18.質問技法 10月18日(月)
〜カウンセリング実習5〜
先週は体育の日でお休みでした。カウンセリングばっかりという声も少しは和らぐかと思います。カウンセリング実習はあと2回です。
今回は、質問技法です。本来、カウンセリングはクライエントの話をひたすら聴くことが基本でしたから、カウンセラーからの質問は邪道のように思われていました。しかし、実際は、長い沈黙が続いている時とか、どうしても聞きたいことが出てきた時とか、質問します。そんな難しいことを考えなくても、人と話していて質問することはよくあります。その時にどんな質問をするか意識することは、コミュニケーションをスムーズにするのに必要なことです。
ワークの時間は、理論からではなく実習からという鉄則にしたがって、まず、実習から入ります。よくある女子高生と母親の事例とそれに対する質問について考えていきます。
25の質問に自分の基準で○×をつけ、後で分類することで自分の基準の傾向を知るというパターンで実習します。
それから質問技法の説明をします。実習のまとめのようなことになります。
その後、前回好評だった(と思う)カード式KJ法を使って、グループである事例に対して質問を作っていきます。その時に、自分の作った質問を分類させて、理論の定着を図るという目論見です。そして、グループでベストな質問をまとめて、できれば、それでロールプレイをすると面白いでしょう。
最後に振り返りをして、次回、今までの技法を使ってロールプレイをしてもらうことを予告して終了します。
時間 | 学習項目 | 活 動 内 容(★留意点 ▼生徒の反応) |
50 | 意見文を書く6 | 1)前回の作文を返却する。高得点の作品は裏面に印刷してある。 2)「意見文を書く6『社会人にとって、茶髪は是か非か』」を配布する。 3)書き方を説明して、45分で書かせる。 ・第6回は、文章を読んで、自分の意見を書く問題である。文章 は、1学期に要約で使った文章で、社会人という限定において、茶髪の是非を問う問題で、自分の立場を明らかにした上での意見文になる。 |
15 | さまざまな質問 | 1)「ワークシート5質問技法」を配布する。 2)「1.さまざまな質問」をさせる。 ・事例とカウンセラーの質問項目が書かれている。 ・Aは、良い質問と悪い質問を識別する問題である。自分の基準によって決める。 ・Bは、それぞれの質問が、感情か事実か、焦点が当たっているのはクライエントかクライエント以外か、その当時か過去や普段かこれからのことか、カウンセラーの解釈かどうかを分類させる問題である。 ・Cは、閉ざされた質問と開かれた質問に分類する問題である。 3)解答と解説をする。 ・Aは、正解はない。 ・Bの正解は次の通りである。 1)イ2)イ3)ウ4)オ5)ウ6)ウ7)オ8)ウ9)ウ10)ウ11)ウ12)オ13)ウ14)ア 15)ア16)ウ17)ア18)オ19)エ20)ウ21)ウ22)エ23)オ24)エ25)ア ・Cの正解は次の通りである。 1)C2)C3)O4)C5)O6)O7)O8)C9)C10)O11)C12)C13)C14)C 15)O16)C17)C18)O19)O20)O21)O22)O23)C24)O25)O 4)Aで○と×をつけた質問と、BCの関係を考え、自分の質問の傾向を考える。 ・自分は、どこに焦点を当てた質問を、良い質問と考えているか、悪い質問と考えているか。 ・自分は、閉ざされた質問か開かれた質問か、どちらに多く○をつけたか、×をつけたか。 |
5 |
質問技法の説明 |
1)「2.質問技法」を説明する。 ・カウンセリングの本来の目的から質問は最小限にする。 ・目的、焦点、種類を説明する。 ・不適切な質問について説明する。 |
5 |
質問技法の練習1 |
1)「3.質問技法の練習1」をさせる。 2)解答と解説をする。 1 b 事実を引き出したり、「はい」か「いいえ」で答えられる閉ざさたた質問ではなく、開かれた質問で自由に話が続けられるようにします。また、「〜してくれますか」という尋ね方はClから幅広い柔軟な反応を引き出し、会話を進めやすくなります。 2 a 面接を進めるには話題に添った必要な情報を得なければなりません。ここではClに関する「どんな(What)」を尋ねる質問によって事実に関する情報を知ることができます。同じ開かれた質問でも、bのように急ぎ過ぎたり、cのように生徒の話したいことから逸れてしまう質問はよくありません。 3 a 単に事実を確認したりする質問は避け、Cl自身について焦点を当てた質問をします。「どのように(How)」を尋ねる質問 によってCl自身に焦点を当てた個人的主観的な考えを聴くことができます。 4 b 「どうして(Why)」を尋ねる質問はClを防衛的にし話し にくくさせるので、できるだけ避けたほうがよい。 5 c Clが自殺をほのめかす発言をしているので、どの程度深刻に考えているか判断することが重要です。閉じられた質問はそのことをはっきりさせることができます。aのような開かれた質問は危機介入には役立たないし、bはアドバイスのようでありClを防衛的にさせます。 6 a 閉じられた質問の連続は詰問しているような感じを与え、Clは追い詰められて防衛的になります。そのうえ、「〜ないんだ ね」という問い方は一層追い詰められるような印象を受けます。ここでは、再び開かれた質問によって生徒の話を引き出す雰囲気をつくり出すことが大切です。 7 b 2つ以上の質問はClを混乱させます。また、閉ざされた質問を後にすると前の開かれた質問が帳消しになります。 |
