたからって、その人の悩みすべてを理解できるわけないし、わかってへんのに、その人にどんなコトを意見できるというのでしょうか。奥は深いですね。▼やっぱり友達同士だと笑ったりしてしまうから、やりにくかった。でも、やり方が少しだけど分かって、カウンセラーという仕事も、少ししてみたいと思ったが、私にはできないだろうなと思った。▼カウンセリングを始める前まではきちんと聞いてと対話できる自信があった。でも、いざ話してみると相手の気持ちの葛藤が目に見えて分かり、どんな言葉をかけていいのか分からなかった。結論としてカウンセリングは難しい。▼いまだにやっている意味と目的が理解できない。▼カウンセラーは難しかった。あんまり向いていないかもしれない。面白かった。▼自分にはカウンセラーは向いていないと思った。▼タウンセラーというのはムズカシイ。いろいろな技法をいっぱい使ったけれど、あまり活用できなかった。▼カウンセラーが楽しかった。標準語で話さないと関西弁は少し冷たく聞こえる。ムズかった。▼チームの人との交流が持ててよかった。カウンセラーはとてもムズカシイと思った。▼みんなと輪になってやったので楽しくできた。聞き方(質問の仕方)の良い悪いが少しつかめた気がする。▼クライエントだったらいっぱい話せるけど、カウンセラーの方になってしまうと、どういう言葉を返していいか迷ったのが多かった。やっぱりカウンセラーは大変なんだろうなと思った。▼人の悩みを聞いて、相手の気持ちを理解するのは難しいと思った。でもおもしろかった。▼人の悩みを聞き、さりげなく相手に気づかせたり思いを考え直させるのは難しいことだった。またどういうところがポイントなのかを追求することも難しかった。でもやっていてなんか良い感じだった。
教師の感想
ようやくカウンセリング実習が終わりました。結論から言えばやや失敗かな。面白いとか興味を持ったという生徒は多かったけれど、最後はカウンセリングは難しい、自分はカウンセラーになれないという感想が多くなりました。カウンセリングの難しさばかりが印象に残り、日常生活に生かせるという期待した感想はありませんでした。敗因は、ネーミングにもあると思います。これを「聴き上手になろう」とか「聴き方の学習」なんてネーミングにすると、かなり印章か違ったと思います。カウンセリング実習としたために、自分とは関係ない、自分はカウンセラーになるつもりはないという思いと結びついてしまったようでした。また、6回というのも、動機付けが出来ていない生徒を対象にするには長過ぎたようです。マイクロカウンセリングよろしく、1日1技法と思ったのですが、変化をつけられず退屈な時間になってしまった感じがあります。
でも、今日のような実習をすると盛り上がります。今のというか今回の生徒には、段階的にするよりも総合的にする方がよかったということでしょうか。ただ、29人が7つのグループに分かれてロールプレイをするのも無理があります。1人の教師では目が届かず、ただ体験しているだけで、その場で指導はできませんでした。このあたりも、実習の難しさです。
反省点も多々ありましたが、生徒の反応はまずまずで、これを改良すればかなりいけるのではないかと思っています。
参考文献
・福山清蔵「独習入門カウンセリングワークブック」日本・精神技術研究所
・福山清蔵「独習実践カウンセリングワークブック」日本・精神技術研究所
・アレン.E.アイビィ著/福原真知子他訳「マイクロカウンセリング」川島書店
・玉瀬耕治「カウンセリング技法入門」教育出版
・D.エバンス、M.ハーン、M.ウルマン、A.アイビー著/援助技術研究会訳「面接のプログラム学習」相川書房
・諸富祥彦『学校現場で使えるカウンセリング・テクニック上』誠信書房
・國分康孝『カウンセリング教授法』誠信書房
・全国教育所連盟編『だれもが身につけたい生徒指導・学校教育相談の技法』ぎょうせい
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