20 | 質問技法の練習 2.3 |
1)グループに分かれさせる。 2)グループで、「練習2」か「3」かを決めさせる。 3)1人に5枚の質問カードを配布する。 4)事例を読んで4つ質問をカードに書く。 ・1枚のカードに1つの質問を書く。 ・どの箇所で質問してもよい。同じ箇所で複数の質問をしてもよ い。 ・箇所の番号、目的、焦点、種類も書く。 5)順番を決め、自分の書いたカードを読みながら、机の真ん中に出していく。 ・前の人が言ったカードは出せない。 ・すべてのカードが出尽くしたら終わり。 6)グループとして5つの質問にしぼり、番号順に紙に糊で貼る。 ・貼る用紙は、練習2、3と行間を広くした用紙を作っておく。 7)グループ内で実演してみる。 |
5 | 振り返り | 1)「振り返りシート」を書かせる。 2)次回、ロールプレイの実習をすることを予告する。 |
資料
カウンセリング実習ワークシート5 質問技法 1.さまざまな質問 次の事例と質問事項を読んで、次の設問に答えなさい。
[A|B|C] 1)A欄に、良いと思える質問に○、良くないと思える質問に×、どちらとも思えない質問に△と書きなさい。 2.質問技法 カウンセリングは、カウンセラーがクライエントの話を聴くことで、クライエントが自分で自分の問題を明らかにし、自分で解決するのを助けるのが目的です。だから、できるだけクライエントの気持ちの流れを大切しなければなりません。
3.質問技法の練習1
4.質問技法の練習2 次のクライエントの話に、必要だと思う所で適切な質問をしてください。
5.質問技法の練習3 次のクライエントの話に、必要だと思う所で適切な質問をしてください。
[ ] 目的(Coが知りたい・Clに気づかせたい・Clから引き出す・Coの解釈) |
生徒の感想
理解度 5−9 4−4 3−8 2−2 1−0
興味度 5−7 4−5 3−8 2−1 1−2
▼同じことの繰り返しでそろそろ飽きてきました。▼理解できず。▼やることがマンネリ化してきて面白くない。▼ちょっと面白かった。▼このごろ同じようなことばかりしているような気がする。▼難しかったです。▼カウンセラーも難しいと思った。質問するのも相手のことを考えなければいけないんだと思った。▼時分の意見か引き出せてよかった。▼相手の悩んでいる焦点やポイントをつかんで質問しなければならないのでこっちも考えさせられる。▼何気なくカウンセラーの側で言っていることを読んでいたけど、いざ自分で書けといわれると難しかった。
教師の感想
はじめの「いろいろな質問」は込み入っていて難しかったようです。ちょっと細か過ぎたかな、専門的だったかなと反省しています。導入としての作業させようということですが、ワークシートによる個人作業は、進行状況に差が出るので、後々の展開が圧迫される。
また、喋っていてやらない生徒もいて、省略していきなり説明に入った方がよかったかなとも思った。
マンネリだという声が相変わらず強い。まぁ、事例に対して使う技法を段階別に学習していくので、似たようなパターンになるのはやむを得ないだろう。カウンセリングを勉強したいという生徒なら、そうはならないだろうが、前から言っているように動機付けのできていない生徒を対象にしているので、これもやむを得ないだろう。それにしても、現代文や古文や数学や英語や・・・・は、反復練習でそれこそ同じことの繰り返しなのにマンネリだという声が出ないのはなぜか。それは生徒があきらめているからだとするなら、まだ国語表現には期待してくれているという証なのか? 教科書のない自由度の高い科目の宿命だとしたら、「総合的な学習の時間」は、工夫をして未だ嘗てないプログラムを考えれば考えるほど、生徒の欲求は高くなり、マンネリの誹りも強くなるのだろうか。それも、期待の裏返しと言えるのか、単に生徒が飽きっぽくなっていると考えるのか。
参考文献
・福山清蔵「独習入門カウンセリングワークブック」日本・精神技術研究所
・福山清蔵「独習実践カウンセリングワークブック」日本・精神技術研究所
・アレン.E.アイビィ著/福原真知子他訳「マイクロカウンセリング」川島書店
・玉瀬耕治「カウンセリング技法入門」教育出版
・D.エバンス、M.ハーン、M.ウルマン、A.アイビー著/援助技術研究会訳「面接のプログラム学習」相川書房
・諸富祥彦『学校現場で使えるカウンセリング・テクニック上』誠信書房
・星野匡「発想法入門」日経文庫
・高橋誠「問題解決手法の知識<新版>」日経文庫
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